日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ウォーレンの草の根献金、バイデンの大口献金を上回る:「声なき声」を集めれば、アメリカ大統領選さえ戦える。

アメリカ民主党予備選での資金獲得競争で、草の根献金に頼るウォーレンとサンダーズが、どちらも、大口献金に頼るバイデンを上回る額を集めています。米大統領選でさえ、個人献金中心のキャンペーンで十分戦えます。日本でも、企業団体献金は廃止すべきです。

ウォーレン台頭に、やっと慌て出した日経

日経が、来年のアメリカ大統領選で、民主党左派のエリザベス・ウォーレンが当選するかもしれないと、今さらあわてています。

滝田洋一編集委員が、今日の日経で、以下のように書いています。

国民投票欧州連合EU)離脱派勝利、そして米大統領選でトランプ氏当選。2016年に起きた「まさか」は、20年に繰り返されるのか。米民主党左派のエリザベス・ウォーレン上院議員が大統領に選ばれる事態である。

www.nikkei.com

ウォーレンが選ばれる「まさか」の「事態」。明らかに嫌がってますよね(笑)

続けて、彼女はトランプとバイデンのウクライナ疑惑の泥仕合で浮上したとか、富裕税等の左寄りの政策を掲げているとか、ブレーンに格差研究の専門家の経済学者二人がいるとか、このブログではお馴染みの情報を披露しています。

トランプとバイデン、ウクライナ疑惑で泥仕合。日本は、「ウォーレン大統領」に備える必要あり。 - 日本の改革

アメリカの超富裕層15人の純資産9400億ドルは4300億ドルに半減:ウォーレン富裕税のインパクト - 日本の改革

米州総局の宮本岳則氏はそれより早く、9月26日に取り上げていて、アメリカの市場関係者の声を報じています(こちらの記事は、私は不勉強で読んでませんでした…)。

ウクライナ疑惑よりもウォーレン浮上の観測で株価が一時大きく下げたこと、市場関係者が「ウォーレン大統領」を「本当のリスク」と言い始めたこと、RBCキャピタル・マーケッツが3月に実施した投資家調査では「株式市場にもっとも優しくない候補者」に選ばれたこと等、投資家や金融業界がいかにウォーレンを嫌っているか、というエピソードが並んでいます。

中でも、トランプ氏支持の起業家ピーター・ティール氏のウォーレン評がふるっています。ウォーレンは「最も危険な人物」だ、なぜなら、他の民主党候補と異なり、経済政策について具体的に語っているからだ、ということです。

www.nikkei.com

ティール氏のウォーレン評は、大変な誉め言葉です。敵からも、実力を評価されているのですから。金融市場を敵視するのではなく、それがまともに機能するよう是正するため、専門的知識を生かして切り込むことには、リーマン・ショックを経験したアメリカ国民は賛成します。

ウォーレンとサンダーズ、どちらも資金獲得額でバイデンを上回る

さて、そのウォーレンが、支持率の上昇とともに、選挙資金の調達でも好調です。

今年の7月から9月(第三四半期)、ウォーレンは2500万ドルを集めました。2530万ドルを集めたサンダースよりわずかに少ないけれど、民主党予備選の候補者中の二位です。しかも、この二人は、伝統的な資金集めのイベントをやらず、二人とも「100%草の根献金」だ、と言っています。

これに対し、バイデンは、1520万ドルで、4月から9月(第二四半期)より、700万ドル減ったそうです。バイデン以外にも、大口献金を集めるための献金イベントに頼った民主党候補者たちは、軒並み資金集めに苦戦していると言います。

ところで、アメリカの大統領選での「伝統的な資金集めのイベント」って、どんなことやるんでしょう?Voxが、バイデンのキャンペーンを紹介していますが、参加費が1500ドルか2800ドルかかり、1万ドル以上寄付したら、バイデンによる「VIPレセプション」があるそうです。ウォーレンはこういう参加費の高額なイベントや「VIP待遇」レセプションはやらずに、小口献金に頼るやり方で、献金の平均額はウォーレンが26ドルで94万人から集め、サンダーズが平均18ドルで140万人から集めていると言います。

伝統的な資金集めイベントではなく、広く薄く資金を集める方法だと、少数の大口献金者に「VIP待遇」で時間を使わなくてよいので、ウォーレンはイベント終了後、集まった人達と長時間かけて、いっしょに自撮り写真をとるようにしています。ニューヨークでの評判の良かった演説会では、なんと4時間もかけて、希望者全員との自撮り写真に応じたのが話題になりました。これは口コミで評判を更に広げます。

民主党でも「進歩的」な二人が、こうしたやり方で、3か月間で合計5000万ドル超を集めたのは、アメリカのメディアにも驚きだったようです。

www.vox.com

Sanders and Warren transform how presidential campaigns are paid for - POLITICO

もっとも、今年6月までの資金集めに限って言えば、正直、二人とも「100%草の根」、小口個人献金ばかり、とは言えなかったようです。ウォーレンを例にとると、彼女は7月に、以下のようにツイートしていますが、

 ワシントン・ポストが、これについてファクト・チェックしています。それによると、彼女もサンダーズも、1月から6月まで、つまり第一、第二四半期には、どうも前回の上院選のときに集めた資金を使っていたようで(それ自体は構わないようですが)、そこには、企業献金も、大口の個人献金も入っていたようです。

ワシントン・ポストは、政治家がウソをついていないかのファクト・チェックを、4段階評価のピノキオ・テストで行っていて、最悪が4ですが、ウォーレンとサンダーズは、「2ピノキオ」、つまり、「重要なことを言っていない、または誇張している」という評価になっています。積極的にウソまでついていないけれど、「盛っている」感じです。

www.washingtonpost.com

しかし、これは、第二四半期、6月までの評価です。ワシントン・ポストのファクト・チェック記事は9月30日に、6月までの政治資金について行っていますが、その後発表された、7月から9月までについては、本当に100%小口個人献金だったということですし、7月に「盛った」ツイートはしてしまいましたが、まあ許容範囲かなと(笑)

政治資金について厳しく追っているサイトOpensecretsは、バイデンには小口献金が少なく、これがかえって、今年後半での献金の伸びを鈍らせるおそれがある、としています。彼への献金は、やはり富裕層が多いようですが、彼等は6月までに個人献金の上限まで早々と寄付してしまっているケースもあるのに対し、ウォーレンやサンダーズへの少額献金は、同じ人が何度も繰り返して献金しており、かえって息の長い運動が可能になっているようです。

www.opensecrets.org

これは、日本の改革派にとっても、明るいニュースではないでしょうか。

アメリカ大統領選の予備選でさえ、比較的少数の大口献金に頼るより、圧倒的多数の小口献金に頼る方が、金額でも持続性でも勝てると言うなら、日本でも、企業団体献金や富裕層に支えられる政治家とも、十分戦える余地がある、ということを示しています。

まだ民主党内の予備選の段階ですし、数億ドルから十数億ドルかかると言われる本選ではどうなるか分かりません。それでも、2016年の大統領選では、イメージと違って、トランプ陣営の投入額は6億1000万ドル、クリントン陣営は11億8000万ドルで、クリントンがほぼ2倍の資金を使って、しかも負けました。投入資金等で上回った候補が負けるのは、大統領選史上で初めてのことだそうです。

wedge.ismedia.jp

日本の常識では考えられないくらい巨額の資金が使われるアメリカでさえ、単なる資金力だけでは勝てない時代です。しかも、ウォーレンらの献金額が伸びていることは、純粋に資金集めということだけでさえ、小口の個人献金で立派に選挙戦が出来る可能性を示唆しています。日米での政治文化、寄付文化の違いはもちろん踏まえなければいけませんが、それでも、現実にかかる費用はもっと安く済む日本では、個人献金だけに頼っても、既得権頼りの政治家達に、資金力でさえ勝てる可能性があるはずです。しがらみや既得権と無縁の、普通の政治が無視している「声なき声」を政治で生かすために、クラウド・ファンディングを含めた小口献金が、今後一層、使われてほしいと思いますし、改革派の政治家、政党は、そうした資金集めを大事にしてほしいと思います。

補足:先は厳しいけれど、ウォーレンには頑張ってほしい

本論の趣旨と外れますが、最後に、ウォーレンが予備選で勝てるかどうか、について、少し考えてみます。私は彼女を応援していますが、客観的な情勢で言えば、まだまだ厳しい関門があります。

確かに支持率争いでは、ウォーレンがバイデンに追いつけ追い越せ状態の世論調査結果も増えてきましたが、サウス・カロライナ州のようなアフリカ系アメリカ人の多い州では、まだまだ圧倒的にバイデンです。民主党候補になるには、こうした人達の票が重要らしいので、課題の一つです。

選挙資金の話で言えば、ウォーレン自身が資金集めでバイデンに勝っても、民主党の大口献金者はブルームバーグやソロス等の億万長者ばかり。民主党の大物・古株政治家達にとっては、彼らの意向が大事です。

edition.cnn.com

で、民主党への献金額が2位のトム・スタイヤー氏が、予備選に出馬しています。彼は、ウォーレン流の富裕税を主張しており、それなら彼女を支持すればいいものを、わざわざ自分が出馬しました。支持率は一桁台前半なのに、11月の民主党の討論大会にも出られると言います。民主党の設定した、討論大会参加のハードルが大変低いからです。大口献金者のこの人に忖度しているのではないか、と疑いたくなります。

We Need A Wealth Tax - Tom Steyer

thehill.com

それ以前に、なぜ、自分と同じ趣旨の主張をしているウォーレンが出ているのに、自分が出たのでしょう。ご本人の思いもあったのかもしれませんが、私は、彼は本音ではウォーレンの富裕税に反対で、ウォーレン潰しで出馬したのではないか、と疑っています。

実際、ワシントン・ポストでは、匿名の民主党大口献金者が複数、ウォーレンには勝たせたくない、と本音を語っています。まさかその中にスタイヤー氏は入っていないでしょうが、個人投資家ウォール街がウォーレンを見る目は最初に紹介した通りで、何が何でも彼女を潰そうとしています。 

www.washingtonpost.com

そんなわけで、先は厳しいですが、私は、アメリカの既得権層と戦って国民全体の生活を改善しようとするウォーレンには何とか頑張ってほしいし、大統領になってほしいと思っています。政策的に見れば、ウォーレンが大統領になると言うのは、アメリカの経済・社会政策の一大転換を意味します。私は、彼女の主張の一部には反対ですが、その多くは正しいと思います。この点は、今までもいくつかの論点について書いてきましたが、またいずれ、まとめてみるつもりです。