日本の改革

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関西電力等、小売市場で極端な不当廉売、新電力が苦境に。公正取引委員会はただちに強制調査を!

関西電力等の大手電力会社は、電力の小売市場で、極端な不当廉売を行い、新規参入した新電力の契約を奪っています。新電力を軒並み倒して市場独占を狙う意図でしょう。経産省がまともに監督していないので、公正取引委員会が立入調査を行うべきです。

関西電力等が潰す電力自由化と再エネ普及

役員の金品授受が問題となっている関西電力原発関連の工事という発電部門だけではなく、電力小売りの分野でも、極端な不当廉売が問題になっています。

「選択」の3月号に、関西電力の異常な値引き攻勢で、自治体が出資する新電力が苦境に陥っている実態が書かれています。

関西電力が「新電力潰し」で大暴れ | 【公式】三万人のための総合情報誌『選択』- 選択出版

大阪府泉佐野市等が出資する泉佐野電力は、昨年9月から、有力な取引先を9件、関電に奪われたと言います。

泉佐野電力は、近隣地域での太陽光発電による電力を買い取り、公共施設等への電力供給を行うための一般財団法人で、大阪府内初の自治体PPS(特定規模電気事業者)です。

理事長からのご挨拶 | 一般財団法人 泉佐野電力

市の支援もあり、公益目的で、従来の電力料金の10%下げを実現していましたが、そこに関西電力が18%もの値下げ攻勢をかけてきました。その後、関電は、値引き幅を28%までに拡大したと言います。

「選択」3月号では、生駒市の例も挙げています。生駒市大阪ガス、生駒商工会議所等が出資する「いこま市民パワー株式会社」は、再エネ電力の地域への供給を行っていますが、公共施設の電力入札の際、関西電力が落札率なんと5割、4割台という安値攻勢で落札しました。

なぜ、こんな安値を実現できるかと言うと、関西電力のような旧独占企業は、発電から小売り部門に売るときの価格を安くするという、いわゆる「内部補助」を行ってきたからです。また、電力大手は原発や火力、水力の大型発電所を持っていて、こうした電源の電力をあまり卸売市場に出さず、新電力が買えないようにしてきました。

規制料金の撤廃を見送り、大手電力の「不当な内部補助」遮断へ(2ページ目) | 日経 xTECH(クロステック)

卸供給に小売部門が関与するのはおかしい | 日経 xTECH(クロステック)

このような背景の下に、電力の小売市場で極端な安値攻勢をかける行為は、「適正な電力取引の指針」にある通り、独占禁止法違反にあたります。

https://www.jftc.go.jp/hourei_files/denki.pdf#search=%27%E4%B8%8D%E5%BD%93%E5%BB%89%E5%A3%B2+%E9%9B%BB%E5%8A%9B+%E5%B0%8F%E5%A3%B2%E3%82%8A+%E7%8B%AC%E5%8D%A0%E7%A6%81%E6%AD%A2%E6%B3%95%27

競争のスタートラインが、旧来からの電力会社と新電力とで異なっていては、公正な競争とは言えません。電力の小売り価格が安いことは、一見、利用者にとって良いことに見えますが、新電力が軒並み倒産して、あとは関西電力等の旧来からの大手しか残らなかったら、また好きなだけ小売価格を上げられてしまいます。

こうした不当廉売による新電力つぶしは全国で行われています。

東京新聞の8月17日の記事によると、自治体が中心となってつくった新しい電力会社の約四割が、東京電力関西電力などの大手電力の安値攻勢に苦しんでいると、同紙のアンケートで答えています。こうした「自治体新電力」の芽が大手電力に残らず摘まれてしまっては、再生可能エネルギーの普及や、エネルギーの地産地消による地域活性化が進みません。

www.tokyo-np.co.jp

経産省の電力・ガス取引監視等委員会は役立たず。公正取引員会が立入調査を!

では、国は何をやっているのでしょうか。

消費者・国民のために、こうした不当廉売を防止し、新電力も旧電力も同じスタートラインでまともな競争が出来るようにするため、経済産業省には電力・ガス取引監視等委員会があります。

電力・ガス取引監視等委員会について| 電力・ガス取引監視等委員会

ここが何かやっている風なことを時々ニュースに出していながら、不当廉売については、実は何もやっていません。

去年11月、日経BP総研が、新電力61社が集まる会員組織「日経エネルギーNext ビジネス会議」を開催しました。その場では、新電力から、

「(大手電力の)廉売に対してどう対処していくのか。新電力は本当に苦しんでいる。スピード感が欲しい」 

といった声が、電力・ガス取引監視等委員会の木尾修文取引制度企画室長にぶつけられました。木尾室長は「遠くない時期に実効性のある形で」何らかの規制を実現したい、と頼もしいことを言っていました。

project.nikkeibp.co.jp

で、その後、経産省がやったことは、大手の電源を新電力に開放しましょう、ということでした。「ベースロード電源市場」の創設です。原発や石炭火力発電の電力を新電力も買えますよということなので、再エネ普及という点では微妙な策ですが、大型水力発電所の電気も買えるので、一応は一歩前進でした。

大手の電源、新電力に開放 経産省・公取委が指針改定 :日本経済新聞

ところが、いざ8月に売りに出したものの、新電力は全然買いませんでした。理由は簡単で、高すぎたからです。初取引での約定価格は1キロワット時あたり12円~8円台で、スポット市場の年間平均とほぼ同等だったそうです。大手新電力幹部が「相対契約だったら、この価格は絶対に納得しない」というくらい高く、本来は、5円くらいが妥当なところだったようです。

diamond.jp

日本卸電力取引所、「ベースロード市場」の初の取引結果公表。約定価格は卸売市場の平均価格より最大2割安。ただ、取引量は低調に。電力大手の供給価格の割高感払しょくできず(RIEF) | 一般社団法人環境金融研究機構

そもそも、ベースロード電源市場の創設よりも、独占禁止法で不当廉売を罰することが一番実効性があるはずです。電力・ガス取引監視等委員会は、今年9月になって、ようやく、「小売市場重点モニタリング」というのを始めることにしました。

一定の価格水準を目安として、競争者(新電力)からの情報提供を踏まえ、対象事業者(関電等)への重点調査(ヒアリング)を実施して、契約内容を確認して、小売市場の競争の実態を重点的に把握し、必要な措置を検討することを目的、としています。

小売市場重点モニタリングについて

ところが、この「小売市場重点モニタリング」というのも、あてになりそうにありません。以下、日経BP総研の中西 清隆主任研究員の記事(日経エネルギーNext2019年8月23日)によります。

2018年1月から11月にかけて新電力から廉売の疑いに関する情報提供があった204件について、監視委員会は該当する大手電力に任意調査を実施しました。契約単価がこの期間の卸電力取引所の平均価格を下回るケース、つまりは原価割れが多数見つかったのに、摘発はありません。それどころか、新電力が監視委員会に情報提供しても、その後どうなったか一切何も教えてくれません。

既に、先に挙げた「適正な電力取引についての指針」という立派なルールがあって、「供給に要する費用(原価)を著しく下回る料金で、他の小売電気事業者の事業活動を困難にさせる」ことは「差別対価」や「不当廉売」などに当たるとして、取り締まりの対象になる、と書いてあるのに、役所は調べるだけで何もしていません。

今回の小売市場重点モニタリングは、新電力側からの情報提供を待っているだけです。この分野に詳しい國峯孝祐弁護士は、大手電力と付き合いがある新電力は情報を出しづらいし、申告ベースでは正しい情報か若穴井から、大手電力だから、監視委員会自身が大手電力に対して調査をかけるべきだ、と指摘しています。

project.nikkeibp.co.jp

このように、新規参入した企業から2年近くも散々問題を指摘されても、電力・ガス取引監視等委員会の動きは鈍いままです。このままでは新電力が次々に立ち行かなくなり、自治体が支援する公的な新電力さえ、遠慮なくなぎ倒され、せっかくの電力自由化が、元の木阿弥になってしまうおそれがあります。

そもそも、関西電力が2017年8月、大震災以来初めて電気料金を値下げしたとき、経済産業省は歓迎し、これは高浜原子力発電所3・4号機の再稼働のおかげだ!とウェブサイトで宣伝までしていました。最初から、関電を摘発するどころか、指導するつもりもないのでしょう。経済産業省がこんな姿勢だったから、関電も安心して不当廉売に走ったのでしょう。

www.enecho.meti.go.jp

もう、経済産業省の監視委員会だけに任せておくべきではありません。公正取引委員会が、自ら立入調査を行うべきです。

関西電力に対する社会の目が一気に厳しくなった今がチャンスです。同社につき、福井県での違法性が疑われる不当な経営だけでなく、紛れもない独占禁止法違反と考えられる小売市場での不当廉売こそ、メディアも野党も追及すべきです。

今なら世論が味方しますから、公正取引委員会は、まず関西電力の不当廉売に対して立入調査を行い、一定の証拠を得たら、他の電力会社にも調査を広げていくべきです。