日本の改革

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10月1日に国会で閉会中審査:千葉県の停電復旧遅れ、国も責任あり。経産省の不適切な行政指導と、プッシュ型支援の遅れ

台風15号に伴う千葉県内の大規模停電、東電が見通しを誤った背景に、経産省の行政指導があります。これによるプッシュ型支援の遅れもあり、国にも責任はあります。

千葉県の停電復旧遅れ、東電、市町村、県、国、それぞれに責任がある

東電エリアの送配電事業者である東京電力パワーグリッドのウェブサイトで、「停電情報」の表示が「 ー 」となり、まるでもう停電がないかのように見えますが、早期復旧の見通しが立たない7市町21カ所の計110戸ではなお停電が続き、その復旧は困難な状態のようです。

TEPCO : 停電情報

千葉停電、一部除き復旧 110戸は停電続く :日本経済新聞

千葉の停電復旧、21カ所なお困難 倒木・土砂崩れで遅れ:朝日新聞デジタル

台風15号による千葉県等での大規模停電では、東電、市町村、県、国、それぞれに責任があります。

まず市町村について、今回は、対応や情報発信について千葉市のようにしっかりしているところと、そうでないところとの差が際立ちました。ただ、今回、鋸南町のように町役場自体が停電で機能しなくなったところもあるので、やむを得ない面があります。

本ブログでは、最初の復旧遅れの情報が出た段階で、東電、市町村、県について、倒木等の撤去に関する協定を国が求めていたように結んでいたのか、という点を問題視しました。その後、NHKで、電柱の処理について東電と自治体とでたらい回しになっているような事例も報じられており、これも、事前の協定が結ばれていたら、復旧の迅速化につながったのではないかと思います。

台風で停電長期化の東電と千葉県・各市は、政府が求めていた倒木撤去の協定を結んでいたのか - 日本の改革

次に本ブログでは、千葉県知事が、対応の遅れを認めたとき、県による災害救助法の遅れの問題を取り上げました。発災が9月9日の午前中までで、災害救助法適用が12日にまでずれ込んでいたからです。ここでは更に、国のプッシュ型支援が遅れたのも問題、と書きました。

千葉県知事、初動対応の誤り認める。災害救助法の適用基準は一般条項を使って、迅速な対応を! - 日本の改革

東電、市町村、千葉県、国、それぞれに対応遅れがあったと思います。一連の遅れを引き起こしたのは、自治体や政府の油断や緩みもあったと思います。特に、政府は11日の内閣改造を延期すべきでした。

東電の復旧見込みを歪めた経産省の行政指導

が、これらの油断による対応遅れを招いた、そもそもの原因は、東京電力が楽観的に過ぎる復旧見込みを繰り返し発表し、それらを繰り返し修正したことにあります。特に、発災翌日の9月10日に「翌11日に全面復旧」と発表したことが、全ての元凶でした。10日の時点で深刻な被害になりうると分かれば、政府や千葉県の対応も変わったはずです。このため、私も、ブログでは、東電の対応を批判しました。

問題は、東電がなぜあれほど楽観的な予測を、発災の翌日には発表したのか、です。そもそも発災翌日の10日の段階では、情報も十分集まっていなかったはずです。

今日の朝日新聞の記事を見ると、原因が二つあったことが分かります。

一つは、前例のない規模の電柱倒壊と倒木があったことで想定を超えた被害があったことです。東電パワーグリッドの塩川和幸技監が過小評価を認めています。塩川技監は、当初復旧見込みは過去の台風被害をもとに作ったと言っているので、それが早めに復旧できるという楽観的な予測になったのでしょう。

もう一つは、経済産業省からの行政指導です。朝日から引用します。

ここには、電力業界を所管する経済産業省の強い意向もあった。昨年9月に関西を襲った台風21号について、世耕弘成経産相は11日、「復旧の見込みを示せなかったことが、非常に消費者のフラストレーションにつながった」と指摘、今回は早期に復旧見通しを示すよう東電側に求めた。

 政府関係者によると、10日の段階で「できるだけ早く復旧させてください」「今日中に復旧のめどを示してください」と経産省から東電に指示があったという。この関係者は「東電側が『いついつまでに復旧しろ』という圧力と受け取った可能性がある」と話す。

digital.asahi.com

 「できるだけ早く復旧させてください」と伝えるのは当たり前として、発災翌日の10日に、可能かどうかも確かめずに「今日中に復旧のめどを示してください」と言ったのなら、不適切な行政指導です。これにより、実際の巡視で被害状況を確かめることもまだ出来ていない段階で、まだ全く不確かな復旧見込みを無理やり発表したのでしょう。

東電が、10日の段階で「11日には復旧」と伝えたせいで、千葉県は12日まで災害救助法の適用をしなかったし、国は国で、対応を本格化させたのは、12日からとなりました。上にリンクを貼った朝日の記事から引用します。

対応が本格化したのは内閣改造翌日の12日になってから。被災地入りした経済産業省職員などにより、強風による深刻な倒木被害で停電の長期化が明らかになってきたからだ。2回目の災害対策会議も12日夜に開かれた。内閣府の担当者は「非常用電源も喪失した12日ごろから、急激に対応に追われるようになった」と話す。官邸関係者は、同日中に東電から「県南は復旧の見通しが全く立たない」との連絡が首相官邸に入ったことで空気が一変したと証言する。

台風15号、遅れた初動 停電長期化、甘い想定:朝日新聞デジタル

朝日は内閣改造が影響した、と言いたいようですが、そもそも東電が10日に翌日復旧すると発表したために、予定通り11日の組閣となったのではないでしょうか。根本的な原因は、東電が被害を把握できていないのに復旧見通しを発表させてしまった経産省の行政指導にあります。もちろん、組閣の予定を忖度してこのような行政指導を行った可能性もあるので、そこまで考えれば、組閣ありきの姿勢とも言えますが。

当時の世耕経産相は、11日の記者会見で、以下のように言っています。

実は去年の関西での停電も、かなり時間が復旧に掛かりました。ただ、そのときに、やはり復旧の見込みを示せなかったというのが、非常に消費者のフラストレーションにつながったわけであります。今回は、できる限り見込みを示していくということでやらせていただいています。ただ、あくまでも見込みですから、工事の現場に入ると、そこから更に遅れるようなケースは出てくる。こういったことはこれからもっと対応を改善していかなければいけないと思っております。

世耕経済産業大臣の臨時閣議後記者会見の概要 (METI/経済産業省)

どうも、去年の台風による関西での大停電で、復旧見込みが示されないことで批判されたことから、「できる限り見込みを示していくということ」でやったようですが、ご本人も認める通り、その見込みが大間違いだったことが問題です。このため、政府と自治体の対応の遅れを招きましたし、国民も、被災者を含めて、最初の発表で安心した人も多かったはずです。

今後必要なのは、東電だけが復旧見込みを発表するのではなく、ましてや経産省が内容はとりあえず早く見込みを示せとせかすことでもなく、政府全体と東電が連携して、両方の責任で被害状況を把握し、確実な範囲での復旧見込み等を発表することです。

実は、経済産業省は、そのようなシステムを作るべきだ、ということを、今年7月の省内の委員会で既に示していました。

2018年の北海道胆振東部地震を始めとした災害を受けて、経済産業省は去年、「電力レジリエンスワーキンググループを作って、報告をまとめていました。その報告にそって政府がどう対応しているかを、経済産業省は今年7月1日に、省内の「産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会」(本ブログでも9月11日に紹介)で、以下のように示していました。

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出所:経済産業省

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/pdf/020_02_00.pdf

被害把握と復旧見込み発表に係る対応は、上記スライドの赤枠でちょうど囲ってあります。

それによると、「経産省主導で」「関係省庁の連携による重要インフラに係る情報の共同管 理・見える化」をやるんだと言います。なんと頼もしい。具体的には、内閣府の「災害情報ハブ」に参加して、「電力会社が提供可能な情報と災害復旧時に必要となる情報を整理し、道路や通信等重要インフラ情報と 共に有効活用できるシステムの設計」を検討する、としていて、そのようなシステム整備について、もう来年度予算の概算要求にも盛り込んだ、と言います。

だとすると、今回の台風でも、経産省は当然、この方向で動くべきでした。

目指すシステムはまだ出来ていないとしても、大事なのは、関係省庁と電力会社とが連携して、電力会社の情報と復旧に必要な情報を整理し、適時に発表していくことです。経済産業省は、これからこうします、予算要求もしてますと言っていた方針を、そのわずか2か月半後に起きた台風被害で、ちゃんと生かすべきでした。

今後の話として言えば、上で示したような経産省のプランは、上のスライドにもある通り、内閣府の「災害情報ハブ」で生かされるべきです。災害情報ハブは、「国・地方公共団体、民間企業の各機関がそれぞれに持っている様々な情報を共有」することが目的で進められているので、経産省主導というより、内閣府主導で本来は進めるべきです。

国と地方・民間の「災害情報ハブ」推進チーム : 防災情報のページ - 内閣府

もちろん、災害情報ハブに参加はしつつ、停電ということなら所管官庁として特別重い責任を背負って他省庁より汗をかきます、という趣旨での「経産省主導」なら、その意気や良しです。

災害対策基本法に定められた「プッシュ型支援」も遅れた

政府対応の問題点はもう一つ、被災自治体から要請がない段階からのプッシュ型支援が遅かった、ということです。

これについては、本ブログでも書きましたが、9月26日に日経も書いています。地元市町村は当初、通信の途絶などで甚大な被害の把握に手間取っていたのに、国や県の出足も遅れて「プッシュ型」の支援の到着は4日後になった、というのが初動の課題だ、としています。

2012年の災害対策基本法改正で「プッシュ型」の支援が明記されました。

改正時の資料はこちらで、

https://www.cao.go.jp/houan/doc/180-8gaiyou.pdf#search=%27%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%AF%BE%E7%AD%96%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95+%E3%83%97%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E5%9E%8B%E6%94%AF%E6%8F%B4+2012%E5%B9%B4+%E6%94%B9%E6%AD%A3%27

現在の条文はこちらです。86条の16第2項で、「指定行政機関の長」、つまり、各省庁の大臣は、災害発生の際に自治体だけでは備蓄物資等が不足し、災害応急対策が十分行えず、自治体の要請等を待てない緊急のときは、「当該要請又は要求を待たないで、必要な物資又は資材の供給について 必要な措置を講ずることができる」としています。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=336AC0000000223#831

2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨や北海道地震でも国主導で活用された例を挙げ、今回も農林水産省はこれを行ったものの、鴨川市に同省からのパンが届いたのは被災4日後の13日、水などの飲料は翌14日だったようです。

日経から引用すると、

農水省食料産業局の担当者は「3日間は備蓄で対応してもらうのが基本的な考え方」と説明するが、別の担当者は「当初は東京電力が停電は早期に復旧するとの見通しを示したこともあり、長期化して支援が必要となる事態は想定しなかった」と話す。

www.nikkei.com

ということで、現行のルールでは、3日は我慢しろという杓子定規なものになっているようですが、これは撤廃すべきです。このルールの趣旨は、普段から備蓄をしておくのは自治体の責務であり、国が甘やかすと自治体が備蓄しない、ということでしょうが、自治体が備蓄をしておいたところで、今回のように、役所が被災して対応できない場合もあります。

また、今回の千葉県のように、備蓄していた非常用電源が、自治体のミスで有効活用されないような場合もあります。そんなことまで国が面倒を見るべきではない、と言うのも一つの見識ですが、もともとプッシュ型支援は、ある程度のミスマッチは覚悟の上で、緊急対応として国民を救うためのものなのだから、状況次第で、ためらわずに発災1日目からやるべきです。もちろん、ミスマッチを減らすために、ドローンや衛星で迅速に被害状況を出来るだけ迅速に、正確に把握することも必要です。ここも政府の出番です。

以上のように、国は、今後の大規模災害では、電力会社等と関係省庁が緊密に連携して、災害情報ハブ等を通じて、被害状況と復旧見込みについて正確なものだけを発信し、プッシュ型支援については、自治体の要請がない場合でも、状況次第で積極的に発災1日目から行うべきです。