日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

トランプとバイデン、ウクライナ疑惑で泥仕合。日本は、「ウォーレン大統領」に備える必要あり。

トランプ大統領が、ウクライナの大統領に同国への軍事支援の見返りにバイデン氏の息子の調査を依頼したとされ、米下院が弾劾調査の開始決定。実際には弾劾は議席数でも法的にも難しく、世論も反対。泥仕合で大統領選の民主党二番手ウォーレンが浮上する可能性があり、日本の政府も国民も「ウォーレン大統領」に備え、改革をすべきです。

「大統領の犯罪」は、トランプとバイデンの党派的争いへ

民主党ペロシ下院議長は9月24日、大統領に対する弾劾調査を開始すると発表しました。
トランプ氏が今年7月、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、同国への約4億ドルの支援を保留して脅しつつ、来年の大統領選でのライバルである民主党バイデン氏の息子について調査するよう、圧力をかけた、これは国家安全保障を損ね、米憲法に違反するとみられる、ということです。

米下院の6つの委員会で進行中のトランプ氏の調査は継続、各委員会は協力して作業を進め、その後、下院司法委員会による弾劾条項起草の是非を判断するようです。 民主党過半数を占める下院で仮に弾劾決議が可決されても、上院が弾劾裁判を経て3分の2の特別多数決で、罷免の適否を判断します。

米下院、トランプ氏の弾劾調査開始へ ウクライナ巡る疑惑で - ロイター

ウォールストリート・ジャーナルによると、弾劾には民主党へのリスク(クリントン政権時の弾劾を主導したギングリッチ氏は自分の方が辞めることになりました)もあるから、ペロシ下院議長はずっと慎重だったけれど、ウクライナへの軍事支援を遅らせる措置をとったという新たな情報が出て、民主党の穏健派議員も弾劾すべきと言い出し、最終的に折れた格好のようです。

トランプ氏がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、捜査に踏み切るよう再三圧力をかけていました。一方、バイデン氏はオバマ政権での副大統領時代、ウクライナの指導者らに対し、汚職撲滅に積極的でないと見なされていた同国検事総長の解任を要求しましたが、この検事総長は、バイデン氏の息子が役員を務めていたウクライナ企業を捜査していた可能性もあります。もっとも、ウクライナの当局者は今年、バイデン父子が不正行為を行った証拠は何もないと述べています。

jp.wsj.com

これに関する9月19~23日のキニピアック大学の世論調査では、トランプが弾劾されて罷免されるべきと答えた有権者は37%、弾劾に反対な有権者は57%ということです。先月のモンマス大学の調査も同様で、弾劾に反対35%、賛成59%です。

thehill.com

一方、議員への信頼について、過去1年間で、共和党より民主党支持者の方が高くなっているという調査もあります。ペロシ議長が弾劾調査開始を発表する直前のギャラップ社の調査によると、民主党支持者は45%が議会を信頼していると答え(1年前から12%アップ)、共和党支持者は33%が信頼できると答えています(1年前から13%ダウン)。実際に大統領を罷免できなくても、去年の中間選挙民主党が下院で勝利したこともあり、民主党議員達には、リスクを取って弾劾した方が有利な状況なのでしょう。

thehill.com

では、法的に見て、今回の弾劾は成立しうるものなのでしょうか?今回問題になっているのは、収賄罪で弾劾となるかどうかです。

大統領の弾劾については、合衆国憲法の第2章「執行部」の第4条に出ています。

大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪につき 弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれる。

The President, Vice President and all civil Officers of the United States, shall be removed from Office on Impeachment for, and Conviction of, Treason, Bribery, or other high Crimes and Misdemeanors.

https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2566/

Constitution for the United States - We the People

そして、収賄罪の成立に必要な「見返り」(quid pro quo)がこのケースであったかどうか、が問題になります。ミシガン大学ロースクールのリー・リットマン准教授は、軍事支援がウクライナにとって、政敵への捜査がトランプにとって見返りで、これまでトランプ氏にかけられた嫌疑の中では、一番弾劾が成立しやすい、としています。

www.nbcnews.com

ただ、ジョージ・ワシントン大学の教授でクリントン政権での弾劾にも関わったジョナサン・ターレー氏によると、トランプのゼレンスキー大統領への電話内容は、不適切だが犯罪とまでは言えない、ということです。

ターレー氏によると、電話記録は、トランプがゼレンスキー氏に「便宜」を図ると述べてバイデン追及を促している様子を示していますが、弾劾をする際に必要な「見返り」の証拠がない、トランプは捜査と4億ドルの軍事支援を結び付けていない、ということです。 たとえ政敵に対するものであっても、アメリカの大統領が腐敗の調査がないことに不満を伝えること自体は全く違法ではないからです。

それどころか、トランプが、欧州諸国はウクライナをもっと支援すべきだと主張して、ゼレンスキー氏も承諾している部分など、トランプに有利に働く部分もあると言います。

ということで、電話記録では弾劾は難しそうですが、会話を実際に聞いた人から別の証言が出れば別で、最近クビになったボルトン氏がウクライナへの軍事支援凍結を批判していたので、彼からの証言でもあれば、捜査に見返りを与えた、と言うことになる可能性はあります。ただ、その場合でも、賄賂罪での最近の最高裁判決等を見ると、職務行為(official act)の要件はかなり狭く解されるようで、立証はそう簡単ではないようです。

A bad Supreme Court decision on political corruption casts a long shadow - Los Angeles Times

もし、見返りをはっきり立証できなかったら、共和党が支配する上院での弾劾手続きはオバマ政権時代にあったことへの反撃が始まって、「グロテスク」になりうる、としています。

thehill.com

弾劾は、法的にも難しそうなうえ、上院では否決されるだけでなく、トランプと共和党の政治ショーになりそうです。

トランプの疑惑がたとえ真実だとしても、はっきり言って、どっちもどっちです。ワシントン・ポストのコラムニストのマーク・ティーセンは、民主党ウクライナ疑惑についてダブル・スタンダードだ、と批判しています。

www.washingtonpost.com

今年5月、民主党上院議員3人が、ウクライナ検事総長に対して、トランプのロシア疑惑捜査の終結に懸念を示し、アメリカからの援助を示唆した件を、CNNが報じていたことを指摘しています。

edition.cnn.com

 

バイデンも、副大統領時代の2106年、検事総長をクビにしなければ10億ドルの融資を保留すると言ったこと、当時バイデン氏の息子がウクライナのエネルギー会社の役員で捜査の可能性もあったこと等につき、ニューヨーク・タイムズワシントン・ポストの報道をあらためて挙げています。

www.nytimes.com

In Hunter Biden’s career from Ukraine to China, his father is often nearby - The Washington Post

アメリカの外の日本から冷めた目で見れば、世界帝国アメリカの政治家達は、世界中のあらゆる国に対して、自分達の政治的利益のために圧力をかけていて、要は国内の権力闘争を世界レベルでやっているだけ、ではないでしょうか。アメリカ世論も案外冷めているから弾劾には反対意見の方が多く、リベラル系の新聞でも、弾劾に反対の意見も目につきます。

 漁夫の利を得るウォーレン、日本はどう備えるべきか

ウクライナ問題は国際政治の問題に見えるものの、実態はまるっきりアメリカ内部の権力闘争で、政界の古株でしがらみだらけのバイデンと、民間ビジネスと公務の区別もつかないトランプの間で争われています。議会が何もかもほったらかしで弾劾調査という泥仕合を続ければ、おのずと二番手のウォーレンが浮上してきます。

ウォーレンは、トランプ自身をも厳しく批判していますが、彼女が要求しているのはそれ以上で、要はアメリカ式の回転ドア天下りも「天上がり」もありで、それが繰り返される)も、ロビイストのあり方も変えてしまおう、というものです。具体的には、大統領、副大統領、議員、連邦判事、閣僚は生涯ロビイングを禁止し、連邦政府職員や議会スタッフは2年間ロビイング禁止、企業のロビイストになるのは6年間禁止、議員等が企業役員になるのも禁止等々、日本の基準で考えても、そこまで言うかというくらい厳しいものです。

これは、しょぼいロシア疑惑ウクライナ疑惑等より、トランプ陣営や共和党、一部民主党に対しても、はるかに破壊力があり、アメリカ国民への訴求力も強いでしょう。アメリカの政治不信は深刻なレベルだからです。

Elizabeth Warren unveils radical anti-corruption legislation | Elizabeth Warren for Massachusetts

アメリカの政治不信を示しているのが、先月のNBCとウォールストリート・ジャーナルの世論調査です。70%の人が現在の政治システムに不満で、政治エリートばかり優遇されていると感じています。ザ・ヒルは、この結果は、もともと政界にいたバイデンにも、政治エリートに挑戦したけれども政治腐敗が更にひどいトランプにも不利だとしています。

今回のウクライナ疑惑で、下院では民主党主導でさんざんトランプ叩きを続けることになり、上院では一転して、さんざんバイデン叩きを続けることになります。有権者は両方にうんざりするに決まっています。

thehill.com

民主党予備選での支持率調査でも、ウォーレンがバイデンを捉え始めました。全国調査では、まだバイデン圧倒的リードというものもあるようですが、9月25日発表のキニピアック大学の調査では、誤差の範囲内ながら、バイデンとウォーレンどちらが好きかについて、民主党支持者等で27%がウォーレン、25%がバイデンと答えています。更に、党大会が最初の頃に開かれる州のアイオワやニュー・ハンプシャーでの調査で、ウォーレンが同様に追いついていて、こちらの方が実際の選挙結果には影響するとも言われています。

Warren passes Biden in new nationwide poll - POLITICO

National (US) Poll - September 25, 2019 - Warren Continues To Climb Whil | Quinnipiac University Connecticut

Biden nosedives in early-state polls - POLITICO

というわけで、日本はウォーレン大統領誕生に備えましょう。ただ、「備える」と言っても、何をすれば良いでしょうか?今日は政治倫理の点についてだけ挙げます。

まず、外国からのロビイングが禁止される可能性があります。そうならなくとも、ウォーレン案が広がれば、風当たりは強くなるでしょう。トヨタを始め大企業は、アメリカ政界への影響をワシントンのロビイストを通じて行使することを見直すべきです。外交交渉への意見表明は、アメリカのロビイスト等を通じた不透明なルートで行うのではなく、日本国内で、日本国民に見える形で政府に対して行うべきです。

 そして何より、日本の国内政治でも、維新等が主張してきたように、企業・団体献金の禁止に踏み切るべきです。これまで、維新やみんなの党が言ってきても、なかなか現実味が感じられない改革案だったのは確かですが、あのアメリカで、驚天動地の厳しい政治改革が実現する可能性があることを重く受け止めるべきです。

もちろん、官僚の天下り規制の見直しも避けられません。特定の行為ベースで規制するだけのザル法を、関連業界への再就職自体を禁止する方向で変えるべきです。

来年の大統領選の行方はまだ分からないものの、ウォーレンのような考え方がアメリカで広い支持を集め、政治的な力になる状況は、誰が大統領になっても変わらないでしょう。

ウォーレンは、「経済的愛国主義」を掲げ、中国等を念頭に、アメリカと貿易をするなら、ILOが定める厳しい労働基準を守ることを諸外国に要求しようとしています。同様に、政治倫理、政治文化についても、根本的な変革を迫ってくる可能性はあるでしょう。

予想される「外圧」などが来る前に、日本国民のためになる大改革を、日本人の手で実現するべきです。