日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

韓国は「2080年に原発ゼロ」の脱原発政策:日韓原子力協定、韓国が更新拒否したら、日本は承諾すべき。

韓国は国内で脱原発・脱石炭を進める一方、原発輸出は行っています。来年に有効期限を迎える日韓原子力協定は、韓国が脱原発のために更新を拒否したら、日本は承諾すべきです。

悪化する日韓関係、大人の知恵が出てきたか

 一時は泥沼化のように見えた日韓関係、落としどころをさぐる動きについての報道も出てきました。

日経は、韓国人徴用工問題につき、『「最後の落としどころはこれしかない」と双方の外交当局者や専門家が声をひそめて語る案』として、こんな案を紹介しています。

日韓双方で浮上している「2+1」案は、韓国政府と韓国企業が拠出し合う基金や財団をつくる。そのうえで裁判で訴えられた日本企業にも自発的な参加を求める構想だ。

韓国政府が主体となり責任を明確にすれば請求権協定には反しない。他方、日本企業に参加を求めつつ義務づけないことで協定と大法院判決それぞれに目配りする、という触れ込みだ。韓国内では、日本からの資金を元手に発展した鉄鋼やインフラ関係の企業からどの程度の資金が集まるかのシミュレーションがつくられている。

www.nikkei.com

要は、日韓請求権協定にも、韓国大法院判決にも配慮した案で、本ブログで以前に紹介した、橋下徹氏や田中均氏の主張する案に近いものです。

日韓、アメリカに怒られて少し冷静に?橋下徹氏と田中均氏が示す落としどころで妥協せよ。 - 日本の改革

こうした案が出てきて、日韓両国の当局者が認識を共有しているのは大変ありがたいことです。国連総会出席のためにニューヨークに行っている茂木外相は、韓国の康京和外相との初顔合わせで、こうした案での合意に向けて、まずは信頼関係を作ってほしいものです。

茂木外相、米韓ロ外相らと初会談へ 国連総会に出発 :日本経済新聞

日韓原子力協定、日本から更新拒否を言い出す必要はない

一方、全面的な対立になりかけた日韓関係で、次に懸念されるのは、日韓原子力協定だ、とFACTAが10月号で書いています。

この協定は、2010年当時、原発を積極的に増設していた韓国に対し、原子力の平和利用に限る形で、日本の原子力資機材や技術の移転を認めたものです。

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出所:外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/shomei_67gai.pdf

外務省: 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の協定

FACTAは、2010年に締結したこの協定は、韓国が日本から輸入する資機材などについて再処理・濃縮への転用が可能な余地が大きすぎる、としています。同誌は、自国での核燃料再処理・濃縮が韓国の悲願だとして、2015年の米韓原子力協定で、韓国が使用済み核燃料再処理の一部工程を米国の個別同意なく実施できるようになり、将来の20%未満のウラン濃縮も一部可能になったから、もう韓国は、日韓原子力協定は不要だろう、と見ています。更に、2000年に韓国の政府系研究機関が国際原子力機関IAEA)に申告せず、日本から入手したレーザー技術で核兵器レベルに近い高濃縮度にを達成したことも取り上げて、日本にとっても日韓原子力協定は不要だ、としています。

そして、文政権の出方をこう見ています。

日本が文在寅政権は「日本が協定を破棄した」とぶち上げて反日ナショナリズムを煽り立てるだろう。逆に韓国側が用済みとなった協定の更新を拒否する時には「韓国の原子力産業を制約する日韓原子力協定を破棄し、自由を取り戻した」とアピールするはずだ。

facta.co.jp

日韓原子力協定について、FACTAは、脱原発の団体、原子力資料情報室の指摘を引用し、ヨルダンとの原子力協定と比べて、日韓協定では、書面による事前の同意があれば濃縮も再処理も可能となっていて、核拡散防止の上で問題だ、としています。

日韓原子力協力協定について | 原子力資料情報室(CNIC)

 2010年に締結した日韓原子力協定の期限は10年、来年で期限切れですが、どちらかが何か言わなければ自動更新になります。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/shomei_67.pdf

日本はどうすればいいでしょうか?結論から言えば、日本からは更新拒否は言い出さず、韓国が脱原発政策を目的に更新を拒否してきたら、日本は承諾すべきです。

まず、FACTAの記事についてですが、韓国が日本の書面での同意なく濃縮をしていたら、それは協定違反です。現状では、そのような証拠がないので、日本政府もこの協定について何も言っていません。2000年にIAEAに申告せずに濃縮を行ったことを問題視していますが、それを知ったうえで2010年に協定を結んでいるのですから、今さら持ち出すのはおかしな話です。その後、徴用工判決を機に信用できなくなった云々は最近の話で、冒頭に書いた通り、それは解決に向けた動きが出てきています。

私は、日本も国際社会も脱原発を進めるべきであり、核兵器技術の拡散防止を徹底すべきだと考えています。このため、日本が新規の原子力協定を他国と結ぶことには反対です。

しかし、既に締結した原子力協定については、国際的な約束ですから、日本からすぐに更新拒否などはすべきではありません。もちろん、当該国が平和利用以外の意図を持っていることが明らかになって協定違反のおそれが高まれば別ですが、現在の韓国については、そのような動きは現状では確認されていません。

以上を見れば、日本からあえて協定の更新を拒否する理由はありません。対中、対北朝鮮の安全保障上の協力のため、日韓は国同士の約束はお互い守るべきですし、それが危うくなった徴用工判決問題の解決も早急に図るべきです。

脱原発を進める韓国が日韓原子力協定の更新拒否するなら、承諾すべき

一方、韓国が更新拒否を言ってきた場合、それが脱原発政策を進めるためのものならば、日本は承諾すべきです。

現在、文在寅政権は、エネルギー政策について、脱原発・脱石炭政策を進めています。

2017年6月、文政権は、原子力発電所の依存度を減らし、温暖化ガス排出量が少ない天然ガス再生可能エネルギーによる発電を柱にする方針を表明しました。もともと、韓国は国策で安価な電気料金で国内企業の国際競争力を強化してきて、原発を推進してきました。原子力発電所の数は世界6位、今では技術力も高くなって積極的に輸出を行って日本の原子力産業のライバルにもなり、原発依存度も3割を超えていた「原発大国」だったのに、180度逆の大転換を図りました。

象徴的だったのは、文大統領が、釜山市郊外の古里原発1号機の運転停止の記念式典で脱原発を宣言したことです。この発電所は、朴正煕大統領が、1971年から78年までかけて、当時の国家最大のプロジェクトとして建設したものです。

その発電所を停止する式典で、文大統領は、東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故で「原発が安全でもなく、安くもないことが明白になった」と発言しました。

つまり、文大統領は、原発政策に限って言えば、小泉純一郎元総理と全く同じ認識なのです。

韓国の新大統領:脱原子力政策への転換を宣言 | 一般社団法人 日本原子力産業協会

韓国の脱原発、日本のLNG調達に影響も :日本経済新聞

https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2018/08/korea_data180807.pdf#search=%27%E6%97%A5%E9%9F%93%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%8D%94%E5%AE%9A+%E5%8E%9F%E7%99%BA%E8%BC%B8%E5%87%BA%27

この方針は今年2019年になっても、もちろん変わっていません。

韓国の脱原発政策の大きな特徴は、電力会社が全て国有の電力公社のため、政府が脱原発だと言えば、電力会社(公社)も右向け右で同じことを言っていることです。今年2月、韓国電力会社が赤字に転落したときも、同公社は「脱原発は赤字の主因ではない」と強調、赤字転落を巡る批判の矛先が文政権の脱原発政策に向かうのを避ける姿勢を見せました。

韓国電力公社、赤字転落 18年通期 :日本経済新聞

この方針を韓国の国民は強く支持しています。

韓国の民間シンクタンク現代経済研究院が、2018年6月に行った世論調査では、文政権の「脱原発・脱石炭エネルギー転換」に対し、韓国国民の実に84.6%が支持しているという調査結果が出ました。国民は、エネルギー転換にともなう追加費用として1人当たり月1万5013ウォン(約1500円)を追加で支払う意思があるということも分かりました。

japan.hani.co.kr

以上のように、国民にも支持され、政策としても正しい脱原発政策を韓国は進めています。日本のように、ことあるごとに電力会社が脱原発の邪魔をするという状況でもありません。日本は、韓国政府が脱原発政策を進めるために日韓原子力協定がかえって妨げになると言うなら、日本はそれを理解し、韓国の脱原発を支援するため、協定の更新拒否にも応じるべきです。

韓国の脱原発というのは、最終的にはどんなゴールを目指しているのでしょう。

立命館大学国際関係学部でエネルギー・原子力政策等を専門分野とする林恩廷(イム・ウンジョン)助教によると、2017年12月の「第8次電力需給基本計画」で、6基の建設計画が白紙化され、稼働中の古い原子炉10基は運転認可の更新を行わない方針となっており、長期目標では、2080年には原子力設備がゼロになる、とのことです。

林氏は一方で、文政権の脱原子力政策は、今後継承されない可能性がある、としています。韓国国内でもすでに反発の声や懐疑的な意見が強まっているから、ということです。

エネ研セミナー:「韓国・文政権の脱原子力政策、継承されない可能性も」 | 一般社団法人 日本原子力産業協会

林氏のように、文政権の脱原発政策に対して、批判的な意見ももちろんあります。国内で脱原発を言いつつ、原発輸出を相変わらず行っているのはおかしい、との批判もあります。上にリンクを貼った日本原子力産業協会の資料もそのようなスタンスを示しています。

ただ、韓国世論について言えば、林氏が上記の見方を示したのは2019年6月で、現代経済研究院の世論調査のちょうど1年後です。果たして84%の賛成が、1年間で反対多数に転じたかどうか、更に調べたいと思いますが、おそらくそこまでの変化はないのではないか、と思います。

アジアで脱原発に転じたのは、韓国だけではありません。6基の原発を有する台湾も、2025年までの全原発の運転停止を決めました。脱原発は「反日」政策でも何でもありません。

2010年に締結された日韓原子力協定は、東日本大震災前に出来たものです。あれから震災の経験を踏まえて、文政権への政権交代により、韓国が脱原発政策への大転換を選択した以上、韓国の脱原発に資する方向でなら、日本は更新拒否に応じるべきです。