日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ドイツ政府が6兆4200億円の気候変動対策でも不十分だと批判される中、経団連は欧州の10分の1未満の温暖化対策税廃止を要求。

ドイツ連立政権が気候変動対策に6兆4200億円相当のパッケージを決定、カーボン・プライシングで温暖化対策の補助金等を出しますが、それでも不十分だと批判されています。その1週間前、日本の経団連は、欧州諸国の10分の1未満の温暖化対策税にさえ反対する税制要望を出しました。周回遅れの日本は、経団連の圧力に負けず、温対税を一気に引き上げるべきです。

ドイツの気候変動対策、制度は良くても額が不十分

ドイツのメルケル連立政権は20日、約540億ユーロ(約6兆4200億円)規模の気候変動対策で合意しました。輸送セクターに対して二酸化炭素の排出量に応じて課金するカーボン・プライシングを行うほか、環境に配慮した技術にインセンティブを与えます。来週にニューヨークで開かれる国連総会で発表予定です。与党であるCDU、SPDCSUの間で、16時間を超える議論でようやく合意しました。

www.bloomberg.co.jp

ニューヨーク・タイムズによると、中身は以下のようです。

まず、目標です。2020年までに温室効果ガス排出を40%減らす(1990年比)という当初目標が達成できないので仕切り直し、2030年までに55%減らす(1990年比)という新目標を設定し、目標達成に向けた進捗につき、政府を監視する委員会を設置します。

そこで、2021年から、自動車産業等の輸送セクターに対し、CO2の1トンの排出につき、10ユーロ課金し、2025年までにこれを35ユーロまで増やし、排出権取引も行います。消費者はガス価格の上昇で不利益を被るので、通勤のための税額控除を導入します。

エネルギー効率の良い暖房機器には補助金を支出し、石油等を使った暖房は2025年までに禁止します。飛行機のチケットへの課税を増やし、鉄道へのサーチャージは減らします。

www.nytimes.com

(他にも、電気料金引き下げ等、色々ありますが、後日まとめて紹介します<(_ _)>)

Klimapaket im Check: So bewertet ein Experte die einzelnen Maßnahmen | STERN.de

しかし、この決定、国債なしでせっかく6兆円超も予算を用意したのに、ドイツでは叩かれまくっているようです。導入された政策手法には賛成でも、とにかく規模が全く足りない、特に、カーボン・プライシングが不十分だ、ということです。

そもそも、この合意が、与党内でもめた末に合意にこぎつけたのは、ニューヨークの国連総会に間に合わせるためでもあったでしょうが、先週金曜日に世界中で行われた未成年が温暖化対策を求める抗議活動、Fridays For Futureの圧力も指摘されています。ドイツ国内でも500を超える都市でデモが行われました。

このデモ参加者含め、今回の決定を批判する人達はツイッター上で、ハッシュタグ #NotMyKlimapaketで、この(ドイツ連立政権与党内の)合意を批判しています。

twitter.com

ポツダム大学のラームシュトーフ教授のツイートが、彼等によってよくリツイートされていますが、それによると、政府はCO2の1トンについて10ユーロから35ユーロまで増やす予定だが、50ユーロから始めて最低でも70ユーロまで上げるべき、としています。

 (ラームシュトーフ教授のウェブサイトはこちらです)

Home Page Stefan Rahmstorf

野党の緑の党は、もちろん政府の決定を批判しています。これでは、パリ協定の義務も守れない、としています。

www.gruene.de

シュテルン誌は、ドイツ内外のメディアの反応をまとめたうえで、予算額が多い割に、個々の対策は全然足りない、という評価をしています。

www.stern.de

 というわけで批判が目につきますが、やはりドイツでも、産業界の反対が強かったために、カーボン・プライシングの水準が低くなった、と言われています。

人気はいまひとつでも、当面はこの政策が実行されることになります。世論調査では、2021年までは今の連立政権が続くと予想する人が7割にのぼっており、これを理由に政権の枠組みがすぐ変わることもなさそうです。ただ、与党CDUの支持率が28%、SPDの支持率が15%なのに対し、緑の党の支持率は24%にのぼっています。今回の気候変動対策は、今後、更に内容が厳しくなることはあっても、より緩くなることはないでしょう。

ドイツ連立政権、2021年の任期まで続くと大半が予想=調査 - ロイター

日本の経団連は、国際標準10分の1の温暖化対策税をゼロにしろと言う

ひるがえって、日本はどうでしょうか。

以前、本ブログでは、環境税が炭素税導入を来年度税制改正要望に入れる可能性があり、経済産業省は反対しているものの、財務省はOKする可能性もある現状について書きました。

環境省が炭素税の導入を来年度税制改正要望に?炭素税をEU並みにすれば、税収で消費税を1%下げられる! - 日本の改革

先週金曜日の9月20日、世界中でFridays For Futureのデモが行われ、ドイツで気候変動対策が決まるちょうど1週間ほど前、日本の経団連が、来年度税制改正要望を発表しました。そこでは、炭素税に反対なのはもちろん、温暖化対策税についても批判し、「課税の廃止を含めて抜本的に見直すべき」、つまり、廃止しろ、と言っています。

経団連:令和2年度税制改正に関する提言 (2019-09-17)

以前、本ブログで紹介した通り、日本の温暖化対策税は、ヨーロッパ各国の炭素税の10分の1未満の税率で、ほぼ何もしていないに等しいものです。それさえやめろ、と言っているうえに、新たな炭素税等の導入については、「税制上具体的な議論を始める段階に」ない、つまり、議論さえ絶対するな、と言っています。

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https://www.env.go.jp/policy/policy/tax/mat-4.pdf#search=%27%E8%AB%B8%E5%A4%96%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%82%AD%E7%B4%A0%E7%A8%8E%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%B0%8E%E5%85%A5%E7%8A%B6%E6%B3%81%27

環境省が炭素税の導入を来年度税制改正要望に?炭素税をEU並みにすれば、税収で消費税を1%下げられる! - 日本の改革

 炭素税が導入されるか否か、導入したとして、どの程度の水準になるかは、来年度税制改正の焦点の一つです。

私は、当面、温暖化対策税を10~20倍にしてはどうかと思います。現在はCO2排出量1トン当たり289円に等しくなるよう、化石燃料の種類ごとに課税されていますが、これを、1トン当たり3000円から6000円くらいにすれば、欧州諸国や、ドイツで望ましいと言われている水準に近くなります。最初の年度は3000円から始めて、徐々に6000円まで上げる形が良いでしょう。先に紹介したラームシュトーフ教授の試算では6000円から8400円に上げるということだから、これでも少なすぎるくらいですし、上の表の欧州諸国では、2500円から15000円くらいです。

環境省_地球温暖化対策のための税の導入

使途については、ドイツでは補助金に使いますが、日本では、以前も書いた通り、一番ふさわしいのは、消費税減税です。来月10%に上がりますし、消費税は逆進性が高く、確実に経済にダメージを与えます。この効果を減殺するための炭素税、その目的は温暖化防止なら、国民の理解も得やすいはずです。

小泉環境大臣には、是非そのような形での炭素税と社会的配当の実現に向け、リーダーシップを発揮していただきたいと思います。