日本の改革

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千葉県知事、初動対応の誤り認める。災害救助法の適用基準は一般条項を使って、迅速な対応を!

台風による千葉県の被害が長期化。千葉県知事も、初動対応の誤りを認めました。災害救助法は、一般条項で迅速に適用すべきです。地球温暖化で台風被害が広域化、深刻化する中、都道府県も国も、プッシュ型の災害対応が必要です。

初動の誤りを認めた千葉県

大規模な停電や断水が続く千葉県。案の定、森田健作知事が「対応が遅い」と叩かれています。森田知事も12日の定例記者会見で情報収集などの遅れを認めました。厳しめなトーンのzakzakから引用します。

ただ、情報収集や停電が続く自治体への職員派遣の遅れも指摘されている。
 県側は、被害状況については市町村から県へ防災情報システムを利用して報告するルールだと説明。しかし、電波や電力の状況、各市町村の多忙さから「被害の状況を報告していただくタイミングが遅れたところはあった」(危機管理課担当者)とした。

森田知事は「市町村では報告が遅れているところもあるので、県の職員を出そうと思っている」と語った。これが停電から4日目の発言だ。
 報道陣からは「県が情報を収集し、支援を行っていくことが必要ではなかったか」と問われると、森田知事は「大きな反省材料としてやっていかなければいけない」と対策の遅れを認めた。

www.zakzak.co.jp

令和元年度 令和元年9月12日知事定例記者会見/千葉県

9日に上陸して昼頃には千葉県を通過した台風について、翌10日になって自衛隊災害派遣要請をしたのは遅いのではないか、と私も本ブログで書きましたが、知事自身が、対応全般の遅れを認めた形です。今回、数十年ぶりの、と言うより、前例のないような台風だと言うのは繰り返し報道されていましたし、東電管内では93万戸が停電しました。十分予想されていた大規模な広域災害で、被害状況把握に市町村の報告待ちだった、と言うのは、やはり問題です。

ただ、今回、公益企業たる電力会社と鉄道会社にも、大いに問題がありました。特に東電の迷走ぶりは、本当にひどいものでした。発災後の対応については、千葉県も振り回された面があったと思います。日経から引用します。

同社は10日の時点で、停電は11日朝までに約12万戸に縮小し「11日中に全面復旧する」との見通しを発表した。だが11日になり千葉市などの復旧は12日中で、全面復旧は「13日以降」と修正。さらに13日夜には「今後、2週間以内におおむね復旧見込み」と改めた。
同社の塩川和幸技監は13日夜の記者会見で「経験したことのない規模で倒木や設備損壊が発生した。台風の規模が今まで以上に大きかったことを考慮せず、過小な想定をしてしまった」などと釈明した。
昨年9月に関西地方を襲った台風21号では延べ220万戸が停電したが、関西電力の停電情報システムが閲覧できなくなり、復旧時間の見通しを示せず混乱が生じた。被害の把握にも手間取り、停電の全面復旧まで2週間以上かかった。
これを教訓に各電力会社は停電の早期復旧と迅速な情報発信などの対策を進めたが、今回は楽観的な見通しを迅速に発信してしまった。地元自治体からは「楽観的な見通しの発表は被災者のためにはならない」「見通しとかけ離れたことは大変遺憾」との厳しい意見が上がった。

JR東日本の対応も問題です。計画運休は午前8時までという中途半端なやり方で、結局10時過ぎまではかかり、その後もダイヤは乱れていました。通勤・通学を止めさせない企業や学校もたいがいですが、やはり鉄道会社がもっと長めの計画運休をするべきでした。

東電・JRが陥った「楽観主義バイアス」、台風被害の甘い見通し :日本経済新聞

日経は、東電とJR東日本の対応につき、「楽観主義バイアス」のせいだと批判しています。こうした事業者の情報・対応に責任の一端はもちろんありますが、一方で、千葉県等の行政自身も、「楽観主義バイアス」があったと見られます。

災害救助法の適用基準には一般条項がある

千葉県の対応については、災害救助法の適用の遅れも指摘されています。

千葉県は、9月12日に、災害救助法の適用を決定、公表しました。ウェブサイトでは、適用条文は、同法施行令第1条第1項第4号だ、としています。4号には、「多数の者が生命又は身体に危害を受け、又は受けるおそれが生じた場合であって、内閣府令で定める基準(災害が発生し、又は発生するおそれのある地域に所在する多数の者が、避難して継続的に救助を必要とすること)に該当すること」とあります。

この法律の法的効果は、避難所の設置、食料等の配布の経費について、国と県が負担することなので、被災者にとっては大変重要な制度です。

令和元年台風第15号の影響による停電に伴う災害救助法の適用について/千葉県

http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo2-2.pdf

一応、9月9日まで遡って適用となりますが、それでも、避難所設置や食料等の配布が遅れたのは確かです。昨日13日、今日14日はいくらか涼しいようですが、一昨日12日までの数日間は最高気温35度を超えるような酷暑。一日の遅れが文字通り命取りで、死者も出ています。こちらも、遅くとも災害対策本部の設置された9月10日には行うべきでした。

この法律、千葉県の発表を見れば分かる通り、適用基準は、実は極めて緩いものです。

災害救助法で適用基準を定めているのは同法2条とそれを具体化している同法施行令の第1条です。施行令1条の1号から4号までのいずれかに該当すれば、法律を適用して、避難所や食料配布を国と都道府県が負担できます。

その1号から3号までは、やたら細かく住家被害での基準を定めていますが、これは市町村が時間をかけて十分対応できるときに、判断を客観的に出来るようにするためのものです。今回のような、全県にわたる大規模停電・断水や、市町村の役所自体が停電・断水で機能しがたいときには、全然向いていません。

そこで災害救助法施行令1条1項4号で、「多数の者が生命又は身体に危害を受け又は受けるおそれが生じた場合であって、内閣府令で定め る基準に該当するとき」に適用できる、としています。

やたら細かい1~3号と、一般条項で首長の判断ですぐ決められる4号と、どちらを優先すべきかについては、内閣府防災担当の資料にはっきりと、「法の目的である「被災者の保護」と「社会の秩序の保全」のためには、何よりも迅速な法適用が必要であり、迅速な法適用判断が可能な4号基準による適用を積極的に進めるべき」と書かれています。

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出所:内閣府防災(被災者行政担当)

http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo1-1.pdf

http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo2-2.pdf

4号には内閣府令が準用されているので、そちらも一応見ておくと、こうあります。

第二条 令第一条第一項第四号に規定する内閣府令で定める基準は、次の各号のいずれかに該当することとする。

一 災害が発生し、又は発生するおそれのある地域に所在する多数の者が、避難して継続的に救助を必要とすること。

二 被災者に対する食品若しくは生活必需品の給与等について特殊の補給方法を必要とし、又は被災者の救出について特殊の技術を必要とすること

http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo2-4.pdf

一番目は概括的な規定だし、二番目については、今回は、食品等の「特殊の供給方法」は必要ですよね、自衛隊に支援要請してるんですから。

つまり、災害救助法を適用するかしないかは、今回のような大災害では、知事の判断次第なのです。

こうした制度もあることから、この法律の基本原則として、内閣府は「職権救助の原則」を挙げています。この法律は、災害対策の法体系の中では一番最初の応急救助を行うものですから、被災者の申請を待つことなく、都道府県知事が救助を行うべきだ、という原則です。

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内閣府防災(被災者行政担当)

http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo1-1.pdf

千葉県の今回の対応は、この職権救助の原則に反して、災害救助法の適用が遅れた、と言わざるを得ません。

なお、今回の千葉県での停電は93万戸にのぼりましたが、昨年の台風21号で、大阪府ではそれを上回る220万戸が停電し、停電の全面復旧まで2週間以上かかりました。この災害で、なぜ災害救助法が適用されなかったのか、疑問に思います。

広域で大規模な災害の支援は、プッシュ型で!

地球温暖化の進行で、今後ますます、風水害の甚大化、広域化が予想されます。市町村で対応が難しい場合が増えるでしょうし、これからは、広域自治体や国が「職権救助」で、言わば「プッシュ型」で被災者支援を行うべき場合が増えるでしょう。

現行の災害救助法でも、十分に迅速・柔軟な判断を知事レベルで行えるので、気象情報で広域被害が予想される場合は、都道府県はもちろん、国も積極的にプッシュ型支援を行うべきです。

国の「プッシュ型支援」という言葉は、ふつう、国交省の「支援型物資供給の手引き」で取り上げられているように、いわゆるロジスティクスに関する現場のマニュアル的な場面で使われますが(マニュアルは下のリンクです)、

https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk111-1-3.pdf#search=%27%E5%9B%BD%E4%BA%A4%E7%9C%81+%E3%83%97%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E5%9E%8B%E6%94%AF%E6%8F%B4+%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%27

必要な場合には、被災地の要請を待たずに「職権救助」、「プッシュ型支援」という理念や姿勢は、政府の対応全般で生かされるべきです。

去年の西日本豪雨に関する「非常災害対策本部会議」で、安倍総理は、被災地からの要請を待たずに食料やエアコン、仮設トイレなどの物資を送る「プッシュ型支援」を強化するよう指示し、リーダーシップを発揮しています。

これに対して今回、組閣と重なったとはいえ、政府にやれることもあったのに、全くその姿が見えなかったことはやはり問題です。

www.sankei.com

 また、今後の中長期的な課題として、今朝の日経は、「大規模停電を引き起こした台風15号は生活インフラが抱える災害リスクを浮き彫りにした」としています。1970年代に整備が進んだ送電施設は更新時期が迫っており、巨額投資によりインフラをどこまで維持するか、「重い判断が迫られる」としています。

www.nikkei.com

人口減少時代に従来のインフラを巨額の税金でどの程度更新すべきだろうか・・・と考え始めるとそれは「重く」なりますし、暗くもなってしまいます。なるべく、軽く、というか、明るい未来が見えるように考えたいものです。

まず、緊急時対応については、自治体、企業、家庭で非常用電源で対応できるようにすべきです。

たとえば東京都では去年、都議会で都民ファーストの増子幹事長が、北海道胆振東部地震で大規模な停電が発生したことを踏まえて、区市町村が庁舎に非常用電源を備える時に、東京都が支援するよう、東京都に求めました。これに対し、小池知事は、区市町村への支援について、少なくとも72時間の非常用電源を確保するための方策について、予算措置をしていく旨を答弁、その後実現しています。

s.mxtv.jp

より中長期的には、本ブログで以前書いたように、地産地消の小規模発電を増やし、それを蓄電して融通し合える、仮想取引所(VPP)を導入すべきです。再生可能エネルギーの余剰電力を地域で蓄電し、需要に応じて供給する仕組みで、普段の電力もこれで賄えるようにして、巨大な鉄塔など出来るだけ不要にしていくべきです。

www.nikkei.com

台風で停電長期化の東電と千葉県・各市は、政府が求めていた倒木撤去の協定を結んでいたのか - 日本の改革

 大きな自然災害のたびに、同じように停電して、国民は同じように暑さや寒さに苦しんで、国民は同じように「またか」と呆れたり怒ったりしています。

やるべきことは色々ありますが、まずは、災害救助法を知事が躊躇せずに適用するよう普段から準備し心構えをする、そして、非常時の分散型電源の整備をする、といった対応をしていくべきです。もちろん、以前、本ブログで書いた、倒木撤去の協定も、電力会社と自治体がすぐ結んで、国はその進捗をチェックすべきです。

国も自治体も公益企業も、今から次の大規模風水害に、早速備えていくべきです。