日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

農業、社会保障等で立派に戦った小泉進次郎氏。環境大臣として、脱原発と炭素税の実現を!

環境大臣に抜擢された小泉進次郎氏は、農業や社会保障の改革に向けて戦ってきました。環境政策は、日本全体を変えるセンターピンになり得ます。脱原発と炭素税を突破口に、日本の大改革を目指してほしいところですし、改革政党は是々非々で協力すべきです。

在庫一掃内閣の目くらまし?解散総選挙の看板?

昨日の内閣改造の目玉として、小泉進次郎氏が環境大臣として初入閣しました。朝日新聞は、当初、総裁選で2回も石破氏に投票した小泉氏の入閣に、安倍総理は反対だったようですが、菅官房長官の意見で実現した、萩生田氏等の「お友達」を多数入閣させたことの目くらましだ、と報じています。

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毎日新聞は、「ポスト安倍」で、小泉氏は菅官房長官が望むポスト安倍候補の一人だ、と報じています。安倍総理はもちろんエールを送っていますが、必ずしも歓迎していないかもしれません。こんな構図だとか。でも、安倍氏も、まさか加藤、茂木、岸田が総理総裁として国民の支持を集めるとは思ってないんでは、とも思いますが。

出所:毎日新聞2019年9月12日

クローズアップ:内閣改造 後継争いで板挟み 首相、苦肉の「安定」 - 毎日新聞

NHKの岩田明子氏は、これは解散総選挙に向けた布陣だ、と、昨夜9月11日のニュースで解説。この人は、今井秘書官とともに、2017年の解散総選挙を総理に進言したと言われています。岩田氏が今回、何か意見を言ったかはともかく、小泉氏の入閣は解散を視野に入れているのはもちろんでしょう。

小泉進次郎氏への批判は山ほどあります。世襲四代目の既得権者、実行力がない、等々。

私は、批判の方がトンチンカンだと思います。世襲四代目という点は、世襲三代目の小泉純一郎氏がどれほどの改革を実現したか、考えれば、世襲と言うだけで全否定するのは間違いと分かります。進次郎氏は、言ってみれば、「改革派政治家」を二代目として世襲した、と考えればいい話です。ちょっと大上段に世界史を振り返っても、裕福な貴族のラファイエットは、3回も大きな革命に参加しました。

実行力がない、と言うのも、言うのは簡単です。しかし、高齢男性が牛耳る政界の、そのまた特に硬直化した自民党の中で、あの若さで出来ることには限りがあります。小泉純一郎氏も、長い間、変人と呼ばれてバカにされ続け、郵政大臣になっても役人が一切情報を上げないという中で、郵政民営化を訴え続けました。国民がその姿を見続けていたからこそ、総理になったときに、国民の力で改革が出来たのです。

進次郎氏は、これまで、立派に既得権者達と戦ってきましたし、少ないながら爪痕を残しています。私は日本の大改革のためには、自民党政権を倒す必要があると思っていますが、それでも、自民党の中にも、こうした改革派は何人もいます。改革政党は、自民党改革派とも是々非々で手を組んで、政策実現をすべきです。

農業、社会保障での戦い

小泉氏は、自民党政調会農林部会長として、農協等の既得権者と戦いました。TPPの大筋合意が出来てから、農林部会長となりましたが、そもそも、小泉氏は、自民党が野党の時代から、TPPに賛成。与党に返り咲いても、もちろんTPPに賛成。この問題で、自民党旧民主党は、野党のときは反対、与党のときは賛成という二枚舌だった中で、大変珍しい政治家です。政党として賛成で一貫している維新は、この点で小泉氏と同じです。

小泉氏は広範な農業改革を目指していました。農業機械、農薬、果ては段ボールに至るまで、国際比較で見て高すぎること、株式会社が農地を持てないこと、巨大金融機関となったJAバンクが農業になぞほぼ全く融資をしていないこと、等を批判していました。

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小泉氏は結局、特に農協問題に集中しました。農家のために共同購入で生産資材を安く仕入れるのが農協のはずなのに、独占的な巨大組織となって、かえって農家に高く売りつけている、そのうえ、農家から農産品を買うときも、委託販売という形で農家から手数料まで取っている、という問題がありました。

象徴的だったのは、2016年10月、自民党が、全国農業協同組合中央会(JA全中)や全農などの幹部、農業者から、資材価格引き下げに関するヒアリングを行ったときのことです。ある農事組合法人の理事長が、農協の手数料が高すぎる、と発言したのに対して、全農の神出元一専務は「手数料は(JAの)従業員や家族を養う財源で、簡単に切るのは賛成できない」と言い放ったのです。これに小泉氏が会合後、不快感を表明。

「先ほどの神出さんの言葉に、手数料で食っているのがJAグループという意識があるなら、それは問題だ」「農家が食べていけるから農協職員も食べていけるという認識で改革に取り組んでほしい」と批判しました。

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これが一つの契機になり、規制改革推進会議の農業ワーキング・グループが、同年11月11日に、全農に資材購買部門を1年以内に縮小する、委託販売を廃止し全量を買取販売にする等の抜本的改革案をまとめました。

第7回農業ワーキング・グループ 議事次第 : 規制改革 - 内閣府

【規制改革推進会議 農協改革の「意見」】改革の狙いはJA「解体」(上)|クローズアップ|農政|JAcom 農業協同組合新聞

これに農林族議員達と農協が猛反発。小泉氏は、全農の組織刷新の期限を切らないなど農協側に配慮する形で、与党の改革案「農業競争力強化プログラム」を取りまとめざるを得ませんでした。

確かに敗北です。しかし、山下一仁氏は、農政について全くの未経験者だった小泉氏が、こうして農協と戦ったことについて評価し、今後に期待しています。

農業改革:小泉進次郎の挑戦は続く | キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)

私は、農協役員から、「農家の利益よりも農協職員の生活」という一言を引き出したのは、大変大きな手柄だったと思います。なるほど素人部会長氏は「重鎮」の議員達と既得権者につぶされたでしょう。しかし、国民は、農家の生き血を吸って肥え太る農協の姿を知りました。今後、再度のチャンスがあれば、国民は小泉氏の農協改革に賛成するでしょう。

社会保障については、何と言っても、幼保無償化の財源として提言した「こども保険」の主張がメディアでは大きく取り上げられました。これも結局は、小泉氏の主張の形では実現しませんでした。2017年6月の骨太の方針には取り上げられたものの、幼保無償化の財源は、結局は消費増税による、ということになってしまいました。

これについては、当時の議論では何が論点だったかを見る必要があります。もともと、自民党内で、幼保無償化の財源について、消費税か国債か、という議論になっていました。小泉氏を含む若手は、それに対して、どちらでもない解決方法を探して行った提案です。

保険と言いながら実際は税じゃないか、という批判をするのは簡単。この提案は大きなインパクトを呼び、骨太の方針にまで書き込まれたのだから、実現する可能性は一定程度ありました。

この発想を嫌がるのは、経済界です。消費税なら企業は負担しなくてよいけれど、社会保険なら企業負担分があるからです。現に、その後、社会保障財源として提唱されている「勤労者皆保険」というアイディアに対して、経済同友会は強く批判しています。

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幼保無償化については、行政改革、特に公務員人件費削減で財源をねん出すべきだ、というのが維新の従来の主張でした。しかし、小泉氏がこども保険と言い出したとき、実は、維新は対抗するために、行革意外の財源を探す議論を始めました。維新は、結局は、国債も教育無償化の一つの財源として挙げています。国債償還の方法としては、

企業の負担にするのでは、現役世代の負担軽減にならない、というのは確かです。それでも、所得で負担が変わるならば、再分配政策としては十分に意味があります。教育無償化だけならともかく、社会保障については、公務員人件費削減だけでは、とても財源として間に合わないでしょう。維新でさえ、教育無償化について行革だけで大丈夫なのか、自信はありません。

厳しい行革を行うのはもちろん大前提として、それに加えて、こども保険と呼ぼうが勤務者皆保険と呼ぼうが、税による再分配も子育て支援と低年金者対策をすることは、必要になります。

少子化克服にある程度成功したとされるフランスでも、子育て等の財源は雇用者負担で行っているのですから、「こども保険」は、名称はともかく、国際的に見れば普通の提案です。

https://www.chukyo-u.ac.jp/educate/gendaisyakai/kiyou/2017/2017_1002_03ohoka.pdf#search=%27%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9+%E5%B0%91%E5%AD%90%E5%8C%96%E5%AF%BE%E7%AD%96+%E8%B2%A1%E6%BA%90%27

要は、こども保険という発想が、そう悪かったわけではありません。幼保無償化の財源の議論に一石を投じましたし、雇用者負担という選択肢はこれからも検討が必要です。

 環境大臣としての戦い

では、環境大臣としては、小泉氏は何に取り組むべきでしょうか?

早速、脱原発をぶち上げています。昨日の会見で、原発について「どうやったら残せるかではなく、どうやったらなくせるかを考えたい」と発言。2030年度に再生可能エネルギーの電源比率22~24%を目指すと掲げた政府のエネルギー基本計画に関し、さらに比率を拡大すべきだ、と主張しています。

mainichi.jp

エネルギー基本計画は昨年既に決まってしまってはいます。しかし、各電源の比率を決めるにあたっては、環境省が「原発比率7~9%」という案を提示、経産省がこれをはねつけた、という経緯があります。経産省に「反乱」を起こしたのは環境省だけでなく、河野太郎氏が大臣を務めていた外務省も、有識者の意見の形で、「(日本が)主導的な役割を果たしているとは言い難い」「国内の石炭火力の段階的廃止」「原発への依存度を限りなく低減していく」と、現行の方針を批判しています。

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現行の計画の文言や数字を修正するのは難しくても、政治的に換骨奪胎して新たな再エネ比率を政策として定着させる芽はあります。本ブログで主張した通り、2030年までに再エネ比率50%という目標を事実上設定してほしいところです。

固定価格買取制度(FIT)終了後は、①2030年の再エネ比率目標を50%超にして、②企業の再エネ電力購入(PPA)を促進し、③ESG投資の普及を! - 日本の改革

更に、炭素税も導入すべきです。これについては、既に環境省が掲げていた話なのですから、小泉大臣の発信力が大きな援軍になるでしょう。

環境省が炭素税の導入を来年度税制改正要望に?炭素税をEU並みにすれば、税収で消費税を1%下げられる! - 日本の改革

この点、昨日の記者会見で、「イノベーションが絶対に不可欠だ」とも言うあたり、やや怪しさも残ります。本ブログで書いてきた通り、政府も経団連も、技術革新を、炭素税をやらない言い訳にしてきた経緯もあるからです。

温暖化で成果見込めないG20。日本の環境政策は、欧州緑の党の「炭素税・配当」政策と、アメリカの「グリーン・ニューディール」を取り入れるべき! - 日本の改革

 

それでも、私は当面、小泉氏の改革に期待しています。これまで、農業でも、社会保障でも、賛否が分かれる問題で、ちゃんと戦ってきたからです。

もちろん、政治は結果ですし、小泉氏は以前から、こう言っています。

「よく『若いから失敗を恐れずやれよ』という。あれは失敗を待っている。失敗したら徹底的にたたきつぶす。チャンスを得るには、自分が今出せる最大限を出す意識がないと、この世界は生き残れない。政治の世界はシビアだ」

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今回の環境大臣の抜擢も、結果が出なければ潰すためかもしれません。一大臣に出来ることは限られてはいますが、その範囲で、何とか結果を出すべく頑張ってほしいと思いますし、私は小泉環境大臣を応援します。環境政策は、日本全体の改革のセンターピンになり得るからです。