日本の改革

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台風で停電長期化の東電と千葉県・各市は、政府が求めていた倒木撤去の協定を結んでいたのか

台風15号が通過して2日経過。千葉県40万件超の停電は復旧のめどが立ちません。山間部の倒木等が一因のようです。政府は、電力会社と自治体に倒木撤去の協定締結を求めていましたが、今回、これが行われていたかを検証すべきです。中長期的には、分散型のエネルギー供給体制の構築を急ぐべきです。

停電復旧の遅れの理由、東電は何を挙げたか

東京電力は今日9月11日午前中、今日中の県内の停電復旧は難しいと発表しました。東京電力パワーグリッドの金子禎則社長によると、会見時点で約46万戸が停電です。

もともと同社は昨日10日夜、今朝までに停電戸数を約54万戸から約12万戸に減らし、共重にはすべて復旧させると発表しましたが、軌道修正です。今日中に新たな復旧見通しを出すそうです。

digital.asahi.com

東電の会見につき、メディアとの質疑応答のポイントを、いくつか紹介します。

・昨夜中に停電を12万件まで減らせなかった理由:雷雨による作業中止で遅れた、直している途中に更に直す部分が出てきて作業量増えた、夜間にずれ込んで効率が落ちた。まず作業量確認の必要あり、工事力を多めに投入する。昨日は人海戦術だけでうまくいかず。現場の確認、作業量確認、現場の最終確認を見直す。

・応援について電源車の体制はどうか、災害拠点病院カバーできるのか:現在110台。これから追加で50台、他電力の応援も。要請は現在は100件なので足りている。復帰したら配置換えできるので、これから要請あり次第移動。

・具体的に何が理由で復旧出来ないのか:千葉、成田、木更津の3エリアのうち、千葉エリアでは8割、成田では9割完了したが、木更津で3割。この後、荷電試験も必要。木更津を重点的にやる。(荷電試験の所要時間は2,3時間程度)

・木更津で遅れている原因:山深いところもある。アクセスの問題と面積の広さ。 

・倒木のせいで現場にたどり着けないのか:遅れの原因は特に二点ある。現場で直す量が増えることと、木更津エリアの山間部の倒木が平地より多いこと。エリア単位で、作業量増えることを前提に割り増しして人員を振り分けていく。

動画アーカイブ|写真・映像ライブラリー|東京電力ホールディングス株式会社

台風15号による東京電力パワーグリッド株式会社サービスエリア内の停電の復旧見通しについて|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社

というわけで、必要な作業量を見誤って想定より時間がかかっているのが、復旧遅れの一つの原因のようです。これは前例のない強さの台風ということで、ある程度やむを得ないかもしれません。一方で、昨年の関西等の台風は気圧や風速は似ていましたし、その際の関西電力の対応等、どの程度共有され、今回に生かされているかが気になります。メディアもそこを聞いてほしかったところです。

災害時の倒木撤去について、東電も自治体も対策は十分だったか

復旧遅れのもう一つの原因は、やはりと言うか、倒木の影響だということです。

これについては、今年7月1日に、経済産業省の「産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 第20回電力安全小委員会」(長い…)で、政府の対応について報告されていました。ここでは、昨年の台風の教訓を生かした形の政府対応が出ています。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/pdf/020_02_00.pdf

第20回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会(METI/経済産業省)

去年の台風21号のときにも、倒木等の障害物除去に課題が多かったと。具体的には、き倒木や倒壊家屋等の所有者への確認・協議に時間がかかったり、所有者自身による除去を主張されて、 作業終了まで電力会社が復旧作業 に着手できなかった例もあった、ということです。

こういう場合には、申し訳ないけれども、所有者よりも電力会社による作業を優先するべきです。

このため、災害対策基本法64条は、市町村長は「応急措置を実 施するため緊急の必要があると認め るときは、現場の災害を受けた工作物 又は物件で当該応急措置の実施の支 障となるものの除去その他必要な 措置をとることができる」と定めています。

そこで政府は、災害対策基本法のこの規定を活用できるように、電力各社に対して、県や市と協定をあらかじめ結んでおくよう、通達(事務連絡)を出し、協定の記載例も示していました。記載例には、たとえば、

「災害等の状況により、応急措置を早期に実施するにあたってやむを得ない場合に限り、【電力会社等】 は【県/市等】の区間の指定及び協力依頼を待たず、除去作業を実施することができる」

等の規定もあります。電力会社の技術的・専門的な判断で、相当迅速に除去を進められる余地があります。

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出所:経済産業省

この通達の名前は、「災害時における地方自治体との連携について(事務連絡) 」で、ネットでは見つけられずにいますが、上記で紹介した経産省の委員会の同じ資料に、概要が出ています。

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出所:経済産業省

今回、この協定を東電も、千葉県の各市も、結んでいたかどうか、それに沿った対応が行われていたか、を、今後検証すべきです。

木更津市の災害関連の協定・覚書一覧には出ていないようですが、この資料は昨年5月のものなので、古いかもしれません。

https://www.city.kisarazu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/156/20180515-115750.pdf#search=%27%E6%9C%A8%E6%9B%B4%E6%B4%A5%E5%B8%82+%E9%9B%BB%E5%8A%9B+%E5%8D%94%E5%AE%9A%27

千葉県の防災関係のサイトにも、倒木や倒壊家屋除去に関する協定はざっと見たところ見当たりません。

県の防災対策/千葉県

http://www.bousai.pref.chiba.lg.jp/portal/

もし、こうした協定を結ばず、その結果、所有者の確認や同意取得に手間取って作業が遅れている例が多いなら、東電と自治体の責任です。逆に、協定を結んでその通りにやっていても、やはり倒木撤去に時間がかかりすぎるなら、協定締結を要請して終わり、という政府の対策は全然ダメ、ということになります。責任のなすり合いになってはいけませんが、とりあえず現行のルールだったら、こんな整理になるでしょう。

倒木の除去についての責任分担についてだけふれましたが、今回の千葉県や各市の対応、動きが遅すぎるし、情報発信も少なすぎると感じます。

自衛隊への災害派遣要請は9月10日早朝、台風通過から1日近く経ってからです。被害状況の把握は必要であるにせよ、酷暑の中をエアコンも水もない生活を強いられている人達のことを思えば、せめてもう半日早くならなかったのか、と思わずにいられません。

www.nikkei.com

今の状況で中長期的な課題を挙げても仕方ありませんが、一言だけふれるなら、今回の台風被害で、分散型の電源の必要性があらためて示されました。

NHKによると、千葉県君津市にある東電の鉄塔2基が倒れただけで、10万戸が停電したと言います。

www3.nhk.or.jp

北海道のブラックアウト等を踏まえ、政府は地域間の送電線強化等の対策とともに、配電については分散化させる方向の報告書を出しています。

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/datsu_tansoka/pdf/20190730_report.pdf#search=%27%E7%B5%8C%E6%B8%88%E7%94%A3%E6%A5%AD%E7%9C%81+%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88+%E5%AF%BE%E7%AD%96+%E9%80%81%E9%9B%BB%E7%B7%9A%E5%BC%B7%E5%8C%96+%E6%A1%88%27

全域停電に備え対策=送電線増強、ツイッター活用-電力各社:時事ドットコム

特に、仮想取引所(VPP)と呼ばれる仕組みを導入して、再生可能エネルギーの余剰電力を地域で蓄電し、需要に応じて供給する仕組みの構築が急がれます。電気が地産地消になって、災害時用の蓄電が出来るようになれば、50メートルの鉄塔が二つ倒れて10万件の停電、という事態は避けられるでしょう。

日本経済新聞2018年10月11日

車や家の蓄電池、地域で共有 東電や日産が技術実用化 :日本経済新聞

なんでも今日、内閣が改造されたとか。千葉県の停電を一時間でも早く解消し、災害に強い分散型電力システムを一刻も早く実現するのが最初の仕事の一つです。