日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

中国主導の経済連携協定RCEPはいらない!TPP加盟国拡大こそ最優先、ASEAN全体、インド、韓国のTPP加盟促進を!

RCEPの閣僚会議が今日、バンコクで開催されます。中国が妥結を急いでいますが、日本は、中国主導のRCEPは無視して、タイ等のASEAN内TPP非加盟国、インド、韓国に、TPPの拡大を目指すべきです。

RCEP妥結を焦る中国、反対するインド

日経が、RCEPの閣僚会議が今日行われることを、比較的大きめに報じています。

日経は例によって、「RCEPがいかに素晴らしいか」にふれています。曰く、「アジア最大の自由貿易圏を巡るルール」、曰く、「世界人口の約半分、貿易額の約3割を占めるRCEP」。要は、交渉国のGDPを足したらとっても大きいというだけのことです。

記事冒頭の説明で、わざわざ「年内の妥結をめざす東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」などと、いかにも年内妥結が既定路線、あるいは望ましいかのような書きぶりになっています。確かに、今年は、米中貿易戦争で締め上げられている中国が前のめりですが、日韓の外交関係は最悪、経済連携協定ネタに限っても、輸出管理を巡って未だに争っているので、そこがネックだ、というのが日経の取り上げ方です。

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日本は中国や韓国と自由貿易協定(FTA)を結んでいません。中国は日本にとって世界1位の貿易相手国で韓国は同3位ですから、そこだけ見れば、日中韓ASEAN、インド等を含む経済連携協定は、日本にメリットがありそうに見えます。

しかし、日本はこの話を進めるべきではありません。後でふれますが、もともと中国主導で進められた枠組みだからです。このため、そもそも自由化のレベルもTPPほどにはならないでしょう。

何より、昨日のブログで書いた通り、現在、アメリカは中国に対して、経済を通じて本格的に中国に圧力をかける路線を続けています。これは中長期的なアメリカ全体の動きであり、トランプ氏個人が「ディール」を行っても、そう簡単には変わりません。

アメリカの目的は、米中合意ではなく、打倒中国共産党か:中国民主化へのエンドゲームの議論を始めよう。 - 日本の改革

RCEPの交渉にあっても、中国の利己主義、覇権主義は遺憾なく発揮されています。何しろ、「インド等抜きのRCEP」にすべきだ、などと言っているからです。

今年6月18日の日経によると、中国は4月にラオスで開かれたASEAN日中韓の事務レベル会合で、ASEAN日中韓を加えた13カ国での経済連携の枠組みを提案しました。そこで、「東アジア経済コミュニティー(EAEC)の青写真」として示した文書に、EAECの主要な協力分野に「FTAの構築を含む」と明記してあったそうです。

そのココロは、RCEPの参加国からインドとオーストラリア、ニュージーランドを除外して、新たなFTAの締結を目指す、ということです。当然、日本やASEANの一部の国がその場で反発しました。今のところその動きは止まったようですが、カンボジアラオスは中国の衛星国になってしまっているので、今後は分かりません。

もともと、RCEの交渉は2013年に始まりましたが、大幅な関税撤廃に慎重なインドと、それ以外の15カ国という構図が続いてきました。

今年5月のインドの総選挙でモディ首相が率いる与党が勝利したので中国は進展を期待したようですが、自由化に慎重とされるゴヤル氏がモディ政権の商工相に就任したことで、結局は難しいようです。

日経も、今年6月に、インドがネックでRCEPは難しそうだ、それどころか、中国はこの枠組み自体を大きく変えようとしており、それに日本もASEANも大反対だ、と書いておきながら、今日の記事で、中国が前向きだから妥結できるかも、などという大ウソの提灯記事を書いているのは、全く不見識です。

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日本はRCEPから抜けて、TPP加盟国拡大を!

中国が、インド、オーストラリア、ニュージーランドを外そうとするのは、日米が中国の台頭をにらんで打ち出した「自由で開かれたインド太平洋構想」で連携するインドや豪州等が邪魔だからです。中国がRCEPを安全保障の道具と見なして、インド等を外そうというのですから、日本がこんな枠組みでいつまでも交渉に加わる意味など全くありません。

第一、日本は、既にTPP11と日EU掲示連携協定という、極めて自由で公平な協定を持っています。今後の貿易や投資の自由化については、まずはこの二つの協定等の拡大を目指していくのが筋であり、トランプ後のアメリカがTPPに戻ってくれれば、安全保障上も、価値観外交の観点からも、この二つの協定加盟国を拡大させるのが理想的です。もちろん、国際社会全体にとっても良いことです。

既に昨年8月、山下一仁氏は、「「中国」に惑わされず、RCEPよりTPP拡大を-参加国のGDP規模を重視する日本政府。大事なのは「規模」より「規律」だ-」という、誠に正鵠を得たタイトルの論文を発表しています。

「中国」に惑わされず、RCEPよりTPP拡大を-参加国のGDP規模を重視する日本政府。大事なのは「規模」より「規律」だ- | キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)

山下氏は、もともとRCEPが中国主導だという点に注意を促します。引用すると、

 表向きは、RCEPはASEANの提案によるものだとされている。しかし、以前から東アジア地域の経済統合を推進するという観点から、ASEANプラス3(日本、中国、韓国)を唱える中国に対して、中国の影響が大きくなりすぎることを警戒する日本は、日中韓の3カ国にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えたASEANプラス6を実現すべきだと主張し、対立してきた。
 2010年アメリカも参加するTPP交渉が開始され、日本もこれに参加するという動きを示す中で、中国は東アジア地域の経済統合から取り残されるのではないかと焦り、日本のASEANプラス6の考えを受け入れ、2012年からRCEP交渉が立ち上げられたというのが、真実だろう。

ということで、先の日経の6月の記事に見る通り、中国は、何とかインド、オーストラリア、ニュージーランドを外そうとしてきたのであり、最初から全くの同床異夢でした。そのうえ、米中冷戦の本格化という現状ですから、日本はもうRCEPの交渉自体をやめて、RCEP対象国でTPPに未加盟な国に、TPP加盟を進める方針に転換すべきです。

山下氏は更に、RCEPはTPPと違って、一定の労働基準や環境規制の遵守を要求する "貿易と労働" "貿易と環境" という分野、さらには補助金や規制によって保護される国有企業が外国企業よりも有利に競争できることになっていることに対する規律などが交渉の対象になっていないことを批判します。当然、中国がいやがるからです。中身の点でも、加盟すべきではありません。

日本がTPPで加盟拡大を図るべきは、まずは、ASEANのTPP非加盟国です。下の図にある通り、インドネシア、フィリピン、タイ、ラオスミャンマーカンボジアと、実は結構あります。

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出所:清水一史「TPP と ASEANトランプ大統領の影響を含めて- 」(日本国際問題研究所(2017)『ポストT P P におけるアジア太平洋の経済秩序の新展開』第8章)

http://www2.jiia.or.jp/pdf/research/H28_Post-TPP/08-shimizu.pdf#search=%27TPP+ASEAN%27

安倍政権も立派なもので、すでにTPP加盟国拡大に向けて動いてはいます。

日経によると、去年7月4日、TPP首席交渉官代理の尾池厚之氏が秘密裏にインドネシアに飛び、「来年の大統領選までは動きはないが、その後動き出すかもしれない」との感触をつかんだと言います。

更に同月10日には、「欧州自由貿易連合(EFTA=ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインアイスランド)もTPPへの意欲があるらしい」との報告が茂木大臣に上がったようです。内容が立派なので、TPPの拡大戦略は着実に実を結びつつあるようです。

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こうした下ごしらえの末、安倍総理は、今年1月、都内での閣僚級会合「TPP委員会」で、「自由貿易の旗手として全力を尽くす決意だ」と発言。TPP11カ国の輪を広げることで各国と一致しました。既に参加希望を表明しているタイと交渉が始まりますし、先に書いた通りインドネシアも、そしてイギリスも参加に関心を示しています。

首相「自由貿易の旗手に」 TPP加盟国拡大へ閣僚会合 :日本経済新聞

 日タイ関係 : 在タイ日本国大使館ウェブサイト

 問題はインドですが、アメリカがTPPから抜けたのはインドにはプラスのようです。ジェトロによると、アメリカを含む当初のTPP構想に対するインドの懸念は、米国向けのアパレル輸出に悪影響が及ぶことでした。インドが重視するアパレル輸出額の2割強が米国向けで、TPPで、ライバル国であるベトナムアメリカへのアパレル輸出を増やすことをインドは不安視していました。

しかし、

米国がTPP参加を取りやめたことで、この懸念は払拭(ふっしょく)された。インド商工省商業局の幹部はジェトロのインタビュー(12月26日)に対し、「米国がTPPから離脱したことにより、インドに対する影響はほとんどないとみている」としつつ、「今はRCEPの妥結に注力したい。日本とは既に話し合いができており、交渉は大詰めに入っている」と語った。

ということです。インドは「今は」RCEPの妥結に注力したい、とのことですが、中国の出方次第で、可能性はありそうです。

米国抜きのTPP11で、RCEPへの関心さらに高まる | ビジネス短信 - ジェトロ

 韓国については、輸出管理をいきなりお互い撤廃してTPP交渉、ということにはとてもならないのは確かです。問題の本質はやはり徴用工判決問題で、まずそれを交渉したい、という点だけは、私も安倍総理に賛成です。

しかし、これまで本ブログで書いてきた通り、徴用工判決と歴史認識で、日本の立場をはっきりさせて主張することは主張しつつ、合理的に妥協点を探るべきです。

日韓、アメリカに怒られて少し冷静に?橋下徹氏と田中均氏が示す落としどころで妥協せよ。 - 日本の改革

韓国はTPPに関心を示している、というか、本音では入りたがっているはずですから、環境が整って、ちゃんとTPPのルール通りで参加したいということなら、加盟を認めるべきです。

去年12月、高木啓議員が徴用工判決問題があるから韓国のTPP参加を断れと国会で質問したようですが、単細胞で近視眼的な見方です。米中冷戦の中での世界全体でのメガFTAのあり方、その日本と国際社会への影響等を考えれば、RCEP対象国であり、中国が抱き込もうとしてる韓国は、絶対にTPPに参加させるべきです。

高木氏の発言を昨年に記事にした産経が、今年3月、日本政府が徴用工判決への対抗措置として韓国のTPP参加を認めない方針、と報じましたが、その後の報道を見つけられていません。日本政府は、新人参議院議員のような視野の狭い態度をとるべきではありません。

“無法”韓国のTPP参加を拒絶せよ 自民・高木議員「徴用工不当判決は重い!」 識者「日本は冷静にノーを」 (1/2ページ) - zakzak

日本、韓国のTPP加入「拒否」へ 「元徴用工」への異常判決に対抗措置 (1/2ページ) - zakzak

「自由で開かれたインド太平洋構想」こそが、日本が追及、実現すべき形です。TPPはその不可欠の要素である一方、中国はRCEPを使ってこれを破壊しようとしています。

日本は、RCEPについては当面は積極的に動かないようにして、TPP加盟参加国を増やし、RCEP諸国の大方の加盟が見込めたところで、この枠組みから抜けるべきです。