日本の改革

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アメリカの目的は、米中合意ではなく、打倒中国共産党か:中国民主化へのエンドゲームの議論を始めよう。

フォーリン・アフェアーズが、アメリカは経済を中国への安全保障の手段として使う、という論文を三本掲載。米中貿易戦争の目的は、もはや合意よりも中国共産党打倒に移る可能性が出てきました。中国民主化に向けたエンドゲームの議論を始めましょう。

①拡大抑止は経済制裁で、②米中貿易戦争の目的は合意ではない、③米中冷戦不可避

米中が、10月初旬に貿易に関する閣僚級交渉を行うことになりましたが、妥結については悲観的に見られています。現状では、米中貿易戦争は、もはや経済的な利害をすり合わせて妥協点を探る、というものではなくなってきています。

アングル:米中貿易戦争、10月閣僚級交渉でも深まる溝 - ロイター

フォーリン・アフェアーズの10月号に、米中関係に示唆的な三つの論文が出ています。どれも共通しているのは、アメリカが米中関係で、関税や経済制裁等の経済政策上の手段を、中国に対する安全保障上の目的として使う、あるいは既に使っている、と主張していることです。

①マイケル・オハンロン「アメリカは同盟国を本当に守れるのか ―― 拡大抑止を再強化するには」

一つは、マイケル・オハンロン(ブルッキングス研究所 シニアフェロー)の「アメリカは同盟国を本当に守れるのか ―― 拡大抑止を再強化するには」です。

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この論文は、アメリカが他国を核兵器等で守るという、いわゆる「拡大抑止」が本当に出来るか否か、尖閣問題を例に論じています。

オハンロン氏は、中国は、アメリカの覇権に本格的に挑戦しようとまで考えていないが、国際社会の秩序を少しずつ自分達に有利に変えようとしている、と主張します。このため、日本や朝鮮半島に侵略してアメリカと全面的な戦争を行うことは考えていないものの、アメリカにとってほとんど重要性のない問題では、大胆な行動に出る危険がある、としています。

典型例が尖閣諸島に関する日中の対立です。アメリカにとってほとんど意味のない無人島なので、本格的な反撃をアメリカはするべきでない、しかし、「拡大抑止」を日本に約束している以上、何とかしなければいけない。

そこで、大規模な報復攻撃を前提とする伝統的な抑止手段ではなく、「(同盟国に対する)敵の小規模攻撃に対しては、経済戦争、特に経済制裁を中心とする対応を想定すべき」としています。

これを可能にするためには、アメリカと同盟国は、「自国のサプライチェーン、金融取引その他の経済関係の脆弱性を理解」しておくべき、としています。つまりは、一時的に経済的なダメージを受けても安全保障上必要な経済制裁があるから、今から中国への経済的依存を下げるべきだ、と提言しています。

本ブログでも、アメリカの「核の傘」を含めた拡大抑止はそれほどあてにならないから、日本は独自のミサイル防衛等を行うべきだ、と主張してきました。この論文では特に、軍事的対応よりも経済制裁とまで割り切った主張をしています。本当にそうなれば大問題ですが、一方で、経済というものが、もはやアメリカの拡大抑止を担うような、重要な軍事的手段の一つと見なされていることを注意すべきです。

②チャッド・P・ボウン、ダグラス・A・アーウィン「米中経済ディカップリングの意味合いーー解体するグローバル貿易システム」

次の論文は、チャッド・P・ボウンとダグラス・A・アーウィンによる「米中経済ディカップリングの意味合いーー解体するグローバル貿易システム」です。

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この論文では、トランプ政権が永続的な中国との取引も、中国が受け入れるかもしれない合意も、望んでいないと言っています。現在の米中貿易戦争でのアメリカの要求は、技術移転の強制、知的所有権の侵害、それに国有企業への産業補助金をやめることです。これは非常に高いハードルであり、経済への統制で一党独裁を維持している中国共産党には、とても飲めない内容だ、トランプ政権はそれを分かった上でやっている可能性がある、としています。目的は、もはや合意ではなくて関税そのものであり、中国経済を粉砕することが最終目標ではないか、と見ています。

そもそも最初から、トランプ政権は貿易戦争を終わらせる合意など求めていなかった可能性さえあるとして、ナバロが2017年に安全保障と経済の関係についてトランプ政権の立場を説明した時、「アメリカと中国をつなぐサプライチェーンを引き裂きたい」と口を滑らせたことを挙げています。そして、仮に来年の大統領選で民主党政権が誕生しても、現在の方針は変わらない可能性がある、としています。

私は、トランプ大統領自身は中国との合意を本当に望んでいると思います。しかし、トランプ政権全体としては、そうでない方向をとっている可能性は確かにあるでしょう。アメリカ経済や同盟国や世界経済が返り血を浴びても、とにかく中国経済を叩く、アメリカに対抗できないようにする。現在の米中貿易戦争でのアメリカ政府の一部には、本当にそうした意図がありそうです。

③ニッキー・ヘイリー「米中冷戦は避けられない――貿易と国家安全保障」

最後に、ニッキー・ヘイリー前米国連大使の「米中冷戦は避けられない――貿易と国家安全保障」という論文です。

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冒頭の要約部分を引用します。

北京にとって、経済成長は政治を支えるために必要であり、政治の目的は、内外における共産党政権のパワーを強化することにある。米司法省によれば、北京は中国企業に、米企業を含む外国企業の知的所有権を盗むように指示し、しかも中国の民間企業に、獲得したテクノロジーを軍と共有することを義務づけている。2015年に習近平が発表した軍民融合政策は、あらゆる民間企業に軍と協力することを求めており、これは、(外国企業にとって)中国企業とのビジネスがたんなるビジネスではないこと、つまり、ハイテク部門で中国企業と取引すれば、その意図にかかわらず、中国の軍事利益の強化に手を貸すことを意味する。政府の民間ビジネスへの干渉は良いことだとは思わない。しかし、この現実ゆえに、われわれは国家安全保障を市場経済政策よりも重視しなければならない。

ということで、アメリカは今後、「ハイテク部門を中心に貿易と投資に関する規制を見直していく必要」があり、「国際的なサプライチェーン、国内投資、知的所有権の保護、重要な軍事技術のインセンティブ」を見直すべきだ、としています。

ヘイリー氏は、共和党支持者の人気も高く、2024年の大統領選への出馬も取りざたされています。ペンス副大統領と並んで、共和党の次のタマだ、とポリティコも書いています。その人が、国連大使を辞めた今、こうした主張をしています。トランプ政権をフォローしているだけではないでしょう。また、先に書いた通り、米中貿易戦争の方針は民主党政権になっても変わらないと見られています。

この三つの論文では、①拡大抑止さえ経済制裁で行う、したがって、経済政策は軍事政策となる、②共産党一党独裁の中国がまともな経済改革をしないと分かっていても改革を要求している、③米中冷戦を経済面で徹底的に戦う、といった主張がされています。

アメリカの外交・安保の代表的な雑誌で、まとめてこうした見解が示されており、著者の一人がヘイリー氏でもあれば、現在及び将来のアメリカの方針が、こうした形になる可能性は相当程度あると見るべきでしょう。

とりわけ、米中貿易戦争は、もう「貿易」戦争ではなく、短期的な経済合理性で考えるべき問題ではなくなっています。中国共産党一党独裁を倒さなければ、根本的な解決は不可能なところまで来ています。

エリザベス・ウォーレンに至っては、米国と貿易をする国に、ILOの求める労働者の権利を守り、宗教の自由を含む人権を保障すること等を求めています。中国での人権保障がなければ、つまりは中国共産党一党独裁が倒されなければ、実現不可能な内容です。

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中国共産党一党独裁を終わらせる「エンドゲーム」の議論を始めよう

 もう一つ、中国共産党一党独裁を倒さなければ、解決が図れないのが、香港問題です。

林鄭行政長官は4日、デモの発端となった逃亡犯条例改正案の撤回を発表しました。驚きを持って受け止められたものの、これだけでは全くおさまりません。1100人以上が逮捕され、その多くに長期の懲役刑を科される可能性があることもあり、デモ隊は改正案の撤回は見せかけだとして反発しています。

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 こちらも、五大要求、とりわけ、警察の暴力への独立調査委員会知と、普通選挙の実現がなければ、おさまりません。たとえ中国が一時的に強権で抑え込んだとしても、香港での民主化実現がなければ、この問題は解決しないでしょう。

ホワイトハウス高官は、ペンス副大統領が延期されていた中国に関する演説を今年終盤に行う見通しを明らかにしました。 昨年10月同様、演説は中国に対する強硬姿勢を示す内容になるとみられています。

ペンス米副大統領、延期の中国演説を今秋行う見通し=高官 - ロイター

昨年10月のペンス演説は、人権から外交安保に至るまで、広範な論点について、中国共産党独裁のもたらす問題点を指摘、批判しました。中国共産党一党独裁を倒さなければ解決しない問題は、米中貿易や香港だけではありません。

香港問題への中国政府と香港行政長官の対応を見ていると、中国共産党の力を過大評価するべきでないことが分かります。

日本を含めた国際社会は、中国に関する多くの問題の解決に、「中国民主化」という解決策を選択肢として加えて真剣に考えるべきときに来ています。中国共産党一党独裁を終わらせるためのエンド・ゲームに向けて、議論を始めるべきです。