日本の改革

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内部留保463兆円、7年連続で過去最高:内部留保課税、最低賃金引き上げ、ESG投資促進等、ありとあらゆる手段で吐き出させましょう!

2018年度の内部留保(利益剰余金)463兆円、現預金223兆円。金融緩和も法人税減税も利いていません。つべこべ言わずに内部留保課税、最低賃金上げ、ESG投資促進等、ありとあらゆる手段で、退蔵資金を吐き出させるべきです。

読売が一面で報じた「内部留保が過去最高」

9月2日に発表された法人企業統計によると、2018年度の日本企業の利益剰余金、いわゆる内部留保は、463兆円で、7年連続で過去最高でした。

内部留保の伸び率を資本金の規模別でみると、資本金10億円未満の企業は、年度によって相当の変動があります。一方、資本金10億円以上の大企業の利益準備金の伸び率はここ数年、一貫して高水準で、7%弱~8%強で推移しています。

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出所:財務省

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h30.pdf

現預金は、223兆円です。2018年度は伸び率は0.6%でしたが、前年までは5~7%の伸び率でした。資産の部の現預金と純資産の部の利益準備金内部留保)とは会計上直接の関係がないとは言え、並べて書くのは自由です。

2018年度の日本企業の「内部留保463兆円、現預金223兆円」です。

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出所:財務省

これを9月3日の読売新聞が一面で報じ、三面を全部使って、大きく取り上げています。読売と言えば、政府・自民党の準機関紙?のように見えることもある新聞なので、取り上げ方に注意する価値はあります。

一面では「好業績 内部留保が最高」として、三面では、「企業「守り」鮮明」としています。つまりは、これは問題だ、企業は投資や賃上げを十分行わずに資金を退蔵している、という主張を行っています。

www.yomiuri.co.jp

www.yomiuri.co.jp

特に、「製造業は設備投資に及び腰」としていますが、問題は製造業だけとも限りません。今回発表の設備投資のデータには注意が必要です。19年4~6月期の設備投資は、今回から公表方法を変更し、ソフトウエアへの設備投資を含めることにしているからです。つまり、非製造業、特にサービス業、IT産業等での設備投資は、ソフトウェア投資が加わった分、以前より高い数字が出ている可能性があります。このため、「設備投資に及び腰」なのが製造業だけとは限らない、ということです。

設備投資の定義変更については、内部留保に関する日経の記事で紹介されていましたが、日経も、過去最高の内部留保につき、「企業が稼いだお金を内部でため込む傾向が一段と強まっている」と問題視しています。

内部留保、7年連続で過去最大 18年度の法人企業統計 :日本経済新聞

なお、日経の別の記事によると、内部留保ではありませんが、2017年のデータでs、日米独の企業が抱える現預金から負債を引いたネットの余剰資金は、08年の8.5倍の3.6兆ドルに増えたということです。

積み上がる死蔵資金 投資は設備から人へ :日本経済新聞

日米独みんなカネ余りとも言えそうですが、アメリカについてはそうは言えません。

ウォールストリート・ジャーナルによると、アメリカ企業は昨年、記録的なレベルの設備投資、配当、企業買収、自社株買いを行ったため、企業の現預金は3年ぶりの低水準1兆6850億ドルになったそうです。比較の対象として良いか分かりませんが(ムーディーズのデータだそうです)、 少なくとも見た目上は、日本企業の現預金223兆円より小さな数字です。

これは、2017年のトランプ政権での抜本的な税制改革の結果だと言われています。法人税の税率を大幅に引き下げるとともに、外国法人留保利益へのみなし配当課税(Deemed Repatriation Tax)を一度だけ行う、という、一種の内部留保課税強化も行いました。こうした改正が利いて、国外に余剰資金を滞留させていた企業が国内に資金を戻し(repatriation)、しかも、配当や設備投資に回したということです。

www.wsj.com

法人税に係るトランプ税制改革については、以下のリンクにまとめられています。外国法人留保利益へのみなし配当課税(Deemed Repatriation Tax)の解説もあります。

ニュース|永野・森田会計士事務所|ロサンゼルス・全米 経理、簿記、監査、税務の日米会計エキスパート 米国公認会計士事務所

このように、アメリカでは、新たな内部留保課税まで行って、企業の余剰資金を吐き出させることに成功しています。

退蔵資金を吐き出させるには:内部留保課税、最低賃金引き上げ、ESG投資促進

読売は上掲の三面の記事で、内部留保について大きく取り上げたうえで、「設備投資や賃上げがないと消費につながらない」という麻生財務大臣の言葉を引きながら、政府が今後、「内部留保への圧力を強める可能性がある」と書いています。

意外だったのは、そこでまた、内部留保課税にふれていたことです。一応、例によって「二重課税」がどうのという批判を紹介して本格的な議論に至っていないとしつつ、大企業を中心に内部留保への課税を求める議論も、「17年の衆院選で野党の一部が公約に盛り込むなど、たびたび浮上している」、GDPが2四半期連続マイナスになった「15年当時は、自民党の一部にも導入を求める声が出た」、「韓国や台湾などで実施例」などと書いています。

読売でこうした論調の記事が出るのは、年度末の来年度税制改正に向けて、内部留保の問題について、議論の盛り上がりを政府なり自民なりが望んでいる可能性があります。

ちょうど、政府税調が、9月末に6年ぶりの中間答申なるものを出すタイミングでもあります。

(なお、税調では、「消費税は10%がゴールではない」(みずほ総合研究所の高田創副理事長)という声も出たとは言いますが、今月出す答申では踏み込まないようです。そこでは主に、所得税法人税の再分配機能を強化する方向のようで、金融所得課税も取り上げるようなのは、大変結構な話です)

第25回 税制調査会(2019年9月4日)資料一覧 : 税制調査会 - 内閣府

政府税調、6年ぶり答申 9月末に :日本経済新聞

所得税の再分配機能の強化など焦点 政府税調 中期答申へ詰め :日本経済新聞

以前、本ブログでも取り上げた通り、内部留保課税に反対しているのは経済団体くらいのもので、与野党もメディアも、恐らくは連合も、一致して賛成できるテーマでしょう。先のデータを見れば分かる通り、導入するとしたら資本金10億円以上の企業だけなので、中小企業団体の理解は得られる可能性があります。

先の読売の記事で、2015年当時に自民の一部が賛成だった、というのはミスリーディングなくらいで、今年の通常国会でも山本幸三議員が質問で内部留保課税をやれと言ってきたことも、本ブログで紹介済です。また、この制度を導入しているのは、「韓国、台湾」だけではなく、既に日本でも一部行われているし、アメリカにも留保課税制度があることも、詳しく紹介しました。

政府・与党・野党・国民は、力を合わせて、経団連の抵抗を排して、内部留保課税を実現しましょう! - 日本の改革

 読売の書きぶりから見て、実現可能性もあると思うので、日本維新の会等は是非、来年度財政改正に向けて、内部留保課税を主張し続けてほしいところです。その際、トランプ政権が税制改正で導入して効果を上げた、みなし配当課税の手法も参考にするべきでしょう。

政府は、税制よりは、最低賃金引き上げを重視してきました。それはそれで必要です。菅官房長官主導で相当の努力をしてはきた、と思います。ただ、骨太の方針では、最後に曖昧な書きぶりになってしまいました。経済財政諮問会議の民間議員提言の「5%」アップの数字は消えて「より早期に全国加重平均が1000円になることを目指すべき」との記述で妥協となりました。どうも、菅官房長官に、今井秘書官ら経済産業省グループが大反対して潰したようです。

www.nikkei.com

これについては、中小企業にもろに影響が出るので難しい問題ではありますが、それでも、5%引き上げ程度の緩やかな上昇であれば、やるべきです。本ブログでも以前書いた通り、諸外国の実例でも、あまり急激でなければ、最低賃金引き上げはむしろ経済にプラスの効果をもたらす、というのがコンセンサスになりつつあるからです。

最低賃金は全国一律引き上げを。緩やかな上昇なら雇用減らず、ブラック企業も淘汰。あわせて、技能実習制度廃止と内部留保課税を! - 日本の改革

 最後に、ESG投資を促進すべきです。本ブログでは以前、ESG投資の内訳について、情報公開を義務付けるべきだ、と主張しました。

固定価格買取制度(FIT)終了後は、①2030年の再エネ比率目標を50%超にして、②企業の再エネ電力購入(PPA)を促進し、③ESG投資の普及を! - 日本の改革

これに加えて、ESG投資を直接促すような手法も検討すべきです。

去年10月、笹川陽平氏が産経新聞で、内部留保CSRに活用すべきだ、と書いていました。産経新聞「正論」で笹川氏が紹介する諸外国と日本の例を引用します。

インドでは、13年に改正された新会社法で、「純資産が50億ルピー以上」「総売上高が100億ルピー以上」「純利益が5000万ルピー以上」の3要件のうち1つ以上を満たす会社に上場、非上場を問わず過去3年の平均純利益の2%以上をCSR活動に費やすよう義務付けている。

(中略:引用者)

米国にも「Give Five」の掛け声の下、企業が税引き前利益の5%を公益的な寄付に拠出する取り組みがあり、筆者は1989年、新聞投稿で米国の取り組みを紹介、企業に積極的な公益的寄付を呼び掛けたことがある。

これに対し経団連は翌年、「1%(ワンパーセント)クラブ」を設立。現在、法人226社、個人850人が会員となり、それぞれ経常利益や可処分所得の1%以上を社会貢献活動に拠出している。

www.sankei.com

こうした例を参考に、CSRというよりも、ESG投資の促進という観点で、利益準備金の一部について、ESG投資を行うよう、企業統治指針に定める等、まずはソフトな手法で促すべきです。CSRの水準も、日本はアメリカどころかインドよりも低いことが分かります。ここについて、環境政策や社会政策の視点から、企業統治をもっと厳しくするべきです。

とにかく、大企業に退蔵資金を吐き出させるため、与野党は今年中に、ありとあらゆる手段を駆使すべきです。