日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

環境省が炭素税の導入を来年度税制改正要望に?炭素税をEU並みにすれば、税収で消費税を1%下げられる!

環境省が来年度税制改正で、初めて炭素税導入を盛り込む方針、と日経が報じました。事実なら、経産省言いなりの安倍政権の大きな方針転換です。実現すれば、他国の温暖化対策にも影響与えますし、再エネの技術革新も促します。税収は消費税減税に使うべきです。

炭素税、ついに導入か?

環境省が、2020年度の税制改正要望に、炭素税を初めて盛り込む方針を決めた、と、8月24日の日経が報じています。税制改正要望に温暖化ガスの排出に負担を求める「カーボンプライシング」の文言を初めて盛り込む、とのことで、事実なら画期的なことです。

www.nikkei.com

既に26日に、環境省自民党の環境部会に提出して説明したはず、と思って、自民党の政調の会議情報見たら、同日の環境部会では、環境省の概算要求説明のみ。反対勢力の巻き返しで延期かもしれず、気になります。

会議情報 | 自民党の活動 | 自由民主党

この日経記事の前日、8月23日に、毎日新聞が「政府内で炭素税導入の検討が始まった」と曖昧な書き方をしつつ、推進派の環境省、反対派の経産省、様子見の財務省の声を詳しめに書いていました。日経はそこであわてて、まだ生煮えだったけれどフライングで、「環境省が税制要望へ」という書き方まで踏み込んだのかもしれません。

mainichi.jp

日経、毎日の記事をまとめると、現状は以下のようです。

これまで、環境省は、中央環境審議会の地球環境部会の「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」で議論してきて、7月25日に「中間整理」を出しましたが、結論は出さずじまいでした。

(ついでの話ですが、役所の有識者会議の名前の長さ、何とかなりませんかね…新聞で省略されるので探すのに苦労します。ウェブ版ではリンク貼ってくれればいいのにと思います)

https://www.env.go.jp/council/06earth/cp_chukanseiri.pdf

しかし、環境省は炭素税導入について、今回はかなり強気で本気のようです。幹部は「反対派はごく一部の業界に過ぎず、CO2削減をビジネスチャンスと捉える企業が増えている」と言っているそうです。

これまで反対してきたのは経産省です。毎日によると、経産省の幹部はこう言っているそうです。

「炭素税は幅広い品目の値上がりにつながり、経済に与える影響は消費税増税に近い。少なくとも今年末の本格議論はあり得ない」と反対する方針だ。ただ、同省幹部は導入論の高まりは避けられないと身構える。「過去を見ても消費税増税が難しい時期は、財務省がエネルギー・環境関連税による増収に目を向ける。産業界がいくら反対しても炭素税構想が消えないのはこのためだ」

毎日新聞2019年8月23日)

つまりは、経産省は反対だが財務省は賛成するかもしれない、と戦々恐々のようです。そこで毎日の記者向けには、増税だぞ、財務省が飲んだとしたらそれは税収上げたいだけだぞ、と、イメージダウンで言っているんでしょう。

財務省は、賛否両方の声があるようです。

経済団体はずっと炭素税に反対してきましたし、政府もその言いなりでした。このブログでも紹介しましたが、今年6月11日に決まったばかりの、政府の「パリ協定に基づく成長戦略 としての長期戦略」の77ページには、炭素税を含むカーボンプライシングを導入しない言い訳を色々並べており、それに対して、日本商工会議所の三村会頭が同日に歓迎のコメントを出しています。事前に日本商工会議所とすり合わせたうえで政府の長期戦略が決まっているのは明らかです。

https://www.env.go.jp/press/111781.pdf

「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の閣議決定に対する三村会頭コメント - 日本商工会議所

温暖化で成果見込めないG20。日本の環境政策は、欧州緑の党の「炭素税・配当」政策と、アメリカの「グリーン・ニューディール」を取り入れるべき! - 日本の改革

更に言えば、これも本ブログで書いた通り、電力総連など連合傘下の労働組合も、炭素税には反対で、国民民主党の議員といっしょに政府に反対の要望まで出しています。

連合の神津会長が「連合は原発推進派ではない」と大嘘。傘下の電力総連等は、経団連同様、原発再稼働も推進、石炭火力発電も推進で、国民民主党を拘束。 - 日本の改革

そんな状態だったのですが、やはり時代の流れは止められません。毎日が取材した環境省幹部氏が言う通り、CO2削減をビジネスチャンスと捉える企業が増えています。

日経の先の記事では、富士通やリコーなどが参加する日本気候リーダーズ・パートナーシップは、炭素税に反対どころか逆に、18年末に政府にカーボンプライシングの導入を提言したという例を紹介しています。また、環境対応に消極的な企業から投資を引き揚げる「ダイベストメント」の動きも広がったため、環境省は議論を進める好機と判断した、とのことです。

日本の炭素税導入は、アメリカ等の温暖化対策を促し、国内の技術革新も促す

日本が本格的に炭素税を導入すれば、パリ協定から脱退したアメリカや、中国、インドが、CO2削減に本腰を入れざるを得なくなる可能性が高くなります。日本はこれらの国と並んで、温暖化対策が進んでいない国と見なされてきたので、「あの環境後進国の日本まで炭素税を導入」となれば、アメリカ等に対する国際社会からの圧力がますます強くなるからです。

アメリカについては、トランプ大統領が代わらなければ難しいのは確かですが、フィナンシャル・タイムズのジリアン・テット氏によると、トランプ氏の支持者や支持団体、更には共和党が、もう環境重視に方針転換を始めています。

日本がまず変わることが、アメリカ等の環境政策を変えさせることにつながり、それが地球全体の実効性ある温暖化対策につながります。

www.nikkei.com

また、炭素税導入は、再生可能エネルギー開発のための技術革新を促進するでしょう。

環境規制がかえって経済成長を促す、という考え方をポーター仮説と言うそうです。科学技術・学術政策研究所の伊藤康客員研究官らが言う通り、この「厳しい環境規制はイノ ベーションを誘発し競争力を向上 させる」という仮説は、日本人には自然に受け入れやすい考え方です。日本は1970年代前半から半ばにかけて厳しい自動車排 気ガス規制を課し、これをクリアする技術革新を起こして、自動車産業の競争力 を飛躍的に高めたからです。同様のことが、炭素税と再エネの技術革新についても言えるでしょう。

https://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-STT134J-3.pdf#search=%27%E8%A6%8F%E5%88%B6%E3%81%8C%E6%8A%80%E8%A1%93%E9%9D%A9%E6%96%B0%E3%82%92%E4%BF%83%E3%81%99%27

現在の日本は、再エネ分野で、世界的に大きく遅れをとってしまいました。理由は、先に見たように政府が経済界と経産省の言いなりで、炭素税等のCO2対策を行わなかったために火力発電が温存されてきたからであり、また、原子力発電についても、同じく経済界と経産省の言いなりで固執し続けて、再エネを伸ばしてこなかったからです。以前、本ブログでも書いた通り、エネルギー基本計画での再エネ比率を2030年に50%として不確実性を減らし、そして炭素税や厳しい環境規制で技術革新を促すべきです。

なお、先に紹介した日本商工会議所等の経済団体は、「炭素税よりイノベーション」というお題目で、イノベーションとか技術革新という言葉を、炭素税等を導入しない言い訳に使っているので、注意が必要です。これについては、日経も批判しています。

www.nikkei.com

炭素税をEU並みにすれば、消費税1%を減税できる!

では、炭素税はどれくらいの水準にして、誰が負担すればよいでしょう?税収はどう使えばいいでしょう?

まず、CO2排出防止の実効性を上げるためには、EU並みに上げるべきです。各国の炭素税の比較は以下の通りです。

f:id:kaikakujapan:20190903082304p:plain

出所:環境省

https://www.env.go.jp/policy/policy/tax/mat-4.pdf#search=%27%E8%AB%B8%E5%A4%96%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%82%AD%E7%B4%A0%E7%A8%8E%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%B0%8E%E5%85%A5%E7%8A%B6%E6%B3%81%27

税率を見れば分かる通り、日本の現状は、EU等より一桁少ない税を温暖化対策税(温対税)として課しているだけです。あまりに少ないので、日本には事実上炭素税などない、とされてきました。これを少なくとも10倍にすべきです。それでようやく、EU内で中くらいのデンマーク並み、やや厳しいフランスの半分くらいです。

負担は、出来るだけ企業が負う形にして、消費者に転嫁させるべきではありません。企業に再エネ向き技術革新を促すことが重要な目的だからです。

一番重要なのは、税収の使い道です。

まず、そもそも、この税金は政策目的をもった制度なので、本来は既存の支出の財源にするべきではありません。冒頭に紹介した8月23日の毎日の記事は、財務省が税収目的で賛成するかもしれない、と書いていましたが、既存の財政支出の足しにするために炭素税を導入するというのは、心得違いです。出来るだけ税収には中立、つまりは、炭素税を徴収したらすぐそれは決まった目的に使う、という形にすべきです。

冒頭の毎日の記事では、税収の使い道について、「東京電力福島第1原発の事故処理関連費用、再エネ普及に不可欠な送電網整備、CO2削減に向けた技術開発など、産業界や経産省が反対しにくい炭素税収の使い道候補はいくつもある」としていますが、私は、いずれも違うと思います。

一部はこうした温暖化対策に使ってもいいかとは思いますが、税収のほぼ全額は国民に還元すべきです。

以前も本ブログで書いたことですが、フランスの黄色いベスト運動に見るように、環境対策で経済的弱者が打撃を受けないようにすべきです。このため、EU緑の党の言う「配当」政策が不可欠で、つまりは、税収は国民に返すべきです。

現に、先に挙げた各国の比較にある通り、フィンランドスウェーデンポルトガルは、所得税等の減税に使っています。

日本の場合、炭素税の一番ふさわしい使途は、消費税減税です。来月10%に上がりますし、消費税は逆進性が高く、確実に経済にダメージを与えます。この効果を減殺するための炭素税、その目的は温暖化防止、ということなら、国民の理解が得られるでしょう。

ものすごく荒っぽい計算で言えば、現行の温対税の税率を10倍して、税収が今の10倍になるとすれば、炭素税の税収は2兆6000億円。消費税1%分です。つまり、EUで中くらいの税率にすれば、消費税1%を減税できる計算になります。もちろん、増税で石油石炭の需要が下がるでしょうから、税率はもう少し上げないと、1%分にはならないでしょうが、やや厳しいフランスくらいにすれば、つまり現在の温対税の税率の20倍にすれば、税収は単純計算で5兆6000億円強、石油石炭の需要が半分になっても、税収は2兆8000億円、やはり消費税1%分です。

炭素税をEU並みにすれば、消費税を1%下げられます。環境も良くなる、暮らしは助かる、良いことづくめであり、政府は、この方針を打ち出すべきです。