日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

中国共産党、10月に1年半ぶりの重要会議(4全中)。香港懐柔策が何になろうと、最終的な解決方法は中国民主化のみ。

中国の白色テロが続く香港。 一方、中国共産党が、昨年不開催の重要会議(中央委員会総会)開催を決定しました。香港民主化運動の懐柔策として、香港と深圳の一体化構想等が議題になる可能性があります。中国は弾圧の一方で、深圳特区等のアメでの懐柔もしていくでしょうが、長い目で見れば、中国の民主化以外に、解決方法はありません。

10月の中国共産党の4全中の議題は、「深圳の政治特区化」か

昨日8月31日、香港では普通選挙実施の要求も含む大規模デモが予定されていましたが、デモも集会も開催が認められませんでした。香港基本法で認められた権利である集会の自由を、香港行政庁が認めないのは、異例のことです。

その前日の30日、香港警察は、雨傘運動の学生リーダーだった黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏と周庭(アグネス・チョウ)氏を逮捕しました。同日には香港独立を主張する急進的な政治団体の創設者、陳浩天氏も逮捕しました。その後、立法会議員の逮捕も報じられています。

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香港警察のデモ・集会不許可決定に対し、これまでデモを主催してきた香港民主人権戦線はやむなくデモ中止を決定しましたが、若者たちは香港島中心部などでデモを強行し、各地で警官隊と衝突しました。デモ隊は火炎瓶を投げたり、暴力をエスカレートさせました。

一方の警察は、催涙弾に放水車も使用。警察は少し前から、デモに参加していようがいまいが黒シャツと見れば殴打したり、持ち物検査で難癖をつけて逮捕したり、もうリーダー格も一般の市民も見境ありません。事態は政府側の違法不当な暴力による弾圧、いわゆる「白色テロ」の様相です。まあ、もともと中国は国全体で恒常的に白色テロを行っているようなものですが、香港で一気にそれを「過激化」させています。

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「雨傘運動」超えた香港デモ、白色テロ・警察と闘い続ける市民の怒り(ふるまい よしこ) | 現代ビジネス | 講談社(3/7)

一方、ロイターによると、中国共産党は来月10月に、党の重要会議である第19期中央委員会第4回総会(4中総会)を開催することを決めました。開催は昨年2月の3中総会以来、約1年半ぶりです。 昨年は、慣例に反して総会の開催が見送られました。対米貿易戦争や国内の経済失速などへの対応を巡って指導部内で意見が割れたためとみられています。

会議では「中国の特色ある社会主義制度の発展と完成および国家統治の近代化に向けた重要問題」について討議される見通し、ということです。

中国共産党、10月に重要会議開催 国家統治の近代化など討議 - ロイター

 ロイターの英語版見ると、この長ったらしい言い方、「中国の特色ある社会主義制度の発展と完成および国家統治の近代化に向けた重要問題」は、 “upholding and perfecting of the system of socialism with Chinese characteristics and the promotion of the modernization of state governance,”だそうで、どうも決まり文句的な大げさな言い方なようです。つまり、この表現だけでは、内容は分かりません。

前回、2018年2月の3全中では、国家主席の任期撤廃が決定され、習近平を終身の主席にすることを可能にしました。

After long gap, China's ruling elite to gather for October conclave - Reuters

前回は、習近平の地位の終身化というろくでもない独裁化を決めたから、今度もその方向になるのでしょうか?

それもあるでしょうが、それだけではないと思います。

前回は意見の違いがあって開かれなかったものを今回は開くのだから、既に争いのない大筋で決まった方針を話し合うはずです。では、既に決まったと思われる新たな方針としては、何が目玉としてあるでしょう?

香港に関連する話としては、「深圳の先行モデル再指定」という発表が8月18日になされています。恐らく、この具体化が議題の一つでしょう。構想自体は香港デモの前からあることですが、何人かの識者が言う通り、これを香港民主化運動への懐柔策として使うだろう、と思います。 

以下、遠藤誉氏の解説によりますが、8月18日、中国は深圳を社会主義先行モデル区に再指定しました。その目的は「広東、香港、マカオ」を連結した「粤港澳大湾区経済構想」を通して一国二制度を完遂し、香港を懐柔することにある、ということです。
「粤港澳大湾区」として、「広東(粤)・香港(港)・マカオ(澳)(澳門)」を結びつける「グレーターベイエリア」という構想自身は2017年から提唱されていましたが、2019年2月に中共中央・国務院が正式に発展綱要を発布していました。

中国共産党系の「環球時報」は、「香港の青年が国家の大局に融けこむ助けになる」と小見出しをつけて、記事では、「このチャンスを逃さないようにしなければならない」と宣伝。そして、深圳に移住して働けば、香港マカオの居住民に深圳の市民権を与える、としています。遠藤氏に言わせれば、「香港を捨てろ」と呼びかけているようなものだと。では、深圳市民になれば、どんないいことがあるかと言うと、

憲法や法律および行政法規などを順守するという前提のもとに、イノベーション改革実践のニーズに応じて、深セン独自の法律、行政法規あるいは地方性法規の制定の自由を一定程度認める」

というのがあり、土地所有の申請も簡素化され、土地の狭い香港から移住できるうえ、「行政法規あるいは地方性法規の制定の自由」も多少はありますよ、という懐柔策です。遠藤氏は、「香港市民の心は動くにちがいない」としています。

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福島香織氏によると、既に胡錦濤政権時代、深圳政治特区構想というのが密かに検討されていたそうです。それは、なんとなんと、「深圳市長を直接選挙で選出し、深圳市民の香港移動手続きをさらに簡素化するなど民主主義のテストを深圳で行うという構想」だったというのです。

当時の広東省の書記だった汪洋がその任を胡錦濤から直接受けていたけれど、上海閥江沢民派からの抵抗で結局挫折したそうです。この汪洋というのが、福島氏も認める政治改革派で、烏坎村事件(村民が力ずくで書記らを追い出し、村民選挙で選んだ村長を立てて自治権を奪取した事件)では、村民による直接選挙で選ばれた村長を書記に任命したそうです。

以下、福島氏の記事から引用します。

 今の政治局常務委員7人の中で、習近平とも折り合いをつけながら改革開放への舵取りができるとするなら汪洋ぐらいではないか、と見られている。
 とすると、深圳の「先行モデル区建設」は、深圳での「新一国二制度」を模索することまで視野に入れている、という想像もできるわけだ。

(中略:引用者)

 2016年に広東・香港・マカオ一体化のグレートベイエリア構想が国務院内で討議され始めたとき、政治システムの違う地域をどうやって統合するかについて議論が分かれた。つまり、香港が広東に吸収されるのか、香港の影響力をもって広東の改革開放、経済の自由化を促進するのか。今年(2019年)2月に正式に打ち出された方針は「香港の中国化」であり、これが今の香港の「反送中デモ」(逃亡犯条例改正案反対デモだが本質は中国化への抵抗デモ)を引き起こした背景だとも言える。
 しかし、香港デモが継続すると、グレートベイエリア構想も頓挫しかねない。ならば、香港の一国二制度を深圳に拡大するか、あるいは、香港とは違う、新一国二制度を深圳で成功させて、香港に代わるモデルとして提示するしかない。

jbpress.ismedia.jp

遠藤氏と福島氏の記事に基づいて、習近平含む中国共産党中央の考えを想像してみます。

習近平自身の最終目的は、とにかく独裁の維持・強化です。一方で、いったんは懐柔しないといけません。そこで、香港の民主化は認めない代わりに、中国本土の深圳の特区を、香港よりは自由度が低いけれど土地も広いし多少は自治が認められる特区にしてやるから、「新一国二制度」として、それで何とか我慢しろ、と、こういう呼びかけをするのでしょう。習近平としては、外国との約束がある香港の自由は徐々に奪いつつ、懐柔策として、本土の法制度での特区を提案して、香港の民主化要求を鈍らせてしてしまえば、ほとぼりが冷めたころに煮るなり焼くなり簡単だ、と思っているのでしょう。

もちろん、汪洋をはじめとする改革派は、別の発想で、いったん特区で認めたら、やがては少しずつ他の地域に広げることも考えているかもしれません。

いずれにせよ、香港市民をだまして独裁を強化しようとする習近平も、やや独裁を緩めるべきと考える改革派も、最終目的は呉越同舟でも、当面の香港懐柔策として合意できる方針でしょう。

10月の4全中では、こんな話も打ち出してくるのではないかと思います。

話は香港・深圳ではすまない。諸国民は、2047年までに中国の民主化を目指そう。

香港では、警察権力のすさまじい濫用が続いています。が、中国の武装警察や人民解放軍の本格的投入はなされていません。

その可能性も取り沙汰されてきましたが、既に12月29日夜、全人代の香港地区代表で香港特区基本法委員会の譚恵珠(マリア・タム)副主任は、香港は緊急条例を発動したり中国軍に介入を要請したりする状況には程遠いとの見解を明らかにしていました。実際のデモでの火炎瓶投下等を見て、中国は考えを変える可能性もなくはないですが、「違法」デモから1日経っても、まだ、ちらちらと脅しをしているだけです。

香港、中国軍介入が必要な状況にない=全人代香港代表 - ロイター

中国は、当面、香港の民主化運動を完全に武力で抑え込むのでなければ、何とか懐柔させないといけません。

今回8月31日のデモ前日のロイターによると、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官はデモの参加者が掲げる「5大要求」について検討した報告書を中国政府に提出し、「逃亡犯条例」改正案を撤回すれば抗議デモの鎮静化につながる可能性があるとの見解を示していたけれど、中国の中央政府は、改正案の撤回に関する同長官の提案を拒否し、5大要求の他の項目についても、要求に応じるべきではないとの見解を示したそうです。

香港政府の抗議デモ対策案、中国政府が拒否=関係筋 - ロイター

 この報道、面白いのは、「匿名の香港政府高官が」せっかくの効果的な提案を中国政府が拒否したとバラしたり、匿名の「中国政府高官が」林鄭長官が報告書を提出したのは、中国政府のハイレベル機関「中央香港マカオ工作協調小組」で、習近平国家主席も報告書の存在を知っているとか暴露していることです。

香港行政庁の高官も、中国政府の高官も、「カラー革命の陰謀をめぐらす欧米」の報道機関ロイターにぺらぺらしゃべっています。ということは恐らく、香港行政庁の妥協案を蹴った習近平の決定に不満なのでしょう。香港警察の強硬姿勢の一方で、香港行政庁はもとより、党中央も揺れている様子が伺えます。

福島氏の記事にある通り、中国共産党にたった7人しかいないパワーエリートの政治局常務委員の一人の汪洋は、深圳に選挙もありの「政治特区」を作るくらいは平気でやる可能性があります。

そんなわけで、中国は、香港民主化運動の五大要求のようなものをそのままは認めない、しかしそれさえ、党内に異論はある、それどころか、深圳について、中国本土で、何らかの「政治特区」が認められる可能性がある、ということです。

こう見れば、香港の民主化運動は、少しずつ中国共産党を動かし始めています。

もちろん、香港の運動家達は、この程度では、全く満足していません。自分達の要求は結局蹴られたままで、行政庁長官は対話にも応じないからです。彼らにとって、深圳特区案など、結局は香港を捨てろと言う上に「なんちゃって民主化」にすぎないので、結局はごまかしに過ぎないのでしょう。あくまで徹底的に戦って、五大要求を通し、香港での人権と民主化の確立を目指しています。

一時逮捕された黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は、ニューヨークタイムズエコノミスト、ドイツのヴェルトといった欧米の一流紙に、香港民主化への支援を訴えまくっています。

www.nytimes.com

www.economist.com

www.welt.de

香港の運動家だけではありません。

中国出身の盲目の弁護士で現在は米国亡命中の陳光誠氏は、一昨日8月30日、ワシントン・ポストの社説で、トランプ政権の米中冷戦は正しいとして、中国共産党との闘いを国際社会に呼びかけています。

www.washingtonpost.com

 (陳光誠氏のプロフィールは、たとえばこちらをご覧ください)

陳光誠(ちんこうせい)さん Chen Guangcheng : アムネスティ日本 AMNESTY

彼らはもう、中国共産党が恩恵として与える特区制度等では満足せず、香港における自由と民主主義の確立、ひいては、中国全体の民主化を目指して、国際社会に連帯を呼びかけています。実現の手段は、平和的デモに加えて、多少の暴力による威嚇、そして、国際世論と国際社会の圧力です。

香港の一国二制度は、いずれにせよ、2047年には終わります。2019年に、これほど真剣な戦いが行われてるのは、2047年にまだ中国共産党一党独裁が続いているのが前提で、それまでの期間限定の戦い、などという話ではありません。もう、目標は、中国自体の民主化に移りつつあり、香港の民主化はその第一歩という位置づけと見るべきです。

これは、以前私もブログで主張した、雨傘運動の指導者・周保松氏の「香港は中国民主化の特区を目指すべきだ」という論です。

www.sankei.com

香港行政長官、逃亡犯条例改正を無期延期。それでも香港市民は満足しない。香港を中国民主化の特区に! - 日本の改革

「中国の民主化」なんて本当に可能なのか、疑問に思う人もいるでしょう。今年6月3日、天安門事件30周年の前日、日経で、香港から民主化を支援してきた元民主党主席の李柱銘氏がインタビューで、「すぐにはできないが、将来的には可能だ」と答えています。香港の民主派は最終目標をそこに置いています。

www.nikkei.com

それだって、結局は香港の人が言ってることじゃないか、中国本土の中国人は、香港のデモなんて反対なんじゃないのか?と思う人もいるでしょう。確かに、大多数の中国人は情報を遮断されて愛国教育で共産党の価値観を内部化させてしまっています。しかし、香港と行き来して現状を知って、香港のデモに危険をおかして参加する中国人も出てきています。

jp.wsj.com

それでも、中国民主化なんて無理だ、幻想だ、という人が、専門家も含めてほとんどでしょう。しかし、米ソ冷戦だってほとんど誰も終わるなんて思っていませんでした。特に、専門家の多くはそう思っていたでしょう。

私は、これを疑ったのが外交の素人レーガン大統領だったと思っています。彼は、良い意味で専門家の多数意見に頼りすぎず、国民の声で鍛えた信念に基づいて、社会主義のような非人間的で残虐な政治体制は維持不可能で倒せる、と考えたのでしょう。もちろん、政策の遂行にあたっては、米ソ冷戦終結は可能と考えた少数の優れた専門家には十分力を発揮してもらったからこそ、本当に冷戦に勝てたのでしょう。

そのレーガンの偉大な直観を支えたのが、一人一人のアメリカ国民の素人なりの直観だったのではないかと思います。ソ連のような、自由もない、民主主義もない、国際法は平気で無視する、そんな国は許してはならないし、本当に倒す気になれば倒せるはずだ―漠然とでも、そう考え、感じた人達一人一人の声が、レーガンのような政治家を支え、動かしたはずです。

幸い、日本の大手メディアは、中国の民主化を公然と訴えるようになりました。本ブログでも取り上げましたが、天安門事件から30周年の6月4日、日経、朝日、産経の社説は、そろって、日本政府が中国に民主化を呼びかけるべきだ、と書きました。もう、日本国民は、メディアも含めて、中国の今の政治体制を許してはならない、ということに、気が付き始めています。

日米が天安門事件を許したことが全ての間違いの元。日経、朝日、産経が一致して「日本は中国に民主化を求めるべき」と主張。 - 日本の改革

今回の香港の戦いだけで、すぐに中国全土の民主化が達成できるわけではありません。しかし、中国民主化を実現するための重要な契機にすることはできますし、しなければいけません。それには、米国大統領をはじめ、多くの政治家や要路の人々が動かなければいけないのはもちろんですが、この人たちを動かすのも、やはり最終的には、我々一人一人の国民なのだろうと思います。世界の諸国民は、2047年までに、中国を民主化するべく、それぞれに声を上げるべきです。