日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

アフリカ支援のTICAD、援助の「質」を言うなら、JOCのような外国公務員買収を禁止し、アフリカでの一帯一路非協力を明言せよ。

日本が主導するアフリカ開発会議TICAD)、民間主導で援助の質にこだわって中国と差別化する、と言いますが、民間がJOCのような外国公務員買収をしないよう、刑法改正をすべきです。また、政府と共同して融資を行うアフリカ開発銀行は一帯一路を手放しで評価、中国もアフリカの一帯一路への日本の協力に期待。こちらは、非協力を明言すべきです。

3日間で40回超の首脳会談。総理、お疲れ様でした。

第7回アフリカ開発会議TICAD)が、8月30日、「横浜宣言」を採択して閉幕した。特徴は、①政府の公的援助よりも、民間主導の投資と人材育成を強調したことと、②中国の融資で過剰債務を抱える国などの実態を踏まえ、援助の質を改善し、中国に対抗する狙いがあります。

②については、横浜宣言で、「自由で開かれたインド太平洋構想」に初めて触れて、中国の「一帯一路」構想を意識しています。

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中国やインドの経済が成熟化するなか、人口が増え続けて高成長のアフリカは最後のフロンティアとも言われており、旧宗主国はもとより、アメリカ、ロシア、中国、インド各国が支援競争でしのぎを削っています。

日本にとっては、巨大市場としても資源供給源としても重要ですし、何より、中国が外交上は台湾問題でのアフリカ票の獲得、安全保障上は戦略物資や地中海に至るルート確保等で、プレゼンスを増しており、その対策が必要です。また、日本自身も、国連安保理での常任理事国化を目指して、アフリカ票の確保が必要です。

こうした事情を考えると、民間はともかく、政府の方は、あの広大なアフリカ大陸(東西にも南北にも日本からアメリカくらいの距離があります…)のたくさんの国々に対して、「メリハリをつけて数カ国にしぼる」というだけではいけません。アフリカに限りませんが、国内の選挙の延長のように、できるだけ多くの国との友好関係が必要です。

そんなわけで、安倍総理は、横浜でのTICADの会議中の3日間で、なんと40回を超える首脳会談をこなしました。10~15分のものも多いですが、それにしても大したものです。「地球俯瞰外交」を掲げて頑張る安倍総理は、やはり大したものだと思いますし、一国民として感謝したい気持ちになります。

第7回アフリカ開発会議(TICAD7) | 外務省

以上のように、TICADをはじめとするアフリカ外交について、安倍外交の「地球俯瞰外交」としての面は、高く評価できると思います。

一方、「価値観外交」という点ではどうでしょうか?

自由と民主主義という価値観を同じくする同盟国のアメリカは、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が、中国とロシアのアフリカ支援を「略奪的だ」と批判し、特に中国の一帯一路に対抗して、新たな支援枠組みでアフリカへの援助を行う予定です。

本来、この枠組みに乗る形で、アメリカとともにアフリカ支援を行うようにした方が、経済上も外交・安保上も目的が達成しやすくなって良いはずだと思います。

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米中バトル、アフリカでも トランプ政権は投資組織新設 TICAD開幕 - 産経ニュース

ただ、TICADという枠組みは冷戦終結後に欧米がアフリカ支援を減らした際に、日本が人道的な目的も含めて始めた経緯もあるようです。支援について、欧米同様の原則、即ち、自由主義と民主主義を守った透明性の高い公平な形をとるなら、日本独自の枠組みを続けることは良いことでしょう。

一方、今回、少なくとも報道で強調されているような、(1)民間主導という点と、(2)中国とは違う質の高い援助を行うという点、なかでも、(3)一帯一路と差別化するという点については、本当にそうなるのか、出来るのか、疑問があります。

(1)民間企業は本当に投資してくれるのか

まず、民間主導という点です。安倍総理は基調演説で、日本政府として今後3年間で200億ドル(約2兆1000億円)を上回る民間投資の実現を後押しする考えを表明しました。

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民間の投資をどう促すかですが、ジェトロとJICAが、ビジネスセミナー等によって、情報提供を行ったりするようです。もちろん、後に述べる政府の融資(3000億円程度、アフリカ開発銀行といっしょに行います)も、要所で組み合わせるのでしょう。

アフリカビジネスの成功を通じた持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、ジェトロ・JICA・UNDPが業務協力覚書を締結 | 2019年 - 記者発表 - お知らせ・記者発表 - ジェトロ

では、この目標は達成可能でしょうか?TICADは3年に1回開かれており、今回は7回目なわけですが、前回の第6回、2016年のときには、アフリカへの300億ドル規模(約3.4兆円)の投資と言っていましたが、去年9月で達成できたのは160億ドルでした。現地の日本企業からは見通しの甘さを指摘する声も出ていたそうです。

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今回、民間企業の投資額目標が200億ドルとなったのは、前回の反省を踏まえて、目標を下方修正したのでしょう。

それでも、アフリカはそう甘い市場ではないようです。そもそも、成長率は他の地域より高いとは言え、まだまだ低所得層が圧倒的に多く、中間層を当て込んだ企業で撤退がが相次いでいるようです。日経には、日清と丸亀製麺の例が出ていました。即席めんさえ苦戦です。

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そもそも、2015年以降、アフリカの成長率は鈍化しています。理由は、この頃から中国の投資も減ったからとも言われており、やはり自律的な成長が出来ていません。経団連サブサハラ地域委員長の小沢哲氏によると、小沢氏出身の豊田通商コートジボワールカルフールといっしょうにやったショッピングモールはうまくいったようです。が、ちょっと高いものは売れないということで、「中間層は言われているほど形成されていない、というのが正直な感想だ」と言っています。

小沢氏は、中間層を作るには、やはり製造業を作って雇用を増やさないといけない、と主張します。が、それもちょっとモノづくり大国のバイアスのようにも見えますし(豊田通商の人が言うことですしね…)、日本企業が安心して進出できるような見通しを立てること自体が難しいのが現実に見えます。

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(2)援助の質は本当に確保できるか?

次に、援助の「質」についてです。そもそも、中国のアフリカ支援の「質」が低いとは、どういうことでしょうか。高橋基樹教授(京都大学)は、論説「 TICAD と FOCAC:日中「協調」下の対アフリカ開発協力のあり方 」(2019年)で、中国のアフリカ支援につき、次のような問題点を指摘しています。

・対象国の借入の膨張がアフリカ諸国の財政規律 を弛緩させる:かつて債務不履行に陥って債務帳消しされたことを無視して中国は融資をしているため

・対象国の行財政改革と一体化した援助が阻害される:従来からの欧米等の支援国等は、行財政改革等を伴う計画的な複数国等が協力した援助を目指して、 2005 年に、援助効果向上に関する「パリ宣言」を制定。しかし、中国の援助は、基本的に政府予算外で、既存の行財政機構から独立して 行われている。しかも中国は他の支援国等との協議に加わろうとしない。このため、既存国・機関の努力が無に帰している。

・政治権力者による行財政の恣意的な運用や腐敗:中国は対象国の改革に無関心、条件をつけずに融資。当然、不採算事業は拡大、公的債務の膨張を助長。ケニアでは大物政治家たちによる中国の支援関連の 利権が取り沙汰され、ザンビアでは中国と癒着した政府与党が債務を 膨れ上がらせているとの批判、中国による国家資産買占めの懸念。

以上のような問題点があるので、TICAD では、「改めて公共行財政管理と開発運営の透明化・公正化、さらには持 続性の向上を打ち出す必要がある」、そうした形で「質」にこだわるべきだ、というのが、高橋教授の主張です。

http://www.sridonline.org/j/doc/j201901s03a03.pdf#search=%27%E9%AB%98%E6%A9%8B%E5%9F%BA%E6%A8%B9+中国+%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%27

高橋氏は、こうした視点から、今回のTICADについても、日本は民間企業の投資よりも、むしろ公共サービス支援を行うべきだ、と主張しています。

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日本が前回も今回も、政府による支援よりも、民間企業投資を重視しているのは、そもそも政府予算が中国のように潤沢に使えないからでしょう。仮にそれがどうしても変えられないとしたら、民間企業投資についても、政治腐敗を招かないような、厳しいルールを設けるべきです。

この点で、最近の日本が引き起こした忌まわしい事件が、JOC(及び電通の関連会社)によるオリンピック不正誘致に係る外国公務員等の買収です。これについては、本ブログでも書きましたが、日本は、OECD外国公務員贈賄防止条約の締結国です。ロッキード事件を契機に、アメリカが1977年に、外国公務員に対する商業目的での贈賄行為を違法とする「海外腐敗行為防止法」を制定し、国連、OECD等においても各国の取組を要請して出来た条約です。国内法では、不正競争防止法で外国公務員への贈賄を禁止しています。

国際NGOのトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が、昨年9月に「腐敗輸出報告書」の2018年版を公表しました。日本は4段階あるうちの最低ランク「ほとんど、もしくは全く執行なし」に位置づけられています。

http://www.ti-j.org/japan_2018_OECD_Exporting_Corruption_Press_release2.pdf

招致に贈賄が必要なら、東京五輪なんていらなかった:日本は海外への「腐敗の輸出」を止めろ - 日本の改革

そもそも、不正競争防止法だけでなく、もっと広い範囲で、外国公務員への贈賄を禁止すべきです。JOCの不正誘致事件があった以上、そして、日本が腐敗輸出の点で特にひどいと批判されている点からも、当然行うべきことです。

ましてや、アフリカのような、国民が飢餓等で苦しむ一方で特権階級が政治・経済を牛耳るような国が多い地域で、政治家や公務員の公務の公正を捻じ曲げるようなことは、絶対に許してはいけません。トランスペアレンシー・インターナショナルによる、政府的腐敗度の指数を見ても、アフリカは下図のように、特に問題が大きい地域です。

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出所:Transparency International

http://www.ti-j.org/2018_CPI_Global_Map.jpg

こうした国々への政府援助や民間投資にあたっては、当たり前のこととは言え、政治家や公務員から賄賂を要求されたりしても、毅然とはねつけて、場合によってはプロジェクト自体を中止しなければ、現地の独裁政権や私的な権力を助長させ、対象国の国民の生活をかえって苦しめることになりかねません。

TICADが、本当に質の高い援助を実現する枠組みとして、国際的な信頼と尊敬を勝ち得るためには、日本国内の刑法も改正すべきです。

(3)結局は、一帯一路プロジェクトに協力するのではないか?

最後に、TICADは、本当に、一帯一路に「対抗」して、アフリカの一帯一路プロジェクトには協力しない形で行われるでしょうか?

私は、あやしいものだと思っています。

まず、先に書いた通り、民間主導と言いながら、民間投資は3年前からうまくいかずに目標を下方修正したくらいですし、はっきりと投資を増やす手立ても見つかっていません。

民間投資の呼び水やサポートになりうるのが、政府の融資です。日本政府は、アフリカ開発銀行とともに、3000億円超を拠出する予定です。規制緩和を条件に融資する仕組みも導入することで、「質の高いインフラ融資」をしましょうということです。

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ところが、このアフリカ開発銀行(AfDB)のアデシナ総裁は30日、日本経済新聞のインタビューに対し、中国の「一帯一路」について「アフリカの経済成長に寄与する」と評価しました。そのうえ、中国が過剰債務の代償としてインフラ権益を奪う「債務のワナ」について「中国がそうした意図を持っているとは思わない」と述べ、中国のインフラ投資を歓迎する姿勢を見せています。

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そもそも、日本は、「第三国市場協力」と言い方だけ変えて、一帯一路に日中以外の「第三国」で協力する、という方針を示して、既に多くのプロジェクトが挙げられています。これについては以前も、本ブログで取り上げ、安倍総理肝いりのタイでのプロジェクトが失敗した例も挙げて、日本は一帯一路への協力をやめるべきだ、と主張しました。

米中冷戦のなか、一帯一路への協力は早くやめるべき。目玉プロジェクトが早くも頓挫。対中外交の転換を。 - 日本の改革

日本は東南アジア等では、既に一帯一路に協力している姿勢を見せているのです。しかも、中国は、日本がアフリカでも一帯一路に協力することに期待しています。

2019年3月16日のレコードチャイナは、「人民中国」の記事の紹介として、全国政協委員を務める中国現代国際関係研究院の季志業院長の発言を挙げています。

それによると、季志業氏は、日中が第三国市場協力を実施するうえで第一の選択肢となるは東南アジア地域だ、としたうえで、以下のように発言しています。

アフリカも日中が第三国市場協力を実施するうえでの良い選択肢だ。近年中国企業はアフリカで急速に業務を拡大しており、日本政府もアフリカで「より高い水準」の協力を実施する方針を打ち出している。季氏は、日本企業が参加することで中国企業のアフリカでの協力水準の向上が促されると考える。

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以上のように、民間投資のもともとの困難さや、協調融資を行うアフリカ開発投資銀行の姿勢、それに中国自身の歓迎の姿勢、そして何よりも、対象国の多くが既に中国からの投資を受け入れていて、多数の中国企業が進出している事実を考えれば、TICADの目標を達成する数字合わせで、日本政府や日本企業が一帯一路プロジェクト等で中国と手を組んでしまう可能性はあるだろうと思います。そんなことは絶対にさせてはいけません。

日本は、国益のためにも、アフリカ諸国民のためにも、そして国際社会全体のためにも、次回以降のTICADでは、出来る限り公的支援を増やすとともに、民間企業投資については、外国人公務員贈賄等を禁止する法改正を行い、少なくともアフリカでの一帯一路等の中国の不公正プロジェクトには協力しない、と言う点を明言すべきです。