日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

日韓、アメリカに怒られて少し冷静に?橋下徹氏と田中均氏が示す落としどころで妥協せよ。

・日韓政府でいくらか正気の歩み寄りが見えてきました。一方、橋下徹氏と田中均氏が揃って、日本が目指すべき最終的な落としどころを示しています。ポイントは①個人請求権の存在と徴用工判決は認める、②賠償金の負担は韓国政府が行う、③安保と経済(輸出管理)を絡めない、です。

・日本は「韓国国民の個人請求権を認めるから日本国民の個人請求権も認めよ」と主張して、一度徹底して歴史認識で議論を行って共通認識を作れば、両国関係はかえって強化できるでしょう。日韓関係につき、政府だけでなく両国民とも頭を冷やすべきです。

アメリカに本気で怒られる日韓政府、少しは歩み寄りか

アメリカは本気で怒っています。日韓両政府に呆れて、さっさと仲直りしろと叱りつけています。

シュライバー米国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は8月28日、韓国が日本に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたことに関し、「韓国に協定の延長を求める」と述べ、破棄決定を取り消するよう促しました。韓国の破棄決定への「失望」を改めて表明しました。韓国はアメリカに怒られちゃいました。

一方、シュライバー氏は「日韓が問題解決に向け、互いにこれ以上苦情を述べ立てるのではなく、意味のある対話を早々に始めるよう求める」と訴えました。韓国と並ばされて、日本も怒られちゃいました。

エスパー国防長官も同日、日韓対立が協定の破棄通告に発展したことに「非常に失望している」と述べ、中国や北朝鮮の脅威に備える上で「日韓は早急に対立を解消してほしい」と促しました。日韓両方とも、向こうの閣僚にも怒られました。

www.sankei.com

これと前後して、日本政府の外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は29日、ソウルで韓国外務省の金丁漢アジア太平洋局長と会談しました。3時間も会談して物別れではあったようですが、引き続き外交当局間で協議を継続していくことで一致しました。大変結構です。よくできました。

www.nikkei.com

さらに、韓国メディアが報じたという日経からのまた聞き情報ではありますが、29日、日本政府が7月から輸出管理を強化した韓国向けの半導体材料3品目のうち、半導体の洗浄に使う「フッ化水素」の輸出を許可したそうです。これが事実なら、ますます結構です。大変よくできました。

アメリカのメディアは真剣に懸念しつつ、日韓両国をバカにしています。それはそうでしょう。両方とも中国と北朝鮮の核ミサイルに脅されている者同士なのに、意地の張り合いで日米韓の防衛協力まで犠牲にし始めたのですから。

ザ・ヒルは、今回の日韓対立を「spitting contest」とひどい表現で罵倒しています。同時に、これはアメリカの力が弱くなった証拠だ、これまでアメリカがコルクの栓の役割を果たしていたのに、両国がやたらにナショナリスティックになって言うことを聞かなくなった、アメリカと地域の安全保障にとって危険だ、との趣旨の主張をしていて、真摯に懸念しています。

thehill.com

同じザ・ヒルで、タフツ大学のSung-Yoon Lee教授に至っては、日韓政府の罵倒なんかせずに、ストレートにトランプ政権に要求しています。日本と韓国に、米軍を減らすぞと脅しをかけて、両国の方針を変えさせるべきだ、と言っています。

thehill.com

以前より力が衰えたとは言っても、米軍を減らすぞと言われたら、さすがに日韓政府には利くでしょう。冒頭に見たような動きが本当に両国の歩み寄りの兆しなら、既にこんな脅しがされているのかもしれません。なんであれ、日韓両政府はもっと冷静になるべきですし、日韓両国民は更に冷静になるべきです。敵は中国・北朝鮮です。

橋下徹氏と田中均氏の示す落としどころ

では、冷静になったところで、日韓の対立はどう決着させるべきでしょうか?橋下徹氏と田中均氏が(私の理解では)、お二人とも共通の落としどころを示されています。

橋下徹氏は、ずっと前から、日本政府が日韓請求権協定をタテに、韓国国民の個人請求権を一切否定するのは間違いだ、と言ってこられました。

 去年の10月、橋下氏がこう発信したとき、ほとんど関心を集めなかったように見えました。自民支持層や無党派でも安全保障を真面目に考えている人、要は、大雑把に「保守層」とくくられている人達の考え方とは全く違ったからです。ましてやバカウヨは絶対反対でしょう。橋下氏自身、それは予想していたようで、上のスレッドの最後にはこう書いています。

今回の僕のツイートは、政府見解の歴史的経緯、その背景、法理論が分からない人にはチンプンカンプン。巷で氾濫している浅い知識でも理解不可。外交保護権の放棄と個人請求権の放棄の違いが分からない人、そもそも頭の悪い人は読まない方がいい。

白状すると、私もこれを最初に読んだ頃は全く不勉強で、文字通り「チンプンカンプン」だったのですが、その後、山本清太氏の主張等にふれて、ようやく理解できるようになり、ブログでも拙い理解をまとめてみました。

「日韓は仲良くやっていく必要がある」:トランプ氏にまでこう言われる日韓政府は恥を知れ。 - 日本の改革

さて、橋下氏は、個人請求権について、日本政府が外交保護権、日本の裁判所が訴権は認めないとしても、裁判外での請求については、その存在自体は否定しないという考え方です。さらに、昨日のメルマガでは、日本の韓国に対する植民地支配の合法性についても、日本と韓国では考え方が違って当然として、徴用工判決は認めるべきだ、と主張しています。

韓国の大法院判決が「日韓併合条約は『違法』で、それをきっかけとした日本企業の非人道的行為について慰謝料責任を認めた」としているのを、日本政府と立場が違うとしても、日本と立場の違う国で三権分立の結果、こうした判決が出ること自体は容認すべき、との立場です。

そのうえで、「韓国内の日本企業の財産を差押え、現金化し、日本企業に実損を与えたのであれば、韓国政府はその分をしっかりと日本側に補償すべきだ」と主張しています。そして、「韓国政府が補償しないというのであれば、日本側はあの手この手を尽くして、韓国側からお金をむしり取るべき」としています。

一方、「韓国をいわゆるホワイト国から除外するという輸出管理手続きの厳格化をしても、徴用工判決によって被る日本の実損を回復できるわけではない」として、この問題に輸出管理を持ち出すことを批判しています。

president.jp

次に、田中均氏の主張です。田中氏の論理は明快そのもです。

まず重要なのは徴用工問題だ。

私はいくつかの原則を確認することが重要と思う。

第一に、大法院の独立は侵せない。

第二に、個人の請求権は消滅しているわけではない。

第三に、日韓両国は日韓基本条約で相手国に対する請求権を放棄した。

そして第四に、現在生じている国内法と国際法の齟齬を解消する責任は韓国政府にある。
 この齟齬を解消するのは簡単ではないが、最も正統的なのは韓国政府が元徴用工に対する支払いを行うことだ。

webronza.asahi.com

田中氏の主張は、韓国の国内法での裁判所判決は尊重したうえで、国際法上の義務との矛盾が生じた点については、「国際法上は」韓国が調整する義務を負う、という考え方で、そこについては日本政府と同じです。日本政府と違う(ように見える)のは、個人請求権の扱いです。これも実は、日本政府は過去に認めてきた話なのですから、飲むことはできるはずです。

さらに、日韓関係の基本認識として、安全保障上の協力が必要なことを強調したうえで、経済的相互依存関係を崩すべきではなく、輸出管理の問題での応酬はやめるべきだ、と言っています。

そして、結論として、

「要するに徴用工問題の原則の確認の上に立って、日本の輸出管理上の措置は元に戻し、GSOMIAは継続するということだ。」

としています。

以上より、橋下徹氏、田中均氏は、以下のような共通の落としどころを示しています。

①個人請求権の存在と徴用工判決は認める:日本が譲る

②賠償金の負担は韓国政府が行う:韓国が譲る

③安保と経済(輸出管理)を絡めない:日韓でウィンウィン

そしてもちろん、田中氏の言う通り、GSOMIAは継続すべきです。これも日韓ウィンウィンです。

(GSOMIAについて、橋下氏も同じ考えでしょうけれど、今回のメルマガではたまたま「べき論」にふれていませんでした。)

21世紀は個人の時代。個人請求権を軸に歴史認識でも歩み寄りを

では、どうすれば、この落としどころに到達できるでしょうか?

仮に、韓国政府が、あくまで賠償金は日本企業が支払うべきだ、という立場だったら、本ブログで以前書いたように、韓国の国民に個人請求権を認めるなら、日本国民にも個人請求権を認めるべきだ、と主張して、全体として、双方でどれくらいの請求権があるか、試算してみたら良いと思います。

橋下氏が言われる「韓国政府が補償しないというのであれば、日本側はあの手この手を尽くして、韓国側からお金をむしり取るべき」というときの、「あの手この手」の一つです。

橋下氏が主張するのは、たとえて言えば、「目には目を、歯には歯を」。相手が裁判で個人請求権できているときに、輸出管理で応酬しても意味がない、ということです。それなら、個人請求権には個人請求権で、そしてその限度で反撃して、同じ土俵で綱引きして妥協点を探るのが、日韓の他の関係には影響が及ばなくてよいでしょう。

これに対し、日本政府がやったように、歴史認識のからむ裁判での敗訴に対して、輸出管理という全然別の手段で対抗したら、今度は向こうも輸出管理で対抗することになりますし、現にそうなりました。こうなると、田中氏の懸念する通り、日韓の経済関係での報復合戦となってしまいます。

現状はもうそれどころではなく、歴史認識に基づく裁判⇒安保口実の経済制裁⇒安全保障上の自爆テロ⇒両国民の国民感情の悪化、差別感情の煽動⇒文化交流への影響、と、あらゆる分野での全面的でスパイラル的な日韓関係の悪化になっています。この悪循環を喜ぶのは、中国、北朝鮮、ロシアだけです。もうこのへんで止めなければいけません。

橋下氏、田中氏の主張で、落としどころはもう見えてきました。アメリカの仲介や脅しがあれば、何とかその落としどころで折り合えるかもしれません。韓国政府が橋下・田中案に乗るなら、日本があえて個人請求権まで持ち出さなくてもいいでしょう。

ただ、橋下・田中案でいったん解決して、日韓世論の興奮も少しはおさまったら、植民地支配の合法性という歴史認識の問題に、両国政府と両国の国民は正面から向き合うべきでしょう。これも、橋下氏が昨日のメルマガで言われている通りです。

そして、日韓の立場が正反対で対立し続け、下手をすれば全面的な対立にまでなってしまうような問題、日本の植民地支配に関する法的・経済的関係を、21世紀という時点で振り返るならば、日韓両国の国民の個人請求権はどう考えるべきか、いずれにせよ考える必要はあります。

かつて、国家が個人の権利を軽視して行った戦争や植民地支配について、21世紀の人権感覚で、個人の権利をベースに考え直すことで、かえって未来志向の国家関係、国際社会を構築していけるのではないか。今さらお互いに恨んだり憎んだりはしない、でも忘れないし、お互いに法的権利・経済的利害の実態を正確に理解し合って、合意できる共通の基盤を前向きに見つけていく。

今回の日韓対立が、日韓関係はもとより、国際社会をそのような方向に進めていくきっかけになってくれることを願っています。