日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

G7でのトランプ発言「私が中国にやっていることは、25年前に行われるべきだった」

ビアリッツのG7、環境と北朝鮮以外はまあまあの成果。イランは対話の雰囲気、香港は中国牽制、米中貿易戦争は黙認です。環境政策の進展は、米国大統領を代えるしかないでしょう。ただ、トランプ氏の中国観は正しいので、次の大統領にも引き継いでほしいところです。

中国に対し、民主主義国家の結束を一応見せたG7

ビアリッツのG7が、1ページの宣言文書を発表して閉幕しました。

ワシントン・ポストは、合意がほとんどないと言って叩いています。ホスト国のフランスは最初から貿易と環境で合意をあきらめていた、トランプは中国について発言がぶれたうえ、環境政策についてG20に続いて孤立している、第一、北朝鮮のミサイルから欧州経済の不調、ブレグジットまで決めるべきことは沢山あるのに、決まったのはアマゾン火災に20億ドル出すということだけだ、というわけです。アメリカのメディアには、他にもこうした論調が見られます。

www.washingtonpost.com

日経に至っては、G7では、自国第一主義が行き過ぎていて、1930年代同様の危機か、などと書いています。

www.nikkei.com

確かに、今回は、具体的な政策合意を詰めないで、首脳同士で文字通り一枚紙の宣言を出しただけです。北朝鮮環境政策は、やはり問題です。が、それ以外についての宣言の内容は、まあ、こんなものだろうな、という程度の納得感はあります。

www.nikkei.com

 

北朝鮮について、トランプ氏がミサイル実験に甘すぎるのは確かで、ここは大きな問題です。ただ、この点は、日米欧で結束しても、非核化はどうせ無理でしょう。核保有国として事実上認めつつ、核ミサイルを無力化できるような安全保障体制を作るべきで、そのための話し合いをしてほしかったところです。

環境政策では、トランプ氏が首脳同士の会合にさえ出ないということで、相変わらずです。パリ協定脱退後、アメリカは国産資源の利用を打ち出し、石炭産業等に対する規制を大幅に緩和する等、環境政策を180度転換しました。

http://www.21ppi.org/pdf/thesis/190531_2.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB+%E7%9F%B3%E7%82%AD%E7%94%A3%E6%A5%AD%27

ただ、これを批判しているだけでもダメで、炭素税の導入等の政策を厳しく行うならば、石炭産業等の労働者の今後の雇用をどうするか、真剣に考えないといけません。

本ブログでは、欧州緑の党が言う「炭素税+配当」という組み合わせで、環境規制で現実に負担を受ける人達への補助金等の支援が必要だ、と主張してきました。

温暖化で成果見込めないG20。日本の環境政策は、欧州緑の党の「炭素税・配当」政策と、アメリカの「グリーン・ニューディール」を取り入れるべき! - 日本の改革

この問題に対するアメリカ民主党の答えはグリーン・ニューディールですが、それをどの程度アメリカ国民に説得力をもって訴えられるかが問題です。最近では、共和党も含めてだいぶ様子が変わってきたことは本ブログでも書きましたが、トランプ氏は全く聞く耳を持たないでしょう。ここは大統領が代わる以外、どうしようもない話です。

ただ、G7では、それ以外の主要な論点については、一応の成果が上がったと思います。

貿易については、少なくともWTO改革の必要性については合意しました。もともと、WTOが機能不全になったから、TPPはじめメガFTAが必要だ、という話になったのが、そのFTAも批判されるようになって、一周戻ってWTOで何とかしよう、というのが最近の議論でした。これにつき、米・EUで合意できたのは結構なことです。

イランについては、アメリカが離脱した核合意について、米・EUの対立は深いままですが、マクロン大統領がイラン外相を呼んだサプライズについて、トランプ氏も目くじらは立てず、ロウハニ氏と条件次第で会うということにさえなりました。イラン問題のかなりの部分は、近視眼的なイラン革命防衛隊が実験を握って暴走しているためでしょうから、トップ同士の直接対話の可能性が開けたのは、明るいニュースです。

中国については、香港に関し、「1984年の中英共同宣言はまだ有効で、暴力は避けるべき」として、一国二制度を確認のうえ、中国政府が香港デモを武力鎮圧するなと、立場を明確にしました。既に香港警察と中国の雇った暴力団等がひどい暴力をふるいはじめているので物足りない表現ではありますが、とにかく日米欧が一致して、中国政府に警告を発した形です。

この辺の感じ方は、私は日経の滝田洋一氏と同じです。共同宣言の内容が一枚だけだと言うのも、むしろその方が良いという点も同意です。

そして、米中の貿易戦争については、本当は日欧でアメリカ支持を明言してほしかったとは思うので、そこは少し残念でした。ただ、G7ではアメリカの立場に配慮して、宣言文書にもこの件は盛り込まれず、日欧が中国といっしょになってアメリカ叩きという最悪の構図は避けられました。物足りないとは言え、G7直前から中国へ倍返しの報復関税を表明したアメリカの姿勢について、他の先進国が事実上黙認した形です。

これと前後して、中国が合意を望んで連絡してきたとトランプ氏が発言。中国政府から本当にそうした連絡があったのかはまだ分かりませんが、事実なら、日欧が一切中国の肩を持たなかったことも影響したかもしれません。もしそうなら、日欧がアメリカの圧力を黙認して中国が折れたことになるので、今回のG7の何よりの成果と言えるでしょう。

www.nikkei.com

トランプ氏の対中政策への思いと、ウォーレンの構想

このG7、個人的に一番印象に残ったのは、トランプ氏がメルケル氏との共同記者会見で語った言葉でした。

トランプ氏は貿易交渉について語り、EUはタフだ、中国と同じくらいタフだ、だが、私はEUも中国も尊敬している、問題はむしろ国益を守ってこなかったアメリカ政府にある、という趣旨のことを、メルケル首相の前で発言しました。

続けて、特に中国について、こう発言しました。以下の動画の24分くらいからです。

www.youtube.com

「私が中国にやっていることは、25年前に行われるべきだった。オバマ大統領だけではない、多くの大統領、ブッシュ、クリントン、多くの大統領が、中国について何かすべきだったのだ。中国が毎年何千億ドルも奪って、知的財産権も奪って、これについて、誰かがやらなければいけなかった。私は中国を非難してるんではない。私は我々の代表を、そのリーダーシップを非難しているのだ」

共和党も、民主党も、中国に対して天安門事件を許し、WTOに加盟させ、国内外の人権弾圧に目をつぶり、強制的技術移転・知的財産権侵害・輸出補助金に対しても批判は口先だけだった過去を反省すべきだ。趣旨としては、こういうことでしょう。こんな率直な言葉を米国大統領から聞けたのは、私には嬉しい驚きです。

トランプ氏は(大統領として当たり前とは言え)、中国については、どうも自国民の経済的利益ばかりを優先して、中国の国内の人権状況には無関心に過ぎるところは不満です。ウイグル強制収容所問題への関心が薄く、香港についても言うことがぶれています。

しかし、人権問題はともかく、貿易政策という面で言えば、貿易戦争で短期的な損失を被っても、中国の今のやり方を絶対に許さない、必ず変える、という方針は、中長期的に見れば、必ず世界経済全体のためになります。G7でこの方針が少なくとも否定はされなかっただけでなく、これまでの長年にわたるアメリカの対中政策の誤りに対する反省を、アメリカ大統領の口から聞けたのも意義のあることでした。

来年の大統領選で誰が当選しても、この方針は受け継ぎ、しかも、中国の人権問題も本気で取り組んでほしいところです。

さて、その大統領選ですが、仮に民主党の大統領となったら、通商政策、貿易政策は、どのような方針になるのでしょう?

その前に、誰が民主党の候補になりそうでしょう?民主党候補の指名争いですが、ついに、ウォーレンがサンダースに並んだ調査も出てきたようです。以下は、ワシントン・ポスト政治記者のツイートです。

支持率上昇中のウォーレンは、なんと「経済的愛国主義」というスローガンを掲げています。が、貿易政策については、よく見ると、貿易交渉に関する徹底した情報公開と、貿易交渉での消費者と労働者の利益重視等を柱としています。単にアメリカ・ファーストを叫ぶのではなく、中国等の非人道的な低賃金労働に基づく輸出攻勢に反対し、アメリカを含めて世界的に労働者の生活水準を上げるべきだ、という考え方です。

medium.com

ウォーレンが批判するのは、多国籍企業が政治家とともに非公開で民主的正当性もなしに貿易政策を決めてしまっているというアメリカの実態です。日本国民からすれば、貿易政策に関する問題は、自動車メーカー等の多国籍企業のやっていることだけでなく、未だに農協が貿易協定の決定に極めて強い権限を持っている点が大問題です。批判すべき対象の重点は違っても、政治と結びついた既得権者が国民の利益を損ねる形で貿易交渉を行い、協定内容を決定している、というのは、日米共通の課題と言えるでしょう。

ウォーレンの政策は、結果として、トランプ以上に中国に厳しいと見られているようです。CNBCのJim Cramer氏は、トランプが持ちかけているディールは、ウォーレンの提案よりは中国に甘いから、今のうちに妥協した方が中国にとっては得だ、と言っています。

www.cnbc.com

具体的ないくつかの政策はともかく、中国に対して、基本的にこうした方針で臨むなら、トランプ政権同様、日本としても支持すべきです。

経済的愛国主義を標榜しながら、自国と他国の労働者や消費者の権利を保障し、貿易交渉について国民に情報公開を進める、という通商政策は、言わば、ナショナリズム(あるいはパトリオティズム)、自由民主主義を両立させて生かそうという方針です。ウォーレンの考え方に限りませんが、自由民主主義の大原則に基づくナショナリズムは、今後の国際社会が必要とする哲学の一つになるだろうと感じます。