日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

アマゾン火災と地球温暖化:畜産業含む農業に国際的な「炭素税・配当」政策を。ヴィーガン生活は無理でも、知識は有益。

ブラジルのアマゾンで農業目的での森林破壊と火災が進行中。ボルソナロ大統領が開発規制を緩和した影響も指摘されています。IPCC特別報告を踏まえ、条約で、畜産業含む農業に、温暖化ガス排出に対する課税等を導入する一方、税収を農民等に再分配する、国際版の「炭素税・配当」政策を導入すべきです。畜産業廃止というヴィーガンの主張の実現は難しいと思いますが、畜産業の環境負荷について消費者も知るべきです。

フランスとブラジルがアマゾン火災で対立

フランスのビアリッツでG7が開幕しましたが、その直前から、フランスとブラジルがもめています。フランスは23日、EU南米南部共同市場(メルコスル)が6月に合意した自由貿易協定(FTA)について、反対すると表明しました。ブラジルのボルソナロ大統領が同国の熱帯雨林アマゾンでの火災を巡り「嘘をついた」から、としており、ボルソナロ氏もフランスを批判しています。

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背景に、ブラジルでアマゾンの熱帯雨林が、今年に入り急速に失われているという事実があります。これが地球温暖化を進めるとして、フランスだけでなく、EUも国連も懸念しています。

朝日によると、今回の火災の一因は、農地拡大のための火災や違法伐採が原因で、今年1月にボルソナロ政権になって監視が弱まったことにあります。今年のアマゾンの森林火災は、件数も焼失面積も前年同期より8割ほど増えたそうです。

「ブラジルのトランプ」とも呼ばれるボルソナロ大統領は、以前から「何の役にも立っていないアマゾンは外国に売り払えばいい」などと発言し、今年1月の大統領就任後は、自然環境や先住民のために保護されてきたアマゾンの開発に道を開く姿勢を示しました。

また、ノルウェーとドイツが資金を出している、アマゾン保護のための「アマゾン基金についても、基金の管理委員会のメンバーや仕組みを変え、政府の影響力を強めようとしました。これにドイツ、ノルウェー両政府は反発、今月、基金への支払いを止めると表明しました。

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農業団体からの支援が指摘され、就任前から過激発言で批判されてきたボルソナロ氏。今回の火災拡大に責任があるとは思いますが、一方で、ルラ大統領以来の左派政権が続いて、しかもその左派政権が汚職で国民の信頼を失って当選した、という背景はあります。

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BBCによると、ボルソナロ氏は「あの地域には2000万人以上のブラジル人が住んでいると、留意しなくてはならない。その人たちに発展の機会を与えなくてはならない。保護だけすればいいというものではない」と述べたそうですが、これは一部のブラジル国民の本音を代弁している可能性があります。

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アマゾンの火災を含めた森林破壊はもちろん早急に防止し、再発も防がなければいけません。一方で、そこに住む人たちの生活への配慮をしないと、ボルソナロ氏のようなリーダーが一部農業ロビーの支援で自然破壊をしやすくなってしまいます。ボルソナロ氏と対立したマクロン氏が、フランスで燃料税を導入しようとして黄色いベスト運動を招いたように、環境政策での規制や負担の際には、痛みを受ける人達への十分な配慮も必要です。

今回のブラジルの件は、フランスの燃料税のように新たな負担を導入するのではなく、アマゾンの開発を更に進めてしまうというものなので、その点では性質が違います。ただ、それをよしとしてしまう力も現実にあって、だからこそボルソナロ氏のような人物が大統領に選ばれてしまったという面はあるはずです。

IPCCが、農業の温暖化への影響を報告

アマゾンに限らず、地球上の土地利用の在り方、特に農業、特に畜産業、特に牛の畜産が、温暖化を促進していると、以前から指摘されていました。

ごく最近、今月8日、国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)が、「気候変動と土地特別報告書」(の政策立案者向け要約版)を公表しました。人間の活動によって排出される温室効果ガスのうち、23%は農業や林業、その他の土地利用に由来するとし、よりよい土地管理が気候変動対策の一つになりうる、と示唆しています。

また、食料生産・製造の前後に行われる活動全体に関連する排出量では、正味の温室効果ガスの総排出量の21~37%を占めると推定しています。

アマゾン等に関連する話で言えば、森林減少・森林劣化を減らすことは、温室効果ガス排出を低下させ、その低下の可能性は4億~58億CO2トン/年程度。世界全体の総排出量が300億CO2トンくらいですから、最大で2割くらい、温室効果ガスが増える可能性がある、ということでしょう。

報告書は、土地が温室効果ガスの発生源や吸収源の役割をしている点を重視して、植林や農業での様々な技術革新などを多様に組み合わせて、土地利用のあり方を変える必要があると指摘しています。

https://www.env.go.jp/press/files/jp/112200.pdf

温室効果ガス対策「土地管理のあり方重要」 IPCC:朝日新聞デジタル

 農水省はそれを踏まえて、わが国も農業政策での対策が必要との立場を、早速表明しています。農業が温暖化に与える影響という点には、敏感な様子がうかがえます。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「土地関係特別報告書」の公表(第50回総会の結果)について:農林水産省

それでも、この報告書は、内容をちょっと曖昧にぼかしすぎだ、と、AFPは批判しています。AFPの記事によると、今日、食料関連の温室効果ガス排出量の半分以上が畜産業によるもので、うち半分は、羊や牛の飼育に関わるもので、牛の割合が特に高いそうです。

報告書に関する専門家の声として、英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)で栄養学と国際保健を専門とするアラン・ダングール(Alan Dangour)氏の、「今日発表されたIPCCの報告書で、私たちの食習慣が環境に多大な影響を及ぼしていることが確認された」というコメントを紹介しています。ダングール氏は、「フードシステムによる環境への影響を抑制するには、食生活における肉類の消費を減らすことが重要であることは明白だ」としています。

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農業に国際的な「炭素税・配当」政策を

以前、本ブログでも書いたことですが、今年の欧州議会選挙で躍進した緑の党は、炭素税とその税収を市民に還元する「炭素税・配当」モデルを支持しています。フランスの燃料税が、自動車に依存する地方の中低所得者の反発を招いて大規模な抗議運動につながった反省から、炭素税による負担が大きい人達への経済的手当てを同時に行う、という政策です。

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温暖化で成果見込めないG20。日本の環境政策は、欧州緑の党の「炭素税・配当」政策と、アメリカの「グリーン・ニューディール」を取り入れるべき! - 日本の改革

 これを、国際的レベルでも行うべきだと思います。まず、畜産業を含む農業が温暖化を促進しているのが事実なら、農業についてカーボンプライシング、特に炭素税を、条約で導入していくべきです。消費者にある程度転嫁されるでしょうけれど、やむを得ないことです。一方で、食料品に関わることですから、特に発展途上国低所得者層については、炭素税による上乗せ分を出来る限り打ち消すように、炭素税の「配当」を、再分配政策に利用するべきです。また、消費者に対する再分配だけでなく、中小零細の農家に対して、より環境負荷の小さい肥料や農法を選択できるよう、補助金支出もこうした「配当」政策の一環として行うべきです。

各国政府のとるべき政策としては、たとえば上のようなやり方が考えられますが、畜産業が地球温暖化を促進するという点については、消費者が行動を変えるべき、という主張もあります。

AFPによると、2008年、IPCCラジェンドラ・パチャウリ(Rajendra Pachauri)議長は、各自が1週間のうち1日を「ミート・フリー・デー(肉を食べない日)」に設定し、この日数を徐々に増やしていく方法を提案しました。パチャウリ氏は、経済学者でベジタリアンでもあるとのことで、畜産業における温室効果ガスと環境問題の軽減には「食生活を変えることが重要だ」と主張したようです。

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関連して、いっそ肉食を一切やめる、それどころか、畜産業自体をやめて、人間の食生活を抜本的に変えるべきだ、というヴィーガンの主張があります。動物愛護と地球温暖化防止という正義は分かりますが、なかなか一国全体、まして世界全体での実践は難しいでしょう。

また、私は、温暖化政策等について、広報活動として消費者に訴えるのは良いことだと思いますが、あまり政府が干渉しすぎたりするのは望ましくないと思います。食生活は、宗教も含めた個人の信条とも関わる場合もありますし、人間の生存を維持する一番基本的な活動について、出来るだけ自由を保障すべきだと思うからです。

ただ、消費者として、畜産業の環境負荷について知識を更新し続けることは必要でしょう。IPCCや政府に言われるまでもなく、関心を持ち続けたいと思います。