日本の改革

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上野宏史厚労政務官の口利き疑惑で垣間見える、外国人労働者に関する政治家利権。

上野宏史厚労政務官、改正入管法の「登録支援機関」にカネを要求した、あっせん利得処罰法違反の疑い。本件に限らず、登録支援機関や監理団体と呼ばれる外国人労働者の仲介会社等と、政治家の関係を、断ち切る必要があります。

上野宏史厚労政務官に文春砲

上野宏史厚生労働政務官(48)が、外国人労働者在留資格を巡り、法務省に“口利き”し、その見返りに金銭を求めていたことが「週刊文春」の入手した音声記録から分かった」と、文春が報じています。

上野政務官は、改正入管法の「登録支援機関」の一つである人材派遣会社「ネオキャリア」による大量の在留資格交付申請につき、法務省に便宜を図ってやると同社の社長に約束して、外国人一人当たり2万円の報酬を依頼していた、という記事です。元秘書の内部告発で音声記録もあるということですが、事実だとしたら、あっせん利得処罰法違反の疑いがあります。受け取った報酬を自民党の一般党員の党費肩代わりに充てようとしていた、というのだから、自民党にとっても迷惑な話でしょう。

bunshun.jp

もっとも、このあっせん利得処罰法、あまり実効性がない法律に見えます。政治家が自分の権限を使って口利きをするのを罰する制度ですが、甘利氏や片山さつき氏のような、国民の感覚からすればアウトだろうというものでも、結局そのままになっています。今回のケースが仮に事実でも、案外逃げ切ってしまうかもしれません。せいぜい政務官辞めて、あとは次の選挙で公認ももらえない、という程度で済まされる可能性はあります。

この法律での処罰が難しいのは、政治家らが「権限に基づく影響力を行使したこと」という要件があり、適用のハードルが高いため、と言われています。国会議員が立件されたことはありません。

今回、「厚生労働省の」政務官が、「法務省への」口利きでカネを要求したという話なので、そこだけ見れば難しそうに見えます。今回、問題となったのは、改正入管法の「登録支援機関」の会社からの金銭授受です。文春は、上野政務官が「技能実習の職種のあり方に関する検討チーム」の主査をしていたから問題だとしていますが、これは技能実習法に関するもので、一応、制度が違います。

しかし、法的に罰するのは難しくても、特定技能での外国人就労と技能実習の二つの間には、密接な関係があります。文春の報道が事実なら、政治責任を負うことは免れません。私は、議員辞職相当だと思います。

改正入管法の「登録支援機関」と技能実習法の「監理団体」

外国人に低賃金で劣悪な条件で働かせていることで、技能実習制度は批判を浴びてきました。そして、今度の入管法の改正で、特定技能を持った外国人には「実習」ではなく、「就労」を正面から認める、ということになりました。技能実習制度はこれに合わせて廃止すれば良さそうなものを、結局はそのままになっているので、本ブログでもそれを批判してきました。

改正入管法施行。国は自治体に丸投げで、自治体は財源不足で準備できず。田舎のブラック企業は、新在留資格でなく、技能実習制度を継続利用。 - 日本の改革

それどころか、今年になって、技能実習制度は更に拡充されて、宿泊業も対象となりました。政府もブラック企業も、技能実習制度をやめようとは全然考えていません。

https://www.kankokeizai.com/宿泊業、「技能実習%EF%BC%92号」対象へ%E3%80%80外国人雇用、7/

さて、技能実習だろうと特定技能での就労だろうと、外国人労働者の仲介を行う会社等があります。これを技能実習の場合には「監理団体」と呼び、特定技能での就労の場合には「登録支援機関」と言います。

どちらも、建前上は、民間の人材派遣会社に自由にやらせたら外国人の人権が侵害されるおそれがあるから、特別の制度で位置づけよう、ということで、「監理団体」とか「登録支援機関」とか言われているのですが、要は、人材仲介の民間会社等のことです。実際、今回問題となった「登録支援機関」であるネオキャリアという新宿の会社は、全国の飲食店やドラッグストアに外国人労働者を派遣している派遣会社でした。

で、この登録支援機関というのは、もともとは技能実習制度の監理団体から移行することが想定され、事実そう決めたところもあります。改正入管法では、期限切れとなった技能実習生を特定技能の外国人労働者になることも可能にしているのだから、仲介会社も、技能実習の監理団体を特定技能労働者の登録支援機関にしよう、ということです。

というわけで、監理団体と登録支援機関というのは、社会的に果たす機能は似たようなものです。上野氏は、厚労省政務官として、この技能実習制度について業界団体から意見を聞く検討会の責任者でした。文春が、この点について、ヤメ検落合洋司弁護士の意見を引用する形で、あっせん利得処罰法上の「権限に基づく影響力」が上野氏にある、としているのは、二種類の団体の社会的な役割という点から言って、正論でしょう。繰り返しますが、法的には逃げられても政治責任は負うべきで、その内容は政務官辞任や次の選挙出ないというだけではなく、即時の議員辞職であるべきです。

上野政務官主査の非公開検討会で、どの団体が何の要望をしていたか

本件について、警察・検察が仕事をしてほしいと思いますが、もう一つ、メディアや野党に調べて追及してほしいのは、上野氏が主査を務めていた「技能実習の職種のあり方に関する検討チーム」についてです。その名の通り、技能実習の対象となる職種を検討するために、業界団体から意見を聞く場なのですが、これが何と非公開です。登録支援機関の派遣会社に口利きでカネを要求するような人間が、非公開の検討会で縁のできた団体やその周辺に何か要求していてもおかしくありません。また、団体の方からアプローチされたときに、脇が甘いことも考えられます。

ものすごく簡単な議事概要しか公表されていないので、7回の会議につき、団体名だけ列挙してみます。いずれも、「技能実習計画についてのヒアリング」で、技能実習2号にさせろという要望が多いようです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04059.html

第1回:平成31年3月19日

北海道水産物荷主協会、全国中小企業団体中央会

第2回:平成31年3月26日

日本建設業連合会日本農業法人協会

第3回:平成31年4月11日

和歌山県橋本市日本造船工業会長崎県庁、日本機械土工協

第4回:平成31年4月15日

余湖農園、愛媛県中小企業団体中央会、全日本漁港建設協会、群馬県嬬恋村農業協同組合

第5回:平成31年4月22日

電子情報技術産業協会、鹿児島県中小企業団体中央会

第6回:令和元年5月23日

全国水産加工業協同組合連合会

第7回:令和元年5月28日

全国漁業協同組合連合会大日本水産会

水産関係が多いですね。嬬恋村の農協は色々悪名も高いところです。

朝日新聞デジタル:建前は実習生 本音は担い手 - 群馬 - 地域

上野氏の話から離れて考えてみると、こうして、技能実習について更に拡張せよという要望が各団体からつい最近まで上がり続けているのですから、入管法改正で技能実習の問題点を解決します等と政府が言っていたのも疑わしいでしょう。

実際、技能実習のための監理団体から、改正入管法の登録支援機関になろうという会社等は、実際にはけっこう少ないようです。6月に北海道の例が日経に出ていましたが、登録支援機関になる予定の監理団体の数は全体の3分の1程度。理由を聞いたら、特定技能が同じ業種内で転職できる制度である点に触れて「支援機関として企業にあっせんしても、途中で辞められたら困る」と、案の定の答えをしているようです。

www.nikkei.com

監理団体等の政治家利権:「中国は旧社会党、それ以外のアジア諸国自民党」のシマ?

さて、上野氏の疑惑は、あらためて、監理団体や登録支援機関という、外国人仲介会社等と政治家のカネのつながりを浮き彫りにしました。この点は、監理団体については、昔からずっと言われ続けていたことです。村上正邦元議員が逮捕されたKSD事件も監理団体を舞台にしたものでした。最近では、ジャーナリストの出井康博氏が、監理団体の政治家利権を厳しく追及しています。

出井氏は、これほど批判されている技能実習制度がなくならない理由として、監理団体を政治家が利権化しているからだ、と主張しています。実際、監理団体は、外国人からもなけなしのお金をとって、受け入れ先の会社からも「管理費」をとって(実際は監理どころか管理もしていない)二重取りで大儲けする一方、その分、外国人労働者の取り分を減らしてブラックな奴隷労働を強いている、としています。

政治家利権については、昔は、「中国は旧社会党、それ以外のアジア諸国自民党」といった具合に、与野党で受け入れ利権の棲み分けまであったそうです。そのうえで、最近の政治家たちと監理団体のつながりを以下のように挙げて批判しています。

現在でも、小泉純一郎政権で幹事長を務めた武部勤・元自民党衆院議員が代表理事を務める一般財団法人「東亜総研」は、監理団体としてベトナムなどからの実習生を受け入れている。現職の国会議員で、自民党幹事長という要職にある二階俊博氏も、同法人の特別顧問だ。監理団体は、問題が起きれば入国管理局など行政機関とのやり取りが生じる。また、送り出しの政府関係者とのコネクションがあれば、受け入れもやりやすい。そんな事情もあって、政治家の名前が威力を発揮する。

最近になって実習生の送り出しが急増中のミャンマーに関しては、監理団体から収入を得ている組織がある。宮澤喜一内閣で郵政大臣を務め、のちに自民党から民主党などに移った渡邉秀央・元参院議員が会長を務める一般社団法人「日本ミャンマー協会」(JMA)だ。
 JMAの最高顧問には、「森友問題」で注目を集める麻生太郎財務大臣が就いている。麻生氏のほかにも、名誉会長に中曽根康弘・元首相、副会長には仙谷由人・元民主党衆院議員、さらには理事には福山哲郎立憲民主党幹事長、魚住裕一郎・公明党参院議院会長といった具合に、現職を含め与野党の大物政治家が並ぶ。 

biz-journal.jp

外国人労働について、仲介会社等が公的な規制を受けるのは当然ですが、監理団体の場合、むしろ、政治家の力をバックに、最近まで全く規制が緩い無法地帯だったことが問題です。最近になって、さすがにおかしいということで、許可制が導入はされましたが、上野氏の報道など見ていても、監理団体が相変わらず技能実習生ばかり使おうとして特定技能の労働者のための登録支援機関になろうとしないのを見ても、許可制導入くらいでどうにかなる話ではないことがよく分かります。

外国人労働者問題のガンは、田舎のブラック企業に加えて、仲介業者の監理団体と政治家のつながりです。監理団体、登録支援機関という、なんだか公的に見える名前でごまかしているが実は単なる民間仲介業者と政治家との関係を、完全に断ち切るべきです。技能実習制度自体を廃止するべきですが、それが実現するまでの間、監理団体の役員には、国会議員・地方議員の現職・元職は就任してはならないという制度にして、登録支援機関も同様とすべきです。

2014年、監理団体に許可制が導入される前、私が日本維新の会の党職員として調査の仕事をしていた時、法務省に、監理団体の一覧が出ている資料を要求しましたが、役所は頑として出そうとしませんでした。当時と比べて、わずかに制度的な前進があったと思うのは、今では、監理団体も、改正入管法の登録支援機関も、全て公開されていることです。

文春の報道はあっぱれでした。この報道を機に、メディアも、野党も、一人一人の国民も、公開された監理団体・登録支援機関のリストをもとに、更なる調査を進めて、政治家と外国人の人買いとの関係をまずは暴いていってほしいものです。

少しでも手間を省ければということで、リンクを貼っておきます。

監理団体のリストはこちらで、

監理団体の検索(Search for Japanese Supervising Organizations) | 外国人技能実習機構

登録支援機関のリストはこちらです。

法務省:登録支援機関(Registered Support Organization)