日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

衛星分野で米中逆転。宇宙、5G、海底等の「デジタルシルクロード」で世界支配目指す中国。日米欧は対抗して、巨額の科学技術投資を!

中国は、測位衛星、5G特許数で既に世界一、海底ケーブルにも進出。科学技術でも量子通信等の分野でトップに。こうしたIT技術を使い、世界中で中国共産党の独裁を確立しようとしています。これを可能にした巨額補助金に対抗して、日米欧は科学技術と安全保障分野の投資を大幅に増やすべきです。日本は、米欧にならい、大規模国債発行でより大胆な投資を行うべきです。

中国による情報通信インフラの覇権確立と、世界規模での独裁の試み

中国版GPS網の衛星数がアメリカを抜いて世界一となりました。この機会に、中国が「ハイテク・シルクロード」と呼ばれる政策により、全世界を中国共産党に都合の良い監視システム下に置こうとしている実態の一端をまとめてみます。扱うのは順に、全地球測位システム、海底ケーブル、5Gの特許、量子通信、監視カメラ・システム、インターネット検閲システム、SNS上の情報操作、です。

全地球測位システムで世界一の衛星数

今日の日経によると、中国版GPS網が世界最大となり、130カ国に広がって、米国製を抜いた、とのことです。電子機器や自動車などが位置情報を得るために必要な「測位衛星」で、中国が開発した衛星の稼働数が2018年に米国製を抜き、世界の3分の2を超す国の上空で最も多い、ということです。この分野の宇宙のインフラ網で、アメリカから中国に覇権が移りつつあります。

中国は全地球測位システム「北斗」の衛星を2018年に一気に18基発射し、19年6月末の稼働数は35基で、アメリカのGPSの31基を抜きました。EUは22基、ロシアは24基、地域専用の日本製「準天頂」は4基、インド製は6基です。

中国は一帯一路で北斗の運用を広げています。米連邦議会の米中経済安全保障調査委員会によると、中国が衛星測位システムの整備に投じる資金は1994年から20年までの累計で最大106億ドルに達すると言います。

特定の地域に限定して信号を狂わせることも可能で、米政府はこうした機能を通じて、サイバー攻撃などに悪用されることを警戒しています。

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既に昨年末、中国政府は「北斗」の完成と全世界での運用開始を発表していました。北斗は1994年に軍の防空システムとして開発に着手されてから、20年開始予定だった全世界カバーを1年前倒しして達成、しかも同じ年に、既に衛星稼働数でアメリカを抜いていたことになります。

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・海底ケーブルで欧米の中枢ルートに浸透

宇宙だけではありません。日本の国際通信の99%が海底ケーブルを通るといわれていますが、中国の通信会社が発展途上国の海底ケーブルに出資を増やしています。

元米海軍提督のスタビリディス氏は、ロシア同様、中国が自国の利益を守るために必要な場合、海底ケーブル切断を企図しているのではないかと警告を発しています。今後、大きな戦争の際に海底ケーブルが切断され、日本の通信がマヒさせられる恐れがあります。

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日本だけでなく、世界を行き交う通信やデータの99%が、海底に敷かれたケーブルを流れています。この分野では今のところ米欧日が圧倒的な優位に立っており、米国のTEサブコム、日本のNEC、欧州のアルカテル・サブマリン・ネットワークスの3社の海底ケーブルの長さを合わせると、世界の9割超だそうです。

ただし、2015~20年でみると、ファーウェイが完成させる新規ケーブルは20件に上り、今後の警戒が必要です。

日経の秋田浩之氏は、安全保障上、重要な「中枢ルート」について日米欧が連携し、自国の企業が敷設するべきとしていますが、ジブチ―フランスのルートは、この中枢ルートにあたるのに、中国企業が初めて参入した、としています。

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なお、アメリカの批判をかわすため、ファーウェイは海底ケーブル事業を売却しましたが、売り先は結局、中国企業の江蘇亨通光電です。

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・5Gの特許出願が世界一

通信規格の分野では、5Gに関する特許出願数で中国が34%と世界一で、現行の4Gの1.5倍以上のシェアを握ることになります。アメリカは安全保障上の理由で5Gに関してファーウェイなど5社からの政府調達を禁じていますが、同社は5G製品の開発に欠かせない多くの特許を押さえているので、「ファーウェイは米国で製品を売ることができなくても特許利用料は獲得できる」と言われています。

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こうして5Gについて技術水準で世界一となった中国ですが、オーストラリアとニュージーランドは、自国の5Gから中国企業を締め出しており、アメリカはこれに追随した形です。これについては以前、本ブログでも取り上げました。繰り返すと、IoTでの基幹技術となることが想定されている5Gは、日常生活に関するあらゆるネットワーク(人ー人、人ー機械、機械ー機械)に使われます。ここで、例えば、ファーウェイ等の通信機器を通じた5Gへの攻撃が起きると、全ての家電・交通機関医療機関を支えるネットワークが機能しなくなり、全ての市民生活が成り立たなくなります。

日米首脳会談、確認すべきは、ドコモがファーウェイ基地局導入との報道。中国軍には、平時も戦時もない。 - 日本の改革

このように、中国は、世界全体の情報通信インフラのかなりの部分を既に掌握しています。日経は、ハイテク分野で、中国が「総力戦に挑み始めた」と表現しています。冒頭に紹介した通り、宇宙では衛星システムでは既に世界一となり、地上では無線通信の次世代規格「5G」の特許数も中国が世界一となり、更に海底では、大陸間の通信用ケーブルで日米欧の中枢ルートに食い込み始めました。「デジタルシルクロード」と呼ばれる中国のハイテクネットワークは、ビジネスとともに、地球全体のあらゆる層を覆い始めています。

衛星について言えば、既に世界の主要半導体メーカーは、北斗に依存しないと、自らのビジネスを世界に展開できない現実があります。自動運転も、アリババ集団が出資する中国の位置情報サービス会社、千尋位置網絡は北斗の信号と地上に設置した2千以上の基準局のデータを併用して、誤差がセンチメートル級の超高精度のサービスを開発しています。米国は衛星分野でも中国への圧力を強める可能性がありますが、ビジネスの世界では「中国抜き」はありえない、と日経は断じており、日米欧は難しい対応を迫られています。

中国「デジタルシルクロード」着々と :日本経済新聞

・量子通信でアメリカを凌駕、アメリカの盗聴はもう不可能に

こうしたインフラ全体を支える科学技術についても、量子通信の分野で、中国はアメリカをしのぎ始めています。量子コンピューターの分野ではまだアメリカが上なようですが、量子通信については、ハッキングが不可能な通信技術を開発しつつあり、これが完成すれば、アメリカが(当否はともかく)これまでやってきた、中国の軍事通信の盗聴も不可能になります。

www.washingtonpost.com

全体主義的な国民監視システムを国内で確立、全世界に輸出

もちろん、こうしたインフラや科学技術それ自体は、平和的にビジネスに使うなら極めて有用なものであり、技術革新自体は歓迎すべきものです。しかし、中国はそれを自国の抑圧的な政治システムを全世界に広めるために使っています。

アルゼンチンの北部のフフイ州が、中国の電気通信機器大手のZTEによる、路上犯罪抑制のための監視カメラや緊急サービス及び通信インフラからなるシステムの導入を進めています。

国務省西半球局の広報官は声明で、フフイ州におけるZTEのプロジェクトについて懸念を表明、「中国は比類のない規模でデータの収集と利用を進め、その情報を腐敗の誘発、恣意的な監視の支援、反体制派の抑圧に使っている」と述べていますが、アルゼンチンは馬耳東風。アメリカがいくら警告しても、中南米の国々は中国のハイテクを自国の治安維持等にどんどん使い始めています。

もちろん、日米欧もこうした監視テクノロジーを利用していますが、中国はこれをウイグルでも上海でも自国民の不満や抗議活動を抑圧するために悪用するばかりか、他国にも積極的に輸出しています。

 焦点:売りは「中国並みの治安」、ZTEなど中南米に監視カメラ - ロイター

ZTEは通信会社で監視システムを丸ごと売っているという話でしたが、以前、本ブログでは、中国製の監視カメラの問題についても取り上げました。

日本は、中国の監視カメラ販売の規制を!世界最大手ハイクビジョンが、ウイグル等の人権抑圧で大儲け。 - 日本の改革

ハイクビジョンやダーファといった中国監視カメラ大手は、ウイグルでの民族浄化に使うための監視システムの受注で急成長し、今では、たとえば先のZTEのシステム等といっしょに、全世界に売られています。そして、そうした監視カメラ(格安のものも多いです)に、バックドアが仕掛けられているケースがあります。

格安の中国製「防犯カメラ」にバックドア 検査なくネット通販で世界に輸出 - ロイター

中南米やアフリカ諸国等、もとから独裁的な傾向の国であろうと、民主主義国家であろうと、中国のような独裁国家での人権抑圧に最適化されたシステムを導入したら、それだけで当該国の国民にとっては脅威です。そればかりか、監視カメラや通信機器にバックドアまで仕掛けられていたら、自国の治安維持のためのシステムが中国による全世界的な監視システムにハッキングされた状態になります。こうなったら、導入した国の国民も企業も政府も、中国が秘密裏につかんだ情報で容易に脅迫され、言いなりにさせられてしまいます。

・インターネット検閲システムの輸出

更に中国は、インターネット検閲システムを世界中の独裁国家に輸出しています。有名なグレートファイアウォールという検閲システムは、主に海外からの情報を対象としています。CNNによると、中国政府は、「世界中の独裁政権や名ばかりの民主政権に対して、独自のインターネット検閲モデルの輸出を増やしており、訓練や、技術的、思想的な支援」まで提供しています。

www.cnn.co.jp

日本は、中国の監視カメラ販売の規制を!世界最大手ハイクビジョンが、ウイグル等の人権抑圧で大儲け。 - 日本の改革

SNS上の情報操作

ネット上で行うのは検閲だけではありません。中国政府がより積極的に、フェイクニュースを含めて自国に有利な情報をSNS上に流通させていたます。

日本時間の昨夜の時間帯に明らかになったことですが、ツイッター社は、中国政府の関与が疑われる936件の不正アカウントとツイート内容を開示しました。「逃亡犯条例」の改正案を巡る香港の抗議活動を標的とし、活動の正当性を損なう情報などを流したと指摘しています。同社は、「国家の支援を受けた組織的な工作であることを裏付ける証拠がある」と述べ、不正アカウントはいずれも削除済みとしています。

blog.twitter.com

フェイスブックも同日、ツイッターからの情報で、不正行為が特定された中国由来の5つのアカウント、ニュースメディアを装った7つのページ、不正アカウントによる3つのユーザーグループを削除した、と発表しました。

newsroom.fb.com

メディアは昨夜から一斉に報じています。

www.cnbc.com

香港デモで「中国政府が情報操作」 ツイッターが公表 :日本経済新聞

以上、まとめると、中国は、宇宙空間での情報通信と、IoTの根幹をなす通信規格である5G技術を掌握して、全世界の諸国民の日常生活につき、生殺与奪の権を握り、自分達の情報は量子通信でシャットアウトする一方、監視カメラ・システムで世界中の政府・企業・個人を丸裸にし、インターネットでは検閲システムで不都合な情報を隠しながら、SNS上の情報操作で都合の良い情報は流す、という状態を目指しています。

このまま中国が優勢な分野で勝ち続け、現状では日米欧が握る海底ケーブルとアメリカが先んじる量子コンピューターも、中長期的に中国が世界一になれば、もう世界は中国に全く逆らえなくなる可能性があります。それだけは絶対に防ぐために、日米欧の民主主義国家が結束して中国に対抗する必要があります。

日米欧は科学技術に更なる巨額投資を!特に日本は数千億円規模の恒久予算を!

なぜ、中国にこれほど急激な科学技術の発展が可能だったのか。やはり政府が明確な意思を持って、巨額の投資を計画的に行ってきたからです。

経済産業省が今年発表した2019年度版通商白書によると、中国の2017年の政府からの産業補助金は1350億元(約2兆1000億円)に達し、このうち成長戦略「中国製造2025」関連の補助金が約4割を占めた、とのことです。さらに重点支援産業の主要企業の多くが、市場金利より低利で借り入れを受けています。

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出所:経済産業省「2019年版通商白書」

https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2019/pdf/2019_gaiyo.pdf

 もちろん、アメリカも欧州も、対抗して科学技術、特に基礎研究に巨額の予算を充てています。以前、本ブログでも引用した、内閣府の「ムーンショット型研究開発制度に係るビジョナリー会議」の資料を再掲します。

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              出所:内閣府

ムーンショット型研究、文科省と経産省に1000億円:米中の「ムーンショット」は軍事戦略の一環で科学に投資。日本が巨額の科学投資するなら? - 日本の改革

こうして世界中が、先に紹介した分野を含む様々な基礎研究で国としての研究開発投資を行っているのに対し、日本がいわゆるムーンショット型研究でつける予算は、1000億円にすぎませんし、今後どの程度続くかもはっきりしません。

やはり、中国との競争に勝つためには、日米欧で協力をしつつ、1000億円「単位の」科学技術投資を行うべきです。以前、ムーンショット型研究に関する6月11日のブログでは、安全保障上の投資、特に、核ミサイル等を無力化するような軍事技術への投資を行うべき、と書きました。付随して、中国が現状で先んじている分野で、まずはキャッチアップして追い抜くための投資も十分な予算を組んで行うべきです。こうしたキャッチアップ型の投資は、日本は(少なくともこれまでは)得意なはずです。もう、中国が科学技術とその普及について先進国であり、いくつかの分野で欧米も抜いているという今では当たり前の事実に基づき、本気で中国を追い抜き、中国共産党による全世界的な監視・抑圧システムの構築を防ぐことを目指すべきです。

量子通信に関する先のワシントン・ポストの記事では、中国がアメリカ以上に研究者の待遇も研究環境も研究の自由度も認めて、量子科学分野の一流の科学者たちが喜んで中国に来るようにしている、と書かれています。内閣府の「ムーンショット型研究開発制度に係るビジョナリー会議」の資料にある通り、中国は量子科学国家実験室になんと1兆円を投資するということです。これなら、アメリカ以上の研究環境は確かに実現できるでしょう。

日米欧は、中国の巨額投資に真っ向から対抗して、更なる巨額投資を科学技術に行うべきです。こうした投資は、日本の、そして世界全体の自由で民主的な秩序を守るために必要不可欠な投資であり、狭義の軍事技術への投資に比べて、はるかに国民の理解も得やすいものです。

折しも、米中冷戦で世界経済の先行きが不確実になっており、アメリカもヨーロッパも、大規模な経済刺激策を検討しています。アメリカでは既に、超党派で巨額インフラ投資を行うことが決まっています。
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 日本も、世界経済での責任を果たすとともに、中国のハイテク覇権を挫くために、中長期にわたる大規模な科学技術投資を行うべきです。財源については、国内の既得権者への無駄な支出を削るのはもちろんですが、それだけでは足りません。日本は他に、保育・教育の完全無償化も、日本版グリーン・ニューディールも行うべきだからです。増税だけでも足りませんし、消費税はよほどのバブル経済時以外は引き上げるべきではありません。財源確保にはやはり、大量の国債発行が必要となります。

私は、改革派の政権においても、将来のために必要な投資の財源調達のためなら、国債発行は当然許容されると考えます。維新も国民民主党も、教育無償化等のための国債発行は認めています。更に、2030年までの再エネ5割実現や、核ミサイル無力化のための防衛システム(指向性エネルギー兵器等)の開発、更には、上に挙げたような分野での巨額科学投資は当然必要なものです。そのための国債発行と中央銀行による金融緩和の組み合わせを、5年、10年のスパンで続けるべきです。