日本の改革

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ケータイ料金値下げへの菅官房長官の執念は立派。2年縛り等をなくそうとするその気合いで、周波数オークションも断行を!

官房長官が、ケータイ料金を4割下げると言って1年近く。まだ実現してませんが、通常国会電気通信事業法が改正され、政府は料金下げに本気なのは立派です。しかし、通常国会の電波法改正でも電波オークションは事実上実現していません。一方、電波利用料の歳入は余っています。オークション実施で収入をケータイ値下げや5G投資への補助金にあてる等、電波割当も効率化すべきです。

「ケータイ電話料金4割下げ」、どうも菅氏は本気らしい

官房長官が、去年の8月21日、携帯電話料金が「あまりにも不透明で、他国と比較して高すぎる」と言って、間もなく1年になります。あの話は結局どうなっているのでしょう?

www.sankei.com

これについては、通常国会電気通信事業法の改正というのがありました。3日前の8月14日、政府は改正電気通信事業法を10月1日に施行すると決めるとともに、2年契約を途中でやめる際の違約金を1000円以下、通信契約と組み合わせた端末の値引きを2万円までに制限する総務省令も同時に施行する、としています。

携帯料金下げ法、10月に施行 :日本経済新聞

法律と省令(の方向)の中身について順次説明します。

まず、今年の通常国会で成立した電波事業法改正案は、携帯市場の競争促進(通信料金と端末料金の完全分離、途中解約の違約金下げ)と、販売代理店への届出制度の導入、勧誘の適正化の三つからなっています。

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出所:総務省

http://www.soumu.go.jp/main_content/000604210.pdf

販売代理店の届出制導入は若干やりすぎ感がありますが、それもこれも改正案の最大の肝である携帯市場の競争促進のため、ということなら、理解はできます。具体的には、通信料金と端末料金の完全分離、途中解約の違約金下げになりますが、ここは相当厳しく規制することになっています。

キャリアや代理店に対して、 以下の行為を禁止し、違反した場合は業務改善命令の対象になります。

・端末の販売等の契約締結の際、 通信料金について、キャリア間の適正な競争関係 を阻害すると総務省令で定める約束をすること

(例えば、端末と通信料のセット販売や、特定の端末購入で通信料を安くすること)

・通信契約の際、利用者に対し、契約の解除を不当に妨げて競争を阻害すると総務省令で定める条件等を定めること

(例えば、2年縛り等に見られる、中途解約時の高額な違約金)

見れば分かる通り、競争を阻害するものであれば、具体的な内容は全部、総務省が省令で決めることが出来る、という強力な規制です。

要は、端末と通信料金のセット販売や、高い違約金で2年縛りや4年縛りをするのは絶対許さない、ということです。どちらも、通信会社間、つまりドコモ、KDDIソフトバンク(と秋からは楽天)の間で、通信料の値下げ競争が起きにくくなるからです。

長年の課題でしたが、去年6月、公正取引委員会でも指摘があり、

(平成30年6月28日)携帯電話市場における競争政策上の課題について(平成30年度調査):公正取引委員会

その後、去年8月に菅氏が「4割下げ」をぶち上げて、同年11月には規制改革推進会議でも答申が出されたのを受けて、

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/publication/toshin/181119/point.pdf#search=%27%E3%80%8C%E8%A6%8F%E5%88%B6%E6%94%B9%E9%9D%A9%E6%8E%A8%E9%80%B2%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%AC%AC%EF%BC%94%E6%AC%A1%E7%AD%94%E7%94%B3%27

今年1月に総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」が「緊急提言」を出しました。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000594929.pdf

これによって法案化が進められ、通常国会で成立しています。経緯については、以下にまとめられています。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2019pdf/20190508016.pdf

では、端末と通信料のセット販売禁止や2年縛り等の廃止を具体的にどうやるか、それを定める省令はどうなるのでしょうか?最初の方で書いた通り、①通信契約と組み合わせた端末の値引きを2万円までに制限して、②2年契約を途中でやめる際の違約金を1000円以下にする、ということになりました。

これを決めたときの様子につき、日経が6月21日の記事でまとめています。以下、その記事をもとに、リンクを追加しながら経緯を紹介します。

www.nikkei.com

まず、2年縛り等の違約金は従来の9500円から一気に1000円以下に下げたのですが、これは菅氏のリーダーシップで相当強引に決めたようです。6月18日、総務省のモバイル市場の競争環境に関する研究会では、「1000円の論拠が分からない」とか意見も出る中で決定しました。議事概要はこちらです。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000638537.pdf

これに先立って、総務省は、ドコモ、KDDIソフトバンクと事前調整。3社とも仲良く9500円の違約金を徴収(そもそもカルテルじゃないんですかね)、営業利益率は3社とも約2割と高水準だから、何とかしろということで、総務省は当初、4000円を上限とする案を出したら、どいつもこいつもギャーギャー反対。

5月までには、ドコモとKDDIの賞金プランが新料金プランを出しましたが、いずれも「最大4割下げ」をうたっているものの、実際に4割下げになるのは、結局は両社とも、家族割引の場合だけでした。料金プランの複雑怪奇さは更にひどくなる始末。

www.itmedia.co.jp

そこで菅氏が、6月中旬にかけて複数の有識者らと水面下で意見交換したうえで、11日のモバイル市場の競争環境に関する研究会を前に「1000円を上限とする」との結論を導き出し、総務省との合意に持ち込んだ、ということです。日経はドコモ幹部が「うなった」とか書いています。

ということで、違約金は1000円ぽっきり、かというと、残念ながら少し違います。これに加えて「手数料」をとるんだそうで、それがまた分かりにくいじゃないか、という批判が、6月18日のモバイル市場の競争環境に関する研究会では出ています。各社の手数料の額はまだ不明ですが、これが常識的に1000円未満なら、違約金は大幅に下がった、と言えるでしょう。

もう一つ、端末と通信料のセット販売についてですが、こちらは中途半端な解決です。結論は、端末値引きの上限を2万円とする、ということですが、つまりは、端末と通信の料金体系が「完全分離」とはいきませんでした。

これにも通信大手3社が例によって全部反対しましたが、菅氏と総務省で、6月18日のモバイル市場の競争環境に関する研究会に示したペーパーで、このやり方を2年以内に「事実上根絶する」とまで書きました。

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出所:総務省 モバイル市場の競争環境に関する研究会

http://www.soumu.go.jp/main_content/000627801.pdf

というわけで、違約金は1000円+手数料、端末値引きは2万円まで、となります。違約金の引き下げで、利用者は格段に乗り換えやすくなるのは確かでしょう。端末も通信料金を通じての値引き幅が小さくなり、利用者は端末は端末で高いお金出して買うことになるので、端末を買ってもらうための価格競争も起きるでしょう。

菅氏は通信料についても「値下げは間違いなく実現する」と断言しているようです。正直、まだ分からないとは思いますが、とりあえず改正電気通信事業法の書きぶりは総務省に相当強い権限を与えているのは間違いないですし、ここまでのところ、菅氏が省令の中身についてまで相当頑張ったのは確かなようです。ここは率直に評価すべきです。

通信会社はルールが変わる前、今のうちに「囲い込もう」と必死なようですが、なんともあさましく見えることです。10月以降まで待った方が良さそうですね。

通信大手、販売過熱 今秋のルール変更前にシェア争奪 :日本経済新聞

次は周波数オークションの実現を!

携帯電話についてはもう一つ、通常国会で電波法の改正も行われました。これについては、「電波の割り当てに価格競争の視点を導入」ということがありましたが、具体的には、電波利用料以外の負担金を支払うことにして、各社の提示額を設備投資計画や安全対策などと並ぶ審査の評価基準にします。「5G」の割り当て審査から採用し、負担金は5Gなど次世代通信インフラの整備費に充てることになっています。

これまでの裁量行政による電波割当から、各社の「評価」によってお金(負担金)を支払わせる、という点で、価格競争「の視点」を導入した、ということですが、要は、周波数オークションが本当は望ましいけれど、反対が強くて出来ませんでした、そこで裁量行政的な電波割当の一部に「なんちゃって価格競争」も入れました、というところです。

この方針が示された今年1月、日経は、オークション方式の導入を求める議論もあったが、「事業者の支払額が過度に膨らみ、最終的に利用者コストに跳ね返る懸念があると判断した」と書いています。
他に、電波法の改正では、5Gのインフラ整備費増を考えて、電波利用料の引き上げも行いました。

 

電波配分に価格競争 総務省、5Gから「負担金」導入 :日本経済新聞

電波法改正案の概要はこちらです。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000599807.pdf

ここについては、政府はまだ全然踏み込み不足です。

現在の制度では、周波数割当に際しては、オークションではなくて、決められた電波利用料を毎年払わせることになっています。使い道も決まっていて、不法無線局の取り締まりや5G研究開発等で決まっていますが、利用料収入がこうした支出を上回る状態がずっと続いています。一昨日の日経によると、1993年度から2018年度までの過徴収の累計は1000億円程度まで増えたようです。総務省幹部は「緊急的に取り組む事業が出てきたときに使いたい」と言っていますが、これまでに使い残しを充てたのはテレビの地上デジタル放送への移行対策など3回だけだそうです。

www.nikkei.com

一方で、5Gに対する各社の投資は、金額は5年で3兆円と大きいのですが、この規模では、全国をくまなくエリア化するまでには時間がかかりそうだと言います。

5G投資に5年で3兆円弱 ドコモなど通信4社 :日本経済新聞

おそらく、5Gでは地域ごとの格差がしばらくは続いてしまうでしょう。それなら、周波数オークションを早めに導入して、5G普及に最も効果的な形で、投資額の再分配を行うのも有効な使い道ではないかと思います。また、携帯をライフラインと見るなら、オークション収入を低所得者の携帯利用料引き下げに使うことも検討して良いと思います。

周波数オークションについては、導入したら携帯電話各社の負担が大きくなり、投資が遅れたり料金が上がったりすると言われます。しかし、現行の電波利用料についても、収入が支出を上回り続ける等、ちぐはぐな非効率が起きています。それなら、政府は、公的な資産である電波の価値をちゃんと携帯電話会社に市場価値で評価させて、然るべき対価を支払わせ、まずは携帯市場に何等かの還元を再分配の形で行って、余剰があれば、いくらでも必要のある一般会計に回すべきです。

一方の野党ですが、維新が既に周波数オークション法案を提出していますが、オークション導入に伴うよくある批判に対して、オークション収入がどれくらいになるか、使い道はどうするかをはっきりさせることで、説得力ある反論を出来るようにすべきでしょう。

https://o-ishin.jp/houan100/pdf/detail031.pdf

政府を名宛人にした話に戻ると、菅官房長官は、第一次安倍政権で総務大臣を務めたこともあってか、携帯電話の料金引き下げについては、相当尽力され、効果が見込めそうな大きな制度改正も実現しました。あとは、周波数オークションについても、同様の姿勢で頑張っていただきたいと思います。