日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

固定価格買取制度(FIT)終了後は、①2030年の再エネ比率目標を50%超にして、②企業の再エネ電力購入(PPA)を促進し、③ESG投資の普及を!

再エネ固定価格買取制度(FIT)の終了後は、再エネの自律的な発展が必要です。①まず国が2030年の再エネ比率目標を現在の22~24%から50%超に倍増させ、投資環境を整えたうえで、②PPA(再エネ発電所との長期電力購入契約)を普及させる制度改正等を行い、③企業に気候変動の財務上の影響を開示させて、ESG投資を伸ばすべきです。

再エネは固定価格制度を卒業して、自立・離陸へ

8月5日、再生可能エネルギーによる電気をすべて高値で買い取る固定価格買い取り制度(FIT)について、経済産業省は、見直し案の概要を有識者会議に示し、了承されました。

見直し案は、色々な有識者会議に向けたためか、大変に長ったらしい名前で、「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 中間整理(第3次)(案)」です。要は、経産省の「総合支援エネルギー調査会」のいくつかの会議に出した案ですが、シン・ゴジラに出てくる会議名よりひどいですね。

 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/017_01_00.pdf

以下、朝日の記事にそって概略を紹介します。

まず今後の予定ですが、今秋に詳細を詰めて、早ければ来年の通常国会にFIT法改正案を提出し、再来年2021年度以降の実施をめざす、とのことです。

見直し案では、技術の向上や普及で設備が値下がりし、発電コストが安くなった大規模事業用太陽光と風力を「競争電源」と位置づけ、FITの対象外にします。一方、住宅用と小規模事業用の太陽光発電や、小規模地熱発電、小型水力発電バイオマス発電は、地域振興や災害時に役立つ「地域電源」として、当面はFITの対象とし続けます。
この制度は、再エネ普及に大きな役割を果たしましたが、買い取りにかかった費用の一部は「賦課金」として電気料金に上乗せされ、家庭や企業の負担が重くなっています。再エネのコストもある程度下がったことから、そろそろ自立させていくのが趣旨です。

昨年7月に閣議決定されたエネルギー基本計画は、30年度までに総電力に占める再生エネの比率を22~24%にする目標を掲げていますが、2018年度の再生エネ比率は水力入れても17%くらいなので、政府の低い目標を達成するためだけにも、あと10年ほどで5~7%分増やす必要があります。

太陽光発電協会は心配もしているので、経産省は、FITに代わる支援策の導入も検討するそうです。卸市場で電気を売る際、一定の価格を下回った場合に差額を国が補填し、補填分は、最終的に電気の消費者に転嫁するようです。

digital.asahi.com

FITの終了は、この制度の目的から言って、自然なことです。基本的には、再エネを成長させる最初の誘因を与えるためのものであり、再エネ産業が伸びてくれば、徐々に支援をなくして、消費者の負担を減らすべきだからです。

日経によると、既にドイツでも、一定の規模を持つ設備についてFITから「FIP」に移行した。Pは「プレミアム」で、太陽光の事業者は市場で電気を売り、国がその価格にプレミアムを乗せて支援するという仕組みです。FITとの違いは、自分で買い手を見つける必要があることで、コスト意識が生まれることになります。

FITをやるにしても、ドイツや英国、スペインなどは、再生エネの買い取り価格が自動的に下がる仕組みを導入してきましたし、スペインはすでにFITを廃止し、事業者が適切な利益を得られない場合のみ支援金を支払う制度に移行しています。

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では、FITを廃止した後の再エネの育成はどうしたら良いでしょうか?

まず、国として再エネ比率の目標を2倍以上にして企業も投資家も安心して投資できるようにして、企業が自ら再エネ発電所と契約できるような仕組み(PPA)を普及させ、同時に、ESG投資を促すために、企業には気候変動等の環境変化が自社の経営に与える影響を開示させるべきです。

その他にも、工事等のインフラ整備のための投資や技術革新を促すための補助金、更には、脱炭素政策を課すときの社会的弱者への配当等も必要です。以前、本ブログで書いた、「厳しいCO2規制・大規模環境投資と弱者救済の組み合わせ」という政策です。

温暖化で成果見込めないG20。日本の環境政策は、欧州緑の党の「炭素税・配当」政策と、アメリカの「グリーン・ニューディール」を取り入れるべき! - 日本の改革

今日は、特にその一部として、国全体の目標と、企業・再エネ発電所の契約、企業への環境投資の部分を取り上げます。

①2030年の再エネ比率を、22~24%⇒50%超に

政府は現在、2030年での電源構成について、再生可能エネルギーを22~24%、原子力発電を20~22%、化石燃料を56%としています。そして、再生可能エネルギーについては「主力電源化」する、としています。

新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

これにつき、東京理科大学橘川武郎教授は、7月の参院選前、立民等の原発ゼロ政策を批判したうえで、政府が原発の新増設や建て替えの話をすることもできない現状では、「『30年に原発比率20~22%』という目標は、関係者の誰もがもはや実現不可能だと思っている」と断じています。

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原発新増設に賛成でも反対でも、現状ではもう政府の『30年に原発比率20~22%』という目標が無理だというのは、受け入れざるを得ない政治的与件でしょう。恐らく、安倍総理も出来るとは思っていないはずです。一方、パリ協定上、化石燃料電源も56%から増やせないとすれば、不確実性があっても、再エネを増やしていくしかありません。

今後、再エネが大きく伸びるのは確実です。孫引きですいませんが、サステナビリティ・ESG投資のニュースサイト「Sustainable Japan」の記事によると、英エネルギーデータ大手ブルームバーグ・ニュー・エナジーファイナンス(BNEF)は6月18日、今後、世界の電力需要は62%増加するとの見通しを示しました。電気自動車が普及するためです。

それでも、風力発電太陽光発電、蓄電のコストが下がり続ける結果、2050年までに再生可能エネルギーが世界の電力の約半分を占めるまでになると予測しており、水力発電と合わせると62%を占めるまでになると言います。

一方、石炭火力発電は、現状の37%から12%まで激減し、原子力発電も11%から7%にまで比率を落とす、という予測です。

再エネのコストにつき、BNEFは、2030年前に石炭火力発電やガス火力発電よりも再エネの方が低くなると見通しており、中国でも2027年に再生可能エネルギーが最も安い電源となるとしています。

【国際】再エネは2050年までに世界の電力の約半数を占める。水力含みで62%。BNEF予測 | Sustainable Japan

 

こうした見通しもあって、今では、むしろ多くの企業が、日本政府の再エネ比率目標が低すぎると批判しています。

日経によると、事業で使う電力を全て再生エネでまかなうことを目指す企業連合「RE100」に加盟する日本企業19社とアップルが、6月に、「気温上昇を産業革命前と比較して1.5度以下に抑えるためには、30年の再生エネ比率を48~60%にする必要がある」として、提言をまとめました。

その提言では、IPCC国際エネルギー機関(IEA)の試算をもとに、日本の再生エネ比率を50%にするよう求めています。

そして、地域をつなぐ連系線の増強や海底送電網の整備などの早期検討や、洋上風力については、漁協との交渉やアセスメントの政府主導での実施、更に、企業が発電事業者から再生エネを直接購入できる制度変更を求めた、とのことです。

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イベント用ページ | JCLP | 日本気候リーダーズ・パートナーシップ

この企業連合等の提言については未見ですが、先に書いた通り、2030年時点での電源構成について、原発はもう無理、化石燃料電源も増やせない、むしろもっと減らすべきとなれば、自然に、再エネは50%くらいにはせざるを得なくなります。やや高めの目標として、「2030年の再エネ比率50%超」というゴールに政府がコミットすれば、民間は、事業会社も電力会社も金融業界も投資家も、安心して再エネに投資できるようになり、技術革新も生まれやすくなるでしょう。

②再エネ発電所と企業間の長期電気購入契約(PPA)の普及を促進

次に、さっき紹介した企業連合の提言の最後に出てきた、「企業が発電事業者から再生エネを直接購入できる制度変更」についてです。FIT終了後の再エネ成長の一つのカギになるものです。

再エネがコスト上有利となってきたことから、欧米では、企業が発電所と長期の電力購入契約(PPA,Power Purchase Agreement )を締結する事例が増えています。どんな電源から電力を買うかにこだわり、環境価値のある電源から買った、として、社会的評価も高まるうえ、今後先細りとなる化石燃料の電源に頼るリスクを避けられます。

これにつき、石田雅也氏(自然エネルギー財団 シニアマネージャー)が今月出したレポートをもとに、説明します。

アメリカで代表 的なPPAの形として、「バーチャル PPA」があります。これは、再エネ発電所が近くになかったり、規制によって発電所から企業が直接電力を変えなかったりするときに、電力は普通に電力会社から買うけれど、事実上それが再エネ発電所から買ったのと同じことにできる、という仕組みです。

これをやっている有名企業に、グーグルがあります(他にも沢山ありますが)。いま、グーグルのデータセンターの電力を100%再エネでまかないたいけれど、規制等によって、データセンターは再エネ発電所から直接電力は変えないとします。このとき、バーチャル PPA では、グーグルが会社として、再エネ発電所から、いったん電力を買います。このとき、グーグルは、電力も手に入れますが、再エネ発電所から電力を買ったという「証書」も手に入れます。そして、買った電力は、電力市場に売ります。その後、再エネ発電所から直接電力を変えなかったグーグル・データセンターは、電力を小売電気事業者から購入します。買った電力は、電力市場で再エネ発電所の電力も、火力発電所の電力も「混ざって」しまってはいます。が、まず再エネ発電所からだけ買って、その分の電力を買っているのだから、事実上、再エネ電力だけを使ったのと同じで、ちゃんとその証書も得られる、という仕組みです。

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出所:石田雅也(2019年8月)「世界中の企業が自然エネルギーへ 先進事例に見る、導入効果・調達方法・課題解決 」p43(自然エネルギー財団)

https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/CorpCSreport_20190808.pdf

こうした方法を普及させることが出来れば、企業が自ら、再生エネルギー由来の電力を買おう、という選択が出来ることになります。

週刊東洋経済の今年のアンケートでは、大手108社のうち6割超が「再エネ100%の電力供給」を電力会社に期待しています。需要は確実にあります。

toyokeizai.net

日本でも既に広がり始めてはいるようですが、石田雅也氏によると、電気事業法の規定で一般の企業が発電事業者と直接 PPA を結ぶことはできないので、小売電気事業者を介在させる方法が取られているようです。小売電気事業者が発電事業者とPPAを締 結して、調達した電力を企業に供給する形です。

これはこれで一つのやり方ですが、迂遠ではあります。一般の企業が、発電事業者と直接PPAを結べるよう、規制改革を行うべきです。

京都大学大学院経済学研究科特任教授の山家公雄氏は、これに加えて、「PPA成立条件である市場の競争環境整備が遅れている」こと、また、一般に発電事業がまだまだ競争環境にあると言い難いことが、普及のネックになっている、と主張しています。卸売市場自体に更に新規参入を促すような仕組みも導入すべきでしょう。

 

www.econ.kyoto-u.ac.jp

③ESG投資促進のため、企業に自社の気候変動リスクを開示させる

最後に、このように再エネ電力を買う企業に、ESG(環境・社会・企業統治)投資が行われるようにして、逆に、購入する電力の電源に無関心な企業は、ESG投資で選ばれないようにしていく必要があります。そのためには、企業に対し、自社の気候変動リスク等を開示させるべきです。

現在のところ、日本企業は、ESG投資で世界から選ばれるような存在にはなっていません。日経によると、ESGスコアと自己資本利益率ROE)を使って評価したところ、上位100社のうち8割を欧米企業が占めたそうです。

首位はデンマークの医薬大手ノボノルディスクの92ポイントで、ESGスコアについては、工場の消費電力の77%を再生エネルギーでまかなうほか、発展途上国の子供に無償でインスリンを提供しているという点が評価されています。

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日本企業は、先のアンケートに見たように、再エネ電力購入にはかなり前向きなのですが、そもそも何をやっているのかが開示されていない点が大きな問題です。生命保険協会が上場企業や機関投資家を対象に実施した調査によると、ESG情報に関する開示が十分と評価する投資家は1%にとどまりました。

企業のESG情報開示「十分」は1%どまり 投資家調査 :日本経済新聞

日経によると、経営戦略や企業価値とESGの関係を記す統合報告書が、日本企業の間に広まってはいます。しかし、ESGの専門家、英オックスフォード大学のロバート・エクルズ客員教授らが実施した世界調査によると、日本企業の評価は米国やブラジルと並び、3段階評価で最も低い3位グループだったそうです。アジアの韓国は2位グループです。まだまだ、日本企業のESG情報開示は、具体性等の点で評価が低いようです。

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国際的な動きとしては、金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が、「財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する」という報告書を2017年6月に公表しました。これに対し、環境省は、賛同の意を表明したうえで、民間企業向けに開示のやり方について実践ガイドを発表しています。

環境省_気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

金融庁経済産業省も音頭を取って、銀行やメーカーなど100社近くが情報開示を主導する企業連合を立ち上げさせてはいます。が、それでも日経に言わせると、先行する企業でも業績への影響など具体的な開示は十分ではなく、「投資家が求めるレベルには達していないのが実情だ」と言います。

気候変動リスク、業績への影響開示で官民連携 :日本経済新聞

企業も、再エネ電力を買いたいとは思っているようですが、自社の環境への取り組みについては、大した考えや数字に裏打ちされたビジョンがないようです。政府の取り組みは、あくまで、民間にESG情報の自発的な開示を促すものだけで、それが現状では全然響いていません。

もう、ESG情報の開示を世界に先駆けて義務付けてはどうでしょうか?

これは決して突飛な話ではありません。イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は、7月にパリで開かれたG7財務相中央銀行総裁会議の前のスピーチで、金融機関に対して気候変動リスクを自発的に公表するように求める圧力は高まっていることを強調しました。そのうえで、こうした機運の高まりをカーニー氏は「ほんの始まり」にすぎないとして、「情報公開は数年のうちに義務化される可能性が高い」と断言したそうです。

どうせ義務化の流れがあるのなら、「日本が世界に先駆けて取り組みました!」とやった方が良いはずです。

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終わりに

他にも、再エネ普及のためにやることはいくらもあります。経産省有識者懇談会等の委員も務める、東大の高村ゆかり教授によると、日本の再生エネの導入コストは今も高いままで、太陽光発電のコストは、インドや中国、ドイツと比べて2倍ほどもかかると言います。日本特有の高コスト要因の一つは工事費だそうです。FITに基づく買い取り価格が下がり、太陽光パネルの価格も下落して国際水準に近づいているのに工事費は高止まりしているのが大きな課題だと言うので、ここについては、事業者のインセンティブには注意しながら、ある程度の補助金を打つのもやむを得ないでしょう。ヨーロッパも中国も、政府が多額の投資を行って今日があるのですから。

論点:再生エネの足かせ - 毎日新聞

どうにも、日本は環境では後進国にすぎます。再エネ導入では、欧米にも中国にも遅れ、再エネ電力を企業は買いたがっているのにその仕組みがなく、企業は環境についての情報開示は何をやれば分からないようです。まずは、政府が、2030年に再エネ5割超!と打ち出して、再エネ発電事業者から直接電力を買える仕組みを整備し、ESG情報については、一定のフォーマットを政府が示して開示を義務化するべきです。