日本の改革

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森友事件、全員不起訴:日本の公文書管理制度はまだまだ全然ダメ。政府は国民が飽きて諦めるのを待っている。

森友問題、検察審の指摘後の再捜査でも全員不起訴。直接の原因は、現行の公文書管理法等の不備であり、欧米型にもっと厳しい制度に変える必要があります。問題の本質は、国民やメディアの監視を政府がなめていることにあり、しつこく制度改正を言い続けるべきです。

組織的な文書改ざんと公文書毀棄で、なぜ不起訴なのか

大阪地検特捜部は、森友学園への国有地売却や財務省関連文書の改ざんなどをめぐる問題で、検察審査会の指摘で再捜査を続けていましたが、結局、当時の財務省幹部ら10人を再び不起訴としました。

森友事件に関する刑事責任追及はこれで終わりです。検察はなぜ不起訴としたのでしょうか。以下、朝日の記事にそってまとめます。

再捜査の対象は、①財務省近畿財務局がごみの撤去費用8億円余りを値引いて国有地を森友学園に売却し、故意に国に損害を与えたとする背任容疑②決裁文書を改ざんした有印公文書変造・同行使容疑③財務局が学園側との交渉記録などを廃棄したとする公用文書毀棄(きき)容疑、の三つです。

起訴できなかった理由はそれぞれ、以下の通りです。

①の背任は、要するに、「故意に損害を与える目的」、いわゆる図利加害目的の立証が難しそうで、②の公文書変造・行使は、安倍夫人や政治家の名前等が大幅に削除されていたのが「国有地の取引内容・経過を記す文書の内容が大きく変わったわけではない」と判断、③の公文書毀棄は、財務省の規則が保存期間を「1年未満」となっていたから、ということです。

digital.asahi.com

このうち、背任容疑については、会計検査院も問題点を指摘していたのにおかしいとは思いますが、背任の図利加害目的の有無は確かに微妙な判断になるので、検察に逃げられるのも仕方がないかとは思います。しかし、公文書変造・行使と、公用文書毀棄については、あれだけ大規模に改ざんをして破棄・隠蔽しても起訴できないというのは、公文書管理制度自体がおかし過ぎるからです。

公文書管理制度の何が問題か

政府は、森友事件、加計問題、自衛隊日報問題と、立て続けに公文書管理が問題になった後も、公文書管理法の改正は拒否しています。

ただ、公文書管理の指針となる、行政文書管理ガイドラインを2017年末に決めました。

森友事件等のように、各省の内規で保存期間が「1年未満」の文書が、簡単に廃棄されている問題につき、「歴史公文書に該当しない場合でも行政が適正かつ効率的に運用され、国民への説明責任を全うされるよう」原則1年以上の保存期間を設定するとしました。

そのうえで、具体的に列挙された7種類の類型につき、「1年未満」に設定できるとしています。そして、そのまた例外として、森友事件で問題となった財務省の文書を念頭に、「通常は 1 年未満の保存期間を設定する類 型の行政文書であっても、重要又は異例な事項に関する情報を含む場合など、合理的な跡付けや検証に必要となる行政文書については、1年以上の保存期間を設定す るものとする」という、何ともややこしい書きぶりをしています。

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出所:内閣府

https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/kanri-gl.pdf

しかし、これでは、まだダメです。そもそも、なぜ1年未満(ということはなるべく早く)廃棄するなどということが許されているかというと、公文書管理法8条2項に、「行政機関の長は、前項の規定により、保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない」とあるのに、「公文書等の管理に関する法律(平成 21 年法律第 66 号)第8条第2項 の同意の運用について」という内閣総理大臣決定で、保存期間1年未満の文書は破棄してよい、としているからです。

公文書管理法はこちらで、

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=421AC0000000066#D

公文書管理法8条2項に係る内閣総理大臣決定はこちらです。

https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/douinounyou.pdf#search=%27%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%91%E5%B9%B4%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%93%E5%B9%B4%EF%BC%89%EF%BC%94%E6%9C%88%EF%BC%91%E6%97%A5%E4%BB%98%E3%81%91%E5%86%85%E9%96%A3%E7%B7%8F%E7%90%86%E5%A4%A7%E8%87%A3+%E6%B1%BA%E5%AE%9A+%E5%85%AC%E6%96%87%E6%9B%B8%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%B3%95%27

こうした決定はそのままなので、ガイドラインで多少の限定をつけたところで、各省で1年未満に廃棄してよいという文書は相変わらず沢山残ります。

ガイドラインが挙げている類型も、不適当です。上に引用したガイドラインの(6)②定型的・日常的な業務連絡、日程表「等」は、他の情報と結びついて重要な意味を持つ場合がありますし、⑤、⑥、⑦については、役所の主観的判断で決められるものなので、あまり限定の役割を果たしていません。

こうした理由から、日弁連は昨年2018年12月に意見書を出して、そもそも文書の保存期間を1年未満とすることを原則禁止とせよ、と訴えています。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2018/opinion_181220.pdf#search=%27%E5%85%AC%E6%96%87%E6%9B%B8%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%B3%957%E6%9D%A1%E3%81%9F%E3%81%A0%E3%81%97%E6%9B%B8%E3%81%8D+1%E5%B9%B4%E6%9C%AA%E6%BA%80+%E6%96%B0%E8%81%9E%27

また、このガイドラインでは、すべての文書作成について課長級の文書管理者が部局長の指示内容を含め確認することになっています。「正確性」を担保するためだ、と言いますが、現場レベルで現実に起きたことをそのまま記述した公文書の内容を、管理職が上から捻じ曲げる恐れもあります。

NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「法改正の根本議論を回避し、手続きを通じて行政文書をコントロールするのが狙いだと思われる。課長のスクリーニングを経た文書しか残らない可能性がある」と指摘し、「批判された問題に最大限対応した面もあるが、情報公開にとってはマイナスの影響が大きい」と主張しています。

「行政文書」狭める恐れ 公文書管理指針の改定案 :日本経済新聞

そもそも、何が「行政文書」にあたるかという定義について、現行の公文書管理法(2条4項)では、「組織的に用いるもの」という要件が入っていて、このため、組織的共用が見られる文書さえ、「個人メモ」だと嘘をついて、「行政文書」性を否定して、すぐ廃棄するし情報公開の対象からも外す、という恣意的な運用がなされています。

この問題につき、先の日弁連の意見書では、これは解釈を誤っているから、役所の文書をもっと広く行政文書として認めろ、と言っています。全く正当な批判です。

なお、今年になって、政府は公文書管理を全面電子化する方針を打ち出しました。変更履歴も残るようにして、改ざんを防ぐ趣旨も含んでいます。

www.nikkei.com

行政文書の電子的管理についての基本方針はこちらです。

https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/kihonntekihousin.pdf#search=%27%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%96%87%E6%9B%B8%E3%81%AE%E9%9B%BB%E5%AD%90%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%81%AE%E4%BF%83%E9%80%B2%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%96%B9%E9%87%9D%27

電子化は当然だし、結構なのですが、文書にしろ電子メールにしろ、先ほどと同様、残すべきものとそうでないものをいちいち各省で区別するという建付けで、結局は行政文書から外れるものは多数出てきますし、区別するだけでも大変で、現状では実際的でもありません。

公文書管理制度をどう変えるべきか

以上、何が問題かというと、①役所が見せたくない文書・記録を、恣意的に「1年未満に廃棄」とすることは相変わらずできるし、②そもそも「行政文書」にもあたらない、ということもできる、しかも、③新しいガイドラインで、管理職以上が文書の内容をコントロールしやすくなる、ということです。要するに、まだまだ各省の役人が公文書の内容も保存するかどうかも、決められる余地が大きすぎる、ということです。

このため、公文書管理制度は、官僚の裁量を排して、行政の意思決定等について事実がそのまま記録されたものは原則として全て、出来るだけ長期間残す、ということが必要です。

たとえば、維新は、ペーパーレス化を進め(ブロックチェーン技術も利用し)、行政文書ファイルは永久保存として(保存期間・廃棄の概念をなくし)、国会議員からの個別要求事項について文書作成を義務付け、行政文書管理を一元的に行う枠組みを作る、という議員立法を行っています。既に2017年11月に国会に提出された法案でここまで徹底しているのですから、大変先進的な内容です。

 

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出所:日本維新の会

https://o-ishin.jp/news/2018/images/c0b577b2943fb8157e4054da7056c916149471ae.pdf

維新の言う、行政文書の管理を一元的に行うための仕組みや体制については、政府は内閣府の独立公文書管理監を局長級に格上げするとしていますが、しょせんは内閣府内の機関であり、官邸が疑われた森友・加計問題等では、意味がありません。より独立性の高い組織が必要でしょう。

https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/kakuryoukaigigaiyou.pdf

その点、日弁連は、先の意見書で、 「公文書の恣意的な廃棄等が行われないように監視するため、独立した第三者機関としての公文書管理庁を設置すること」、および、「 公文書管理法を,行政文書の作成段階から徹底して電子記録管理を行う法制度に変更すること」を求めています。こちらの、「公文書管理庁」の設立の方が、少なくとも内閣府内の公文書管理監よりは、はるかに良いでしょう。

国民民主党は、行政文書の定義について、「組織的に用いるもの」という要件を削除した法案を作成・提出しています。「個人メモ」ですという嘘を防ぐための手段としては、端的で分かりやすいと思います。

https://www.dpfp.or.jp/wp-content/uploads/2018/05/20180517公文書管理法改正案%E3%80%80新旧対照表.pdf

有識者の意見ではたとえば、奈良岡聰智氏(京都大学教授)は、欧米先進諸国にならって、作成後30年たった重要公文書を国立公文書館で永久に保存し、原則公開するという「30年ルール」(おおむね一世代が経過したら公開)とするべきだとして、あわせて、国立公文書館の充実も主張しています。

www.nikkei.com

というわけで、望ましい公文書管理制度は、電子化で永久保存、独立した公文書管理庁の設置、行政文書の定義自体を大きく広げる、国立公文書館の充実と30年後公開ルールの導入、といった内容となります。 

大事なのはあきらめずに批判を続けること

公文書管理について、目指すべきゴールはある程度見えています。問題は、野党も、メディアも、そして何よりも、国民が、倦まずたゆまず、あきらめず、私たちの政府を本当に良いものにしよう、どんな決定をどんな理由でしているのか、誰にでも分かるようにしよう、と努力し続けていくことです。

政府は全然反省の色を見せていません。あれだけ公文書問題でもめて、行政文書管理ガイドラインが2017年末に作られた後、2018年3月に、経産省ガイドラインの改正内容を職 員に説明するに当たって、「打合せ等の記録」は「いつ、誰と、何の打合せ」 を行ったかが分かればよく、「議事録のように,発言の詳述は必要ない」等としていました。

公文書「個別発言は記録不要」 経産省が内部文書に記載 :日本経済新聞

2018年11月には、防衛省が、職員用の行政文書管理マニ ュアルで、ガイドラインの改正により作成が義務付けられた打合せ記録の対 象を、課長級以上の会議に限定すると受け取れる記載をしていました。

mainichi.jp

情報公開クリアリングハウスは、公文書管理法の見直しに関する意見書で、法制度の改正だけでなく、高い政治レベル、および幹部職員の判断・行動を変えることが必要、との趣旨の主張をしています。この問題は、公文書の管理の仕方という事務的な話ではなく、行政が何をしているのか、本気で明らかにしたいという、国民の意志の問題なのです。

[意見・提案] 公文書管理法の見直しに関する意見 | 情報公開クリアリングハウス

 アメリカでは、2016年の大統領選挙で、民主党ヒラリー・クリントン候補が、国務長官時代に公務で私用のアカウントからメールを使用していたとして批判されました。

彼我の情報公開の差に驚かされますが、これだって、ごく最近2014年に改正された「連邦記録法」のおかげです。行政機関の職員が公務で電子メールを使用する場合は、原則公用アカウント使用を義務付けるというふうに、ルールが変わったから分かったことです。日本国民が関心を持ち、声を上げ続けて、国会議員たちにプレッシャーを与え続ければ、日本だって同じように、制度を必ず変えられます。

www.nhk.or.jp

政府は、森友も加計も防衛相日報問題も、みんな乗り切った、公文書管理は多少変えるポーズをとった、もう後は今まで通りで大丈夫だ、と思っています。それを許してはいけません。公文書に関する似たような醜聞が今後も出てきたとき、「またかあ、もういいよ別に」と思ったら、それこそ政府の思うつぼです。相変わらず役所は、まずい資料はすぐ廃棄、しかもそれがルール上も許される、という世の中が続いてしまいます。

公文書管理というのは地味な分野に見えますが、日本全体の大改革を達成するには、今までの行政の問題点を、公文書で一つ一つ裏付ける作業が欠かせません。「森友問題、全員不起訴」のニュースに接して、倦怠感ではなく、むしろ怒りを新たにして、公文書の問題に関心を持ち続けたいものです。