日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

エージェント契約でも、クールジャパンの映像ファンドでも利益相反の吉本興業。テレビ・芸能事務所は独禁法で分離を!

吉本興業が「エージェント契約」導入。しかし、吉本とテレビ局が一体化しているなら、吉本はタレントのためではなくテレビ局のために働く利益相反があります。また、クールジャパン機構が去年始めた映像ファンドでも、吉本は自分の番組制作への出資を自分で決める利益相反があります。テレビ局、芸能事務所、政府で利益相反が起きないようなルールを作るべきです。

「免許のない放送局」吉本のエージェント契約は利益相反

 吉本興業ホールディングスは、同社内の経営アドバイザリー委員会に、所属タレントの仕事獲得を請け負うエージェント契約を新たに導入すると説明しました。

www.nikkei.com

所属タレントとの間で契約書を作成しておらず、今後も作成するつもりはないと公言して批判を浴びたことへの対応です。

アメリカのエージェント契約だと、タレントのエージェントが、出演先に対して、報酬や出演条件等を交渉し、タレントの権利を守ることになります。しかし、吉本を含めて、日本の場合、芸能事務所がタレントのエージェントになる形でエージェント契約を可能ということにしたところで、タレントの権利は結局守られない、という批判があります。出演先であるテレビと芸能事務所が一体化している場合が多いからです。

映画監督のヒロ・マスダ氏は、今回の吉本の言う「エージェント契約」でも、結局はタレントが守られない、と主張します。吉本は「免許のないテレビ局」と言われるほど番組製作をしており、吉本自身が製作側なので、自分で自分と交渉する形になり、タレントの利益のための交渉ができない、としています。

 アメリカでは、戦前から営々と続く芸能人達の権利のための戦いを通じて、タレントの身の回りの世話をするマネジメント会社と、仕事のあっせんを行うエージェントは、タレントエージェント法で分離されています。また、映画や番組等を製作する会社とエージェントは、反トラスト法で分離されています。

ところが、日本では、芸能事務所が、マネジメントもエージェントも兼ねてしまい、そのうえ、吉本の場合のように資本関係でコンテンツ製作側であるテレビ局とも一体化しています。

これについては、公正取引委員会の勉強会で、フリーライターの星野陽平氏が大変分かりやすいスライドで説明しています。一枚紙で説明するなら以下の図ですが、資料全体で、アメリカの法制度やそれが出来た経緯についても紹介されています。

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出所:星野陽平(2017)「独占禁止法をめぐる 芸能界の諸問題」、公正取引委員会BBLミーティング

https://www.jftc.go.jp/cprc/katsudo/bbl_files/213th-bbl.pdf

公正取引委員会の当該勉強会(BBLミーティング)のリンクはこちらです)

BBL:公正取引委員会

ということで、吉本が自社でエージェント契約を用意しても、結局はタレントとは利益相反の状態となります。

クールジャパンの映像ファンドでも、吉本は投資を決定し投資を受け入れ

ヒロ・マスダ氏は更に、クールジャパンが昨年発足させた新たなファンドに吉本と電通が関わっていることを批判しています。

クールジャパン機構は、本ブログでも批判した、吉本とクールジャパン機構の共同出資事業である「教育コンテンツ等を国内外に発信していく国産プラットフォーム事業」につき、吉本のコンプライアンスが問題になった後も、吉本等への最大100億円の投資決定は「適切である」との判断を示しました。

news.tv-asahi.co.jp

これだけでも大問題ですが、ヒロ・マスダ氏は更に、昨年発足した、クールジャパンの新たなファンドを批判しています。

このファンドは、クールジャパン機構が、NTTぷららや、吉本興業電通の共同出資会社であるYDクリエイション、等と共同で設立した、ファンド運営会社のジャパンコンテンツファクトリーです。ネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムなど大手動画配信サービスを経由してコンテンツの海外流通を促すのが目的、としています。

www.jc-factory.co.jp

ちょうど1年くらい前、昨年8月に、このジャパンコンテンツファクトリーというファンドが立ち上げられたとき、日経は心配げに、「迷走続きのクールジャパン機構、新ファンドで仕切り直し 」との見出しで報じています。

迷走続きのクールジャパン機構、新ファンドで仕切り直し :日本経済新聞

ヒロ・マスダ氏は、吉本はNtflixやAmazonと組んで、動画コンテンツを作る会社なのに、その吉本が、財政投融資が原資の公金ファンドの投資決定も行ってしまう、ということを批判しています。つまり、吉本は、公金を自社に流すことが出来てしまうということで、利益相反の問題がある、としています。

 吉本とNetflix等の事業については、以下のように、大崎洋吉本興業社長のインタビューがあります。

www.businessinsider.jp

 このファンドのスキームですが、NTTぷららや吉本・電通等の民間企業は、わずかな出資で、巨額のファンドを動かせる仕組みになっています。

「株式会社ジャパンコンテンツファクトリー」の株主比率は、株式会社NTTぷらら 39.2%、クールジャパン機構 29.4%、株式会社YD クリエイション(吉本と電通が50%ずつ出資の会社) 19.6%、株式会社文藝春秋 5.9%、イオンエンターテイメント株式会社 5.9%となっています。

これだけ見ると、クールジャパン機構は3番目の出資割合なので、「官が呼び水となって民の投資を呼び込む」ようなイメージです。

https://www.cj-fund.co.jp/files/press_180803-1.pdf#search=%27%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%84%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%27

しかし、実際のスキームは以下の通りで、この投資事業全体で見れば、以下のように、「株式会社ジャパンコンテンツファクトリー」からの出資は3億円だけになっています。クールジャパン機構はこの会社を通さずに、50億円を新ファンド「ジャパンコンテンツファクトリー投資事業有限責任組合」に出資しています。

結局、この投資事業有限責任組合には、ほとんどが財投原資の公金がクールジャパン機構を通じて投じられることになり、NTTぷらら、吉本・電通等の民間出資者は、わずかな投資で運営会社での決定権を握る形になっています。

 

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出所:クールジャパン機構

26 | 投資中の案件一覧 | 活動について | クールジャパン機構

なお、吉本を離れて、クールジャパン機構について言えば、ヒロ・マスダ氏は、同機構出資で出来た映画企画開発会社の信じられないような無茶苦茶な経営ぶりについて、何年間にもわたって、情報開示請求を行い、経営の違法性を問う発信を続けてきました。

wedge.ismedia.jp

国策クールジャパンの暴走、経済産業省主導で行う官民ファンド産業革新機構を使った法令無視の公金横流しスキームの実態 | ヒロ・マスダのブログ

この、一本の映画もとらずに、映画製作のための投資さえろくに行わずに22億円もの公金を費消したデタラメ会社については、いずれ別の機会に取り上げたいと思います。

が、一点だけ本当に許せないので、ここでも一言だけ書かせてもらいますと、こんな無法・違法経営会社の事業を始めた行政側の張本人、22億円無駄遣いの責任者である経済産業省の官僚、伊吹英明氏は、何の責任もとらずに、大阪万博の誘致という日の当たる仕事を任されたりしていたことです。伊吹氏は、衆院京都1区選出の自民党の大物代議士、伊吹文明氏(79、二階派)の長男で、省内では「将来の次官候補の一人」と見なされているというのだから、呆れ果てた話、見下げ果てた話です。

維新は、国会で取り上げないんですか。大阪万博誘致のお仲間にはダンマリですか。
facta.co.jp

テレビ・芸能事務所の関係は独禁法等で規律付けを!官民ファンドは全廃を!

最後に、吉本興業のエージェント契約と映像ファンドの話に戻ります。

エージェント契約が実際はタレントを守らないだろうと書きましたが、これは吉本だけが悪いのではなく、日本の芸能界の実態として、マネジメント、エージェント、プロダクションが一体化してしまっている現状が問題です。業界全体の仕組みを、法律で変えなければいけません。アメリカではタレントエージェンシー法と反トラスト法でこの三者が分離されていますが、日本だったら、独占禁止法で全部規律できるはずです。

映像ファンドについて言えば、またしても利益相反、これも吉本だけが悪いのではなく、もう官民ファンド全体の問題です。利益相反が起きないようにするというルールは完全に空文化、役所も民間も全然守ろうとしません。端的に、官民ファンドを全廃するのが一番良い解決方法です。

吉本興業という会社には、ひたすら時代遅れという印象しか持ちませんが、そこで働く才能ある人達にはさんざん楽しませてもらったし、素晴らしい才能と真剣な努力が報われる世の中になってほしいと思います。