日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

地方銀行の経営問題、金融庁は「コンサルをやれ」と命ずるより、「地域共同ポイント」や「電子地域通貨」等のルール整備を!

地銀の6割が10年後に赤字となる問題。金融庁長官は、地銀はコンサルティングをやれと言っていますが、経営の中身にあまり口出しすべきではありません。それより、電子版地域通貨や地域共同ポイント事業等、フィンテックと地域金融の組み合わせの制度的インフラを整備すべきです。

超低金利と人口減で深刻化する地銀の経営問題

ウォールストリート・ジャーナルが、あらためて日本の銀行の経営・株価不振を報じています。

日本がマイナス金利政策を導入した直後の2016年3月以降、大手銀行の純利益は20%減少した。地銀の減少はさらに激しく、3年前の水準を約30%下回っている。
過去1年は、実質的に全ての地銀の株が下落した。その半分超は、下落率が30%を超えている。地銀株は数十年の間、日本株全体をアンダーパフォームしている。

jp.wsj.com

そして、「構造改革」を呼びかけています。問題は、地方銀行がどんな「改革」をやるべきなのか、地方銀行自身も、もちろん金融庁も、見えていないことです。

地方銀行、信用金庫、信用組合といった地域金融機関は、地域経済を支えてきましたが、1980年代以降、金融制度改革が進んで、業態の垣根がなくなるにしたがって、独自の存在意義が薄くなってきました。

更に、地域の人口減少という長期的な傾向があり、そこに超低金利政策による利ザヤの消滅が加わって、もう構造不況業種です。よく報じられている通り、地銀の6割は、10年後に赤字になると日銀が試算しています。金融庁の試算によれば、地銀の半分にあたる54行がすでに本業赤字で、東北や九州などの23県は1行独占でも不採算だということです。

メガバンクも同じようなものですが、海外業務をやる体力があるだけマシで、地方銀行をはじめとする地方金融機関の経営がより厳しい状態です。

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金融庁の対策は経営統合コンサルティングの推奨

こうした地方銀行の経営問題に対し、政府は、主に経営統合による地銀再編と、コンサルティング等の「リレーションバンキング」が必要と言っています。

以前、本ブログで書きましたが、政府は、成長戦略等で、経営環境が厳しい地方銀行は10年間で集中的に再編を促し、独占禁止法の除外を認める特例法を20年の通常国会に提出する予定です。金融緩和による影響への手当としては、一応理解はできます。

ただ、当然、借り手企業の利益を害する形で独占・寡占を進めるべきではありません。長崎県で進んでいたふくおかフィナンシャルグループ十八銀行経営統合について、公正取引委員会が7割に上る統合後のシェアを問題視し、統合申請の承認を先送りして、金融庁がこれに反発する、ということもありました。

経営統合はやむを得ないとしても、それが単に地銀の経営安定化につながるだけではなく、借り手企業の利益を害さないようにするよう、審査基準や手続きを定めるべきです。

www.sankeibiz.jp

地方銀行コンサルティングをやるべき、という方針については、金融庁の遠藤俊英長官は、日経のインタビューで、以下のように答えています。

生き残りに向けたビジネスモデルは、コンサルティングなどで地元企業の成長を支援するといった「リレーションシップバンキングが典型となる」と語った。支店長や営業職員にも聞き取りをして、現場に根ざした改革機運を高めたいという。

www.nikkei.com

つまり、地方銀行は、コンサルティング業にも活路を見いだせ、ということです。

地方銀行協会の資料を見ると、山陰合同銀行松江市中心市街地の再開発事業のコンサルティングを受託したり、既に、それなりの成果はあるようです。

https://www.chiginkyo.or.jp/app/entry_file/2016_torikumijyokyo_all.pdf#search=%27%E5%9C%B0%E9%8A%80+%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%27

ただ、これにも課題はあります。

地方銀行が銀行としての立場を利用して、コンサル業を行うとなると、融資の条件として自社のコンサル業の受託を求めたり、地銀とつながりのあるコンサル会社を押し付けたりと、独禁法の優越的地位の濫用にあたるような手法がとられかねません。現にコンサルとの契約をごり押しされた例もある、と、サンケイビズが報じています。

www.sankeibiz.jp

何より、役所には、民間のビジネスでこれから何が伸びるのかは分からないのですから、経営の具体的な中身を選ばせる、ということは、出来るだけ避けるべきです。実際、森信親金融庁長官は、スルガ銀行の件で、投資用不動産への融資という特定の経営手法について肩入れしすぎて失敗し、金融行政への信頼を損ねてしまいました。

gendai.ismedia.jp

電子版地域通貨や地域共同ポイント事業と、地域金融機関の組み合わせを!

では、どうすれば良いのでしょう?

私は、地方銀行等が生き残るためには、地域の企業として、何か独自の存在価値がやはり必要ではないかと思います。同じ地域金融機関でも、株式会社である地方銀行と違って、協同組織金融機関である信用金庫と信用組合は、会員資格を一定地域に限定した形がもともとの姿であり、非営利的な性格のものです。地方銀行含め、業態を問わず、その地域の企業・住民だけが得られるようなサービスに特化していくのが一つの在り方です。

そして、地域のためになるならば、必ずしも金融機関を続ける必要はありません。

北海道銀行は、地域商社「北海道総合商事」(札幌市)を他の企業とともに立ち上げ、地銀業界で話題とのことです。東洋経済の記事から引用します。

ロシアやベトナムなどでの商機拡大を後押しするユニークな商社だ。企業進出支援はもちろん、寒冷地技術を活用したホテル建設プロジェクトの参画やゴミ処理施設の輸出をも手がける。農業法人と共同で植物工場への野菜の生産指導、ベトナムでの高糖度のトマト栽培、野菜の買い取りと道内外への販売、牛丼チェーン「松屋」のロシア進出支援など農業や食の販路拡大、生産性向上にも本気だ。

toyokeizai.net

このように、強い地場産業があって、別事業に進出できる能力があるようなところは、商社のような新しい分野に進出するのも良いでしょう。

私が更に期待したいのは、やはりフィンテックと地方金融の組み合わせです。特に、地域共同ポイント事業等や電子版地域通貨と、地方銀行等地域金融機関を組み合わせてはどうかと思います。

地域共同ポイント事業と、電子地域通貨については、日本政策投資銀行地域企画部課長の坂本広顕氏が、昨年、論文を書いています。

https://www.vmi.co.jp/jpn/bestvalue/pdf/bvextra/bvextra_04.pdf#search=%27%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E9%80%9A%E8%B2%A8+%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF%27

どちらについても、個人情報はもちろん保護の上、利用履歴のデータを蓄積して、その後のビジネスや地域・社会活動に生かせるでしょう。地域通貨は1990年代末から2000年代にかけて色々な形のものが出てきましたが、それをICT技術でしっかり支える「電子版」であれば、一層の普及も見込めるでしょう。

既に、実施されている例もあるようで、坂本氏の論文では、香川県高松市を中心とした地域共通ポイント事業「めぐりん」や、長崎県の離島エリアで実施されている、スマートフォン用電子版地域通貨「しまとく通貨」(いずれも全国初)が紹介されています。

こうした、地域内だけで通用するツールと、地方銀行等の持っている顧客データベースを(これも個人情報保護はしっかり行ったうえで)統合して、金融・非金融どちらのサービスにも生かせるような、そんなインフラを地域金融機関は果たせるはずです。

金融庁は、特定のビジネスを地銀に強要するより、こうした新しいシステムの制度的枠組みを作るべきです。その地域だけで使える制度として共通のフォーマットがあれば、普及がしやすいでしょう。もちろん、既に実施されている、これから実施されている地域ポイントや地域通貨の妨げにならないような、柔軟性のあるルールにすべきです。