日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

中国の為替操作に対し、日米欧は協調して更なる金融緩和を!「新通貨冷戦」は日米欧間ではなく、日米欧vs中国で!

中国が通貨安政策を取り始めました。アメリカの関税引き上げへの報復ですが、中国の為替操作は、世界経済全体に悪影響を及ぼします。価値観を共有する日米欧は、お互い同士での経済摩擦はおさえつつ、中国の通貨切り下げに対抗するため、金融緩和を数年間行うよう、政策協調すべきです。

中国の政治的な為替操作

トランプ政権が対中関税の第4弾の発動を表明した4日後、人民元相場が11年ぶりに1ドル=7元台に下落しました。中国当局が元安を容認したと見られます。アメリカは中国を為替操作国に指定しました。25年ぶりです。

対中強硬派のナバロ大統領補佐官(通商担当)は7月下旬、トランプ氏にドル売り介入の提案をしていたということです。この時は政権内部の反対で実現しませんでしたが、今回はありうる、と日経が書いています。

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日経は、25年前にアメリカが中国を為替操作国に指定したときは中国の改革派が台頭し、投資誘致などの国際化を進めたことにふれています。

しかし、中国の統治機構は、当時とは全く違います。昨年、国家主席の任期制限は撤廃され、習近平は終身の主席になることが可能となり、完全な独裁制となっています。その独裁者・習近平がこだわる産業補助金・強制技術移転・知的財産侵害といった政策は、中国の統治機構自体を揺るがすほど強力な対抗策をアメリカ等がとらなければ、変わりようがないでしょう。

もっとも、アメリカによる為替操作国指定に対し、中国人民銀行は「為替を貿易戦争の道具として使用していない」と表明し、人民元の対ドル基準値を市場実勢よりも高く設定する介入を実施しました。これでマーケットが安心し、ダウが少し上がったようです。

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たしかに、中国にとって、自国通貨の切り下げは両刃の剣です。輸出を増やし、米中冷戦でアメリカに対抗するカードになりますが、2015年に起きたような資本流出が起きる可能性もあります。人民銀行が介入を実施したのは、人民元の先安観があまり強まらないようにしたのでしょう。

しかし、中国が人民元取引の目安となる基準値を1ドル=6.9683元に設定した(これで1ドル7元まで人民元安に)のはそのままですし、中国指導部が人民元安を容認しているとの見方もあります。中国は多少慎重ながら人民元を安くしようとはしているようです。

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日本の当面の対応

中国による人民元安の容認後、6日の東京市場では1年4カ月ぶりの円高・ドル安、長期金利は一時マイナス0.215%で、マイナス0.2%を下回ったのは初めてです。

日銀は2016年9月以降、長期金利にも「0%程度」という誘導目標を設けており、18年7月には0%の上下0.2%程度の枠を決めていました。今回、一時マイナス0.215%になりましたが、今後も下限0.2%を割ることも容認し続ければ、円高圧力を弱められます。

日銀は更に、次回9月の金融政策決定会合で、長期金利の誘導目標の変動幅拡大も含めた緩和手段を議論することになります。

政府も、為替介入の必要性が生じる場合に備えます。東日本大震災後、急激に円高が進んだ11年の11月以来、政府は為替介入をしていません。が、日経によると、財務省幹部は警戒姿勢を強めており、「お盆の時期もいつも以上に為替市場の監視を強める」と言っているそうです。お疲れ様です( ̄^ ̄)ゞ

具体的には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「ステルス介入」に踏み切り、為替変動の影響をヘッジせずに外国の株式や債券を購入する手法をとるのでは、と市場関係者は見ています。

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ということで、日銀は長期金利のマイナス幅を深堀り、財務省は為替介入も辞さない、という姿勢です。

この対応自体は大変結構なのですが、最近の日米欧の金融政策については、どこも自国優先になり過ぎていないか、という懸念も指摘されています。米中対立を契機に、中国が今まで以上に通貨安を進めかねないのなら、日米欧は、為替に関する自国優先主義を控えて、金融政策での国際協調で中国に対抗すべきです。

「新通貨冷戦」は、日米欧vs中国で!

米中間だけでなく、日米欧中の間で、自国通貨を安くする競争が続いている、という見方があります。米資産運用大手ピムコのアドバイザー、ヨアヒム・フェルズ氏による、「新通貨冷戦」説です。

フェルズ氏は、7月末のFRBの利下げを「新通貨冷戦」の第3ラウンドだと呼んでいます。

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では、第1ラウンドと第2ラウンドは何でしょう?以下、日経のまとめで「新通貨冷戦」説を見てみます。

第1ラウンドは、なんと2013年の日本の「異次元緩和」で一気に円安が進んだことで始まる、と言います。確かに当時は、円安により日経平均株価は世界平均を上回りました。翌14年には、欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利政策に踏み出し、中国も人民元を徐々に切り下げました。第1ラウンドは日欧中です。

第2ラウンドは2017年、トランプ氏が新大統領になると「ドル安」をにおわす口先介入を始めたことです。ECBのドラギ総裁による追加刺激策の示唆でユーロ安が進んだ6月にはすかさず、「米国との競争を不当に簡単にしている」と攻撃しました。とは言え、トランプ氏が何を言ってもFRBは動かず、文字通りの口先介入にとどまっていました。

それが先月末、ついにFRBが10年ぶりに利下げをしたのが第3ラウンド、というわけです。

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2016年に書かれたときのフェルズ氏の「新通貨冷戦」の論説はこちらです。

The New Cold Currency War | PIMCO Blog

「新通貨冷戦」説は、基本的には正しい見方でしょう。各国は、自国通貨を切り下げて輸出を伸ばす、とは表向きは言いにくいので、デフレ脱却とか、経済の不透明感が増しているとか、要は国内のマクロ経済上の必要性が何かしらあるから、という建前で金融緩和を行うのが普通です。が、その本音の部分は、アベノミクスの場合のように、自国通貨安もあるはずで、「新通貨冷戦」説は、そこをうまく捉えた見方だと思います。

各国の金融政策が、為替レートという点で言えば、大なり小なり通貨冷戦的な側面を持たざるを得ないというなら、できるだけ国際社会と世界経済全体にプラスになるような形で行われるべきです。

そのためには、日米欧での通貨安競争を出来るだけ抑止する一方、中国による通貨安政策に対しては、日米欧が金融政策上の国際協調を行って、対抗すべきです。

トランプ氏は、日本に対しても、ECBに対しても、通貨安政策をとっていると批判しています。いずれにせよ、日米欧間で一層の信頼回復を図るべきです。一方で、中国の通貨安政策に対しては、厳しい姿勢で臨む必要があります。出発点はあくまで、中国の輸出産業補助金・強制的技術移転・知的財産侵害なのだから、これを抑止するためにアメリカが関税引き上げ等を行っているのは、国際社会全体にとっても良いことです。中国が通貨安政策をとるのは、この関税引き上げの効果を減殺させ、つまりは自分が正すべき行為を正さないですむようにする行動なのだから、許してはいけません。

国際協調の具体的な内容は、たとえば、G7財務相中央銀行総裁会議の場で、各国でインフレ率が2%未満である間は、3~5年間程度、長期国債を(今より低い水準で)マイナス金利の一定の範囲を目安とする、等の政策を打ち出すべきです。

そして、中国に対しては、日米欧で協調して、人民元と先進国通貨の為替レートについて、望ましい水準を示してはどうでしょうか。1980年代には、日本はプラザ合意円高ルーブル合意で低金利を事実上強いられました。あのときは日本も合意した形でしたが、中国が自国に不利な合意をするはずがありません。日米欧で協調して、一方的に望ましい為替レート水準を示し、それが実現するよう、日米欧で協調利下げや為替介入を行う、というのが一つのやり方だと思います。

価値観を共有する日米欧間では、出来るだけ経済摩擦が起きないようにするとともに、各国ともに更にマイナス金利を深掘りして経済を刺激し、そして中国には改革を強く促す、この方向での金融政策上の国際協調を行うべきです。