日本の改革

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ポスト核兵器の軍事技術と政治的リアリズムで目指す、本気の核兵器廃絶 ― 原爆の日に寄せて ―

広島、長崎への原爆投下から74年。核兵器拡散も、核兵器の使用可能性も増すばかりです。一方、極超音速兵器の開発等により、核兵器での相互確証破壊という抑止論が通用しにくくなってきました。日本は、指向性エネルギー兵器等の新技術で核ミサイルを無力化する独自のミサイル防衛システム開発で、核軍縮から核兵器廃絶を目指すべきです。

核兵器相互確証破壊核抑止論が揺らいでいる世界

今日は8月6日、原爆の日です。日本が提出する核兵器廃絶決議は昨年で25年連続採択されたのに、被爆者を含む多くの人々の願いもむなしく、その実効性は全くありません。一方、核兵器禁止条約に日本は反対しています。

日本は全くの二枚舌外交、核兵器廃絶に向けてのリアリズムも倫理観も見えない態度です。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000426249.pdf

www.sankei.com

現時点で、核兵器廃絶にリアリティがないと思われているのは、無理もありません。しかし、本当にリアルに考えてみると、核兵器が廃絶される可能性もあることが分かります。軍事技術の発展等により、核兵器のメリットとされた相互確証破壊による平和の実現、いわゆる核抑止論が怪しくなってきたからです。

相互確証破壊は、相手を核攻撃すれば自分も核攻撃を確実に受けて大打撃を受けるから、どの国も核攻撃を避ける、という考え方です。陸自OBで拓殖大学客員教授の矢野義昭氏は、以下のような理由で、それが不安定化している、としています。

jbpress.ismedia.jp

第一に、MD(ミサイル防衛)システムを突破できる新しい核攻撃型の兵器の存在です。極超音速兵器をロシアと中国が積極的に開発配備しています。

第二に、宇宙の軍事利用の進展です。これにより、既存の各種衛星が破壊あるいは機能マヒを起こし、ICBMなどが誘導できずに、核抑止機能が働かない恐れが出ています。

第三に、米中露の核戦力体系の非対称性です。短距離の低出力核でロシアがアメリカに対して一方的に有利な態勢にあります。少し前まで、INF条約に拘束されない中国が中距離核戦力でアメリカに一方的優位を高めつつありました。

関連して、トランプ政権は核兵器の近代化に最優先で予算を配分し、低出力核の増加配備、核弾頭とその運搬手段の近代化を加速させるとしています。低出力核は従来の核兵器ほどの破壊力はないので、実際に使われる可能性が高まっています。

第四に、北朝鮮やイランのような新しい核保有国またはその可能性のある国が増加しており、多国間での核抑止態勢がどう働くか、見えにくくなっています。

こうした変化は、米ソ冷戦時代に想定されていた核抑止論の有効性を疑わせるようになっています。

対策として、矢野氏は、米統合参謀本部副参謀長のポール・セルバ空軍大将らの主張を引きながら、低高度地球軌道衛星のネットワークの必要性、宇宙軍の創設、迎撃システムとして、電磁パルス・レールガン・高出力レーザーなどの指向性エネルギー兵器の開発配備、等を挙げています。

以上の対策について、私はいずれも賛成です。軍事技術が大きく変わり、米ソ冷戦当時の相互確証破壊が利きにくくなっているという、国際政治上のリアリズムを捉えているからです。

ただ、そのほかに矢野氏が挙げる「非核三原則の見直し」という選択肢だけは、反対です。国民の支持が得られないからであり、国民の支持のない国防政策は、結局はうまくいかないからです。核武装論がリアリズムのようでリアリズムでなく、国防上望ましくもないことは、本ブログで何度も取り上げてきました。

「プルトニウムは将来の核武装のために必要だ!」⇒小泉純一郎「どこで実験すんですか、核実験」 - 日本の改革

必要なのは核武装ではなく、核ミサイルの無力化:アメリカのミサイル新戦略と日本 - 日本の改革

専門家としての矢野氏の知見には敬意を払いますが、国民の意思を捉えるという、国内政治上のリアリズムの点では、矢野氏の主張には修正が必要です。

軍事技術と政治的リアリズムによる核兵器廃絶

 基本的に核抑止論に立つ場合にも、ICBMについては抑止力が疑わしいという見方は、現状では少数説ながら根強く唱えられています。ロイターのレポートから引用します。

軍縮専門家によれば、米国が保有するあらゆる核兵器で、偶発的な核戦争の引き金となるリスクが最も高いものにICBMが含まれる。だからこそ、米国の元国防当局者や軍事専門家、そして議員の一部からも、ICBM撤廃を求める声が高まりつつあるのだ。

彼らの主張はこうだ。敵の攻撃を受ける兆候がある場合、大統領はきわめて迅速にICBM発射を決断せざるを得ず、脅威の真偽を検証する時間がない。ヒューマンエラーや早期警戒衛星の誤作動、または第3者によるハッキングによっても、誤った警報発生の可能性がある。

ICBMミニットマンIII」は、一旦発射されれば撤回できない。敵からの電子的干渉に脆弱との懸念に対応するため、同ミサイルには通信機器が搭載されていないからだ。

特別リポート:米核戦略にICBMは必要か、専門家から疑問の声 - ロイター

 ICBM戦力の撤廃を主張しているのは、クリントン政権時代に国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏や、オバマ前政権下で国防長官を務めたレオン・パネッタ氏等です。かつてはマティス氏も上院でこの意見を述べたことがあるようです。

加えて、前節に挙げたような、核弾頭を搭載した極超音速兵器等が登場した現在、責任を持ったリアリスティックな安全保障政策のためには、核抑止論を相対化して考える必要があります。

現状では、相互確証破壊が一応機能していることは認識しつつ、それがどう変わりつつあるのかを正確に見極め、核による抑止論だけではない、重層的な安全保障政策が必要です。

現状で特に実効性が高いのは、やはりレールガンや高出力レーザー等の指向性エネルギー兵器です。これも、本ブログで繰り返し主張してきましたが、

北朝鮮の核ミサイルを無力化するには:独自のミサイル防衛完成、集団的自衛権拡張、「国民の、国民による、国民のための」国防の実現 - 日本の改革

実はトランプ政権発足時から検討されてきた訪朝プラン。今後の米朝協議は核開発凍結止まり。日本はミサイル防衛の技術開発加速を! - 日本の改革

各国は着々と実戦配備に向けた準備を進めています。

米海軍は2021年までに、レーザー兵器を主力駆逐艦に搭載することを計画しています。「High Energy Laser and Integrated Optical-dazzler with Surveillance」システム、通称「ヘリオスHELIOS)」です。これは、駆逐艦の搭載型発電システムを利用し、理論的には“無制限攻撃”ができる能力があるので、今のミサイル防衛システムで対応できないような、多くの核ミサイルに対する攻撃でも、比較的安価に防ぐことが出来ます。

www.esquire.com

戦闘機についても、2021年までにレーザー砲搭載が可能になるようです。

www.esquire.com

これに、セルバ氏、矢野氏らの主張するような、低高度地球軌道衛星のネットワークの構築、宇宙軍の創設等も導入して、ミサイル発射時の敵基地攻撃能力もつけて、従来型の通常兵力やミサイル防衛システムと組み合わせるのが、あるべき防衛の姿でしょう。これにより、核兵器によらない形での、基本的には専守防衛のシステムとして、中国、ロシア、北朝鮮の核ミサイルの攻撃を無力化し、核兵器という兵器を時代遅れにすることを目指すのが、日本が目指すべき核廃絶の道です。

これは、科学技術と国際関係の変化に関するリアリズムに基づいており、そして、自国が核武装することなど不可能だという国内政治のリアリズムにも基づいた核廃絶です。何より、この理想は、国民の「理解を得る」というだけでなく、日本の目指すべき理想として、国民が心から支持し、自ら主体的に参加しようと思えるものです。日本は、国民の支持により、口先だけでない、本気の核廃絶を目指すべきです。