日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

アメリカ、中国からのほぼ全輸入品に高関税。対策は金融政策・財政策のフル出動。日本は改革型の大規模経済対策を!

アメリカは中国からの輸入品に広範な関税引き上げ。アメリカはその悪影響を、国内の金融政策・財政政策で吸収しようとしており、国民もそれを支持しています。米中冷戦でアメリカ以上に打撃を受ける日本は、改革型の大規模経済対策を行うべきです。

米中冷戦を大規模経済対策で乗り切るアメリ

トランプ大統領は、9月1日から3000億ドル分の中国製品に10%の追加関税を課すと発表。再開された米中貿易協議で成果が出なかったためです。

 

これまでに導入した関税は主に工業製品が対象でしたが、今回の3000億ドル分には多くの消費者向け製品が含まれる見通しで、電化製品から携帯電話、衣料品も対象となります。対象はほぼ全ての輸入品に広がります。

(出所:日経新聞電子版2019年8月2日 23:25)

対中関税「第4弾」しびれ切らす米 持久戦打開狙う :日本経済新聞

今回の決定はアメリカの消費者への負担も非常に大きいものですが、良い面もあります。

トランプ氏は特に、中国が約束した米農産物の追加購入とフェンタニルの対米輸出の停止が守られていないと批判しています。フェンタニルは強力で依存性のあるオピオイド系鎮痛剤で、2017年だけで、アメリカでの過剰摂取による死者は約2万8000人、13年の3000人から急増しています。

globe.asahi.com

トランプ氏によると、中国はその輸出停止を約束していましたが、それが守られていないのも、制裁の引き金になったようです。これは、上に引用したウォールストリート・ジャーナルも、ポリティコも書いています。

ここだけ見ればむしろ、アメリカの消費者・国民の利益を守るための関税引き上げとも言えます。

Trump's frustration with China boils over - POLITICO

一方の中国は主要メディアが2日午前、関税第4弾を報じませんでした。以前の突然の追加関税上げ時と同じ反応で、意表を突かれたフシがある、と日経が書いています。

中国は「関税第4弾は米国内の反対が強く、発動しづらい」とみており、国内でも10月の中国建国70周年まで発動はないとの楽観論が多かったようで、大外れです。

習近平は、来年の大統領選でトランプ氏が落選するまで待つ戦略とも言われてきましたが、大統領選以前の段階について、アメリカの反応を読み間違えています。

www.nikkei.com

6月末から7月にかけて、アメリカはファーウェイへの輸出規制を緩和し、安全保障上の脅威にならない限り、輸出許可としました。そのとき私は、ファーウェイへの対応が恣意的に過ぎることを批判し、米中貿易協議についても、安易な妥協があるかもしれないと考えて、批判しました。

トランプ、大統領選で足元見られ、成果なくファーウェイへの輸出承認。日本は豪州同様、独自の安全保障上の判断を! - 日本の改革

しかし今回、アメリカが中国の産業補助金や強制技術移転等の問題について、妥協していない様子が伺えて、ほっとしています。トランプ氏の直接の動機は案外近視眼的で、中国による米農産品輸入の制限とフェンタニル輸出の放置にあるようですが、そのどちらに対しても、筋の通った批判をしています。

なお、ファーウェイへの輸出規制については、中途半端な形ですが、同社は今後も、安保上脅威のある外国企業を列挙した「エンティティー・リスト」に掲載されてはいるので、米技術をファーウェイに販売することを望む企業は、許可申請は必要です。

jp.wsj.com

さて、今回の広範な関税引き上げは、アメリカの消費者にも企業にも、相当のダメージがあるはずです。来年に大統領選を控えて、どんな計算で行ったのでしょうか?

日経は、貿易戦争の痛みを金融緩和と財政出動で和らげる算段がついたからだろう、と見ています。

FRBはトランプ氏の圧力に屈して金融緩和に転じ、米議会は2020年度(19年10月~20年9月)と21年度の歳出上限を合計3200億ドル引き上げました。中国との貿易戦争のレベルをもう1段階上げても、金融緩和と財政出動で米経済を下支えできると踏んだのだろう、という見立てです。

以前から言われていたポイントとしては、米国は中国からの全輸入品の約5割(約2500億ドル)、中国は米国からの全輸入品の約7割(約1100億ドル)に既に追加関税を課しているので、関税だけ見れば、中国には打つ手がそれほどありません。

www.nikkei.com

 

トランプ氏の支持率ですが、7月31日から8月1日にかけてのHarvard CAPS/Harrisの調査によると、45%の支持率で、ほぼ現状維持です。調査主体によると、7月は民主党の女性マイノリティ議員に侮辱的なツイートをしたりして、強く批判されていましたが、経済状況が良いので、支持率が保たれている、と考えられています。

トランプ氏の経済政策への支持は57%にのぼります。

thehill.com

6月30日から7月1日のワシントン・ポストとABCの世論調査でも、トランプ氏の支持率は44%、この調査では、就任以来で最高の数字だったようです。バイデン氏をリードしています。民主党のバイデン氏をリードしています。

Washington Post-ABC News poll, June 28-July 1, 2019 - The Washington Post

要は、トランプ氏は、米中の貿易戦争のダメージは、財政政策と金融政策で十分吸収してお釣りが来る、そして、こうした強力なリーダーシップでの経済政策が自分の高い支持率を支えている、と考えています。経済政策を更に推し進め、成果を出すことが再選戦略の軸になるでしょう。

以上の政策に賛成しているのは、トランプ氏だけでも、共和党だけでもありません。アメリカ議会は民主党も含めて中国には厳しい姿勢ですし、歳出上限引き上げも、超党派で成立しています。来年の大統領選で誰が勝っても、米中冷戦と大規模経済対策は続くでしょう。

日本経済へのダメージはアメリカより大きい。改革型の大規模経済対策必要

 

このように、アメリカは、大規模経済対策で米中貿易戦争を乗り切ろうとしています。日本も同じことをするべきです。

日経によると、アメリカが対中制裁関税の引き上げを発動した今年5月の主要株価指数の下落率は、アメリカよりも香港や韓国、シンガポール、日本の方が大きかったようです。日本企業の4~6月期決算にもそれが出ていると言います。
www.nikkei.com

日本に必要なのは、アメリカの対中強硬姿勢を支持するとともに、自国経済を守るための経済対策を、相当大規模に行うことです。

安倍総理参院選翌日の22日の記者会見で、「積極果敢な経済対策に取り組む」と発言。これは支持してよいでしょう。問題は中身です。

日経は、金融緩和の余地が限られるとすると、焦点はやはり補正予算での財政政策と見ていて、今後の日米貿易交渉次第では、農業関係の対策が浮上するだろう、としています。

www.nikkei.com

以前も本ブログで書いたことですが、景気悪化が見込まれるときの経済対策についても、改革派の政党・政治家は、こうした既得権者向きの、つまりは企業・団体向けの財政支出一本槍の経済対策に反対し、家計を直接温める経済対策を打ち出すべきです。

米中冷戦は長く続きます。必要なのは一時的な経済対策と言うより、関税引き上げを一つのきっかけとして、米中冷戦の長い悪影響に耐えられるような中長期の経済政策を実施することです。

具体的な中身については、以前のブログでも書きました。

景気悪化の際の経済政策:金融緩和継続、消費増税路線を撤回、財政支出を企業・団体からバウチャー方式で家計へ。 - 日本の改革

海外需要の減退で輸出があてにならず、設備投資のための企業団体への直接補助は効果が小さいうえ、既得権者への不公平なバラマキであり、許してはいけません。

あとは、家計の消費を直接増やすことが必要になります。しかも、単なる薄く広いバラマキでは、やはり効果がありませんし、貯蓄されて消費に回らない可能性もあります。

そこで、保育・教育の無償化の範囲を拡充したり、介護等の自己負担を軽減する形で家計の手取りを増やすべきです。保育・教育は、社会的に見た投資収益率が非常に高いことで知られています。

目的限定の補助金、つまりはバウチャー方式の支出を家計について手厚く行い、その財源は、国債発行だけでなく、非効率さの目立つ企業・団体向けの財政支出の削減で賄うことにすべきです。家計の手取りが増えれば、おのずと国内消費が増えて、企業の設備投資の最大の駆動力である需要が国内で増えることになります。

こうした政策は、補正予算での一回限りの対策にはなじみません。改革を標榜する政党は、来年度予算編成での大規模な予算組み替えを提案するとともに、今年度補正予算でそれを前倒し実施するよう、迫るべきです。