日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

統計の監視役が内閣官房ではダメ!同じく統計不正問題に苦しんだイギリス同様、政府から独立した統計庁の設置を!

通常国会前半の最大の争点だった統計不正。大山鳴動して、再発防止策は内閣官房に審査官を置くだけというお手盛りでした。これでは、全く再発防止策になりません。イギリスのように、政府統計への信頼失墜を踏まえて、政府から独立した統計庁の設置をするべきです。

統計不正問題への反省が全くない政府

統計不正の再発防止策として、政府は、内閣官房に「分析的審査担当を31人配置」する、というだけの対策を発表しました。

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出所:内閣官房

勤労統計で賃金がどれくらい上がったかについて、官邸の関与さえ疑われた統計不正事件に関する後始末としては、あまりにお手盛りで、実効性のないものです。

朝日新聞が、これでは第三者性がないと言って叩いていますが、もっともな批判です。

digital.asahi.com

先の通常国会で、野党の統計不正追及には、私も不満はあります。私は3月2日の本ブログで、野党が「政治主導の統計改革」と「政治介入による不当な歪曲」を区別せず、政治家が主導する統計制度の改正は全て疑わしいかのような攻め方をしたのは失敗だった、と書きました。

なぜ、野党は攻めきれなかったのか:2019年度予算案、衆議院を通過し、参議院は消化試合に - 日本の改革

国会で問題となった2015年10月の経済財政諮問会議での麻生財務大臣の発言以降、政府が検討したものの中には、たとえば家計調査での標本調査の偏り(高齢者が過大、共働き世帯が過少等)の是正等、まともな制度変更もありました。

最大の焦点となった勤労統計のサンプリング手法の変更も、官邸主導で、厚労省内に検討会を立ち上げるところまでは、「政治主導の統計改革」と言うことも一応可能です。これに対して、いったん専門家に検討をまかせて、専門的、中立的に議論をしている最中に、その議論を変えようとするのは、明らかに「政治介入による歪曲」にあたります。

野党は、ここを明確に区別して、誰がどう見てもおかしい「政治介入」の問題に集中すべきでしたが、サンプルの全部入替か一部入替か、という技術的な話などに延々とこだわって、ポイントを外してしまいました。

ただし、いったん問題が明らかになった後の調査を、厚労省の不祥事なのに厚労省独立行政法人の理事長に調査させたのは、全く第三者性を欠いたおかしな話でしたし、その点についての野党の批判は全く正当でした。

にもかかわらず、自民党は独立した統計庁の議論を早々と封印してしまい、現行制度は変えずに乗り切ることを決め、上に述べたような野党の攻め方のまずさも手伝って、通常国会では結局、再発防止策について成果はありませんでした。野党、メディアは統計庁等の設置を主張しましたが、主張し始めたのが遅れたきらいもあり、いずれにしても無視されました。

厚労省分割や「統計庁」創設に否定的見解 自民党チーム:朝日新聞デジタル

そして、結局は、外見的公正さという点で全く評価できないようなお手盛り対策を出してきました。

イギリスの統計制度改革と日本の統計庁に関する提案

私は、1月27日のブログで、日本はイギリスにならって、政府から独立した統計庁を設置すべきだ、と書きました。今回は、イギリスの経験と統計制度について、最近の文献も踏まえて新たに紹介し、日本への示唆を考えます。

(なお、1月27日のブログには、イギリスの統計関係の各組織間の関係について、一部誤りがありましたので、修正いたしました。修正内容は、1月27日ブログに加筆してあります。申し訳ありませんでした。)

政府統計への政治家の介入こそが問題の根源。イギリスにならって、統計行政の独立性の確保を。 - 日本の改革

日本で統計法が全面改正されて現行法となったのは2007年です。その年の11月27日、内閣府が、「統計改革に関する国際シンポジウム」を開きました。

そこで基調講演の一つを行ったマイク・ヒューズ氏(イギリス国家統計局国家統計政策部長・当時)によると、1990年代から2000年代にかけて、イギリスでも政府統計を巡る深刻な国民不信がありました。公的統計が政争の具とされて、失業の定義が4年ほどで 26回も変わったそうです。

国際フォーラム等 平成16年度~20年度の実施報告|内閣府 経済社会総合研究所

http://www.esri.go.jp/jp/workshop/071127/program/pdf/session01_ja.pdf#search=%27%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9+%E7%B5%B1%E8%A8%88%E5%88%B6%E5%BA%A6+%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E7%B5%B1%E8%A8%88%E5%B1%80+%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E6%80%A7+%E4%B8%AD%E7%AB%8B%E6%80%A7%27

今日は、1月にブログを書いた後に出版された川崎茂(2019)「統計制度の国際比較ー日本の統計の特徴と課題」(国本直人・山本拓編(2019)『統計と日本社会』東京大学出版会p244~247)より、イギリスの統計制度を詳しめに紹介します。 

先に書いた通り、1990年代から2000年代にかけて、政府公表の統計に対して、マスコミからも政府自身からも疑義や批判が提起され、基本統計を作成する国家統計局(Office for National Statistics)も、その監視機関も叩かれることになりました。その際、国家統計局と監視機関のトップ同士が激しく応酬するような醜態があったようで、政府統計への信頼はますます失墜しました。

結局、政府・議会の検討の結果、2007年に統計・登録業務法(Statistics and Registration Service Act)が制定され、行政府に属さない国会直属の機関である統計院(UK Statistics Authority)が設置され、基本統計を作成する国家統計局 (Office for National Statistics)はその一部となりました。統計院の下には他に、政府統計全般を監視する統計委員会(Statisitical Board)、政府統計全般の品質検査を行う統計規制局(Office for Statistics Regulation)が置かれています。

つまり、イギリスでは、基本統計を作成する国家統計局も、それを監視・検査を行う機関も、まとめて統計院の傘下に置かれ、統計院は内閣から独立して議会に直属しています。

G7諸国でも、中央統計機関は行政府に属するのが一般的なようですが、イギリスだけは議会直属となっています。

統計と日本社会: データサイエンス時代の展開

統計と日本社会: データサイエンス時代の展開

 

イギリスだけが例外的に議会直属の統計機関を持っているのは、やはり政府統計に対する深刻な不信があったからです。日本で今年初めから通常国会で議論された統計不正は、極めて重大な問題であり、国民の信頼回復のためには、イギリス同様に、政府から独立した組織である統計庁を設置する必要があります。

ただし、日本の場合、国会に対する信頼も、政府に劣らず、高くありません。そもそも、統計担当者を含めて、日本の官僚が過労死するほどの激務になっているのは、政党や国会議員の質が低く、官僚を平気でめちゃくちゃにこき使うからです。

行政から独立した統計庁を国会に設置するなら、各政党や個別の議員が統計の専門部門に直接影響を及ぼせないように、政官の接触にも厳しいルールを定めて、トップの組織だけが国会全体に対して責任を負う形にすべきでしょう。この点も、イギリスの制度では、統計を実際に作る国家統計局も、その監視・監督を行う機関も、どちらも統計院という組織の下に置かれています。日本でも独立した統計庁(イギリスの統計院)を作って、その組織(合議体)のトップ(議長)が国会に責任を負う、という形にすれば、政府、国会双方からの政治的圧力をかわしやすくなるでしょう。

更に、独立性とは別の議論ですが、統計不正の別の原因として、統計を担当する人員の圧倒的不足が指摘されています。この点、AIの発展等によって大幅な省力化が図れる部分もあるでしょうが、それでも現状では、データ収集にも分析にも、全く人手が足りていません。

独立性という質の点も、人員・予算という量の点も、両方含めて、抜本的な組織改革を行うことで、国民の統計不信を払拭すべきです。