日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

橋下徹氏、維新の年金積立方式案を撃沈⇒世代間公平には、端的に給付削減。納得感には個人勘定化。高齢者同士の再分配は税金で。

テレビの選挙特番で、橋下徹氏が、維新の年金積立方式案を批判しました。公的年金の積立方式への移行は、二重の負担等の問題があり、非現実的です。世代間公平には、端的に給付削減、国民の納得感を得るには、年金の個人勘定化、低年金の問題は、高齢者間の所得分配を金融所得課税で行うべきです。

橋下徹氏の批判:積立方式はやはり無理

ツイッターで見たのですが、関西テレビの番組「選挙サンデー・報道ランナー」で、橋下徹氏が、維新の東徹議員に、維新の積立方式案について厳しく質問しました。

動画の引用は避けますが、以下のサイトに、橋下氏と東氏のやり取りが出ています。

h-ishin.com

質疑の概略は以下の通りです。

橋下氏:積立方式にした場合、40年積み立てたら10年で枯渇してしまう、その10年分しか保証しないのか。

東氏:いや、そうではない。

橋下氏:じゃあ、積み立てた自分のお金以外にどこから出すのか。

東氏:ここの制度的なところまで詳しく決めていなかった。

橋下氏:積立金のインフレによる目減りはどうするのか。

東氏:そこまでの検討はしてなかった。

橋下氏:積立方式で物価連動債を発行するとか、10年で枯渇する点については税財源をあてるとか、自分なりに考えて積立方式ということをやったつもりだった。松井代表や維新のメンバーは、積立方式としか言わずに、積立以上のお金はどうなのか、インフレへの対策はどうなのか、それが伝わってこなかったから、国民の方も維新の年金の案についてこなかったのでは。

アナウンサー:厚労省の試算では、690兆円かかると言うが、浅田政調会長はこれを国の借金で、と言っていたのは、維新の機関決定ではないのか。

東氏:国鉄清算事業団のように時間をかけて解消していくということは決めた。

橋下氏:党首討論で松井代表が積立方式について言ったときに、安倍さんがすかさず、まっさらから年金作るならいいけれど、と反論したのに、松井代表から、きちっと再反論がなかった。積立方式と言うだけではなかなか有権者はついてこなかった。

東氏:歳入庁も大事、積立方式と歳入庁の設置で徴収漏れを防ぐ、あとは支給年齢引き上げも。

このやり取りについて、東議員は、以下のようにツイートしています。

 

維新が積立方式を提唱し始めたのは、結党のとき、2012年の維新八策のときからです。

https://oneosaka.jp/news/120831%20維新八策.pdf

その結党時の代表の橋下徹氏が、自分が最初に積立方式を打ち出したときに想定したこと、つまり、積立では前期高齢期くらいしかカバーできない点は税金投入、賦課方式よりインフレに弱いこと等についてはインフレ連動債発行、つまりは、税金と国債で積立方式を補完すべき、ということを伝えた形です。

やり取りを見ると、厳しく批判されているように見えるかもしれませんが、実際のところ、橋下氏は、積立方式について常識的な質問をしたうえで、自分の当初の想定等を伝えて、その点について選挙戦で維新から発言がなかった、と言っているだけです。

問題はむしろ東議員、というよりも、日本維新の会です。2012年に言い出してから、既に7年が経ちますが、未だに制度設計の基本、それも、誰でも分かるような積立方式の問題点への対処が出来ていません。積立方式導入の議員立法は、まるっきり大雑把です。要は「積立方式にします」と書いてある程度の内容しかありません。強いて詳細を挙げるなら、「事業者負担はゼロ」と書いてあることです。その分賃上げを想定しています。つまり、サラリーマンの保険料率は2倍になります。賃上げするからいいでしょう、ということのようですが。

https://o-ishin.jp/houan100/pdf/detail034.pdf

年金制度の抜本改革は、民主党政権交代前に基礎年金化をやろうとした頃を最後に、国政上の議論は盛り上がらなかったし、維新は優先度が低いと判断して、ずっとほったらかしでした。今回の参院選金融庁の報告書から思わぬ形で年金が争点になり、維新はボロを出しました。

党内で本気で積立方式にしたい、実現可能だと考えているのは、浅田政調会長くらいじゃないでしょうか。浅田議員は、2016年の参議院当選直後から、年金について御自身で調べられているのを拝見しました。浅田議員の怜悧な知性と真摯な政治姿勢は、昔も今も、私は尊敬し続けています。

ただ、年金については、たとえこれから新規まき直しで維新が一所懸命に考えて案を作ったところで、やはり積立方式の導入は無理です。以前、本ブログでも書いた通り、二重の負担を国債発行で長期間かけて解消する、と言うのは、結局はその国債を税金で返していく、つまりは国民負担を増して、同時に積立保険料も負担させる、というプランです。正直に全体像を話せば、とても国民の納得が得られるものではありません。

世代間公平実現の方向:①2004年改革の給付水準見直し、②個人勘定の導入、③高齢者間の所得再分配

積立方式に移行する案が目指すのは、世代間公平の実現です。年金制度における世代間不公平を是正すべき、という維新の理念には全面的に賛成です。そのためには、以下の三つを行うべきです。

1.2004年改革(現行制度)での給付削減

これについては、以前、本ブログで主張しました。簡単に言えば、2004年の制度改正は、保険料率上昇に歯止めをかけ、マクロ経済スライドを導入する等、良い点はありました。制度論だけで言えば、世代間不公平がやや是正されたように見えます。

しかし、実際の数字、負担と給付の水準がどう変えられたからを見れば、実はとんでもない規模で、世代間不公平がむしろ拡大したことが分かります。平たく言えば、将来世代から420兆円分もの年金資産の強奪が行われたのです。以下、以前のブログから引用します。


これについては、高山憲之氏(元・一橋大学教授)が、当時強く批判していました。

http://takayama-online.net/Japanese/pdf/pension/economist0406.pdf#search=%27%E5%B9%B4%E9%87%91+%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%88%27

高山憲之氏はここで、既に年金に入っている人達(説明の便宜上、「旧世代」と名前を付けます)と、これから年金に入る人達(2005年~2100年まで。「将来世代」と名前を付けます)と、年金のバランスシートを比較しています。
結論は、制度改正前には、旧世代は500兆円超の債務超過で、将来世代は資産と負債がほぼ同じだったのに、2004年改正で、旧世代の債務超過の穴埋めのため、これから年金に入る人達から420兆円を奪って旧世代に渡した形になっている、それと同じ結果になるような保険料と給付額が設定されている、ということでした。当然、旧世代のバランスシートの債務超過はほぼ解消、一方で、将来世代のバランスシートは一気に400兆円ほどの債務超過になりました。

つまり、将来世代から旧世代に420兆円もの年金資産の移転が行われたことになります。

2004年の年金制度改正で将来世代から420兆円の強奪:世代間不公平の是正を。前提は、身を切る改革と徹底行革。 - 日本の改革

このような不公平を是正することこそが、世代間公平の実現のはずです。

2.個人勘定の導入

次に、年金制度への個人勘定の導入です。井堀 利宏氏 (政策研究大学院大学教授)が、以前から主張してきたように、現在のどんぶり勘定をやめて、国民一人一人の負担が誰の給付になるか、はっきり分かるように、個人勘定に移行する、という考え方です。具体的に想定するのは、現役世代が保険料を支払う際に、給付の受取人を指定できる、たとえば親を選ぶことが出来る、という制度です。井堀氏の主張は、以下のスライドに分かりやすくまとめられています(積立方式のメリット、デメリットも出てきます)。

http://cis.ier.hit-u.ac.jp/Japanese/society/ihori100928.pdf#search=%27%E5%B9%B4%E9%87%91+%E7%A9%8D%E7%AB%8B%E6%96%B9%E5%BC%8F+%E3%83%87%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88+%E4%BA%8C%E9%87%8D%E3%81%AE%E8%B2%A0%E6%8B%85%27

3.高齢者間の所得再分配:金融所得課税強化

最後に、賦課方式は維持しつつ高齢者の給付を2004年改正前の水準まで下げる、という給付削減を行う際には、高齢者の所得水準でメリハリをつけないと、低年金問題が今以上に深刻になってしまいます。これについては、もう年金での解決は無理で、税金による再分配を行うべきです。特に、金融所得課税が分離課税で低税率になっているのを是正すべきです。

以上の2,3については、本ブログで別に書いた通りです。

年金2000万円「不足」問題、最初の麻生発言が最悪。国民の納得は、年金の個人勘定化と、高齢者間の税による再分配で。 - 日本の改革

いずれにせよ、日本維新の会は、橋下徹氏の批判を真摯に受け止め、自分達の年金制度抜本改革案の抜本改革を行うべきです。