日本の改革

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暗号通貨リブラで叩かれるフェイスブック、株価は最高値水準:金融規制と、企業分割・データポータビリティ権保障をセットで!

フェイスブックの暗号通貨リブラが各国で批判を浴び、厳しい国際規制が課されそうです。この企業の力、体質、事柄の重大性から見て当然です。一方で、既存の銀行に対抗できるような存在も必要です。厳しい金融規制とともに、金融会社は分割する等、フェイスブックの分割・データポータビリティ権の保障とセットで認めるべきです。

各国金融当局に袋叩きされるフェイスブック。でも株価にほとんど影響なし

フェイスブックの暗号通貨リブラに対し、各国の金融当局が一斉に批判し、厳しい国際規制が課されそうです。

 7月18日に閉幕したG7では、議長総括で「最高水準の規制を満たす必要がある」と明記、会議では、ムニューシン米財務長官が、「資金洗浄、プライバシー、消費者保護などの観点から、リブラには深刻な懸念がある。多国間で規制すべきだ」と発言、これを引き取って、議長国、フランスのルメール経済・財務相が、「国の通貨に代わるデジタル通貨は容認できない。リブラは国の通貨と同じ義務を負うべきだ」と応じた、と日経が報じています。G7の作業部会が、今秋に規制の方向性を報告することで合意、その後は、G20や主要国の金融安定理事会(FSB)と合わせて、規制の検討をするそうです。

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その他に、資金洗浄対策、利用者保護等で、以下のような国際機関での規制も早急に検討するようです。

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今回の動きの特徴は、フェイスブックの母国アメリカが規制を主導し、ヨーロッパが喜んで乗っているところです。トランプ大統領は、このところのフェイスブック叩きの流れで?リブラは信頼性を欠くとツイート、パウエルFRB議長は深刻な懸念があると言い、米下院金融サービス委員会のウォーターズ委員長は発行計画を一時中断しろと言いました。

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フェイスブックは、上院でも、下院でも、議員達の袋叩きにあいました。

上院では、オハイオ州出身のシュロッド・ブラウン議員が、「リブラ開発をやめるべきだとあなたやフィスブックを説得するために我々は何と言えば良いか?」とアッパーカット。

そして、出ましたエリザベス・ウォーレン!そもそもフェイスブックを分割しろと主張している人です。ユーザーのデータポータビリティ権を認めろという主張もしています。彼女の質疑を、コインテレグラフ・ジャパンから引用します。

アンチ仮想通貨で知られ2020年大統領選に出馬を表明している民主党エリザベス・ウォーレン議員は、データ移動に関するフェイスブックの意識を尋ねた。
「もしフェイスブックの利用者がリブラ以外のウォレットを使うことを望む時、データのエクスポートを簡単に可能にすることは考えていますか?」
マーカス氏は、「間違いなく可能にする」と回答した。ウォーレン議員はワッツアップやメッセンジャーでも同じようなデータ移動の義務を果たすつもりはあるか聞いたが、マーカス氏は言葉を濁した。

つまり、フェイスブックは、リブラの「預金者」が、自分の「預金」、データを他の暗号通貨等に乗り換えることは認めていますが、一般的なデータポータビリティの権利は否定した、というわけです。

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下院の公聴会では、民主党のアルマ・アダムズ議員が、「あなた方(FB)は、データを収集しても共有はしないと約束したのだから、われわれがなるほどそうなんだと信じるとでも思っているのか」と発言。まあ、フェイスブックのやり口からしたら、そんな質問も出るでしょう。

diamond.jp

極めつけは、民主党のブラッド・シャーマン議員で、フェイスブックの暗号通貨は、ビン・ラディンより危険だと…もう、堂に入った嫌われっぷりです。

thehill.com

母国アメリカでここまで嫌われ、叩かれ、こんなものはやめろと言われ、最近仲の悪かった先進国が一致団結して、早急に最高レベルの厳しい規制で合意したその直後、フェイスブックの株価は1%安になっただけで、最高値レベルのままです。現状では、厳しい規制を行っても、角を矯めて牛を殺すには程遠い状態です。24日の4~6月期決算発表の内容次第ではあるようですが、現状では、投資家は新通貨リブラに相当期待しているようです。

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何がそれほど危険なのか?既存金融システムを変える可能性もあり

リブラの何がそれほど危険なのでしょうか?指摘されているリスクは様々です。G7前の報道ですが、日経の7月3日の記事を軸に、私見を加えつつ、見てみます。

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リブラは、ドルやユーロなど複数の法定通貨と価値を連動させます。単一ではなく複数の通貨の「バスケット」に連動させるのは、一見、個別の貨幣の価値だけに頼らなくて良さそうに見えます。ところがこれは、どの通貨にもよらないという形で、各国の金融規制の隙をつく戦略とも考えられているようです。ただ、この点は、今回のG7で国際的な規制をやることになったので、穴をふさげそうです。

それより心配されているのは、既存の銀行から大規模な預金の流出が起きる事態です。たとえば、ユーザーが地銀から預金を下ろしてリブラを買うと、運営者が、リブラの準備資産として、安全な大手銀行に預金を移すのでは、という懸念が、日経7月3日の記事では示されています。ただ、これは、既存の銀行の預金獲得競争と同様の話で、これまでと違う形での競争が導入されるなら、むしろ一般預金者の利益になります。

この点は、IMFがリブラ等についてまとめたレポートでも、指摘されています(ここでは、日経の解説記事の孫引きですませてしまいます<(_ _)>)。IMFレポートの日経孫引きによると、既存通貨からデジタル通貨への交換で銀行の預金は減少しますが、「デジタル通貨の発行主体が手にした既存通貨を銀行に再び預金すれば、銀行システム全体で見た預金量は変わらず「共存」や「補完」が可能」としています。

ただし、発行主体が準備資産として国債や外債に投資してしまえば、銀行が融資削減をせざるを得なくなって問題だ、こうした場合、「共存」等ではなく「乗っ取り」が起き得る、としているようです。

金融政策、デジタル通貨で機能失う恐れ IMF報告書 (写真=ロイター) :日本経済新聞

IMFレポートはこちらです。

The Rise of Digital Money

日経の7月3日記事に戻ると、更に、リブラに利子はつかないので、利子を動かす伝統的な金融政策が効かなくなるおそれがある、とも指摘されています。また、リブラ運営者が準備資産として国債を大量に買えば金利が下がり、逆にリブラの信用が下がって国債を売るようになれば、金利が上がります。こうした形で、金利の乱高下が起きるかもしれない、と言われています。

フェイスブックは、既にリブラのウェブサイトを用意してPRしており、もう日本語のサイトまであります。そこには、「Libraのミッションは数十億人のエンパワーメントにつながる、シンプルでグローバルな通貨と金融インフラを提供することです」とあります。発展途上国には手数料の高い銀行口座を持てない人達が沢山いるから、安価で容易な決済サービスを、という大義です。

libra.org

しかし、これが信用できない、とも指摘されています。そもそも、発展途上国では、ネット環境が整備されていません。

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 また、発展途上国は金融規制が(良くも悪しくも)かなり厳しいことが多いので、実際には途上国でのビジネスは難しいかもしれません。リブラの目的が、フェイスブックが言うような社会的目的ではないのでは、と疑われる所以です。

一番の悲観論は、フィナンシャル・タイムズのマーティン・ウルフ氏でしょうか。ウルフ氏は、リブラがいずれは貸出にも利用される可能性を指摘し、その場合には、既存銀行は、バランスシートの負債サイドで預金を決済通貨で奪われ(同時に資産サイドの現金も失い)、更に、資産サイドの貸出金も失うことになる、としています。そして、フェイスブックのユーザー数と持っているデータの量、質が十分に生かされれば、最悪の場合、銀行はフェイスブック一つになる恐れがある、と、かなり極論に聞こえる主張をしています。

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私は、各国の金融当局の厳しい姿勢を見ると、そこまでひどいことにはなるはずがなくて、決済の新たな手段として、銀行の競争相手が出来るのはむしろ良いことだと思います。ただ、以上挙げたようなリスクはあるので、そこには手当が必要です。

金融規制とともに、企業分割と、ユーザーのデータポータビリティ権の保障をセットで!

今回、フェイスブックが金融分野に踏み出したことで、規制に関しては良い面もありました。IT大手を野放しにしたら危険であり、国際的な規制で結束する必要がある、という認識が、各国政府の間で共有された点です。確かに、デジタル課税等、まだまだ協調が出来ていない分野もあります。しかし、リブラに関する規制は相当広範なものになりそうですし、各国トップ間の信頼関係も増し、各国政府の各機関同士の協調も進むでしょう。これは、金融以外の分野でのIT大手プラットフォーマーへの規制での協力にもつながる可能性があります。

今後、有効なのは、金融規制と反トラスト法上の規制を組み合わせることです。エリザベス・ウォーレン上院議員の改革案、即ち、フェイスブックを始めとする大手プラットフォーマーを分割し、競争相手を増やしたうえで、データポータビリティ権を認めるという改革も、金融規制といっしょに行うことです。これにより、フェイスブックは、金融上の優位を取引先企業に行使することも難しくなりますし、競争にさらされて一般のユーザーの利益をより重視します。

今回の金融規制での国際的な結束を、反トラスト法での国際的な結束につなげるべきです。安倍さんは、エリザベス・ウォーレンの案に乗って、この分野でリーダーシップを取ってほしいものです。アメリカ国民が支持する案なら、トランプ氏も追随するはずです。