日本の改革

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フェイスブックの個人情報不正利用の制裁50億ドル:手元キャッシュ450億ドル、株価上昇で全然効き目なし。どうすれば効果的か?

フェイスブックが個人情報不正利用で、FTCから50億ドルの制裁金を課される見込みです。が、安すぎて効果がなさそうです。個人情報保護に必要なのは、経営者の個人責任追及、及び、データポータビリティと企業分割の組み合わせです。

日経は「厳しい姿勢」と書いてるが、実際は相当に甘い

フェイスブックの個人情報の不正流用事件を巡り、米連邦取引委員会(FTC)が同社に50億ドル(約5400億円)と過去最大の制裁金を科す方針を固めました。2018年3月にフェイスブックで最大8700万人分の個人情報の不正流用が表面化した件に関するものです。この事件は、フェイスブックが収集した利用者の大量の個人情報が、研究者を通じてデータ分析会社に不正に横流しされたという深刻な問題で、民主主義とIT大手プラットフォーマーとの関係等の論点も提示しました。

ただ、制裁金については、4月頃には既にこのぐらいの金額だろうと予想されており、サプライズはありません。

この話、むしろ、今回の制裁がいかに効果がないか、というのがニュースです。

日経は、この件を含めて、アメリカはじめ各国がIT企業に「厳しい姿勢」で臨んでいる、という書きぶりですが、どうも実態は相当に甘いようです。日経も一言、同社が既に一定の引当金を計上しているから、今回は「駐車禁止のチケット程度の効果しかない」という専門家の指摘にもふれてはいます。基本的に厳しいけど甘いという声もある、という報道です。

www.nikkei.com

海外の報道は逆で、甘すぎて効果は見込めないという点を強調しています。

ウォールストリート・ジャーナルによると、制裁が引当金より20億ドルも高かったにも関わらず、金曜日にフェイスブックの株価が1.8%上昇、第一四半期の利益は50億ドル。同社が積立金を積んだときに、民主党議員らが少なすぎると批判したことや、FTCには牙がないと批判されたこと等を紹介しています。また、今回の合意について、民主党のDavid Cicilline下院議員が、「フェイスブックに5か月早いクリスマスプレゼントをした」とツイートしたと書いています。

www.wsj.com

既に4月の時点で、「50億ドル」は市場も織り込み済みだったようです。

ロイターの4月26日のコラムでは、制裁金を課されても、FTCの調査が終わる見込みが不透明感を取り除くとしていて、そのときも株価は急上昇したようです。更に、今後、司法省や州司法長官の調査、また、カナダ政府の制裁が見込まれるとしても、フェイスブックの手元キャッシュは約450億ドル、事業も拡大中、政治家も個人情報保護法の改正は大してやる気なし、と書いています。 

コラム:フェイスブック制裁金問題、市場は織り込み済みか - ロイター

ロイターは同じ日の別の記事で、この問題では、一部企業の広告引き揚げや、利用者の間では「#DeleteFacebook」とつぶやいてアカウントを閉じる動きが広り、株式時価総額は1カ月足らずで700億ドル近く吹き飛んだものの、時価総額は、不祥事発覚直後に比べ400億ドル増えており、引当金計上を発表した翌日には、株価が6%も急伸、と報じています。

焦点:フェイスブック、ちらつく制裁でも成長期待衰えず - ロイター

個人情報不正利用に対する効果的な抑止方法:経営者の個人責任追及、データポータビリティと企業分割の組み合わせ

要するに、今回の制裁金では、全然抑止効果はありません。では、こうした個人情報の不正利用の抑止には、何をすれば効果的なのでしょうか?

利益や手元キャッシュに見合うよう、制裁金を十分上げるのはもちろん重要ですが、どうも、数字の問題というよりも、FTCとの紛争が終わる見込みで株価が上がっているようです。フェイスブックだけではなく、伝統的な金融大手の不正販売についても、似たようなことがあったようですし、制裁金引き上げだけでは効かない可能性があります。

一つには、経営者の個人責任追及です。先に紹介したウォールストリート・ジャーナルの記事でも、FTCとフェイスブックの間で今まで合意できなかった点は、CEOのザッカーバーグ氏の責任の程度についてだったということです。経営者個人への制裁金等をより厳しくされることは、本気で嫌がっていたのでしょうから、一定の抑止効果は見込めるでしょう。

より根本的には、ユーザーにデータポータビリティ権を保障するとともに、企業分割を行うのが効果的です。

以前、本ブログで、個人情報保護には、データポータビリティ権を認めて、ユーザーが自分のデータを引き上げて別のプラットフォーム企業を選択する可能性が出れば、どのプラットフォーム企業も、ユーザーをより大事にして、個人情報が保護されるはずだ、という主張をしました。日本政府がやろうとしている情報銀行との比較で言えば、その方がはるかに効果的なはず、という趣旨でした。

SNS等のユーザーの個人情報保護は、情報銀行などではなく、データポータビリティ権の保障で! - 日本の改革

今回、個人情報保護に関する制裁に効果がなさそうなことを見れば、データポータビリティ権保障以外に、競争法上の措置も追加すべきと考えます。具体的には、ウォーレン上院議員の主張のように、企業分割も同時に行うべきです。データポータビリティによる競争を一層促進し、実効性を高めるからです。フェイスブックの例で言えば、インスタグラムやワッツアップを所有しているのは、ユーザーの選択による市場規律を弱めています。

フェイスブックは個人情報の不正利用を続けています。今回の制裁は、更に以前の不正利用の際に締結された2011年のFTCとの合意への違反に関するものです。

Facebook Settles FTC Charges That It Deceived Consumers By Failing To Keep Privacy Promises | Federal Trade Commission

大規模な不正を繰り返し、しかもそれに対する現行の制裁が効いていない現状は変えなければいけません。IT大手プラットフォーマーに対する個人情報保護は、制裁金や経営者の個人責任追及、データポータビリティ権の保障という個人情報保護制度上の措置に加え、企業分割という競争法上の措置が必要です。