日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

回答の期限は2週間:日本はホルムズ海峡の安全確保のため、有志連合に参加すべき。維新は平和安全法制対案の修正を。

アメリカが、ホルムズ海峡等での航行の自由のため、有志連合の結成を日本含め数か国に打診しています。日本政府は、有志連合に参加表明をすべきです。維新は、平和安全法制への対案を修正すべきです。

イラン革命防衛隊への対処に限定すべきだが、無理なら平和安全法制での対応

アメリカ政府は、イラン沖のホルムズ海峡とイエメン沖のバブルマンデブ海峡の航行の自由を確保するため、多国籍の有志連合を結成する検討に入りました。

ダンフォード統合参謀本部議長は、ポンポオ国務長官らと協議のうえ、「両海峡の航行の自由を確保するため有志連合を結成できないか、すでに数カ国との調整に入っている」「今後2週間程度(probably over the next couple of weeks)で、どの国がこの計画に参加する政治的意思を持っているか分かる。それからどの軍隊がどういった能力を提供するか協議することになる」と発言しました。

mainichi.jp

ロイターは、他国の反応について、日本の野上官房副長官の発言だけを取り上げています。他国が沈黙している時点だったのかもしれませんが、日本が特にホルムズ海峡の船舶航行に依存しているのだから、注目するのは当然です。ダンフォード統合参謀本部議長は、この記事の中で、どのような規模の作戦になるかは、参加する国の数次第だ、と言っており、関係国の意志を尊重した言い方にはなっています。

www.reuters.com

国際社会から日本の回答が注目されています。しかも、回答の期限は限られています。本当に2週間程度での返答が必要なら、この参院選中にも、何らかの意思表示が必要でしょう。いずれにしても、先送りで逃げ続けるよりも、早めに決断した方が、国際社会全体からの信頼は得られるはずです。政府は難しい判断を迫られています。

私は、日本は出来るだけ早く、有志連合への参加の意思表示をするべきだと思います。ホルムズ海峡の自由航行は、日本にとって死活的に重要であり、先月のタンカー攻撃で、危険が既に顕在化しています。

更に、イラン領内でアメリカの偵察ドローン機が撃墜され、アメリカはイラン攻撃寸前までいきました。時事通信によると、この攻撃について、イラン革命防衛隊のカナニモガダム・ホセイン元司令官が、「(指導部から)直接的な指示はなかっただろう」との見方を示しています。時事は「イランの指導部が米国への挑発を自制しても、現場の司令官を含む強硬派の挑発的行動が偶発的な衝突に発展する恐れがある」と分析しています。

米、対イランで出口見えず=圧力強化に限界-エスカレートの恐れも:時事ドットコム

本ブログでも、米イラン関係の最大の危険は、イラン革命防衛隊という現場の部隊が中東全体で力を持ちすぎてしまい、近視眼的な現場の判断による攻撃で、米、イラン双方のリーダーが望まない戦争が本当に起きてしまうことだ、と主張してきました。

イランに攻撃命令出して10分で撤回。もし攻撃したら、「150人の犠牲」の先に、何が起こりえたのか。 - 日本の改革

誰も望まない米イラン戦争、イラン側の誤解で勃発の可能性あり。日本の与野党は、本件を国内政局にからめるな。 - 日本の改革

先に紹介した時事通信の記事は、「国際危機グループ(ICG)」のイラン専門家アリ・バエズ氏が、イランへの制裁はもう上限に達していて、追加するのは難しいとして、トランプ氏が対イラン強硬派の声で戦争以外の選択肢がない状況に追い込まれかねない、との発言を報じています。そのうえで、時事通信は、革命防衛隊による偶発的攻撃が戦争に発展する恐れがある、だから、日本はアメリカによる有志連合への参加要請に応じるな、と言っているように見えます(アリ・バエズ氏自身の発言は、まだ私は確認できていませんが、時事通信の論調は、明らかにその方向です)。

Ali Vaez (@AliVaez) | Twitter

しかし、私はむしろ、イラン革命防衛隊が中近東全域で好き放題をやって、戦前日本の陸軍状態なのを、国際社会全体で止めさせるべきだ、と思います。その意味で、アメリカが、イラン革命防衛隊をテロ組織に指定したのは、良いやり方です。敵はあくまで、イラン政府やイラン国民ではなく、強大になり過ぎたイラン革命防衛隊だ、という体制をとれるからです。

日本も、本来は、ターゲットをイラン革命防衛隊にしぼることが出来れば、その方が良いでしょう。日経は、日本が有志連合に参加する場合の法的な枠組みとして、①平和安全法制での「存立危機事態での集団的自衛権行使」または「重要影響事態での後方支援」、②自衛隊法での海上警備行動、③海賊対処法に基づく船舶護衛、④新たな特別法の制定、を挙げています。

www.nikkei.com

私は、この中で言えば、海賊対処法に基づく船舶護衛とするのが、イラン革命防衛隊という私的な「テロ組織」への対処、という点では、大義名分が一番近いと思います(7月11日訂正:「テロ組織」に「私的な」を追加し、「大義名分が一番すっきりすると思います」を「大義名分が一番近いと思います」に修正しました。この件で海賊対処法の適用は難しそうだと気付き、考えを改めました)。ただ、イラン革命防衛隊の位置づけや現場の状況等につき、要件・効果の点で海賊対処法では無理、ということも考えられるので、やはり、平和安全法制での対応も想定が必要です。

平和安全法制での議論と維新の対案

では、日本は、平和安全法制上、ホルムズ海峡に自衛隊を派遣できるでしょうか?派遣したとして、他国の軍隊が攻撃された場合、集団的自衛権を行使できるでしょうか?

私は、どちらもOKだと思います。この点は、2015年の安保国会で、さんざん議論されたところでした。

まず、政府は、機雷掃海を想定して、ホルムズ海峡への自衛隊派遣と集団的自衛権行使は平和安全法制によって可能、という立場です。

www.jimin.jp

ただ、当時、2015年7月に、イラン核合意が最終合意したこともあり、野党はホルムズ海峡での機雷掃海の議論は周回遅れだ、まして集団的自衛権行使はおかしい、と批判していました。これに対し、安倍総理も、同年9月の国会答弁で「いま現在の国際情勢に照らせば、現実問題として発生することを具体的に想定しているものではない」として、抑制的な姿勢を見せました。

首相、ホルムズ海峡での機雷掃海「想定せず」 :日本経済新聞

ただ、それも、あくまで2015年時点での「いま現在の国際情勢に照らせば」、ということであって、国際情勢が変われば別です。アメリカが、当否はどうあれ核合意から離脱してしまい、日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃された今となっては、ホルムズ海峡を通過して石油・天然ガスを運べないという事態も、可能性としては想定しておくべきです。平和安全法制についての政府解釈通り、ホルムズ海峡での集団的自衛権行使は可能と考えるべきですし、そうした事態(重要影響事態も含めた事態)に備えて、海上警備行動のための自衛隊派遣は、現行法で十分可能です。

一方、野党は、本件で、選挙戦中からきちんと態度を表明すべきです。立憲民主党は、「少なくとも、軍事行動を想定するようなものであるならば、安倍政権下でつくられた違憲の安全保障法制のもとでもできることではない」と発言。こちらはもう、どうしようもありません。これまでの立場を墨守して国際情勢の変化についていけず、これまでの支持者と共産党にばかりおもねって、参院選で大幅に票を減らすことでしょう。

www3.nhk.or.jp

問題は、日本維新の会です。こちらは、平和安全法制の対案を2015年時点で立案、国会に提出し続けています。集団的自衛権の限定行使を認めますが、その範囲を厳しく制限、特に、地理的制限をかけています。

維新の対案で集団的自衛権を行使できるのは、「合衆国軍隊等防護事態」の場合だけです。

つまり、「①条約に基づき(対象は今はアメリカだけ)②我が国周辺の地域において(我が国周辺だけ)③我が国の防衛のために活動しているアメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊に対する武力攻撃(防衛活動中の軍隊への武力攻撃だけ)が発生し、これにより、我が国に対する外部から の武力攻撃が発生する明白な危険があると 認められるに至った事態 」のみ、攻撃が可能です。

これは、2015年時点では、極めて説得力のある限定でした。憲法上の疑義もさることながら、イラン危機が減り、最大の脅威は中国・北朝鮮なのだから、限られた自衛隊の資源は日本周辺に集中させるべきだ、という安全保障観です。現実的で、しかも、初めての集団手自衛権行使を認める法制度の立法時点で、軍事力行使の拡大に関する国民の不安にも十分答えるものでした。

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出所:日本維新の会

https://o-ishin.jp/news/bill/pdf/040_1.pdf

しかし、トランプ政権の登場で、この安全保障観の前提が変わりました。イラン核危機はエスカレート、ホルムズ海峡の緊張は一気に高まりました。中国・北朝鮮への脅威は相変わらず備えが必要ですが、アメリカの大統領は、日米安保条約で日本がアメリカを防衛しないのは不公平だ、と言い始めています。このブログでも言い続けたように、北朝鮮によるアメリカへのミサイル攻撃を、日本がミサイル防衛で打ち落とせるようにもするべきです。

もはや、集団的自衛権行使に地理的制限をかけるべきではありません。ホルムズ海峡で日本の海運会社の運航するタンカーが攻撃されて煙を挙げている映像は、日本国民に強い印象を与えました。今であれば、国民は、2015年に作った安保法制対案を作り直すことに、十分な理解を示すでしょうし、維新への信頼感も増すでしょう。

維新は、この選挙戦中に、イラン近海への有志連合への参加に賛成を表明し、平和安全法制の対案を今後修正する、と決定し、発信すべきです。