日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

あなたの「いいね」に、フェイスブック社は報酬を支払うべきでは?:デジタル課税の一部を「デジタル配当金」に。

G20財務相中央銀行総裁会議で、2020年までにデジタル課税最終合意を再確認。課税の一方、ユーザーによる個人情報提供に「デジタル配当金」を支払うべきという主張もあります。デジタル課税のうちの一部を、デジタル配当金として、ユーザーに還元することを検討すべきです。

G20、デジタル課税で2020年には最終合意。ユーザー参加に応じた課税にすべき

先月、福岡で行われたG20財務相中央銀行総裁会議で、巨大IT企業に対する国際課税につき、2020年中に最終合意することを確認しました。

ただ、今回の会議では、既に今年1月、OECDの「ポリシー・ノート」での合意の再確認しか出来ておらず、その頃からあった三案(イギリス案、アメリカ案、インド等の新興国案)の対立はそのままのようです。OECDのポリシー・ノートと、この三案の対立については、以前、本ブログでも取り上げました。

Google元副社長・村上憲郎氏「GAFAたたいてる場合か」⇒その通り。ただし、課税と消費者保護は強化すべき。 - 日本の改革

共同声明も、なんとも締まりのない表現に見えますし(以下の11番目の項目)、

20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2019年6月8-9日 於:福岡) : 財務省

日経は社説で、早く国際課税ルールを作るべきだ、と急かしています。この社説によると、来年1月に大枠合意して来年末までに最終報告というスケジュールでさえ、調整は難しいかもしれないようです。

www.nikkei.com

もめているのは、主に、ユーザーの参加量(データ量、クリック数、デジタルサービス契約件数)に課税するイギリス案と、マーケティング上の無形資産(ブランド、のれん等)に課税するアメリカ案の対立です。イギリスは既に、来年4月から、抜け駆け的に、2%の売上税の形でIT大手への課税を行います。

www.nikkei.com

アメリカはこれがアメリカのIT大手への狙い撃ちだと言って反発しており、自分達の案を主張しています。アメリカ案は、マーケティング上の無形資産に課税するもので、対象はIT大手だけでなく、従来型のあらゆる企業に及びます。

IT大手企業へ課税できないことによる不都合、両案の違い、今後の見込み等については、以下の朝日の国税庁OBへのインタビューや日本総研の論文が参考になります。

digital.asahi.com

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/viewpoint/pdf/11148.pdf#search=%27%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E8%AA%B2%E7%A8%8E%27

要は、全世界でユーザーの個人情報を使って巨額の利益を上げているIT大手プラットフォーマーが、普通の企業の半分程度しか税金を払っていない、それは本社機能を低税率国において、支社等の実物資産を各国におかないからだ、これはおかしいから、ユーザーの使用料やのれん等の無形資産に課税すべきだ、ということです。これは当然やるべき話です。

現在のところアメリカ案が優勢とも言われるようですが、筋としては、やはりユーザーの参加量に応じた課税を行うイギリス案を軸にすべきです。IT大手の収益は、ユーザーから無料で集めた個人情報をターゲティング広告用にあらゆる企業・団体に売ることから生じているからです。

デジタル配当金

IT大手プラットフォーマーの収益が、ユーザーの個人情報から生み出されているのですから、課税ではなくて、IT大手がユーザーに対価を支払うべきだ、という主張もされています。これがデジタル配当金という考え方です。

 フィナンシャル・タイムズのコメンテーターのラナ・フォルーハー氏は、IT大手やその他の情報関連企業が、個人情報の利用を通して全体で年間760億ドル(約8兆5000億円)もの収入を上げており、個人情報の利用で得られた収入が直近2年間で44.9%増加しているという、民間調査機関のデータを紹介しています。そして、米商務省の経済分析局(BEA)の統計をもとに、この業界で現在の伸びが続けば、2022年までに個人情報から上がる収入は1977億ドルに上る、としています。

そこで提唱されているのが、情報収集企業が情報の所有者である全ての個人に支払うデジタル配当金です。既にカリフォルニア州が提案しています。フォルーハー氏によると、米アラスカ州ノルウェー等が公的基金を設立し、石油収入の一部を将来世代のために積み立て、運用するしくみと似ている、とのことです。もし導入すれば、米国民1人あたり308ドルの還元になる、との試算もあるようです。

[FT]データは資源 個人情報利用に対価を :日本経済新聞

カリフォルニア州のデジタル配当金については、今年2月に同州知事のギャビン・ニューサム氏が施政方針演説で、法案の議会提案をする方針だと述べています。この制度は、経済学者のグレン・ワイル氏の考え方を一部採用しているようです。

www.nikkei.com

デジタル配当金の提唱者グレン・ワイル氏は、もともと小さな政府論者だったようですが、レーガンサッチャーは減税によって経済成長を促そうとしたけれど、結局は企業独占による超過価格が減税以上に経済的な負担を生んでしまった、と考えているようです。

ワイル氏は、IT大手プラットフォーマーが、個人情報を利用した機械学習で独占的地位を強固にしているのを問題視して、様々な社会改革案とともに、デジタル配当金を主張しています。以下は、ウォールストリート・ジャーナルによるワイル氏の改革案の紹介です。同紙によれば、ワイル氏は「急進派」になるようです。なるほど極めて広範な社会改革・政治改革を主張しており、私も全ては理解しきれていません。

jp.wsj.com

ただ、ユーザーの個人情報で巨額の利益をあげているITI大手プラットフォーマーに対して対価を要求すべきだ、という考え方には賛成できますし、カリフォルニア州のように、現実の制度にしようとする動きもあります。

デジタル課税とデータ配当金を組み合わせては

IT大手プラットフォーマーとはまた別の話にはなりますが、コンピューターやソフトウエアを含む無形資産が経済全体で重要な役割を果たすようになったことが、世界的な労働分配率の低下の一つの要因になっているのではないか、という指摘もあります。陳腐化のサイクルが極めて速い無形資産への投資が増え続けることで、労働者に支払われる賃金が減っている、という分析です。アメリカでも、日本でも言える話のようです。

[FT]労働分配率低下、覆すには :日本経済新聞

Labor share of income: A new look at the decline in the United States | McKinsey

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p03031.pdf#search=%27%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%88%86%E9%85%8D%E7%8E%87+%E4%BD%8E%E4%B8%8B+%E8%A6%81%E5%9B%A0+IT%27

こうした時代にあって、IT大手プラットフォーマーが、ユーザーの個人情報から巨額の利益をあげて、税負担も、情報使用料も支払っていないことについて、どうすればよいでしょうか?

日本経済研究センターの岩田一政理事長は、デジタル課税やデジタル配当に関する議論を紹介したうえで、次のように述べています。

情報銀行の活用や個人がAIやデータを活用するプロセスで新たな価値創造に積極的に参加し、その努力の成果に見合った報酬を得られる仕組みを構築できるかが問われている。

www.nikkei.com

岩田氏が主張する通り、「個人が新たな価値創造に積極的に参加」し、「その努力の成果に見合った報酬を得られる仕組み」が、やはり必要です。

個人が、IT大手プラットフォーマーの単なるユーザーとして個人情報を提供するだけでなく、自分でもITリテラシーを上げて、利用されるだけでない形で、「新たな価値創造に積極的に参加」できるよう、リカレント教育を含めたICT教育の一層の充実が必要です。

それだけではなく、個人が「努力の成果に見合った報酬」を得られるようにするためには、単なるユーザーとしてIT大手のプラットフォームを利用した場合にも、個人情報の提供に応じた然るべきデジタル配当金を受け取れるようにすべきです。

そのためには、こうした配当金を請求・管理等を行う組織や仕組みが必要です。これについては、労働組合的な団体等も提案されているようですが、一国内だけでも、SNSやアマゾンのユーザーについて、そうした団体を作るのは、難しいと思います。

そこで、既に導入の決まっているデジタル課税につき、その税収の一部を、ユーザーにデジタル配当として還元してはどうか、と思います。課税自体も、イギリス案のように、デジタル参加量に応じた課税として、配当もデジタル参加量に応じて行うようにすれば、すっきりするでしょう。デジタル課税の行方は分かりませんが、日本としては、出来ればイギリス案を推して、あわせて、カリフォルニア州のデジタル配当制度を参考に、参加量に応じた課税・配当の仕組みを、今後提案すべきです。

ちょうど参院選の真っ最中です。もうマニフェストも出来上がって、各党は決まった方針で訴えているところですが、一国民としては、もうちょっとワクワクするような、未来向けの話が聞きたいところです。

あなたの「いいね」に、フェイスブック社はお金払うべきじゃないですか?

こんなびっくりするような声を、街頭でもネットでも見聞きしたいものです。