日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

トランプ、大統領選で足元見られ、成果なくファーウェイへの輸出承認。日本は豪州同様、独自の安全保障上の判断を!

トランプ大統領が、ファーウェイへの米企業からの輸出を承認しました。アメリカで超党派の対中強硬姿勢が続いていたところ、大統領が選挙目当てに恣意的な判断をしています。日本は、トランプ氏の判断とは別に、独自の安全保障上の判断で、中国企業・製品への対応を決めるべきです。

トランプ氏が中国に譲歩、米国民へのお土産はなし

米中首脳会談、トランプ大統領は、ファーウェイへの輸出を承認しました。見返りはありません。一方、今後の協議も全く決まっていません。新たな関税は先送りし、これまでの関税は現状維持、変わったのは、ファーウェイへの輸出承認だけなので、アメリカが一方的に譲歩した形です。それ以外はお互いの高関税は続きます。

digital.asahi.com

日経によると、前回の交渉決裂以降、米中は水面下の交渉もほとんどやっていなかったようです。中国は来年の大統領選をにらんで長期戦に出て、今回の首脳会談に応じない可能性さえ見せる「瀬戸際作戦」をとり、これが奏功して、トランプ氏の譲歩を引き出しました。はっきり言って、トランプ氏の負けです。日経から引用します。

長期戦を覚悟した習指導部は、トランプ氏が手柄に当て込む農産品の輸入拡大も妥協を渋り始めた。液化天然ガスLNG)なども含めて当初は1兆2000億ドルの購入で折り合いつつあったが、中国は「需要に応じた柔軟な数値目標」を要求しているという。

中国が見据えるのは20年の米大統領選だ。民主党の候補指名争いで先頭を走るバイデン前副大統領は5月初旬に「中国人は悪い人たちではなく、競争相手でもない」と口にした。その直後、中国はトランプ政権との妥協を拒んで「90%まで来ていた合意内容を大幅に後退させた」(ムニューシン米財務長官)。中国はトランプ氏の再選の可能性をにらみながらカードを切ろうとしている。

www.nikkei.com

というわけで、中国は、当初ビビッて約束した農産品輸入拡大さえ、もうやらないと言い始めています。トランプ氏は今回の会談後、中国が農産品をたくさん買うと言っていましたが根拠なしで、いつものウソでしょう。アメリカにとっては「素晴らしいディール」どころか、踏んだり蹴ったりです。

では、中国がもくろむように、来年の大統領選でトランプ氏が負ければ、米中貿易戦争は終わるのかと言うと、そうはならないでしょう。対中強硬姿勢には超党派の支持があり、現にこれまでの高関税は継続です。ワシントン・ポストは、中国の対米投資やアメリカのハイテク技術購入への制限は続くと見ています。ただ、同紙は、大統領が立場を頻繁に変えるのが問題だとして、プリンストン大学のフリードバーグ教授(チェイニー元副大統領のアドバイザー)のコメント(「不確実なのはトップだけだ」等)を紹介しています。

www.washingtonpost.com

米中冷戦を戦うにあたって、残念ながら、現職のトランプ大統領は、アメリカにとって障害になりつつあります。

トランプ氏は、どの大統領も始められなかったこの戦いに着手しました。そして米中冷戦を戦うという方針につき、アメリカ国民と米政界の超党派の支持を獲得する、という素晴らしい仕事を達成しました。もうこの動きは、来年の大統領選で誰が当選しようが変わらないでしょう。八方美人のバイデン氏など、世論と両党に言われれば簡単に言うことを変えるでしょう。

アメリカの方向を決定づけた点で、トランプ氏は偉大な大統領です。しかし、彼には、米中冷戦を戦い抜いて勝利者の栄誉が与えられることはなさそうです。米中冷戦はいずれにしても相当長期間になるでしょうから、アメリカの勝利は、別の大統領によってもたらされるでしょう。

5Gでの攻撃ポテンシャルは甚大。日本は豪州同様、独自の安全保障上の判断を!

では、日本はどうすべきでしょうか。本ブログでは、アメリカによるファーウェイへの制裁は、安全保障を理由としているのに、トランプ大統領はこれを米中貿易戦争のために恣意的に運用していて問題だ、と主張してきました。

たとえば、今年2月、トランプ大統領は、貿易協定の一環としてファーウェイへの起訴を取り下げる可能性について聞かれて、これから米国の連邦検事や司法長官らと話して決める、と答えて、これが政治的目的による起訴であるかのように言っています。また、米企業によるZTEへの製品販売禁止についても、トランプ氏が中国による農産品等の大量購入決定を受けて解除しました。これらはウォールストリート・ジャーナルの社説で批判されており、本ブログでも紹介しました。

www.kaikakujapan.com

その際に私が主張したのは、日本が中国企業に対して輸出入の制限を行うなら、それは安全保障についての日本独自の判断に基づいて行われるべきだ、ということです。

上記のブログの最後の部分で、私はこう書きました。

今回のファーウェイに対する禁輸措置に、私は賛成します。ただ、事実上特定の企業が対象となる今回の措置は、今後の交渉次第で、簡単に上げ下げされるものでしょう。日本は、そのたびに右往左往しないためにも、ファーウェイをはじめとする中国企業の安全保障上の脅威につき、米政府の判断はもちろん参考にしつつ、独自の調査・評価を行い、必要な対応は日本独自でも実施すべきです。

残念ながら、ファーウェイへの制裁は「簡単に上げ下げされる」という予想は当たってしまいました。日本がとるべき対応も、そのとき書いた結論と同じであるべきと考えます。トランプ氏の判断で右往左往しないように、独自の安全保障上の判断を行うべきです。

アメリカがファーウェイへの禁輸を発表したとき、菅官房長官は、アメリカの動きを注視し、輸出規制に関する対応も、必要であれば検討する、と表明し、日本企業も、おおむね協力的でした。

日本の輸出規制「必要なら検討」 官房長官 :日本経済新聞

米国の一撃、華為の経営難に現実味 日本企業も不安視:朝日新聞デジタル

日本が輸出規制に前向きな点は評価しましたが、「アメリカの動きを注視して」、つまり、単なるお付き合いで、主体性なく判断するべきではありません。

では、結局、ファーウェイにはどう対応すべきでしょうか。禁輸措置については、アメリカが解除してしまったら、日本が禁輸を行っても意味が小さくなるかもしれません。しかし、パナソニック等はそれなりに重要な役割を果たしているようですし、独自の禁輸に意味があるなら、安全保障上必要な措置は行うべきです。

また、禁輸については譲歩してしまったトランプ氏ですが、5Gをめぐる主導権争いは続けています。G20でも、「(自由なデータ流通には)5Gの安全性と頑丈さが不可欠だ」と発言。ファーウェイ製品を使えば機密情報が中国政府に筒抜けになるというかねての主張を持ち出し、中国に応酬した、と日経が報じています。

www.nikkei.com

ファーウェイ製品については、日本独自の安全保障上の判断で、利用に規制をかけるべきです。日本は既に、中央省庁や自衛隊が使う情報通信機器の調達手続きに関する運用指針を策定しており、安全保障上のリスクがある場合には、ファーウェイ等の中国製品も外すことが出来ます。問題は、インフラ系企業の使用制限については、政府は「要請」しか出来ないことです。これについては、本ブログでも書きました。

日本は、中国の監視カメラ販売の規制を!世界最大手ハイクビジョンが、ウイグル等の人権抑圧で大儲け。 - 日本の改革

中国企業を5Gから完全に排除したオーストラリア政府の判断は、オーストラリア通信電子局(ASD)の提言によるものです。それによれば、IoTでの基幹技術となることが想定されている5Gは、単なる通信速度が問題となっているのではなく、日常生活に関するあらゆるネットワーク(人ー人、人ー機械、機械ー機械)の支えとなるので、ネットワークの一部にでも攻撃が加えられれば、一国の経済活動全体、国民の日常生活全体に甚大な影響が及びます。これも、以前のブログで紹介しました。

日米首脳会談、確認すべきは、ドコモがファーウェイ基地局導入との報道。中国軍には、平時も戦時もない。 - 日本の改革

日本が安全保障上重視すべきは、この点です。5Gでの覇権を中国に握らせないために少しでも役に立つなら、輸出規制も行うべきでしょうし、日本の5Gにはもちろん中国製品は重要部分で使うべきではありません。

今回のG20の間、トランプ氏が日米首脳会談でも、安倍総理日米安保条約のあり方が話題になったと報じられています。日本は、アメリカはもちろんですが、オーストラリアの判断を参照しつつ、安全保障上の判断は独自に行い、中国企業への対応を決めるべきです。