日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

G20直前、プーチンが自由主義は時代遅れ発言。自由民主主義への公然たる挑戦に、日米欧は結束して対決を!

米中対立の中、G20プーチン大統領が目立っています。会議前のインタビューでは、「自由主義リベラリズム)は時代遅れだ」と発言。国際社会の普遍的原則を否定する発言を許してはいけません。日米欧は結束して、ロシアと中国の反自由主義的体制と戦うべきです。

プーチンG20直前に堂々と自由主義否定発言

ニューヨーク・タイムズが、プーチンG20で評判になっている(make a splash)と報じています。

まず、フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、自由主義は時代遅れだと発言したり、次にトランプ大統領とメディアについて盛り上がったり、更に、イギリスのメイ首相が驚くほど不機嫌な顔でプーチンと握手している様子が話題になったり、肝心の外交でも何十と言う会合をこなし、特に中国との間で、中ロ貿易でのドル利用を減らすという重要な会合も行った、としています。

www.nytimes.com

もともとG20は、利害も価値観も異なる国による比較的最近出来た枠組みです。今回は特に、米中新冷戦が激しさを増す中で行われ、欧州も地球温暖化対策が進まないことに不満ということで、各分野での意味のある合意が難しくなっています。日経は、見出しで「軸なきG20」、「世界の液状化」との表現を使い、記事本文では、米中の間隙をついてロシアとインドが台頭しようとしている、としています。

www.nikkei.com

なかでも、ロシアのプーチン大統領の発言は注目を浴びています。日経の翻訳版によると、G20の前日、クレムリンでのFTのインタビューで、プーチンは、人々が移民や開かれた国境、多文化主義に背を向けて「自由主義の思想」は「もう役に立たなくなった」と発言しています。

www.nikkei.com

以下、プーチン発言を、批判のコメントを入れつつ、紹介します。カギかっこは、FT記事の日経翻訳版に出てくる発言の引用、あるいは、記事中での発言紹介の概要です。

・「これまでの数十年と違い、(リベラル派は)誰に対しても、何についても影響力を及ぼせなくなった」

⇒FT、日経によると、この発言は、トランプ大統領ハンガリーのオルバン首相等の反エスタブリッシュメント(既存勢力)のリーダー台頭や、イギリスのEU離脱と呼応したものです。

しかし、既存のエスタブリッシュメントに反対して新たなリーダーを選ぶことが出来るのは、むしろ自由民主主義では当たり前のことです。もちろん、言論の自由の保障と選挙制度の公正が当然の前提なので、ハンガリー等ではそこは疑問もあるでしょうし、中東欧で権威主義が広がっているとは言えるかもしれません。しかし、アメリカ、西欧、日本では、自由民主主義は基本的には全く揺るいでなどいません。イギリスのEU離脱も、完全に自由民主主義の枠内での話です。

プーチンはこのように、移民問題EUへの加盟継続・離脱といった問題を、自由民主主義の是非の問題と意図的に混同し、アメリカやヨーロッパ諸国で移民に慎重なリーダーが出たことだけで、自由民主主義が終わりだ、というプロパガンダをこの発言で行っています。

第一、欧州で反移民政策を掲げる政治家や政党を支援し、SNSへの工作等でも欧米の議論に介入してきたのはロシア政府自身です。中東欧での自分達のわずかな成果を喧伝しているだけです。

・「自由主義の思想は、何もする必要はないという前提に立っている」「犯罪は全て罰せられなければならない。自由主義の思想はもう時代遅れだ。圧倒的大多数の人々の利益と衝突するようになっている」

⇒支離滅裂です。自由主義は、他人を害しない限りは一切をなしうるということですから、他人を害する行動は当然抑止します。

なお、自由(民主)主義批判以外では、以下のような発言もしています。

・「冷戦は良くなかったが、少なくとも国際関係上の全当事者がおおむね従う、あるいは従おうとする一定のルールがあった。今は全くルールがないような状態だ」

⇒これはアメリカがINF全廃条約から離脱したことを批判する文脈で出た発言です。ロシアは、本気で嫌がっているようで、新STARTが延長されるかも懸念しています。ということは、INF全廃条約からの離脱は、自由主義の敵であるロシアにとっては望ましくない、自由主義陣営の安全保障にとっては望ましい可能性があります。どうせ中国は対象外ですし。

昨日の米ロ首脳会談では、新戦略兵器削減条約(新START)延長や後継条約をめぐる核軍縮交渉に取り組むことを改めて確認しましたが、2021年2月の期限切れまで時間は少なく、両国の間には悲観的な見方が広がっている、と時事通信が報じています。

www.jiji.com

日米欧は自由主義・民主主義を堅持し、国際社会を引き続きリードすべき

このプーチン発言を、EUのトゥスク大統領は「全く同意できない」と批判しました。

 BBCは、詳細にプーチン発言の是非を論じています。欧州議会で極右勢力や反EU勢力がそれほど伸びなかったこと、世論調査では、EU諸国民は移民や難民に全体として見れば肯定的な評価をしていることを紹介し、プーチン発言を批判しています。

www.bbc.com
欧州議会選挙で、極右と言われる政党が意外に伸びなかったことにつき、本ブログでも紹介しました。現行の移民政策や現行のEU自体に批判的な意見があることは、むしろ健全な話です。EU懐疑派の政党が、欧州議会での議席獲得を目指して選挙戦を戦ったことで、かえってEUにも、移民政策にも民主的正当性が与えられ、それらの改革の可能性も出てきました。これは自由民主主義の勝利です。「自由民主主義=親移民政策・親EU」、「反自由民主主義=反移民政策・反EU」というデタラメな宣伝にだまされてはいけません。

www.kaikakujapan.com

昨日のイギリスとロシアの首脳会談で、イギリスのメイ首相は、「ロシアが他国への干渉やサイバー攻撃といった「無責任かつ安定を脅かす行動」を改めない限り、英ロ関係の「正常化」はあり得ないと断じた」と時事通信が報じています。メイ氏は2018年3月に英南部で起きた元ロシア軍情報員らに対する神経剤を使った暗殺未遂事件を強く非難したと言います。これが、メイ首相の不機嫌写真の原因になっています。

www.jiji.com

今回のプーチンの発言は、こうした個別の外交問題についてのロシアの立場を強調する目的もあるでしょう。しかし、国際社会が一応の普遍的原則として受け入れている価値観・理念を、事実を捻じ曲げて「改善すべき移民政策」と意図的に混同して、G20直前に公然と批判した行動は見逃せません。これは、現在の国際社会のよって立つ価値観に対する公然たる挑戦です。ロシアと中国は、自らの権威主義的・全体主義的政治体制を正当化し、強化するため、他国へそうした理念を積極的に広め、世界中の独裁体制を支援しています。日米欧は、ロシアや中国によるこうした挑戦に対し、結束して戦うべきです。(中ロの民主国家切り崩し策の実態と対抗策について、以下の論文があります)

www.foreignaffairsj.co.jp