日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

イランに攻撃命令出して10分で撤回。もし攻撃したら、「150人の犠牲」の先に、何が起こりえたのか。

トランプ大統領が、無人ドローン撃墜の報復にイランに攻撃命令出して、イランに150人の犠牲が出ると聞いて、10分で撤回。もし攻撃して、イランと戦争になったらどうなったか、考えてみます。

トランプ大統領の土壇場の判断

ツイッターで、これ見たときには、肝をつぶしました。

 アメリカの無人ドローンをイラン革命防衛隊が撃墜したため、その報復を示唆したと見られたからです。本ブログでは、イラン革命防衛隊が、アメリカの報復はないという間違った判断で挑発行為を行ったとき、本当にアメリカが報復するところから戦争に発展する可能性がある、という海外の見方を紹介してきました。

誰も望まない米イラン戦争、イラン側の誤解で勃発の可能性あり。日本の与野党は、本件を国内政局にからめるな。 - 日本の改革

イラン革命防衛隊がホルムズ海峡のタンカー攻撃?一司令官が中東全域を不安定化させ、イラン自身を危険に。 - 日本の改革

特に、アメリカ、イラン両国のリーダーだったら絶対にしないような誤った挑発や報復がありうると思い、イラン側については、革命防衛隊のスレイマニ司令官が近視眼的で危ない人物という報道に接していたので、革命防衛隊が米ドローン撃墜、それに対し大統領自身が「大きな間違い」とツイートしたので、本当に驚きました。

ところが今回、いったん戦争は回避されました。トランプ大統領が、いったん攻撃命令を出した後、イラン側の犠牲者が150人になると聞いて、無人ドローン撃墜への報復に対して、比例していない、と考えて、命令を撤回したからです。

 この決定にも、悪い面はあります。それは、イラン革命防衛隊をますます付け上がらせる、ということです。トランプ大統領が「間違い」と呼んだ攻撃は、アメリカの報復につながらなかったのだから、結果として今回の攻撃は間違いではなかった、挑発行為として正しかった、更にエスカレートさせて、国際社会を怯えさせ、制裁中止や核開発の事実上の容認等、イランに有利な決定をさせてしまおう、という風に、スレイマニ司令官等に思わせてしまうからです。

それでも、やはり攻撃をしなかったことは、良い面の方が大きかったと思います。いったん犠牲者三桁の攻撃が起きてしまえば、そこから起きる報復等のスケールは大きくなり、容易に全面戦争に発展しうるからです。

アメリカは、安保理の非公開会合の開催を要求し、明日会議が行われるようです。安保理に持ち込むのは、理性的な決定です。集団的安全保障の枠組みの中で、このところ続いている革命防衛隊によると思われる攻撃をはっきりと「間違い」だ、と、国際社会で認定し、イランの核放棄等を本気でやらせるために、安保理の力が必要だからです。

mainichi.jp

アメリカは、更に新たな制裁を課す、ともしています。これも、イラン革命防衛隊が図に乗らないようにするために、有効でしょう。トランプ大統領は一方で、イランがアメリカの有人飛行機を撃墜しない判断をしたことを賞賛する等、双方で人命が失われないような動きが見えることには安心させられます。

thehill.com

「イランとの戦争はどんな風になるのか」:フォーリン・アフェアーズの不吉な論文

しかし、これで戦争の危機が完全に去ったわけではありません。イラン革命防衛隊は、中東全域でアメリカとその同盟国に敵対的な行動・攻撃を長期間にわたり行っていますし、イラン政府も制裁で苦しんでいるので、革命防衛隊の間違った攻撃を、大目に見てしまう可能性があります。

では、もし、再び「大きな間違い」が起きて、今度こそアメリカも報復するとなったら、今回回避された150人の犠牲を甘受してでもアメリカが攻撃する事態になったら、「イランとの戦争はどんな風になるのか」。そのものずばりのタイトルの論文が、少し前にForeign Affairsに出ていましたので、概略を紹介します。

www.foreignaffairs.com

まず、戦争の端緒からです。それは、イランの小さな攻撃から始まると言います。イラクシーア派民兵イラクの米部隊を攻撃する、あるいはイランの工作員が、ペルシャ湾のタンカーをまた攻撃し、原油流出を引き起こす、といった攻撃です。もしイランが、こうした攻撃を「自分がやったのではない、証拠が不確実だ」と国際社会で否認できれば、イランは、過去の経験から、こうした攻撃はアメリカからの直接の制裁につながらないと思っています。

そして、双方が戦争を望まなくても、計算違いや、誤ったシグナル等によって、小さな衝突が地域全体での戦争に発展する、というシナリオを、この論文は提示しています。

次にイランの能力です。イランは、自分達の代理部隊を使って、アフガニスタンイラクレバノン、シリア、イエメンで、アメリカや同盟国を攻撃することができますし、ミサイルを使って、バーレーンクウェートカタール、サウジ、UAEの米軍基地を攻撃することもできます。ホルムズ海峡の船舶をミサイル攻撃して、原油価格にも影響を与えることもできるし、サウジに対して、サイバーアタック等で打撃を与えることもできます。また、イラン革命防衛隊のクッズ部隊により、イランは世界中でアメリカを標的にもできます。

アメリカは、イランの小規模攻撃に対し、同程度の報復にする選択肢も、イラク戦争のような全面戦争にする選択肢もあり、ボルトンポンペイオは全面戦争をすべきと考えているようです。

どちらにせよ、イラン軍は負けるけれども、先に挙げたような方法で全力で反撃し、一定の被害は出るでしょう。

それより恐ろしいのは、周辺地域への影響です。何より、イスラエルです。

イスラエルは、ヒズボラレバノンシーア派との対立を通じて戦争に参加し、逆に、イランもイスラエルにミサイル攻撃を行うと言います。イスラエルミサイル防衛システムでは防ぎ切れないので、イスラエルは、ヒズボラの勢力地であるレバノン南部やシリア南部に侵攻することになり、結局は中東全域を巻き込んだ戦争に発展してしまいます。

主要な軍事作戦が終わっても紛争は終わらず、イランの代理部隊は中東でアメリカと同盟国への攻撃を続けます。アメリカは、イラクリビアで行ったような体制転換を行うことになりますが、イランの人口はイラクの3倍で8000万人。戦費は数兆ドルかかり、難民危機は、アフガン、イラク、シリアを全て合わせた規模で起きると言います。

もし体制転換に成功しても、部族支配からイラン革命防衛隊の軍部独裁に移ることになる、とこの論文は言います。だとすると、結局はあの短期的な利益優先のスレイマニ等がトップに立って、今まで以上にひどい外交を行う国になると思います。同論文によれば、最悪の場合は内戦となって、イランはテロリストの天国となります。こうした事態になれば、アメリカの超大国としての地位も終わりかねません。

同様のシナリオのショートバージョンを、CNNも紹介しています。

edition.cnn.com

これが誰も望まない事態であることは明らかです。しかし、現場の「計算違い」が、これを引き起こす可能性は十分あります。

こうした事態を避けるために、安保理はもちろん、トランプ大統領ハメネイ師の直接対話等、出来る限り、国際社会のトップ同士が直接対話を続けるべきです。

日本について言えば、これまでも本ブログで言ってきましたが、原油の中東依存度を下げて、これまで以上にイランとの関係は密にして、カネと原油だけでない、価値観に基づいた外交をする国だと信頼してもらって、そのうえで、シビリアン・コントロールを取り入れるよう、少しずつでも自由主義、民主主義を取り入れるよう、イランに訴えるべきだと思います。