日本の改革

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改正健康増進法も、都条例も、あらゆる場所での、受動喫煙防止の配慮・努力義務あり:当面、屋外喫煙所はどうすべきか。

改正健康増進法も、都条例も、罰則なしですが、すべての人に、あらゆる場所での、受動喫煙防止を義務付けています。将来はタバコの製造・販売禁止が望ましいとして、当面、屋外喫煙所をどうすべきか、考えます。

屋外での受動喫煙も防止する義務が、改正健康増進法にも、都条例にも定められている

少しずつですが、都内では、飲食店の屋内禁煙が進んでいます。まだ完全施行前ですが、改正健康増進法と、東京都の受動喫煙防止条例の効果を、都民は感じ始めています。どちらも、屋内についての規制が中心ですが、屋外での受動喫煙は防止されないのでしょうか?

屋外喫煙所について、苦情やトラブルが絶えません。朝日は、読者からの屋外喫煙所に関する苦情の投稿を契機に、実態や現行の制度を紹介しています。

digital.asahi.com

本ブログは、そもそもタバコの製造・販売自体を禁止すべき、という主張をしています。そうすれば、屋内だろうが屋外だろうが、受動だろうが能動だろうが、喫煙というものがなくなり、国民の命と健康が守られる、そして、そのような規制は可能だ、という立場です。

www.kaikakujapan.com

一方、当面はそのような制度が実現していないので、「過渡期」として、現行法の枠内で、屋外の受動喫煙をどう減らすかも考える必要があります。

屋外での受動喫煙について、改正健康増進法では、25条の3の第1項に、

「何人も、喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない。」

とあります。つまり、すべての人は、どんな場所でも、受動喫煙が発生しないよう、配慮する義務を法律上負っています。罰則はないものの立派な法律上の義務であり、受動喫煙による不法行為で民事上の損害賠償請求をする場合等は、確実に判断の根拠とされる義務です。

また、同じ25条の3の第2項には、

「多数の者が利用する施設を管理する者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない。」

とあります。したがって、道路だろうが、公園だろうが、駅前広場だろうが、大勢の人が使う場所を管理する国・自治体・企業・私人は、喫煙場所を決めるときには、やはり受動喫煙を防止するよう、配慮する義務を負います。

健康増進法の一部を改正する法律

このように、現状でも、不十分ながら、屋外での受動喫煙には一定の規制がかけられています。

更に厳しいのは、「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」です。第3条第1項で、

「都民は、受動喫煙による健康への悪影響に関する理解を深めるとともに、いかなる場所においても、子どもに受動喫煙をさせることのないよう努めなければならない。」

として、「いかなる場所においても」と明示しています。この一般条項の上に、更に、第7条で「家庭等の外において」、第8条で「自動車内」、第9条で公園や広場において、子どもを受動喫煙から守るよう、定めています。子どもが通る可能性のない一般道路、公園、広場等はほとんどないでしょうから、事実上、どんな場所でも、受動喫煙を防止すべき責務を都民は負うことになります。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/kitsuen/kodomojourei/291013_tokyotokoho.pdf

国の改正健康増進法が、屋外も含める形で、一般的な配慮義務を規定したのは、東京都子どもを受動喫煙から守る条例の影響とも言われています。

http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/journal/18-13_04_1212.pdf#search=%27%E5%B2%A1%E6%9C%AC%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%8D+%E7%A6%81%E7%85%99%E5%AD%A6%E4%BC%9A+%E8%AB%96%E6%96%87%27

屋外喫煙所:本来はない方が望ましい。当面、どうしても設置せざるを得ないとしたら?

以上のルールを前提にすれば、本来、屋外にも、一切の喫煙所を設置すべきではありません。

日本禁煙学会は、屋外の受動喫煙を防止するための最上の対策は、路上および敷地内完全禁煙である、と提言しています。

無風の場合でも、1人の喫煙者によるタバコ煙は直径14mの 円周内まで届き、複数の喫煙者が同時に喫煙をする場合は、この直径が2~3倍になります。 このため、条例等で屋外喫煙を規制する場合、最低でも直径14mの非喫煙者通行禁止区域円が確保すべき、としています。

また、喫煙所が公共空間に存在することは、喫煙のノーマライ ゼーションにつながり、広告・宣伝効果以上に社会規範への介入効果があるので、望ましくない、としています。

http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/essay/20181222.pdf

厚労省の「厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会」の「たばこの健康影響評価専門委員会」で、産業医科大学の大和浩教授が示した資料を見てみると、屋根のない開放系の屋外喫煙所の場合、どんな形であっても、ほとんどの場合、喫煙所の外に、100μg/㎥のPM2.5が漏れ出ていることが分かります。20メートル離れている場合でさえ、そうなることがあります。構造によっては、300μg/㎥を超えるPM2.5が漏れ出ています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000359324.pdf

これがどれほどひどい値かは、以下をご参照ください。100μg/㎥は、アメリカでは「危険」とされる水準で、300μg/㎥は「緊急事態」にあたります。

f:id:kaikakujapan:20190621090121p:plain

出所:日本禁煙学会

http://www.nosmoke55.jp/data/1012secondhand_factsheet.pdf

もちろん、日本の環境省の基準でも、とんでもなく高い水準です。環境省は、環境基本法第16条第1項に基づく「人の健康の適切な保護を図るために維持されることが望ましい水準」を、1年平均値 15μg/㎥以下、かつ、1日平均値で35μg/㎥以下とすべき、としていますから、その数倍~十数倍です。

環境省_微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報

 したがって、屋外喫煙所は、必ず閉鎖系とすべきです。更に、先に挙げた厚労省の「たばこの健康影響評価専門委員会」で示された通り、

・外から内部が見えること(火災予防対策や労務管理のため)

・天井(屋根)、壁の構造及び屋外排気装置 は、たばこ煙を建物とは反対側に逃がす構造になっていること

・屋内喫煙室同様の 壁の素材、屋外排気、機器のメンテナンスを行うこと

喫煙室の利用人数、面積、必要排気量に配慮、留意すること、

・排気口は、天井近くの高い位置とし、人通りの少ない場所に向けること等が、当然必要となります。

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000359323.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000359322.pdf

現状はあまりにひどいものです。有名なのは新橋駅のSL広場の無法地帯のような喫煙所ですが、先に挙げた厚労省の「たばこの健康影響評価専門委員会」では、こうした場所でこそ、厳しい基準を満たした屋外喫煙所を好事例として作るべきでは、という議論がされています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000451642.pdf#search=%27%E5%B1%8B%E5%A4%96+%E5%90%B9%E3%81%8D%E3%81%95%E3%82%89%E3%81%97+%E5%96%AB%E7%85%99%E6%89%80+%E7%81%B0%27

このように、あくまで一万歩譲った次善の策として、屋外喫煙所を設置する際には、最低限、厚労省が示す厳しい基準を満たしたものを作る必要があります。

関連して、千代田区が、「喫煙トレーラー」の運用を最近始めました。日経によると、物流で使われる通常のトレーラーを改造したもので、灰皿やエアコンのほか、空気清浄機を設置して室内の煙を浄化して排出するようです。

www.nikkei.com

この施設、小池知事も視察しています。移動可能な施設です。

行政視察(トレーラー型公衆喫煙所)|東京都

この施設はどう見るべきでしょうか?

改善すべき点は出入口です。構造を見ると、入口には普通のアルミサッシのドアがついているだけに見えます。もしそうなら、大和浩教授が提案されるように、2回曲がりのあるクランクにするべきだと思います。

また、大和教授の示した図では、鉄筋入りのベタ基礎に固定して煙がもれないようにしていますが、トレーラーでそこまで出来ているかが不安です。

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000359324.pdf

一方、トレーラーならではの良さとしては、移動可能だということです。イベントの際に、「青空喫煙所」になってしまっては最悪なので、それよりはだいぶマシにはなるでしょう。同様の発想で、バスを改造した移動式喫煙室を作った会社もあるようです。

www.nikkei.com

移動可能だということは、このような屋外喫煙所をあくまで過渡的な存在として考えるなら、容易に撤去可能だという点は、固定式のものよりも望ましいことになるかもしれません。

繰り返しますが、屋外喫煙所は、本来は、あってはならないものです。現行法・都条例の制度でさえ、受動喫煙を防ぐ配慮義務・努力義務に反するおそれがあります。ただ、どうしても作らなければいけないということであれば、煙がもれず、受動喫煙防止の効果がしっかりしていることが重要です。しっかりした閉鎖系の固定型のものは、その存在が「固定化」されてしまい、喫煙は出来て当然という社会規範を生んでしまうかもしれません。一方、閉鎖系の移動型なら、撤去は簡単で、喫煙が出来るのはあくまで一時的、これからは分かりませんよ、という雰囲気に近くなるかもしれません。ただ、煙もれ対策が万全か、心配な面もあります。

結局、どんなやり方でも、屋外喫煙所について満足のいくものなど出来ません。当面はやむを得ない存在で、色々なやり方を模索するしかありませんが、出来るだけ早く、タバコの販売自体を禁止し、喫煙というもの自体がない社会を目指すべきです。