日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

誰も望まない米イラン戦争、イラン側の誤解で勃発の可能性あり。日本の与野党は、本件を国内政局にからめるな。

アメリカもイランも望まない米イラン戦争は、イラン側がアメリカの意図を誤解すれば、勃発の可能性があります。日本の与野党は、総理の外交上のメンツ重視や、選挙向けの政府叩きを止めて、冷静に本気で戦争の可能性に備えるべきです。

イランの現場司令官の「計算違い」が米イラン戦争を引き起こす危険

アメリカとイランは、どちらの政府も望んでいないのに、本当に戦争をする可能性があるのでしょうか?わずかながら、可能性はあるようです。

ヴォイス・オヴ・アメリカが、アメリカの外交・軍事トップの発言を報じています。

昨日6月18日、ポンペオ国務長官は、イランとは継続的にメッセージを交わしており、攻撃があれば抑止すると伝えている、我々の権益を守るために必要なことはするが、大統領は戦争を望んでいない、と、発言しています。

一方、統合参謀本部のポール・セルヴァ副議長は、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃につき、危険な状況であることを示唆しています。

まず、攻撃の主体については、ボートをタンカーに横付けして暗闇の中で機雷を設置するのは、軍事的な訓練を受けた部隊でないと無理で、素早く取り除けたのも彼等が設置したからだ、という趣旨の発言をしており、それに続けて、「これは本物の脅威だ」との認識を示しています。

何がどう脅威なのか?セルヴァ氏によると、

「計算違い(miscalculation)のリスクは本物だ」

ということです。

彼によれば、イランはアメリカの制裁への不満につき、国際社会に非常に強いシグナルを送ろうとしています。もしアメリカの軍や国民に直接手を出せば、我々は反撃する、ということをイランにはっきり分からせたい、と発言しています。つまり、計算違いとは、イランがこのようなアメリカの意図を理解せず、戦争にまでならないだろうと甘く見て、中東のアメリカ権益への攻撃を今まで以上に広げることです。

トランプ大統領は、タンカーへの攻撃について、今のところ、大したことはない、として、この程度の挑発で戦争は起こさない姿勢を見せていますが、同時に、核開発を進めるなら別だ、と言っています。一方、イランのロウハニ大統領は、どの国とも戦争は望まない、と言っています。

www.voanews.com

まとめると、米、イラン政府双方のトップとも、戦争は望んでおらず、トランプ大統領は、今回のタンカー攻撃程度では反応しないと発言。現状で米・イランはしっかりコミュニケーションは取っており、アメリカへの直接攻撃に対しては反撃すると伝えています。これが徹底され、イランもアメリカの意図を正確に理解すれば、戦争にはならないはずです。

しかし、それでも「本物の脅威」があります。それは「計算違い」、つまり、アメリカの本気度をイラン側が誤解して、核開発を含めて、アメリカの権益への攻撃を広げたりして、制裁を止めさせるための挑発をエスカレートすることです。この場合、本当に戦争になる、ということです。

では、誰がこの計算違いをする恐れがあるのでしょうか?ヴォイス・オヴ・アメリカのジェフ・セルディン(セルダン?)記者は、イラン革命防衛隊のほとんど全ての判断は、ソレイマニ司令官の判断にかかっているという、セルヴァ氏の発言をツイートしています。

ソレイマニ司令官は、以前このブログでも取り上げました。強大な権限を持ちながらも近視眼的で危険なこの人物が、アメリカの意図を見誤って、アメリカの権益にわずかでも攻撃をかけるかどうかに中東の平和がかかっている、そんな可能性があります。

 イラン革命防衛隊がホルムズ海峡のタンカー攻撃?一司令官が中東全域を不安定化させ、イラン自身を危険に。 - 日本の改革

日本の政府・与野党は、米イラン戦争の可能性と、総理の仲介外交の評価とを混同するな

以前のブログでは、一司令官の判断に開戦につながるような重大な判断が委ねられている現状は危険だから、日本は石油依存度を下げる一方、外交関係は密にして、中東諸国にシビリアン・コントロールが効くような政治体制を求めるべきだ、と書きました。そうした努力は行いつつ、当面の危機にも対処する必要があります。

まずは、政府・与野党とも、今回のタンカー攻撃を含む多くの挑発的な攻撃について、イラン革命防衛隊がやったという可能性を十分認識し、国民にもそれを知らせるべきです。まだ断定はできないとしても、もし事実だったら、彼等の「計算違い」次第で、本物の戦争に発展する可能性が高いからです。

そして、もしも何者かがイラン、イラク、シリア等でアメリカに攻撃をしかけ、アメリカがそれをイランの責任だと断定して本当に戦争になったら、日本政府は重大な決断を迫られます。アメリカ政府の主張を信じて、イラン攻撃の後方支援を行うのか否か。

私は、アメリカの提示する証拠次第とは言え、今回のタンカー攻撃程度の証拠が出されれば、アメリカに協力せざるを得ないと考えます。日本政府は、本音ではイラク戦争を間違いだったと思っているでしょうし、今回は、同じ協力するにしても、イラク戦争の時よりは消極的な姿勢になるかもしれません。

いずれにせよ、その判断を間違わないためには、状況が大きく変わっているのに従来の政策に固執したり、ましてや、総理のイラン訪問が意味があったのなかったのという、呑気な国内の政争とからめて考えないことが大事です。イラン仲介外交なんて、最初から大した意味は見込まれておらず、現に大した意味はなかったのですから、今さら総理のイラン訪問の是非を論じるのは、国内政局的な意味しかありません。

この点、現在の日本政府も与党も、総理のイラン仲介外交の成果を強調したいあまりに、イランがタンカー攻撃を行った可能性を、故意に低く見積もっているのではないか、という点を大変に心配しています。この傾向は、野党によるイラン仲介外交批判のために、かえって強められているように見えます。そして国民には、米イラン戦争が起きる危険性はどこにあるのか、十分に見えなくなっています。

今回のタンカー攻撃について、イラン革命防衛隊等の「イラン側」が行ったことには、懐疑的な見方をする国も多くあるのは確かです。アメリカが公表した最初の動画について、ドイツのハイコ・マース外相は14日、これだけでは十分ではないと疑問を呈し、フランス政府は評価を避けました。

www.newsweekjapan.jp

しかし、こうしたドイツやフランスの姿勢も、結局は、イランに対するアメリカとの立場の違いによって生じているのではないでしょうか。イランとの核合意をトランプ政権が一方的に破棄する姿勢を見せたことへの批判はあってもおかしくありませんが、そうした政治的判断が、戦争につながりかねない事実の認定まで曇らせてはいけないと思います。

一方、日本では、6月17日に菅官房長官が、「現時点で予断を持って答えることは控えたい」と発言、外務省幹部は「推定で物事は言えない。米国が新たな証拠を出すのは当然だ」と米側に情報開示を求めたということです。それもあって、アメリカは新証拠を出したようですが、日本政府はまだ分からないという態度です。

www.jiji.com

野党について言えば、6月16日のNHK日曜討論で、国民民主党泉健太氏は、安倍首相のイラン訪問について「残念ながらほぼ意味を持たなかった。首相が行ったということをアピールするだけではいけない」と主張、社民党の吉川氏はタンカー攻撃について、「皮肉なことに首相が行っている間にタンカーが攻撃され、より緊張が高まった」と批判しました。

与野党の政策責任者が議論 安倍首相のイラン訪問は「意味なし」 - ライブドアニュース

総理のイラン訪問への批判はもちろん結構、というか、当然あって良いことです。ただ、今回の事件を国内政治の次元だけで見ると、総理批判をしたいという動機だけが先走って、攻撃の主体が誰か、その意図は何か、今後何が起きる可能性があるか、という判断について、誤る可能性があります。

 日本の与野党は、今回の事件が、イラン革命防衛隊によるものだというアメリカの主張が事実であった場合のことを十分考えて、今後どうすべきか、今から国民にも訴えるべきです。