日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ふるさと納税は地方交付税と「二重取り」分が2300億円。ゼロサムの税収奪い合いは社会的にもムダ。もう廃止すべき。

ふるさと納税で収入が増えても地方交付税交付金は減らず、自治体は二重取りです。返礼品で税収を奪い合うのは社会的にもムダです。返礼品を地元産品に限ったところで、役所の買い上げでは地元産品に競争力はつきません。この制度はもう廃止すべきです。

ふるさと納税地方交付税交付金と二重取り、税収減った自治体にまで交付税

今日の日経が、ふるさと納税による寄付が増えた自治体でも、地方交付税交付金は減らず、一種の「二重取り」になっている、と指摘しています。記事から引用します。

収入が大幅に増えた「人気自治体」にも、国は税収格差を埋める地方交付税交付金を手厚く配っている。寄付金が税収にならないルールのためだ。日本経済新聞がこれを税収とみなせば交付税がどれほど減るかを試算すると、2018年度はその額が2300億円超に達した。

日経の同じ試算を行った場合、交付税ゼロでも歳出を賄える交付団体に転ずる自治体も78から101に増えるということです。

総務省は、寄付は安定財源でないから交付税を減らさない、と言っているようですが、一方で、ふるさと納税(寄付)で税収が減る自治体には、特別に地方交付税交付金が増額されます。

www.nikkei.com

ふるさと納税で収入が増える自治体には交付金を減らしませんが、一方で、ふるさと納税で収入が減る自治体には、特別に交付金を出します。メチャクチャです。この制度が、実は、地方交付税交付金という国の財政に深く依存しているということが分かります。

寄付が増えた自治体も交付金は減らず、不交付団体にもならず、国から自立するわけではありません。この制度は、返礼品で「創意工夫」をした自治体を自立させるのではなく、国に従属させたまま、国の財政に一層甘やかされる自治体を増やすことになります。

税収奪い合いは、価値を生む「市場競争」や「足による投票」ではなく、「レントシーキング」で社会的にムダ

総務省は、こうした地方交付税の問題点とはまた別に、返礼品を使った過当競争は望ましくない等の考え方から、昨年4月に、ふるさと納税の運用を厳格化する通知を出しました。そのうえで、今年3月に地方税法が改正され、現在では、寄付募集の適正化の他、返礼割合が3割を超えないようにして、地場産品をなるべく使うように、ということになっています。新制度やこれまでの経緯は、総務省の以下資料で簡単にまとめられています。

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190514_02.pdf

大阪府泉佐野市は、ふるさと納税新制度への参加を総務省が認めなかったことを不服として、同省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ています。

泉佐野市、係争委に審査申し出 ふるさと納税除外巡り :日本経済新聞

東京都は、新制度への申請自体を行いませんでした。小池知事はこの制度を、「受益と負担という地方税の原則と大きく違っている」と批判しました。全国の地方自治体で、自ら離脱するのは東京都だけです。

都、ふるさと納税離脱 6月以降 制度に反対姿勢示す :日本経済新聞

小池知事は、地方分権の立場から、総務省が突然見直しを表明したり、新制度から一部自治体を除外することについては、批判的です。

ふるさと納税見直しに疑義、小池都知事 :日本経済新聞

「ほかの多くの自治体が萎縮」 小池知事 :日本経済新聞

小池知事のスタンスとしては、現行制度を前提とすれば、国が自治体にあれこれ指図するのはおかしい、しかし、そもそも現行制度自体に反対なので、東京都は離脱する、ということになります。

この制度を東京都の立場から見てみます。先に、ふるさと納税で税収が減る自治体については、地方交付税交付金が出ると書きましたが、東京都のような不交付団体は例外で、単に税収が減るだけです。一方、地方交付税交付金ふるさと納税で寄付を得た自治体には全く変わらず交付されます。地方交付税交付金の原資は、国の一般会計ですが、最終的に負担が大きくなるのは、もちろん不交付団体です。東京都は、ふるさと納税で税収が減る一方、地方交付税制度を通じても、ふるさと納税による負担を支えていることになります。都市間競争が重要な現代で、東京都の足をひたすら引っ張り、日本全体の成長にも足かせとなるのが、ふるさと納税制度です。

理屈の問題として言えば、ふるさと納税による税収の奪い合いは、何か新たな社会的価値を生むわけではありません。

市場競争なら、より良い商品・サービス、それによる消費者の純便益の増加、という新たな価値を生みます。少ない税負担で魅力的な住民サービスを示して、他地域から住民を引き寄せるための競争、いわゆる「足による投票」なら、受益と負担がワンセットになった形で、住民の純便益(受益マイナス負担)の増大が図られる、とうい社会的価値を生みます。

ところが、ふるさと納税は、こうした新たな社会的価値を生みません。住民は住民サービスを受けずに、返礼品分の実質的な減税を求めて、見も知らないし興味もない自治体に寄付をするだけです。返礼品で釣って寄付を集めようとする各自治体の「努力」、「創意工夫」は、経済学的に見れば何の価値もないどころか、ゼロサムゲームで税収を奪い合うために税金を使って公務員の時間と労力を浪費するデッドウェイトロス(社会的損失)を生んでいます。

地域活性化のプロフェッショナルの木下斉氏も、こうした行政のムダを生むとして、ふるさと納税制度を強く批判しています。

toyokeizai.net

地元産品の買い上げでは地元経済は良くならない

新制度のように、返礼品を地場産品にすれば、せめて地元経済の活性化に資することになるでしょうか。それも見込みは薄いでしょう。

木下斉氏は、自治体の買い上げに依存するような商品は競争力がない、と言う点を問題視して、次のように批判しています。

地方にふるさと納税が行われると、自治体はその何割かを使って返礼品として指定していた地元産品を地元企業・生産者から買い取る。

 当然これは、地方産品の市場取引が拡大しているわけではない。税制を活用した、自治体による買い取りに過ぎない。生産者に売り上げは立つが、納税者はほぼタダだから喜んでいるだけだ。消費者が直接対価を支払わないため、既存顧客に対するブランド価値を棄損することにつながる。

 従来、補助金を使って、地方産品をタダ同然で配布するイベントをいくら東京で開催しても、地方の産品の流通量は特に拡大しなかった。タダでもらえるものはタダで貰えるもの。対価を支払って欲しいものとは全く異なる。

 地方産品を通じて地域活性化を図るのであれば、妥当な価格で営業をし、販売を積み上げなくてはいけない。ふるさと納税で買い上げてもらうのではなく、真っ当な市場取引を通じて商品流通を行わなければならない。

ironna.jp

ここでも問題は、民間の市場で、つまり消費者の自由な意思決定で(事業が成り立つ程度の)適正な価格で買ってもらえるような商品が、ふるさと納税制度では育てられない、ということです。

制度の駆動力となる減税は国の財政頼り、実質的には東京都頼りで、地方分権には役に立たない。社会的価値を生み出さず、社会的損失ばかり生み出す。そのうえ地元経済の発展にも役立たない、むしろ地域経済を官依存に歪めてしまう。

こんな制度は、即刻廃止すべきです。