日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

温暖化で成果見込めないG20。日本の環境政策は、欧州緑の党の「炭素税・配当」政策と、アメリカの「グリーン・ニューディール」を取り入れるべき!

G20エネルギー・環境関係閣僚会合は、温暖化で進展なし。欧米で広がる「厳しいCO2規制・大規模環境投資と弱者救済の組み合わせ」を成功させれば、途上国含めた合意が可能です。日本は、緑の党アメリカ民主党環境政策を取り入れるべきです。

G20、成果はデータ流通とデジタル課税くらいか。環境は議長国の姿勢が問われる

G20がどうも楽しみになりません。本番前の色々な会議で、データ流通やデジタル課税以外で、あまり大きな進展がなさそうです。

「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の概念を初めて共同声明に盛り込んだのは成果です(中国は文句を言ってるようですが)。デジタル課税の分野でも、以前からの三通りの方法の対立は残ったままですが、再来年までに統一する道筋は一応つけました。データ資本主義やIT大手への対応では、一歩前進となりそうです。

その他の分野で、米中の貿易戦争については、対立は残ったままです。責任は、技術の強制移転等をやめない中国にあります。首脳同士の会談でも、習近平は譲歩しないでしょう。これは米中冷戦の帰趨によるので、もともとG20で解決できるような問題ではありませんが、他の19か国で中国を追い詰める構図にはしてほしいところです。

mainichi.jp

環境・エネルギー分野で、最大の問題は、温暖化については進展ゼロだったことです。朝日によれば、実際の交渉では、アメリカに配慮して、共同声明の文言をパリ協定に前向きな表現にさせるのがやっとだったようです。

海洋プラスチックは、各国が問題意識を共有して、各自の規制を報告し合う、というだけ。これを朝日は成果と言いますが、各国は報告さえすれば、規制は甘くてもよいことになります。現に、日本はレジ袋有料化でお茶を濁そうとしています。その程度は、既に日本でも10年以上前に検討されていたことです。むしろ今まで業界団体の反対でやらなかったのがおかし過ぎただけです。EU等に比べて、大幅に規制は遅れています。

(時時刻刻)温暖化、骨抜きの言及 G20共同声明、プラ減では成果 エネ・環境閣僚会合:朝日新聞デジタル

G20エネ・環境相会議、パリ協定めぐり薄氷の合意(1/2ページ) - 産経ニュース

また、原発の使用済み核燃料の最終処分場について、国際的な協議の枠組みを作る、と言い出したのは結構な話です。ただ、これを言い出した日本の本気度は、大いに疑問です。最終処分場の選定は、現状では手上げ方式も、「国主導」方式も、全く進んでいません。最終処分場以外に、保有する大量のプルトニウムをどうするかも含めて、バックエンド問題への対処を日本がしっかり決めないと、他国に対しての発言力も持てないでしょう。

欧州緑の党アメリカ民主党環境政策:日本は両方取り入れるべき

G20環境政策で、首脳会談でも一番進展がなさそうなのは、やはり地球温暖化対策でしょう。昨年の猛暑と豪雨が温暖化によるものと分かり、日本でもようやく温暖化が現実の脅威として感じられるようになってきましたが、本ブログでも書いてきた通り、日本政府は対応に後ろ向きです。

安倍総理は小池都知事に感謝すべき:政府の中途半端な目標(2050年までCO2を80%削減)を、小池知事が議長のメイヤーズ・サミットが助け船(100%削減)。 - 日本の改革

日本の温暖化対策税は税率が大変低く、実効性が問われています。政府は、更なるカーボンプライシング(炭素税等)を行う気は全然ありません。今年6月11日に決まったばかりの、政府の「パリ協定に基づく成長戦略 としての長期戦略」の77ページにはこうあります。

カーボンプライシングにつ いては、既に欧州諸国や米国の一部の州をはじめとして導入している国や地域 があり、中国でも全国規模で排出量取引制度を導入している。一方、我が国は CO2 の限界削減費用が高く、エネルギーコストも高水準、またエネルギー安全保障の 観点においてもエネルギー資源の大半を輸入しているという事情がある。カー ボンプライシングには、市場を介した価格付けだけでなく、税制も含まれる(既 に一部導入)が、制度によりその効果、評価及び課題も異なる。国際的な動向や 我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が 必要である。

https://www.env.go.jp/press/111781.pdf

この全然やる気のない言い方を、経済界は大歓迎。

政府の発表と同時に、日本商工会議所の三村会頭は早速歓迎のコメントを出しています。「ビジネス主導の非連続なイノベーションの推進を骨格としたことを評価」、つまり、産業界に好きなようにやらせておけというのがこの戦略だから大歓迎だ、と言ったうえで、「カーボン・プライシングについては、本戦略の根幹である民間主導のイノベーション創出を阻害する恐れがあり導入すべきではなく、極めて慎重な議論をお願い」しています。

「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の閣議決定に対する三村会頭コメント - 日本商工会議所

アメリカのトランプ政権がパリ協定から離脱と言い出し、日本がこんな有様では、途上国に地球温暖化を止めましょうと言っても、聞く耳を持ちません。日本、アメリカ、そして既に比較的厳しい環境対策をしているEUは、結束して、温暖化対策と経済成長が両立することを示す必要があります。

そのためには、どのような政策をとるべきでしょうか。これについては、今年6月7日のフィナンシャル・タイムズに、Martin Sandbu氏が、骨太の議論を展開しています。要は、欧州緑の党の政策と米民主党の言うグリーン・ニューディール政策で、環境政策強化とともに、これにより損失を受ける経済弱者への支援を両立させるべき、ということです。

欧州議会で躍進した緑の党は、炭素税とその税収を市民に還元する「炭素税・配当」モデルを支持しています。マクロン政権が環境税によって、自動車に依存する地方の中低所得者の反発を招いて黄色ベスト運動となりました。このような対立を防いで、実効性ある政策とするために、炭素税による負担が大きい人達への経済的手当てを同時に行う、という政策です。

また、アメリカ民主党グリーン・ニューディール政策は、環境対応インフラへの公共投資を大幅に増やすことで、経済・環境の持続可能性を高めようという政策であり、雇用対策にもなります。

以上のような環境政策をとるべきだし、欧州緑の党の躍進を見れば、先進国でこうした政策は可能だ、というのが、Martin Sandbu氏の議論です。

www.nikkei.com

https://www.ft.com/content/8a654ac4-86b2-11e9-97ea-05ac2431f453

私も、この意見に賛成です。

炭素税や環境規制でCO2や廃棄物を減らし、一方でその政策で損失を受ける経済的弱者への経済的手当も行う、また、更なる環境技術開発や環境重視型インフラの整備のための大規模公共事業で、石炭産業・石油産業・ガソリンを使う自動車等の産業の労働者の雇用対策も行う。

こうした政策は、緑の党欧州議会で躍進し、ドイツで第一党になり欧州各国議会でも議席を増やしているEUでは、十分実現可能でしょう。

 それだけではありません。今はトランプ政権のアメリカでも、グリーン・ニューディール民主党内で支持されているだけでなく、共和党にまで広がっています。

当初、この考え方は、オバマ政権で言われたことはあったにせよ、当選したばかりのオカシオ・コルテス下院議員が主張し始めた頃は、民主党内でも冷ややかに見られていました。ところが、先の欧州議会選挙同様、若者の間で支持が広がり始めると、様子が激変しました。

まず、民主党の予備選でトップを走るバイデン議員が、1兆7000億ドルを2050年までのCO2排出ゼロのための投資に使う、と言い出しました。二番手のサンダース議員はオカシオ・コルテスが指示している候補なので当然グリーン・ニューディールは賛成、三番手…でもないですが、最近急激に追い上げてきたウォーレン議員も、2兆ドルのグリーン産業育成プランを掲げています。

www.nytimes.com

オバマ政権の副大統領だったバイデン氏がグリーン・ニューディールを言い出すのは不思議はありませんが、ウォーレン議員も、環境に優しい国内産業の育成に大規模投資を行う、これは経済的愛国主義だ、と言って、雇用対策を兼ねた環境投資を主張しています。政策通で知られるウォーレン氏まで具体的なプランを言い出したということは、相当現実味を持って議論されているということでしょう。

www.nytimes.com

これを見て、共和党も態度を変え始めました。朝日新聞によると、アメリカでもハリケーンや山火事、洪水等の温暖化が原因と見られる災害が頻発したことで、世論も変わりつつあり、以前は全く関心を持たなかった共和党からも、炭素税導入法案や、再生可能エネルギーやCO2回収・貯留技術の研究を加速させる「ニューマンハッタンプロジェクト」、規制緩和と技術革新で温暖化対策を進める「グリーン・リアルディール」などが提案されていると言います。米政界全体が、グリーン・ニューディールを争点に動いています。

digital.asahi.com

アメリカのこの動きは、来年の大統領選で共和党民主党どちらが勝っても、実現する可能性は一定程度あるはずです。トランプ米大統領と野党・民主党指導部は4月30日、2兆ドル(約220兆円)のインフラ投資法案を検討することで、既に合意しているからです。どちらも、有権者にアピールしたいので政策のタマにしたいということでしょうが、それを超党派の合意でやってしまうところに、民主主義の成熟度合いを感じます。

www.nikkei.com

このような、環境税・規制+大規模環境投資+中低所得者向けの生活支援、という政策の組み合わせは、日本も是非行うべきです。

この政策は、欧米で若い有権者に強く支持されていますが、日本でも、もし一定の規模の政党が本気で主張すれば、若者の共感を呼ぶでしょう。現状で、「若者向き」の政策として提案される政策の中には、世代間公平の是正だとか、具体的には年金だとか消費税だとか、あまりにお金がらみばかりに見えるものも多く、若い人達が高い理想を託せるような話題が少なすぎます。教育無償化は確かに夢や理想を感じさせますが、これも「無償化」と半分はお金の話です。

これに対し、環境問題というのは、イメージしやすく、美しい自然・地球という具体的で目に見え手で触れることが出来る理想を示すものです。原発にも石油石炭にも頼らない再生可能エネルギーだけの社会の実現、これによる美しい自然環境の実現という理念は、どの世代にも訴えるものはあるでしょうが、若い人達には特に共感しやすいと思います。そして、持続可能な成長という理念は、若い人達の利益にも、もちろん深く関わるものです。

先に紹介したような政策の組み合わせなら、原発ゼロ政策を実現する際にも、説得力が高くなります。原発ゼロへの反対は、原発立地自治体や原発関連企業の雇用と深く関わっているからです。それを、大規模政府投資によって対策を立て、再生可能エネルギーやICT産業への雇用の移動を円滑に行えるようにするなら、自治体も企業も労働組合も賛成しやすくなるはずです。

そして、EUアメリカ、日本が一致団結して、各国で厳しい環境税・規制+大規模環境投資+中低所得者向け生活支援という方針で成果を上げることが出来れば、途上国も、これをモデルにしたいと思うはずです。だから、まずはG7で以上の政策の合意・実行を数年実施して、そのうえでG20というのが現実的ではないかと思います。

いずれにせよ、まずは日本が、欧州緑の党アメリカのグリーン・ニューディールと同様の政策を実施すべきです。これは原発にこだわり炭素税にも反対する経団連経産省政権の安倍政権には無理です。ポスト安倍は、地球環境重視で原発ゼロを目指す政権であるべきです。