日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

香港で、中国への犯罪人引渡に反対する100万人規模のデモ、「一国二制度」の危機。一方、日本政府は、中国と犯罪人引渡条約を非公開で協議中。日本の言論の自由を守ろう。

・香港で、中国への犯罪人引渡の制度改正に反対して、100万人規模のデモ。香港で中国政府を批判したら、恣意的な逮捕で中国に引き渡される恐れがあるためです。

・一方、日本政府は、中国と犯罪人引き渡し条約を協議中です。米韓としか結んでいない条約の協議を中国とは行っていて、内容は全て非公開です。日本政府は、この協議を中止するか、対象犯罪と要件を日本国民に対して、明確にすべきです。

香港で、100万人規模の反中デモ。「逃亡犯条例」改正で、香港の言論の自由が圧殺される危機

香港で、100万人規模のデモが起きています。刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする香港政府の「逃亡犯条例」改正案に反対するためです。

朝日新聞によると、1997年に英国から中国に返還後、香港では今回を除いて3回、中国が指示した政策への大規模な反対運動が起きています。1回目は2003年で、香港政府の目指した国家安全条例の制定に、50万人規模のデモが起きて、同条例案は撤回。2回目は2012年で、愛国心教育導入への反対で、これも撤回。しかし、2013年に習近平国家主席になった後、3回目の2014年の雨傘運動では、民主的な行政長官選挙を拒否。

digital.asahi.com

つまり、(中国政府の言いなりの)香港政府が、香港人の自由を制限しようとしても、胡錦涛の時代までは、大規模なデモ等の政治運動で、何とか阻止することが出来ていました。ところが、習近平になってから、それが通らなくなり始めています。今回のデモに対しても、中国政府は強硬姿勢で臨むと見られています。

今回、問題となっているのは、「逃犯条例」という制度の改正です。これが実現すると、中国の国内法で犯罪となるような行為、たとえば中国政府の批判等をしたら、中国に移送される可能性があります。改正内容につき、福島香織氏の説明を引用します。

現行の「逃犯条例」は「香港以外の中国その他の地方にはこの条例を適用しない」ことが規定されており、香港が中国本土と異なる司法の独立を有することを裏付ける内容になっている。改正条例案はこの適用外条項を削除する。

 一言で言えば、香港の司法の独立性はこれで決定的に崩れることになる。条例の運用次第では、中国共産党が国内でやっているような政治犯・思想犯逮捕を香港でも行えるようになる可能性があるというわけだ。

 このように、刑事制度の改正を通じて、香港での自由を守ってきた「一国二制度」が根幹から否定されることになってしまいます。このため、香港の人達は必死で抵抗し、反対のデモを行っています。

ツイッターでは、黒色中国さんが、御自身も香港での取材活動で中国当局と思われる人物に恐らく盗聴されたという経験も踏まえ、この改正を批判しています。そして、この改正は香港を訪れる日本人にも関係することであり、日本にも重大な意味がある、と主張しています。台湾の反応も含めて紹介した以下のスレッドを是非ご覧ください。

このように、もともと危うかった香港の「一国二制度」が、いよいよ完全に否定されそうになっています。そして、こうした独裁強化を、中国は香港から台湾にも広げようとしています。

既に習近平は今年初め、台湾独立を断固阻止して、台湾に対しても「一国二制度」にするんだ、いやなら武力も使うという趣旨の発言をして、台湾から猛反発を受けています。台湾の蔡英文総統は、当然のことながら、一国二制度など絶対に受け入れない、と発言しました。
www.sankei.com

実際、今回の条例改正の問題で明らかなように、中国の言う「一国二制度」とは、結局は一党独裁にすぎないものであり、「一国二制度」下の香港でも、それが徹底されようとしています。

日本は、米韓としか結んでいない犯罪人引き渡し条約を中国と非公開で協議中。この協議は中止すべき

日本政府の反応はどうでしょうか。

官房長官は今日の記者会見で、はっきりと、デモの側に立つ発言をしました。時事通信から引用します。

・・・「香港が『一国二制度』の下で、従来の自由で開かれた体制を維持し、民主的に力強く発展していくことを期待したい」と語った。
 菅氏は「自由で開かれた香港社会は、日本を含むこの地域の繁栄と発展に極めて重要な役割を果たしている」と指摘。「邦人保護の観点も含めて関心を持って注視している」と述べた。

香港の民主的発展期待=菅官房長官:時事ドットコム

この発言は高く評価します。国際社会と一致結束して、今回の条例改正を撤回するよう、日本政府は中国に強く求めるべきです。

ところで、香港の人達が本気で戦おうと思ったような事態、つまり、中国の政治犯が日本に逃げたから引き渡せ、と言われて、日本政府が素直にその要求に応じる、というようなことはありうるでしょうか?

実は日本政府は、2010年から、日中犯罪人引き渡し条約について、中国と協議中です。この協議は、尖閣問題等でもめると中断してはまた再開しての繰り返しで、断続的に行われてきました。昨年2018年11月、6回目の協議が行われたことが、外務省ウェブサイトに掲載されています。

www.mofa.go.jp

外務省の担当者に電話で問い合わせたところ、協議内容については非公開とのことです。外交交渉なら、非公開もやむを得ない面はあります。

しかし、この条約は、香港の逃亡犯条例同様、中国の国民にとっても、日本国民にとっても、極めて重大な意味があります。

各国が自国の法律を守らせるために、海外への逃亡犯の引き渡しを求めるようにするのは、一見当たり前に見えます。しかし、実際には、各国の法制度、特に刑事法は大きく違っているので、必ずしもすべての国の間で犯罪人引き渡し条約が結ばれているわけではありません。

特に、日本は、アメリカと韓国としか犯罪人引き渡し条約を締結していません。アメリカは日本の同盟国ですし、韓国は同盟こそないものの安保環境は共通し、歴史的なつながりもあり、刑法犯の円滑な引き渡しはお互い必要でしょう。そして、両国とも、自由と民主主義という基本的な価値観を共有しているので、犯罪と刑罰の内容も、刑事手続きの内容も、お互いにある程度理解し合える国同士です。

それでも、日本はこの二か国としか犯罪人引き渡し条約を結んでいないのです。理由は、日本が死刑制度を持っているからとも言われています。要は、たとえ自由と民主主義等の基本的価値観を共有している国同士であっても、犯罪と刑罰という倫理観に関わる問題では、合意が難しいということです。

ましてや、自由も民主主義も国際法も無視の一党独裁国家の中国と、なぜ、犯罪人引き渡し条約まで結ぶ必要があるのでしょうか?中国人が日本国内で犯罪を起こしたときに、引き渡しを要求できるようにするべきだ、という理屈は分かります。これまでも、引き渡し条約がないために、凶悪犯罪を犯した中国人が中国に逃亡後には、日本の警察が手を出せなくなってしまうことは確かにありました。

しかし、外交交渉で個別に引き渡しを要求することは出来ます。そもそも、犯罪人引き渡し条約は、日本は米韓としか結んでいないのです。いくら中国人の犯罪が多いと言っても、他に日本での外国人犯罪が多発している外国はいくらもあります。中国とだけ、締結する必要性がどの程度あるのでしょうか。米韓としか犯罪人引渡条約がないために、外国人犯罪で日本の治安が極めて悪い、と感じている国民はほとんどいないでしょう。

何より懸念されるのは、中国政府・中国共産党による、犯罪人引渡条約の恣意的な活用です。使い方によっては、中国の国内法を犯したと言って、中国人の政治犯や中国政府に正当な請求を行った中国国民、それどころか、中国を訪れた日本国民まで、中国本土への犯罪人引渡の対象になる可能性があります。いったん引き渡されたら、もちろん人権など全く守られません。待っているのは不当な拘束と拷問です。そんなことが、容疑者の段階で、あるいは、全くのでっち上げで、日中両国民に行われる恐れがあるのです。

今回の香港のデモを契機に、日中犯罪人引き渡し条約の協議は中止すべきです。どうしても中国人犯罪者の中国への逃亡が問題で、個別の外交交渉でなく条約による引渡が必要だ、と言うなら、対象となる犯罪と引渡の要件につき、厳しく制限すべきです。外交交渉ではあっても、問題の重要性に鑑みて、日本政府が協議に臨む際の条件(対象犯罪、引き渡し要件)につき、国民に公開し、日本と中国の国民の自由が、独裁国家・中国によって絶対に侵害されないようにすべきです。

香港の自由が消えようとしています。台湾さえ、中国は本気で支配しようとしています。そうなれば、東アジアで唯一の自由民主主義の国は日本だけになってしまいます。そうさせてはいけないし、万一、そうなってしまっても、日本の自由だけは絶対に守り抜くべきです。香港の条例改正デモを支持し、日中犯罪人引渡条約等の日中政府の危険な動きには、健全な懐疑の目をもって注視していきましょう。