日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

丸山議員への糾弾決議に反対。院の辞職要求なら法律と衆議院規則改正を。強制わいせつと「不逮捕特権発言」行った中西一善(自民)が辞職拒否していたら同じ決議?

丸山穂高議員への糾弾決議に反対します。議員辞職を求めるなら、法律か衆議院規則を改正して行うべきです。過去の事例と比べても著しく均衡を欠きます。

丸山議員への糾弾決議は、議員辞職を求めている点が不当。やるなら国会法か衆院規則改正を。

丸山穂高議員に対し、衆議院が「糾弾決議」を行いました。

丸山氏が、北方領土へのビザなし交流事業に参加中、飲酒のうえ戦争による北方領土取得という選択肢に言及したり、卑猥な発言をしたり、「国会議員には不逮捕特権がある」と言って、宿舎外に出ようとしたため、ロシア官憲による逮捕=ロシアの主権行使の恐れがあった、ロシアとの重大な外交問題になる恐れがあった、というのが理由です。

今回の「糾弾決議」は、少し前に行われた「けん責決議」とは大きく違います。

けん責決議で、衆議院が院の自律権の行使として丸山議員に対して行ったのは、「譴責し、猛省を促す」ことだけです。決議理由には、議員辞職への言及もありますが、あくまで自分で判断すること、と言っています。

mainichi.jp

これに対し、今回の糾弾決議では、衆議院は丸山議員に対し、「糾弾し、直ちに、自ら進退について判断するよう促す」ということを行いました。

www.jiji.com

これはつまり、「議員を辞めろ」という要求を、衆議院が院の自律権という権力行使の形で行った、ということです。単なる意見表明ではありません。

橋下徹氏も、今回の決議は権力行使だ、と明確に主張しています。

過去に、「辞職勧告決議」がなされたことはあります。対象には、鈴木宗男氏、西村慎吾氏等も含まれていて、政治闘争の面もあったでしょう。いずれも、大半は刑事事件に関わるものなので、さすがにバランスは考えざるを得ず、「糾弾決議」という名前にしたようです。しかし、やっていることは辞職勧告と実質的に変わりません。今回の決議は言わば、「事実上の辞職勧告決議」です。

mainichi.jp

私は、今回の糾弾決議には反対です。事前にルール化がされていないからです。本来、辞職勧告決議もおかしいと思います。確かに、何度も出されて、おおむね刑事事件のときだけ、という基準が、一応の先例として確立している、と見るなら、そのような基準の下では、院の自律の範囲内とは言えるかもしれません。ただ、民意を重視するなら、選挙で得た議員の身分は、選挙によらずに失わせるのは、本来は慎重であるべきですし、事前に明確な基準を定めておくべきです。

ルールとしては、国会法と、衆議院規則が関係します。国会法では、議員の懲罰については、一番厳しくて除名、除名されて登院は出来なくなっても議員の身分自体は残るし、除名後に選挙で受かれば、両議院ともその結果を拒むことはできません(国会法122条、123条)。

国会法

また、衆議院議員規則では、議院は「議院の秩序をみだし又は議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者」を除名できる、とあります。

衆議院規則

問題はこの、「品位を傷つけ」の文言です。政治的行為が仕事の国会議員ではある程度やむを得ないという見方も出来ますが、除名という重い懲罰の要件としては、曖昧過ぎます。

丸山議員の件に戻って、より実質的に見ると、過去の事例との均衡を著しく欠いているのが分かります。

まず、過去の議員辞職決議では、刑事事件になっていることが要件と考えられているようなのに、今回、刑事事件にはなっていないのに、「事実上の辞職勧告」とするのはバランスを欠きます。

また、過去に、丸山議員の「卑猥な言動」よりもはるかに重大な「強制わいせつ事件」を起こして、丸山議員と全く同じように「国会議員には不逮捕特権がある」と言い張ったけれど、不逮捕特権の例外となる現行犯逮捕をされた、という議員もいます。自民党中西一善元議員です。

中西氏の場合には、比較的速やかに議員辞職をしました。しかし、彼があくまで辞職しなかったら、やはり議員辞職勧告決議が行われたでしょうか?そうとも限らないと思います。その後、中西氏は、選挙に出馬して落選しましたが、応援する区議が7人もいたとかで、自民党は対応に苦慮したようです。中西氏が丸山氏のようにあくまで辞めないと突っ張って、お詫び行脚のうえで地元も巻き込んで、「禊はあくまで選挙で行うべき」と主張していたら、どうなったか分かりません。

www.asahi.com

別の例では、立憲民主党初鹿明博議員は、強制わいせつの疑いで報道され、事実については、本人も、所属政党も認めたうえで、党内の役職停止6か月だけという大甘の処分になりました。本人が自発的に辞めないからと言って、党の処分が甘いからと言って、辞職勧告決議は出される気配さえありませんでした。

www.zakzak.co.jp

こうした他の事案を考えると、丸山議員に事実上の辞職勧告を院の権力行使として行うのは、問題があります。丸山議員本人が弁明書で言う通り、「刑事事件における有罪判決相当でもない本件のような言動にて議員辞職勧告決議がなされたことは憲政史上、一度もありません」ということなら、なおさらです。

mainichi.jp

私は、過去の議員辞職勧告決議も、曖昧過ぎる要件で安易に乱発され過ぎていたと思いますが、少なくとも、「辞職勧告決議は刑事事件以上」が国会ないし議院の先例として機能していたなら、裁判の判例同様、この基準は守られるべきです。

丸山議員は、議員辞職をするべきです。決議が出ようが出まいが、ただちに辞めるべきです。国民はそう言い続けるべきですし、その権利があります。政党も、政治家も、そのように主張すべきですし、その権利があります。しかし、院の自律権という権力行使の形で、議員辞職を求める決議をするべきではありません。

 最後に、今回のような事件の再発防止のために大事だと思うことがあります。丸山議員の発した「議員には不逮捕特権がある」という発言について、です。

この発言は一体何なのか。若造の国会議員が、自分の力で当選し続けていると思い込んで傲岸不遜になり、酒を飲んで気が大きくなって万能感・多幸感から発した許しがたい勘違い発言。まあ、その通りです。

しかし、この言葉は、どういう意味で発せられたのか、考える必要があります。今回、衆議院議員辞職を求めることになった最大の理由は、恐らくこの発言と、宿舎の外に出てロシア官憲による逮捕の可能性があった、という点にあったように見えるからです。

丸山議員が言いたかったのは、「北方領土は日本固有の領土だ。自分は日本の国会議員なのだから、日本固有の領土のこの場所で外出しても、いかなる国の官憲も、逮捕できないはずだ」ということでしょう。「女を買いたい」、その衝動の後付けで言ったのなら、もちろん許しがたい話です。しかし、そうした動機・衝動を離れて発言だけを見れば、あくまで北方領土が日本固有の領土だという従来の日本政府の立場に固執するなら、こんなことを言い出す議員が出てきても、不思議はないことです。

最初に問題になった「戦争発言」もそうです。北方領土は日本固有の領土で、ロシアが不法占拠している、その状態から原状回復するための戦争なら自衛戦争だ。そう思い込んでいる国民も議員も、実はけっこうたくさんいるのではないでしょうか。この点は、以前もブログに書いた通りです。

www.kaikakujapan.com

そして、北方領土の主権は日本にあるという立場に固執し続ける立場の人には、ビザなし交流事業自体が欺瞞的、偽善的に映るかもしれません。そう考えれば、丸山議員が、なぜあれほど元島民の方々にまで侮蔑的な態度をとったのか、想像は出来ます。

丸山議員の言動が国政上本当に深刻な意味を持っているのは、本人自体の「品位」が低劣だということよりも、国会議員までが、北方領土問題について、ここまで異常な思い込みをもって異常な行動に出てしまっている、ということです。

日本政府は、少しずつ、北方領土についてのこれまでの極端な姿勢を軌道修正し始めています。「固有の領土」という言い方も、北方四島の主権についても、言及を避けるようになってきました。しかし、ロシア政府の方ばかり向いて、こそこそ言い方だけ変えてもダメです。国民は、北方領土は全て日本固有の領土であり、日本の主権が完全に及んでいるのであり、これについて議論の余地は一切ない、と思い込んでいます。だからこそ、丸山議員のような国会議員が出てきてしまうのです。

以前、本ブログで主張したことを繰り返します。日本政府は、北方領土に関する「勝ち組」教育・広報に行き過ぎがあったと認め、北方領土問題にはもっと多様で柔軟な考え方・アプローチが必要だ、と、国民に正面から説明すべきです。そうしなければ、第二、第三の丸山議員問題が生じてしまうでしょう。