日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

日本政府と日本メディア、国連報告者デービッド・ケイ氏の勧告を無視:政府は放送法4条(政治的公平の原則)を廃止し、メディアは記者クラブ制度を改革せよ!

・国連の特別報告者による、「日本における表現の自由」に関する報告が発表されました。メディアの独立性に懸念が残る等の内容で、菅官房長官が、これを批判しています。今回の報告と、その元となった2017年の報告は、日本政府と日本メディアの両方の問題点を正しく指摘しており、日本国民にとって有益な勧告を含んでいます。

・日本政府は、報告を批判するだけでなく、放送法4条(政治的公平の原則)の廃止等の勧告を実行すべきです。

・また、日本のメディアは、本報告を政府等への批判に利用するだけでなく、勧告通り、記者クラブ制度等の改革を実行すべきです。

国連の特別報告者デービッド・ケイ氏の二つの報告(2017年、2019年)

言論と表現の自由に関する国連の特別報告者デービッド・ケイ氏が、日本のメディアは政府当局者の圧力にさらされ、独立性に懸念が残るとの報告書をまとめました。今年6月24日から始まる国連人権理事会で、報告される予定です。

日本に関する報告書は、こちらの2ページから5ページにあります。

https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G19/149/97/PDF/G1914997.pdf?OpenElement

これが報告される人権理事会の案内はこちらです。

https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session41/Pages/41RegularSession.aspx

今回の報告書は、2017年にケイ氏がまとめたレポートのフォローアップとして作られたものです。ケイ氏は2016年に日本を訪問し、翌年に報告書をまとめて、日本政府に対しては、放送法4条(政治的公平の原則)の撤廃等を求めています。一方、日本のメディアに対しては、記者クラブフリーランスや外国人記者をもっと入れる等の改革を行うよう、勧告しています。今回は、この2017年レポートの勧告の履行状況について、まとめたものです。

2017年レポートの外務省による翻訳はこちらです。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000318480.pdf#search=%27%E3%82%B1%E3%82%A4+%E5%9B%BD%E9%80%A3%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%A0%B1%E5%91%8A+%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%27

どちらのレポートに対しても、日本の政府と日本のメディアの対応は間違っています。日本政府は、報告は事実でないとの認識を示して批判するだけで、放送法改正等の正当な勧告を実施せず、日本のメディアは、政府批判に利用するか、「反日」報告だと批判して、いずれにせよ、記者クラブ改革という勧告を無視し、報道さえしていないからです。

日本政府は、国連報告者の勧告のうち、放送法4条撤廃等を受け入れ、実施せよ!

2017年のレポートでは、日本の表現の自由、とりわけ、政府とメディアの関係に関する問題点について、広範に論じています。そこでは、自民党の2012年憲法改正草案につき、表現の自由が曖昧な文言によって侵害されかねないことを問題視したり、メディアを管轄する総務省は政府からの独立性が十分でないこと、等を批判したりしています。

そして、政府とメディアの関係について、放送法を取り上げています。特に、放送法4条の「公安及び善良な風俗を害しないこと」、「政治的に公平であること」、「(報道は)事実をまげないですること」、「できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」につき、違反した場合は、放送法第174条により、「政府は放送事業者の免許の一時停止を命じることができる」のを問題だとしています。そして、放送メディアをより独立性の高い機関が所管すること、放送法4条の見直しと撤廃を勧告しています。

日本政府は、この報告に反論しています。冒頭では、報告の勧告について、「日本の状況や文化に関する不正確・不十分な理解 や根拠不明な記述に基づいている」と大仰な批判をしていますが、具体的な反論の説得力はいまひとつです。

まず、総務省が放送メディアを所管することについては、歴史的経緯等を挙げて説明し、放送業界も賛成しているからそれでいいんだ、と言っています。また、放送法4条と174条による処分は例がないし、憲法上の自由を守って十分慎重にやります、と言っているだけです。どちらについても、メディアの独立性を保障する制度的担保を欠いているので、反論としては、弱いと思います。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000262306.pdf

今回の報告では、日本政府が放送法4条撤廃を行っていないことを批判しています。これに対し、昨日、菅官房長官は記者会見で、「極めて遺憾。記述は不正確かつ根拠不明のものを多く含んでおり、受け入れられない」と答えましたが、記述は不正確かつ根拠不明「のものを」多く含んでおり、という、逃げを打った答えです。正確かつ根拠がある記述や勧告があることは暗に認めています。(以下リンク、最後の質問です)

www.kantei.go.jp

以前、本ブログでは、放送法4条の「政治的公平の原則」について、政治的な表現の自由を縛り過ぎているから、撤廃すべきだと主張しました。そこでは、意図はどうあれ、安倍政権自身も、一時は撤廃を検討したことも紹介しました。

放送制度改革は、政治的公平原則の廃止等+NHK受信料制度廃止で - 日本の改革

テレビ放送という影響力が一番大きいメディアで、自由で活発な政治的議論が行われることが、民主主義のために極めて重要です。このため、放送法4条のうち、特に「政治的公平の原則」については、国連報告者の勧告通り、撤廃すべきです。

日本のメディアは、記者クラブ制度を改革せよ!

一方、2017年レポートは、政府だけでなく、日本のメディアに対しても、厳しく批判しています。特に、記者クラブの問題についてです。

メディアの一体性や,公の関心に即して情報収集を行う能力を損なっている主たる要因の一つが,いわゆる記者クラブ制度である。記者クラブ,すなわち,記者会見やハイレベルの匿名情報ソースへの独占的アクセスを有する活字・放送ジャーナリストの連合体
は,日本のメディアを支配しているが,同クラブは,大方,主流メディア機関で働く者に限られている。逆説的に言えば,記者クラブは,元々は,地元のメディアが,情報開示に後ろ向きな公の組織に圧力を行使する際の調整を確保するために自発的に確立された,日本における長きに亘る慣行である。従って,彼らの根元的な目的は,一般市民の「知る権利」を保護することである,と表現される。しかし,政府当局からの直の情報にアクセスする唯一のチャネルとしての記者クラブの統合,外部のメンバー受け入れに対するクラブの後ろ向きな姿勢,定期的に記者クラブのメンバーに対し,非公式かつ排他的なアクセスについて交渉できる政府当局の能力は,公の関心に沿った情報アクセスを多大に狭めることにより,逆効果を生じさせてきているようである。

こうした問題点を指摘したうえで、勧告としては、

報道の自由及び独立はジャーナリスト間の更なる結束なくしては守られ得ない。特
別報告者は,ジャーナリスト団体に,現行の記者クラブ制度が及ぼす影響を議論し,少なくとも広範囲のジャーナリストが参加できるように会員を拡大する責任を負う立場にあることを求める。

としており、記者クラブ制度自体を見直し、最低でも会員をもっと広げろ、と言っています。

この指摘・勧告に対する、日本のメディアの受け止めや報道の仕方も、間違っています。

まず、今回の報告について、朝日新聞も、時事通信も、「国連報告者が政府を批判した!」という形でしか書いていません。自分達メディアに対する批判・勧告は一切ふれていないのです。

日本のメディア、「独立性に懸念」 国連の特別報告者:朝日新聞デジタル

日本メディアの独立性に懸念=菅官房長官「根拠不明」と反発-国連報告者:時事ドットコム

逆に、産経新聞は、前回2017年のレポートが出たときに、「国連反日報告」だと言って、叩きました。報告書の中の、慰安婦や沖縄基地デモに関する主張が気に食わなかったのでしょう。確かに、このあたりの記述の賛否は分かれるところです。しかし、肝心なことは、産経も自分達の入っている記者クラブへの批判・勧告は、取り上げていないことです。

www.sankei.com

政府も、日本の左右のメディアも、「日本の表現の自由」に関する国連報告者の主張を、まともに受け止めないばかりか、何が書いてあるのか、国民にきちんと知らせようとさえしていません。少なくとも、政府に対する放送法4条撤廃の勧告、及び、メディアに対する記者クラブ改革の勧告は、政治的立場を問わず、日本国民全体の利益になるものです。政府も、メディアも、真摯に勧告を受け止め、実施すべきです。