日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ついにアメリカでも、グーグルとフェイスブックを反トラスト法で調査。企業分割は必要でも、現行法も問題あり。

今日の要点

アメリカの司法省と議会が、グーグルとフェイスブックを、反トラスト法違反の有無について、調査する方針です。民主党のウォーレン上院議員の言う、プラットフォーマー分割論が現実味を帯びてきました。

・グーグルが自社企業の広告を、検索結果で一番広いスペースに表示する等の利益相反は問題です。検索機能の分離など、企業分割もやむを得ないでしょう。ただ、現行法の執行は相当に時間もコストもかかりそうです。専門家の提案する新法の議論も、同時に進めるべきです。

欧州に続き、アメリカでも、ITプラットフォーマーを調査。

アメリカで、司法省と議会が、グーグルとフェイスブックを、反トラスト法違反がないかにつき、調査することになりました。既にEUでは、IT大手プラットフォーマーに対して、競争法違反で制裁金支払いまで命じていますが、ついにアメリカでも政府・議会が厳しいスタンスで臨むようになってきました。

www.nikkei.com

なぜアメリカ当局のスタンスが変わったか、はっきりした報道をまだ見つけていませんが、やはり来年の大統領選をにらんでのアピールという面はあると思います。

ニューヨーク・タイムズによると、早くから、大手プラットフォーマーの解体を主張して、大統領選にも名乗りを上げている民主党エリザベス・ウォーレンは、私の言ってきた通りだ、引き続き厳しく追及するという趣旨のメールを同紙に送ったそうです。彼女は、サンフランシスコに、IT大手分割を訴える大きな広告↓を出したようで、通勤客が大勢見そうです。

www.nytimes.com

具体的にどの規定に違反した疑いがあって、どんな責任を負わされそうか等はまだ分かりませんが、企業分割もテーマになりそうです。

これまで、プラットフォーマーの寡占は議論にはなっていても、企業解体までは難しいだろう、という空気でした。わずか1年前、去年2018年1月に、ウォールストリートジャーナルは、過去の反トラスト法違反での企業分割(スタンダードオイルやAT&T)の例も挙げつつ、IT大手の解体の可能性について書いていましたが、結論は、規制措置が取られることはなさそうだ、ということでした。

jp.wsj.com

去年1月のウォール・ストリート・ジャーナルの記事で、規制はなさそう、と書いていたのは、IT大手のサービスを消費者はたいがい無料で利用が出来るので、消費者利益は害されていない、というのが理由でした。

しかし、この見方については、今年になって専門家が否定するレポートが相次いでいます。昨日のウォール・ストリート・ジャーナルの記事が二つ紹介しています。

jp.wsj.com

一つは、英国政府が作成を依頼し、3月に公表された報告書で、オバマ政権のチーフエコノミストを務めたジェイソン・ファーマン氏がまとめたものです。

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/785547/unlocking_digital_competition_furman_review_web.pdf#search=%27jason+farman+digatal+platform+UK+report%27

もう一つは、5月に公表されたもので、やはりオバマ政権時代に反トラスト当局者だったエール大学のフィオーナ・スコット・モートン氏らが作成したものです。

Prof. Fiona Scott Morton Leads Call for Greater Competition among Digital Platforms | Yale School of Management

https://research.chicagobooth.edu/-/media/research/stigler/pdfs/market-structure---report-as-of-15-may-2019.pdf?la=en&hash=B2F11FB118904F2AD701B78FA24F08CFF1C0F58F

これらの研究では、消費者が無料でサービスを利用する際には、個人情報をプラットフォーマーに提供しており、その価値は非常に高いので、無料どころか、本来は消費者が対価を得てもいいくらいだ、としています。更に、ソーシャルネットワークは、参加者が増えれば増えるほど参加者の便益が高くなるというネットワーク効果があるので、最初にそうした状態を築いた企業が独占を作りやすくなる、としています。そして、新規参入を促進することが消費者利益につながるということで、反トラスト政策の強化を求めています。

これらは、以前から指摘されている点ではありますが、最新の議論を踏まえて、プラットフォーマー規制が盛んに議論されてきた今、公表されることに意味があります。

今回、政府・議会が、これまでの慎重姿勢から転じて、IT大手への調査を始めたのは、ウォーレンのような民主党議員や、元オバマ政権スタッフらが規制強化を訴えるレポートを発表しているのに対して、トランプ政権や共和党も乗ってきた、という形に見えます。

いずれにせよ、以前から本ブログで紹介してきた、ウォーレンのプラットフォーマー分割論も、にわかに現実味を帯びてきました。

アメリカで盛り上がるGAFA解体論:アマゾンやフェイスブックから受ける消費者の利益・不利益とは? - 日本の改革

利益相反等の禁止のため、企業分割は必要。現行法は時間・コストかかり過ぎ、新法も同時に検討を

私は、上に挙げたブログでも書いた通り、プラットフォーマーへの不当廉売規制には慎重であるべきだが、IT大手が、自社のプラットフォーム上で自社製品を売るような利益相反については規制も必要で、企業分割もやむを得ないのでは、と考えています。

グーグルの検索については、これも随分以前から批判をされてはいました。最近でも、たとえば2年前に、ウォール・ストリート・ジャーナルが、グーグルやその関連会社が、自社製品を検索結果の一番目立つスペースに表示していたことを独自に調べ、批判していました。

jp.wsj.com

検索については独占・寡占企業であるグーグルについて、こうした方法はやはり望ましくないでしょう。検索機能について、別の企業等にするよう、政府に要求されてもやむを得ないと思います。

ただ、いま始められた調査で、現行法によって、企業分割までいきつくのは、大変な時間とコストがかかるでしょう。

ポリティコは、グーグルがワシントンの政界に寄付をしまくって、これまで批判を封じてきた実態を報じています。共和党民主党はもちろん、メジャーなシンクタンクから人権団体、果ては競争法に関する団体まで、2000年代初頭からずっと戦略的に献金してきたようです。

www.politico.com

Google can tap influence army as antitrust pressure mounts

また、反トラスト訴訟となれば、政府も優秀な弁護士を使って、時間と費用をかけて、グーグルやフェイスブックのような大企業と戦わなければいけません。現状での議論は、選挙向けのキャンペーンや研究者の提言が中心に見えますが、実際に訴訟で勝つのは、並大抵のことではなさそうです。現にマイクロソフト訴訟も、独占の抑止に効果があったとはいえ、長い時間をかけて、最後は和解で終わっています。ポリティコも、フェイスブックについて、企業分割がいかに難しいかを報じています。

Why breaking up Facebook won't be easy - POLITICO

日本の独禁法でも、一応、独占状態にある企業を分割する規定はありますが、あまりにドラスティックな手段なので、一度も執行されたことはないようです。アメリカでさえ、過去の例でも、10年単位の時間がかかります。

そこで、先に紹介した二つの報告書が言うように、現行の反トラスト法(日本なら独占禁止法)を改正するか、新しく法律を作るべきだと思います。専門家の提言は色々ですが、強調されているのは、権限は強力だが、専門家と関係者が入って、迅速で柔軟な執行が出来るような組織にすべき、ということです。

私の理解では、司法手続きに依存する反トラスト法の枠組みでは、技術革新の早いIT業界への規制としては不適当なので、行政権限で処分が出来るようにする代わり、本物の専門家が多数入って処分の妥当性を担保し、当事者の参加で公正さを担保する、という発想のようです。このやり方が唯一無二ではないですが、現行の重すぎる手続きは改善できる可能性があります。

プラットフォーマーは全世界で利用されているのですから、新法はアメリカに限らず、条約も作って各国で立法化すべきでしょう。