日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

衆議院解散に「大義」は不要。解散の当否は、国会議員ではなく国民が選挙で判断すれば良い。野党は「大義なし」を言い訳や負け惜しみに使うな。

今日の要点

・衆参同日選の可能性が高いと言われています。今回、いわゆる大義のはっきりしない解散が行われそうです。

憲法学者の木村草太氏が、内閣の解散権を制約するために、手続法を制定して、総理が国会で解散理由を説明すべき、と主張しています。最近2回の衆院選について、恣意的解散の疑いがあると批判しています。

・このような法律は不要だと思います。解散の大義は、国会ではなく、国民に説明すべきだからです。「大義」のない解散が国民に有害なら、総選挙で国民が厳しい審判を下せば良いことです。野党は「大義なし」を負け惜しみに使うべきではありません。

衆参ダブル選になったら、「大義」のない解散になりそう

衆参同日選が確実な情勢、と言われています。内外の情勢、世論調査、政治家の発言等を見ると、仮に解散となっても、大した理由がない、いわゆる「大義」がないことになりそうです。野党は解散のたびに「この解散は大義がなくてけしからん」と言いますが、解散で国民には意思表示の機会が与えられます。総理の私利私欲で国民のためにならない解散総選挙なら、国民が厳しい審判を下します。このため私は、野党やメディアが言うような大仰な「大義」がなくても、解散はして構わないと思います。

まず、衆参同日選になったとして、いわゆる「大義」について、政府はどう言いそうか、報道をもとに見てみます。

『選択』6月号の記事「自民党「同日選シナリオ」の狡猾」によると、5月半ばに、安倍総理自民党本部から、参院選で自民有利の予測の報告を届けられたのが、同日選決定の決め手だったようです。そこで菅官房長官が5月17日に内閣不信任案提出が大義になると言ったり、同じ日に森山国対委員長が6月中の党首討論に応じたり、と、環境固めをしてきたとか。6月19日の党首討論で、総理が枝野氏を挑発でもして、それなら国民に聞いてみましょう的なことを言って解散、という見立てです。

今回、衆参ダブル選になったら、衆議院解散の理由、いわゆる「大義」がはっきりしない解散になりそうです。同じ『選択』6月号の別の連載記事「政界スキャン」によると、ネーミングは「令和解散」、なぜなら元号が変わって支持率が上がったのに乗じて解散するから、だとか。総理はこの半年間、解散の「大義」を色々探して、「日露解散」、「日朝首脳会談解散」、「消費税率上げ凍結解散」、「憲法改正解散」と色々探したけれど、結局、ネタが見つからずじまいで、大義なく解散しようとしている、と批判しています。

(『選択』の6月号はまだネットに上がっていないので、どちらの記事についても、リンクはありません<(_ _)>)

確かに、北方領土交渉は全く進まないから「日露解散」はムリ、日朝首脳会談北朝鮮に全然その気がなくて「日朝首脳会談解散」もダメ。消費税率上げ凍結は、まだ可能だという意見もありますが、私は今年3月頃から、もう無理だろうと思って、本ブログでも繰り返し「消費税増税延期なしの解散」を予想してきました。そうなる可能性が高くなっているように思います。

消費税増税は延期せず、かわりに大型補正予算組んで衆院解散か。企業向けバラマキの目玉は「データ資本主義」? - 日本の改革

このところ、何があっても下がらない内閣支持率。消費税増税延期できなくても、解散するのでは。 - 日本の改革

最後に、「憲法改正解散」です。安倍総理は、「参院選で、自民党憲法改正を議論する政党だということを国民に示すべき」という趣旨の発言をしているので、これを衆院選の「大義」にするかもしれません。

www.zakzak.co.jp

ただ、憲法改正は国民の関心が高くありません。TBSの直近の世論調査では、参院選で投票の際に重視するテーマで、多かったのは「年金や医療などの社会保障」64%、「少子高齢化や子育て対策」の54%、「消費税増税の是非」の32%等で、「憲法改正」は11%で8番目だそうです。

news.tbs.co.jp

そのうえ、自民党参院選向け公約での憲法改正の位置づけ・書きぶりについても、党内でまだもめているようです。

改憲公約めぐり自民混迷 原案に異論…参院選目前、作り直し:イザ!

これでは、なかなか衆院選で一番重要なテーマ「大義」にはしにくいでしょう。小泉元総理も憲法改正は争点にすべきでない、と発言していますが、このテーマでの選挙戦は自民党には不利だと思っているのでしょう。

digital.asahi.com

二階幹事長に至っては、消費税増税延期や憲法改正大義に選挙をするのは「愚の骨頂」と切り捨てています。更に、「大義は1日あったらつくれる」とも発言。党首討論でのやり取りで、その場で出てきたフレーズ一つで解散もありそうな言い方です。

www.jiji.com

なお、上に挙げたTBSの世論調査では、衆参同日選に賛成は30%、反対は42%でした。わずか半月前のテレ朝の調査では、衆参同日選を行っても良いと思うが50%、思わないが20%ですから、全然結果が違います。

2019年5月調査|世論調査|報道ステーション|テレビ朝日

たぶん、質問の仕方によるのでしょうが、TBSの調査によると、同日選を政府が行うと、世論の反発を買う可能性もありそうです。一方で、TBSの調査でもテレ朝の調査でも、内閣支持率自民党支持率も大変高い状態です。国民は、「同日選なんておかしい。だが、他に比べれば安倍自民党がマシだ」と、これまで通りの判断をする可能性も十分あります。仮に同日選となれば、総理はこの可能性に賭けることになるでしょう。

いずれにしても、総理の解散の判断の当否については、国民が、国会というフィルター抜きで、選挙で示すことが出来ます。

木村草太氏の主張する「解散権の理由説明義務」と、そのための立法

これに対し、以前から、野党の中には、内閣の解散権を制限すべきだ、という議論がありました。民進党時代の枝野氏は、解散権を制限するための改憲の議論はしてよい、という発言をしています。

解散権制限へ「改憲も視野」 民進・枝野氏:朝日新聞デジタル

最近では、憲法学者の木村草太氏が、内閣が衆議院を解散する際には、法律で、国会で解散理由を説明する義務を課すべきだ、と主張しています。

木村氏は、過去2回の解散が、いずれも「大義」の存在が怪しく、違憲の疑いがある、と主張しています。2014年の「消費税増税延期解散」は、延期に反対する政党がほぼなかったのだし、2017年の「国難突破解散」については、更に根拠が曖昧で、憲法に定める臨時国会(当時は森友問題がまだ注目されていました)の開会さえ行わずに解散したのがおかしい、という趣旨です。解散に対する批判としては分かります。特に、2017年に臨時国会を開かずに解散したのは、私もおかしいと思います。

憲法違反だというのは、内閣の解散権の根拠を7条の国事行為の規定に求めた場合、そこには、「国民のために」という文言があるから、内閣の私利私欲による恣意的な解散は、この規定に違反して憲法違反だ、ということです。条文は以下の通りです。

第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
(略)
三 衆議院を解散すること。

そこで、7条に定める解散権を制限しない形で、きちんと「大義」のある解散を内閣にさせるために、解散の際には、内閣が国会で解散の理由を説明する義務を課すべきだ、という主張です。

www.okinawatimes.co.jp

 

衆院解散に、「法律上の」大義は不要。「政治的」大義のない解散には、国民が厳しい審判を!

私は、衆議院解散の際に、内閣が国会で理由を説明する義務を定める法律は不要だと思います。

まず、こうした手続法を作ったところで、たぶん意味がありません。なぜなら、仮にこの手続法に違反して、国会での説明なしに解散・総選挙をしたところで、裁判所が差止訴訟を認めたり、事後的に選挙無効等の判断を出来るとは思えないからです。恐らく、たとえ法律で定めてあっても、「統治行為論」類似の理屈で、判断から逃げるのではないかと思います。どうせ解散権を制限するなら、枝野氏が言うように、憲法改正でもしなければ無理でしょう。

次に、総理が私利私欲に基づく恣意的な解散を行った場合、直後の衆院選で、国民は解散の当否を含めて、民意を示すことが出来ます。

これは、政府が言うのと同じ理屈です。今年5月29日の衆議院内閣委員会で、国民民主党の谷田川議員が、木村氏の学説も含め、解散権を制限すべきではないかと、菅官房長官に質問しました。質疑の一部につき、概要を紹介します。

・谷田川委員:過去2回の解散は恣意的。2014年はアベノミクス解散として、消費税増税延期の是非を問うた。しかし、三党合意の精神は、消費税引き上げは政争の具にしない、ということだったはず。また、2017年には、臨時国会を開かずに解散した。木村草太氏の主張する手続法は良いアイディアではないか。
・菅官房長官:解散は内閣が政治的責任を負ってやるもの。解散の当否は選挙を通じて国民の政治判断を受ける。解散権は立法府と行政府の均衡のための権限であり、恣意的ではいけない。木村説について論評は避けるが、解散については恣意的に行っていない。

・谷田川委員:やはり衆議院議員は出来るだけ任期いっぱい、4年間務めるべきではないか。

・菅官房長官:御意見としては伺う。が、国会の中で改革すべき点はたくさんある。

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=49104&media_type=

いかがでしょうか。こんな質疑を聞くと、やはり、解散権など制限すべきではない、衆議院は常在戦場で、いつ解散があるか分からない状態にしておかないと、衆議院議員というのは増長するばかりだ、という感じを持たれないでしょうか。

2014年の解散の当否について、先に紹介した木村草太氏の言い分は理解できます。与野党ともに増税延期なら争点ではないではないか、ということです。ところが、谷田川氏の言い分では、2014年の解散はけしからん、なぜなら、消費税増税を決定した神聖なる三党合意に反するからだ、三党合意の高邁なる精神は、政治的議論等の外にあるものとして遵守すべきだ、というのです!これだから、旧民主党はどうしようもないのです。

そのうえ、最後には、任期通りに国会議員続けさせてくださいよ、選挙なんかやらせないで下さいよ、というお願いです。動画見ていただければ分かりますが、へらへら笑いながら、通らない理屈だと分かったうえで、冗談めかして言っています。

要するに、ここでは、解散の「大義」論というのは、野党の議員にとっては、安易な増税に頼らないという改革に抵抗し、自分の地位を守るための言い訳、ぼやき、負け惜しみに過ぎないのです。だから、彼等が「解散の大義がない」などと言っても、国民には全然響かないのです。

総理大臣が、私利私欲のために恣意的な解散をすることは当然あります。それどころか、解散こそは日本の政治で最も政治的な行為なのですから、私利私欲も、恣意も、常につきまといます。

一方、解散を嫌う政党・政治家にも、私利私欲も恣意も当然あります。国全体でなかなか進まないような大改革を成し遂げようとするとき、国会がただの抵抗勢力となり、既得権の牙城となったとき、総理が直接民意を問う解散という大きな権限は極めて重要です。その当否は、国民こそが判断すべきであり、首を切られる側の衆議院議員が判断すべきではありません。

今年、衆参同日選につながる解散がなされた場合、総理の私利私欲・恣意が国民を害する解散となっていないか、国民は、国家機関の一翼を担うものとして、厳しい目で見て、後悔しないよう、しっかりと選挙で意思表示すべきです。