今日の要点
・今日5月31日は、WHOの「世界禁煙デー」です。これに合わせた東京都の広報・啓発は、新たに作った解説動画によるPRと、都庁でのパネル展とポスター掲示です。これを機会に、以前作った、JTのお決まりのフレーズ(吸う人も吸わない人も云々)入れたポスターとビデオは、逆効果なので回収した方が良いと思います。
世界禁煙デー・禁煙週間に、ほぼ何もしない東京都。都の条例PR動画もおかしい。
5月31日はWHOの「世界禁煙デー」で、それから1週間が「禁煙週間」です。
これに合わせて、上のリンクにある通り、世界中でイベントが行われますし、日本でも、国・自治体・各団体のイベントや広報が行われます。厚生労働省は、『令和元年度「禁煙週間」実施要綱』を定めて、ばこ対策関係省庁と連携し、次の事業を実施します。同要綱から、厚労省が自分でやる部分だけ、抜粋します。
ア たばこと健康に関する正しい知識の普及
・厚生労働省ホームページによる世界禁煙デー及び禁煙週間の情報提供
・本週間用ポスターの作成、配布及び掲示 ・関係省庁及びそれら省庁を通じ関係機関等に対し、本週間用ポスターの掲示を要請
・世界禁煙デー記念イベントの開催
イ 公共の場・職場における受動喫煙防止対策
・庁舎内における受動喫煙防止対策の徹底(庁舎内全面禁煙等)
・関係機関を通じ、公共の場・職場における受動喫煙防止対策の取組を推進・関係省庁及びそれら省庁を通じ関係機関等に対し、施設内における受動喫煙防止対策の実施について協力を要請
・関係団体等に対し、受動喫煙防止の普及啓発用チラシを配布し、受動喫煙防止対策の実施について協力を呼びかける
「ア」の四番目の「世界禁煙デー記念イベント」は、以下のものです。厚労大臣、全店舗の敷地内禁煙を決めたすかいらーくホールディングズの社長等による挨拶や講演、お笑いイベント、フォトセッションです。今日間もなく始まります。
厚労省のイベントで紹介される、すかいらーくの取り組みは、健康増進法も都条例等も上回る徹底したもので、今年9月1日から、加熱式タバコを含めて敷地内全面禁煙、灰皿も全て撤去するというものです。政府が世界禁煙デーで取り上げるにふさわしい素晴らしい取り組みです。
狭まる禁煙包囲網、すかいらーくも「敷地内全面」で:日経ビジネス電子版
自治体も、都道府県単位で色々な広報・啓発を行っています。首都圏では、千葉県が充実しています。街頭キャンペーン、県内鉄道駅でのポスター掲示、啓発チラシやティッシュ配り、等々です。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000513293.pdf
各団体も力を入れています。日本禁煙学会が今日の13時30分から、日本医師会館(本郷)で、シンポジウムを行います。医師会長、厚労省健康局健康課長、小池都知事が挨拶します。都民ファーストの岡本都議も特別発言者として参加します。
このように、政府も、他県も、民間団体も、世界禁煙デー・禁煙週間での広報・啓発に注力しています。たかだか一日・一週間の話、という発想ではなく、WHOが言うように、「毎日を世界禁煙デーに(Make everyday world no tobacco day)」するために、大変良い機会です。
では、先進的な受動喫煙防止条例を制定した東京都は、何をするのでしょう?新たに作った解説動画を、以下のように広報で流していくということです。都のウェブサイトから引用します。
5月31日「世界禁煙デー」に始まる「禁煙週間」に合わせて、以下のとおり実施します。
5月17日(金曜日)14時00分~
東京都公式動画チャンネル「東京動画」
福祉保健局ホームページ「とうきょう健康ステーション」
5月31日(金曜日)~6月7日(金曜日)
新宿駅西口広場 大型及び柱面デジタルサイネージ
6月3日(月曜日)~6月9日(日曜日)
JR中央線・山手線、都営地下鉄ビジョン
※上記の他、各種メディアや関連イベント等で幅広く展開していきます。
これ以外は、都庁の庁舎内でパネル展とポスター掲示をするだけのようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000513294.pdf
パネル展とポスター掲示については、一応、SNSで告知はしていますし、ツイッター上では、都民もアートワークを一点くらい目にはします。
【5月31日は 世界禁煙デー!】2019年の禁煙週間は5月31日~6月6日です。禁煙・受動喫煙防止の取組にご協力をお願いいたします。都では禁煙週間に合わせて、都庁第一本庁舎1階中央アートワークにてパネル展「たばこと健康について」を行います。ぜひご覧ください!♯禁煙デー ♯禁煙週間 pic.twitter.com/vnCZ3u6PvA
— 東京都福祉保健局 (@tocho_fukuho) May 29, 2019
あとは、各区の取り組みで、23区中16区が広報をしてはいますが、千代田区・中央区のように力を入れるところもありますが、区によってはほぼ同様の対応も見られますし、何もしていないところも7区あります。
以前、東京都の禁煙政策に関する広報が批判されました。せっかくの受動喫煙防止条例で、ポスターも動画もひどいものだったからです。本ブログでも取り上げました。
社員の禁煙促進の企業連合が都内で発足!東京都は既に職員の勤務中禁煙を実施中。自信を持って、禁煙条例の広報・執行の改善を! - 日本の改革
これがそのポスターですが、そもそも、「受動喫煙防止条例」の文字自体が小さすぎて、何の広報だかほとんど分かりません。そのうえ、「たばこを吸う人も吸わない人も誰もが快適に過ごせる街を目指して」という、JTの決まり文句まで出てきます。
東京都受動喫煙防止条例啓チラシ・ポスター(健康ファースト大使)|とうきょう健康ステーション
動画も同様で、「吸う人も吸わない人も誰もが快適に過ごせる街」というフレーズが出てきます。
これがいかに非常識で、タバコ問題に取り組んできた方々の神経をどれほど逆撫でするやり方か、JTのウェブサイトを見ればすぐ分かります。
JTは未だに受動喫煙と健康被害の因果関係を認めようともしません。彼らが、人の生命の問題を単なるマナーの問題に矮小化するときに使うフレーズがこの「吸う人も吸わない人も」「吸われる方も吸われない方も」という言い方なのです。
更に、この表現は、新型たばこの宣伝文句にさえ使われています。JTはウェブサイトで、新型たばこ等が「たばこを吸われる方と吸われない方が協調して共存できる社会の実現に貢献し得る」と言っています。
この、あまりに人を愚弄するポスターと動画について、岡本都議が都議会での質問で批判し、ジャーナリストが叩き、日本禁煙学会が要望を出すということになりました。
日本禁煙学会からの、東京都福祉保健局長・内藤淳氏への要望は、以下の通りです。
・東京オリンピックに向けて、より明瞭な形で受動喫煙の防止を訴える啓発を行っていた だくこと
・啓発に関する事業の委託にあたってはタバコ産業との利益相反にご留意いただき、委託 先企業がタバコ産業に配慮して啓発効果の低い成果物の納品に終わることのないよう十分 な監督を行っていただくこと
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/information/Postertokyo2019.pdf
一点目の「より明瞭な形で受動喫煙の防止を訴える啓発」について、やっと、世界禁煙デーと禁煙週間に合わせて、分かりやすい解説動画が作られました。PRの時期・場所も、これなら一目に十分つくだろうし、都民の意識にもある程度響くだろうとは思います。
東京都も、ようやく、広報・啓発に力を入れてくれるのでしょうか?一都民として、都内の受動喫煙環境について言えば、確かに多少は変化の兆しが見られますが、条令の完全実施前でもあり、正直言って、まだまだ条例の効果は実感できずにいます。今回の解説動画のような内容の広報なら大変結構ですし、あまりにひどい旧ポスターは、もう回収して、新たな媒体を更に増やしてほしいと思います。