日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

旧優生保護法の国賠訴訟、意味不明の理由で原告敗訴。穴だらけの救済法を野党も批判しない。野党の新人候補達は、ちゃぶ台返しで法改正を主張・実現せよ!

今日の要点

・旧優生保護法の国賠訴訟で原告敗訴の判決。同法は憲法違反だと言いつつ、立法措置が不可欠だと言いつつ、立法の不作為による賠償請求を棄却した意味不明判決です。裁判官は、本音では原告を勝たせたかったけれど、何か圧力でもあったかのようです。

与野党は泥縄で作った不完全な救済法を変える姿勢が全くありません。特に、野党のやる気ゼロなのが許せません。野党の新人候補達は、選挙戦で現行の救済法を変えるよう訴えて、今から法改正に向けて努力すべきです。

優生保護法の国賠訴訟、仙台地裁の意味不明判決:請求認容にしか見えない請求棄却判決

優生保護法による強制不妊手術に係る国家賠償請求の訴訟で、昨日、仙台地裁が請求棄却判決を下しました。

原告弁護団のサイトに、判決要旨が出ていますので、内容を私の理解で紹介します。

まず、国の立法不作為による国家賠償請求の可否についてです。

強制不妊手術による権利侵害の程度は極めて甚大だとして、リプロダクティブ権を認め、これを奪う旧優生保護法の規定は憲法違反だと認めました。また、 国の立法不作為についても、権利侵害の程度が甚大であるし、20年の除斥期間経過前に被害者が賠償請求するのは困難だったとして、「権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠」とまで言っています。

ところが続けて、リプロダクティブ権を巡る法的議論が深まらなかったとか、合憲性の司法判断がなかったとか、あやふやな理由を挙げて、「国会が立法措置をとることが必要不可欠で、明白だったとは言えない」と原告の主張を退けました。

そして、国賠法の除斥期間20年の規定は合理性があるので、「20年たったから請求できない」と判断しても合憲、としています。

yuseibengo.wpblog.jp

この判決、どうも妙な気がします。

まず、請求を棄却しているのに、旧優生保護法の規定は憲法違反だ、と言っている点が変です。

憲法裁判では、具体的事件の解決に必要な範囲でのみ憲法判断を行うという、いわゆる付随的違憲審査が原則のはずです。この事件で言えば、旧優生保護法憲法違反⇒請求を認める、憲法違反でない⇒請求を認めない、ということなら、具体的な事件の解決、つまり、請求についての判断では、合憲か違憲かの判断が必要になります。裁判所はこういうときだけに、憲法判断をしますよ、というのが、付随的違憲審査制です。

ところが、この判決では、旧優生保護法憲法違反だと言っているのに、請求を棄却しています。当然、合憲だとしても、請求を棄却したでしょう。すると、この事件の解決に憲法判断をする必要はないはずなのに、まるで、ついでのように、旧優生保護法の規定は違憲だ、と言っているのです。したがって、裁判所が通常採用している付随的違憲審査というやり方とは違うと思います。

次におかしいのは、国が立法すべきだった、原告は20年の間に請求するのは困難だったのだから、それが可能になるよう立法すべきだった、と強く主張し、立法措置が必要不可欠だとまで言っているのに、結論としては曖昧な根拠を少し挙げて、あっさり国会の立法裁量を広く認めている点です。理屈もおかしいですが、書きぶりも、前半の、原告寄りの判断材料について書いている長く熱のこもったトーンと、請求を認めない理由を短くあっさり示しているトーンと、随分違っています。

以上が、判決要旨についての、私がおかしいと思うポイントです。

判決内容だけではありません。今回、原告敗訴の結果となったのが、そもそも予想外のことだったようです。訴訟指揮もかなり原告寄りで、裁判官が国に何度も合憲性について国に判断を促して拒否されたりしていて、厚労省も敗訴を覚悟していたという報道もあります。

違憲性焦点、認否避ける国 強制不妊で28日初判決 :日本経済新聞

mainichi.jp

以上のような違和感から想像するに、この裁判官は、何らかの圧力を受けていたのではないか、とさえ思えます。判決要旨を見る限り、まるで、「認容判決にしか見えない棄却判決」です。

官房長官は判決に付き、「国家賠償法上の責任の有無に関する国の主張が認められた」との認識を示しました。

www.iza.ne.jp

与野党は、不完全な救済法を放置。立憲民主党の弁護士候補達は、救済法改正を主張し、実現せよ!

このおかしな判決を出した仙台地裁以上におかしいのが、判決に先立って救済法を全会一致で成立させた、与野党です。毎日から引用します。

超党派議員連盟にいた与党議員は、他地裁の判決がまだ出ていないことを踏まえ「(救済法の)見直しはない」と断言。事務局長を務めた福島瑞穂参院議員も「今回の結果は個人的に残念」としつつ、救済法は「全会一致で成立している」と維持するのが妥当との認識を示した。

 立法過程では、謝罪を盛り込んだ国会決議を今の通常国会に提出する動きもあったが、動きは与野党とも鈍い。「今、決議を出しても、救済法の範囲は超えない。責任は国会、政府にあると明確にしており、大きな事情の変更がない限り難しい」(与党幹部)との声もある。

クローズアップ:強制不妊訴訟判決 国会の不作為、問わず 「法的議論 深まらず」 - 毎日新聞

つまり、与党も野党も、あの不完全な救済法を、全然改正するつもりはない、ということです。地裁とは言え、違憲判決が出されたにも関わらず、です。以前も本ブログで批判しましたが、旧優生保護法違憲と言わず、お詫びの主体もあいまい、何よりも、被害者への直接の通知をしない、というひどい法律です。

www.kaikakujapan.com

こんなものについて、福島瑞穂氏さえもう批判しないとは、もう彼女は人権派の看板を下ろしたらどうかと思います。自分が事務局として関わろうがどうしようが、こうして違憲判決が出た以上、直ちに不完全な救済法の改正に動くべきです。

案の定、強制不妊救済法の一時金の支給決定は低調です。当たり前です。被害者本人に直接通知しないから申請自体が行われないからです。

www.sankei.com

慶応大教授の小山剛氏(憲法学)も、今回の違憲判決によって、「ボールは再び立法府に返された。4月下旬に施行された被害者救済法は、旧法が合憲であるとの前提に作られたもので、給付金の趣旨や金額、救済制度を積極的に周知する仕組みなどの面で立法府には再検討が求められる」と言っています。全くその通りで、一時給付金320万円はあくまで一時金、こんな金額で済むような人権侵害ではありません。

mainichi.jp

頭にくるのは、朝日の論調です。一応、請求が通らなかったことには批判的ではありながら、除斥期間を理由に蹴ったのはしょうがない、と記事本文で書いて、有識者のコメントも、法律学者からは、「無理ない判断では」という立場のものを挙げています。朝日は、野党がもうやる気なくて矛をおさめるつもりだから、あまり叩くのはやめておこう、ということなのでしょうか?こんなことだから、信用できないのです。

digital.asahi.com

というわけで、与党はもちろん、野党も法改正をやる気なし、メディアも、与党批判することの多い朝日が、今回は野党がやらないせいか、全然ぬるい。

野党については、さっきの福島瑞穂氏のコメントもひどいものでしたが、枝野幸男氏は、この判決について、ツイート一つしていません。

このうえは、野党の新人候補が、無能で冷酷な先輩議員達の用意したちゃぶ台をひっくり返して、大騒ぎすべきです。私がわずかな希望を託したいのは、立憲民主党の女性弁護士達です。現状では、大人し過ぎるか、これほどの重大事件について、何も言っていません。

亀石倫子氏は、判決については一言批判しました。しかし、問題は救済法です。慶應大学の小山剛教授の言う通り、ボールは立法府に返ってきたのだから、参院選に向けて、党が何と言おうが、実績を上げてきた本物のプロとして、救済法の改正を主張すべきです。

 更にひどいのは、新潟で立民から推薦を受けた打越さく良氏です。選択的夫婦別姓を重視しているようだから、少しは期待しましたが、こちらは、本件について、何も言っていません。

twitter.com

議員立法で全会一致で成立した救済法につき、与野党が談合して全然改正しようとしない、裁判所の判決までおかしい。メディアも本気ではない。そんな絶望的な状況で、何かやってくれそうなのは、野党でありながら野党に染まり切っていない、法曹としての本物の実力のある、独立不羈の弁護士しかいないではありませんか。

らい予防法と並ぶ恐るべき人権侵害について、その権利救済が全く不十分な実態について、弁護士として、参院選に向けて、救済法改正を訴えてほしいと思います。