日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

中道+リベラルが勝利の欧州議会。問題は、親EUか反EUかではなく、ロシアと中国の不当な影響を排除できるか。

今日の要点

欧州議会選挙は、既存会派の中道右派・左派は過半数割れ。ただし、EU懐疑派も伸びず、既存会派がリベラルと組めば、過半数です。EUの意思決定は欧州議会だけではなされないので、当面、そう大きな政策変更はないでしょう。

・移民政策等を巡り、EUの統合か分断かが問題になったとされますが、そこはEU諸国民の判断によるもので、どちらにせよ尊重されるべきです。問題は、ロシアと中国の不当な影響を排除することで、両国の民主主義国家への介入は今後も注意すべきです。

欧州議会選挙、EU懐疑派は伸び悩み、良くも悪くも、おおむね現状維持の見込み

日本国民には馴染みの薄い選挙ですが、5年に一度の欧州議会選挙が終わりました。移民政策等を巡って、欧州諸国ではEU懐疑派とかポピュリストとか言われる新たな政党・政治勢力が台頭しており、その躍進が予想されていました。

結果を見ると、欧州議会での「既存政党」で、これまで過半数を超えていた中道右派の欧州人民党(EPP)+中道右派の社会進歩民主同盟(S&D)が過半数割れしたものの、リベラル系(親EU)の諸派と足せば過半数です。EU懐疑派やポピュリストは票を伸ばしたものの、全部足しても、3割未満のようです(今井佐緒里氏のまとめによります)。

news.yahoo.co.jp

今回、投票率が50.95%で、過去最低だった5年前の前回(42.61%)を上回ったうえ、1979年の直接選挙導入以来、初めての上昇で25年ぶりに5割を超えたそうです。「親EU勢力とEU懐疑派の対決構図となり、市民の関心が高まったとみられる」と産経は報じています。

www.msn.com

EUの意思決定は複雑で、会議体や行政機関が乱立し、官僚主義の弊害が指摘されてきました。これがブレグジットの一因とも言われています。

いずれにせよ、EUの意思決定は、欧州議会だけではできません。立法も予算も、EU理事会と欧州議会が共同で決定します。このEU理事会には、各国の閣僚が入るので、欧州議会の権限は、各国の議会に比べて、はるかに限定的です。5年に一度の欧州委員会委員長の任命にも影響力を持つのですが、具体的には、「欧州理事会が委員長候補を指名する際」、直近の欧州議会選挙の結果を「考慮しなければいけない」という形です。この「欧州理事会」というのが、加盟国の常駐代表からなり、その下に事務局として、実質的な行政機関があります。

EU MAG 欧州議会について教えてください

EU MAG EU理事会と議長国について教えてください

まとめると、立法と予算は各国の閣僚(EU理事会)といっしょに決めないといけないし、欧州委員会の委員長を決めるにも、事務方(欧州理事会)が決める際に選挙結果を尊重する程度、ということです。やはり民主主義の基礎は欧州各国の国内での議会選挙や大統領選挙なのでしょう。したがって、今回、EU懐疑派が伸びたと言っても、議席数も限定的ですし、EUの政策自体には大きな変更はないでしょう。

ブレグジットは典型的ですが、上に述べたようなEUのややこしい意思決定や、事務局の権限が強くなりがちな点に批判があるのは当然です。まして、欧州諸国民にとって切実な問題である移民問題について、EU指令等のせいで各国の意思決定の自由度が狭められているのでは、納得は得にくいでしょう。

現在のEUのあり方に疑問を持つ国民が欧州にいるのはもっともですし、EU懐疑派が「内部からEUを変える!」と意気込んで、多数立候補し・当選したのは、肯定的に評価して良いと思います。おかげで、今回の欧州議会選挙は投票率も爆上がりで、各国にEU懐疑派がいたからこそ、EUの民主的正当性が強化されました。今回の選挙はむしろ、EUに対する欧州諸国民の信頼を一層強めることにさえなるでしょう。

EU懐疑派の問題:ロシアと中国の不当な影響が及んでいないか

以上のように、今回の欧州議会の選挙は、結果として過激主義がEUを覆うことにもならなかったし、EUに対する正当な疑問は各国の選挙できちんと示されて、EUへの信頼回復の契機となったし、あとは、これから決まる欧州委員長が、今回の選挙の結果を尊重した運営をすれば、むしろ良い結果だったと思います。

問題は、こうした民意を歪めようとする、非民主的な外国勢力がいることです。言うまでもなく、ロシアと中国です。ロシアは主にEU懐疑派への支援やフェイクニュースによる選挙介入で、中国は主に一帯一路や直接投資による経済的な支援で、欧州諸国を分断しようとしています。彼らは、自由主義、民主主義といった人類普遍の価値を否定し、自国に有利な結果を得ようと画策しています。EU懐疑派については、こうした勢力の不当な影響が及んでいないかについては、やはり注意深く見守る必要があります。

今回の欧州議会選挙直前の一番ひどい例は、オーストリアの「極右」政党とされる自由党を巡るスキャンダルです。要は、連立政権で副首相だった自由党のシュトラーヘ党首が、ロシアの新興財閥の「姪」を自称する若い女性から、オーストリアの新聞を買収する代わりに公共事業を回せという取引を持ちかけられて応じた、という事件です。

wedge.ismedia.jp

この一部始終がなんと隠し撮りされて、シュピーゲルと南ドイツ新聞が公開したことで、ヨーロッパ中が大騒ぎになりました。密談の場所がスペインの保養地イビサだったことで、「イビサゲート」と言われるようです。

www.youtube.com

英語字幕付きはこちら。

www.youtube.com

どうも、この隠し撮り、出来過ぎていますし、「姪」が何者かも不明で、この報道自体がヤラセの可能性もあります。しかし、それに引っかかって、ロシアの財閥を自称する人間からの汚職の申し出に易々と引っかかるのは、もっと問題でしょう。彼等に、ロシアへの警戒心のなさ、それどころか、ロシアへの親近感で自国の国民を裏切る一面があったと言われても仕方がありません。フィナンシャルタイムズも厳しく批判していました。

www.nikkei.com

周知のように、フランスの国民戦線のルペン氏は、前回の大統領選の際にロシアから資金援助を受けたのでは、という疑いが持たれていましたし、

jp.wsj.com

ロシアは、ブレグジットの際にも、2017年のオランダの選挙の際にも、組織的な情報工作をネット上で行ったとされています。ネットでお馴染み?のRTも、ロシア政府のプロパガンダを流し続けています。
persol-tech-s.co.jp

一方、中国は、一帯一路をはじめとする経済的支援で、欧州の意思決定を歪めようとしています。既に、東欧諸国については、新たな「鉄のカーテン」が下ろされつつあります。これについては、本ブログでも取り上げました。

www.kaikakujapan.com

ロシアと中国は、それぞれ別個に、黙示の結託に近い形で、欧州政治に介入し、民主主義を歪め、堕落させようとしています。この二つの権威主義国家による「民主国家切り崩し」は、フォーリンアフェアーズ誌等でも、指摘されてきました。

www.foreignaffairsj.co.jp

日本が、今回の欧州議会選挙や、欧州諸国の選挙で注意すべき点があるとすれば、EU懐疑派の台頭それ自体よりも、その際に、ロシアや中国の不当な影響があったか否かです。こうした介入を防ぐため、日米欧は結束して、自由主義と民主主義を守るため、言論の自由を害しないように慎重に、しかし断固として、ネット上でもそれ以外でも、対策を固めるべきです。