日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

日米首脳会談、確認すべきは、ドコモがファーウェイ基地局導入との報道。中国軍には、平時も戦時もない。

今日の要点

トランプ大統領が、日米貿易交渉につき、農業で進展があったような示唆。野党は批判していますが、交渉の中身が農産品市場の開放ということなら、歓迎すべきです。

・むしろ問題は、米中の手打ちのために、同盟国日本で、ファーウェイの5G基地局をドコモが先行導入するという報道です。事実なら大きな問題です。5G網は日常生活全てを支える技術であり、中国軍は平時も戦時も区別しない考え方だからです。日本はオーストラリアのように、ファーウェイ製品を排除すべきです。

日米首脳会談、農産品市場開放を内々で合意したなら歓迎

日米首脳会談が終わり、共同記者会見がありました。トランプ氏は、日米貿易交渉について、「8月に発表ができると思う」、「全ての障壁を取り除くことが目標だ」、「われわれはTPP水準に縛られていない」と発言しました。

www.msn.com

 

これに先立ち、既に昨日、安倍総理とのゴルフの後、トランプ氏が、農業、特に牛肉で進展があったというツイートをしました。これに対して、野党が批判しています。参院選前に首脳間で合意して、参院選後に発表するのはおかしい、ということのようです。

しかし、たとえば牛肉関税の撤廃は、日本の消費者の利益になるものです。民主党は政権にいたときはTPPを推進して道筋をつけ、野党に戻ったらTPPの批判をしています。今さら、旧民主党議員がこんなことを言っても、国民には響きません。

一方、TPPの農産品市場開放は加盟諸国の中で最低水準で、日本の消費者・国民には利益が比較的小さいものでした。政府は、もともと、早急にTPP11諸国を含め、農産品について更なる市場開放をすべきところでした。これについては、このブログで、繰り返し主張してきました。

日本が日米欧のリーダーになる大チャンス!日米・米欧の貿易摩擦回避のため、日本は率先して農業市場の開放を! - 日本の改革

自動車の高関税も数量規制も回避し、日本国民も米政権も満足する方法:TPP以上の農産物市場の開放。維新は外交でこれを言ったら? - 日本の改革

日米貿易交渉を、国内改革に利用すべき。農業はTPP以上に自由化し、サービス分野で、ゆうちょ銀行等の完全民営化を! - 日本の改革

今回、ゴルフ中か首脳会談時か分かりませんが、トランプ氏が言ってきたように、仮にTPP以上の農産品市場開放で合意していたなら、それは歓迎すべきことです。野党は、むしろこの点では、政権を応援すべきです。

 

ファーウェイの5G基地局をドコモが導入することで合意したなら大問題

今回の日米首脳会談、本当に問題なのは、米中冷戦へのスタンスです。安倍総理は、会見では、米中間の問題の対話による解決を望む、と当たり前のことを言っただけですが、大変気になるニュースがありました。ヤフーニュースが、雑誌「選択」の記事として、以下のように報じています。

トランプ政権が同盟国に対し使用禁止を求めた中国の通信機器大手、ファーウェイの5G基地局NTTドコモが先行導入する可能性が浮上している。ドコモが安倍晋三政権に反旗を翻したわけではない。米中が相互の追加関税撤廃で合意する見通しとなり、中国との関係を軌道修正したい米政権が同盟国、日本の通信トップ企業によるファーウェイ製品導入を容認することで「中国側に善意を示す」(関係者)という政治的なシナリオに沿った動きだ。

headlines.yahoo.co.jp

つまり、米中貿易交渉の妥結の見返りに、同盟国日本のドコモがファーウェイの危機を使った5G基地局を作る、と言うのです。

「選択」は、3月号で、アメリカによるファーウェイ排除を批判していました。今後の見通しとして、アメリカがファーウェイ排除を呼びかけても、同盟国はそうそう言うことを聞かないだろう、という論調でした。

www.sentaku.co.jp

今回は更に、米中が相互の追加関税を撤回するだろう、その際、同盟国の日本がファーウェイ利用を容認するだろう、という見方です。これが事実かどうかは分かりません。ソフトバンクがファーウェイ排除をするというのに、ドコモだけ導入することがあるのか、ちょっと首をかしげたくなるニュースではあります。

ただ、これが事実だとしたら、全く聞き捨てならない話です。

ファーウェイ製品の排除について、アメリカの同盟国間で意見が割れているのは事実です。EUは各国ごとの判断ということにしました。ただ、リスクに関する情報は共有し、今年10月1日まで、5Gに関するサイバーセキュリティリスクを検証し、来年10月1日までに、追加措置が必要か否かを判断します。先送りながら、ファーウェイ問題は、検討対象です。

EU、5Gからファーウェイ排除せず リスク巡る情報を共有 - ロイター

来年10月1日にまで決めるというのは、恐らく、来年の大統領選でトランプ氏が再選されるかどうかを見よう、ということなのでしょう。

一方、イギリスは、中核ではないネットワークの一部にファーウェイの技術を採用することを認めるということです。

ファーウェイ製品が既にイギリスのネットワークでは長年使われているという事情もあるようです。ファーウェイは製品実用化の前に英政府と共同で運営するオックスフォードシャー州のセキュリティ評価センターで潜在的なセキュリティ上の欠陥を検出するための検査を義務付けられているそうで、これでリスク管理が出来る、という立場です。

japan.cnet.com

[FT]英情報当局「ファーウェイのリスクは管理可能」 :日本経済新聞

これに対し、イギリスのような限定的な導入では全くリスクを管理できないと考えて、全面的にファーウェイ製品の排除を決めたのがオーストラリアとニュージーランドです。ここでは、オーストラリアの主張を見ていきます。

オーストラリア政府の決定は、オーストラリア通信電子局(ASD)の提言を受け入れてなされたものです。ロイターによると、ASDは、去年2018年の初め、政府のホワイトハッカーによる「破壊的なデジタル戦争ゲーム」で、リスクの検証を行いました。 ロイターから引用します。

オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントである彼らに与えられた課題は、あらゆる種類のサイバー攻撃ツールを使って、対象国の次世代通信規格「5G」通信網の内部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えることができるか、というものだ。
このチームが発見した事実は、豪州の安全保障当局者や政治指導者を青ざめさせた、と現旧政府当局者は明かす。
5Gの攻撃ポテンシャルはあまりにも大きく、オーストラリアが攻撃対象となった場合、非常に無防備な状態になる。5Gがスパイ行為や重要インフラに対する妨害工作に悪用されるリスクについて理解されたことが、豪州にとってすべてを一変させた、と関係者は話す。

ロイターは、この実験が、最初腰が重かったアメリカ政府に、ファーウェイ製品の排除について決断させる大きな材料となった、と報じています。

jp.reuters.com

そのASDのマイク・バージェス長官は、5Gネットワークでは、これまでのネットワークのように、リスクのある機器の問題を一部に閉じ込めることは出来ない、ネットワークの一部にでも問題があれば、それは全体の問題になる、と主張しています。

asd.gov.au

だとすると、イギリス政府のように、「中核ではないネットワークの一部」だけでファーウェイの技術を利用するというやり方では、全くダメだ、ということになります。

そして、IoTでの基幹技術となることが想定されている5Gは、単なる通信速度が問題となっているのではなく、日常生活に関するあらゆるネットワーク(人ー人、人ー機械、機械ー機械)の支えとなるという点を強調しています。

ファーウェイ等の通信機器を通じた5Gへの攻撃は、自動運転から遠隔医療まで、あらゆる範囲に影響が及びます。IoTは、全ての家電・交通機関等をネットでつなぎ、仕事や日常生活を便利にしようということですから、これを支えるネットワークが攻撃されたら、全ての市民生活が成り立たなくなります。

ファーウェイ排除を決めたオーストラリア前首相のマルコム・ターンブル氏が、今年3月に、イギリスで講演しています。彼は、直接のきっかけは、中国政府によるオーストラリア議会へのサイバー攻撃だったとして、先のバージェス長官と同様の見方で、イギリスに警告を発しています。

news.yahoo.co.jp

そもそも、中国は、安全保障戦略・軍事戦略について、「超限戦」という考え方までしている国です。超限戦とは、「(従来の境界線と)限度を超えた戦争」で、あらゆるものが戦争の手段となり、またあらゆる場所が戦場となりうる、という考え方全体をさしています。とりわけ、「非軍事の戦争行動」が重視されます。 

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このように、5Gネットワークの特性、外国議会にまでサイバー攻撃を実際に行っている点、超限戦という考え方による非軍事の戦争行動の重視、という点を考えれば、5Gの基幹部分をファーウェイやZTEに委ねるべきではありません。EUのように先送りでアメリカ政府の立場次第というのは論外、イギリスのやり方も、5G網の特性から考えれば、脅威を全く防げません。

だからこそ、日本も、ファーウェイ等の製品については、オーストラリア同様に、政府はもちろん、民間の重要なインフラからも完全に排除して、より信頼できる国の製品として、ノキアエリクソン、そして、議論はあっても、サムスン等を採用すべきです。既に5G関連の特許は4割ほどを中国におさえられていますが、やむを得ません。特許料だけ支払って、中国製品自体は使用しないことにして、日米欧で中国を上回る巨額投資を次世代ネットワークのために投下していくべきです。

日米首脳会談の話に戻ります。野党は、こうした点についてこそ、安倍総理に質すべきです。会談で、米中について何が話し合われ、ファーウェイ製品について日本の通信会社の使用可否について話題となったのか。選択の記事は事実か。今後、アメリカがどうあろうと、日本は5G導入後の国民生活に生じるサイバーリスク、特に中国によるサイバー攻撃のリスクをどう評価し、どう防ごうとしているのか。こうした点についてこそ、国会で聞くべきです。